私達は今、GVと今の私、そして憎悪をむき出しにしている少年との対峙を目撃していた。
その少年は今もGV達に向けて銃を構えて油断なく睨みつけている。
GVはその少年を見てやさしい世界に居た明を思い出しているようだ。
そしてその事をなんとか隠し通し、GVは少年に尋ねる。
「………君は誰だ? 何故こんな事をする!?」
「俺はアキュラ…人の世に蔓延る、人ならざる者
人外魔境、悪鬼羅刹――
「……っ!」
あの少年の名前はアキュラ。
やさしい世界に居た明の髪を白くして、より眼付きが鋭くなったような人だった。
理由は分からないが
だけど最初の言葉とは裏腹にアキュラは銃を油断なく構えながらこう切り出した。
「…と言いたい所だが…非常に忌々しいが、今回は別だ
貴様には聞きたい事がある」
「…………」
GVは今、今の私を抱えている状態で油断なく構えている。
何時でもここを離脱できるように。
今の私はそんなアキュラの憎悪に怯えており、顔をGVに押し付けて震えていた。
「貴様がとある研究施設で実験体になっていたのを俺は知っている
聞きたいのは、貴様が研究施設から逃げ出す直前に起きた事だ
…あの時膨大な正体不明の
……その
居所を吐けば特別に痛みも苦しみも無く貴様達を葬ってやろう」
「……何のことか分からないな
僕はその時、実験中の負荷で意識を失っていたからね
目覚めたのはとある人物に救出される直前だった
そんな正体不明の
「…
……っ!! この人、私達の事を探しているの!?
…あの研究施設は最終的にアシモフさん達によって爆破されたはず。
でも、何処かに私達の
うぅ…これじゃあますます表に出られなくなっちゃったじゃない!! もう、あの時の私のバカ!
「君がどう思おうと勝手だが、僕は本当に知らないんだ
…所で、用事が済んだなら其処を退いてくれないか? 彼女が怯えてしまっている」
「ふん…その娘が
唯のプログラムデータにしては優秀だと思っていたのだが、
貴様を始末した後はその娘も神の御許に送ってやろう…感謝しろよ? ガンヴォルト」
この言葉をGVが聞いた瞬間、アキュラに対する殺意がむき出しになった。
GVは基本、殺意とかそういう感情を表情には出さない。
何故ならば自分の表情で相手にそういった情報を与える事を嫌っているからだ。
でも、GVは長い長い年月を経て、ようやく今の私達に会えて言葉を交わしたのだ。
その直後にこの言動。
アキュラはいっそ清々しいほど見事に
…この時のGVは物凄く怖かったのを覚えている。
今の私達を気遣って直接言葉には出ていなかったけど、
この時のGVから滲み出るアキュラへの殺意の塊はどうしようもない程に濃縮していた。
「シァ……この子は今やっと、あの場所から自由になったんだ
それなのにお前は、この子を殺そうと言うのか」
「そうだ 貴様らの存在そのものが人の世に対する冒涜であり、罪だ…
故に討滅する…貴様らが一匹残らず居なくなるその時までな」
「アキュラ……!!」
「ふん…正体を現したか、
…少々予定が狂ったがまあいい、どうせ俺のやる事は変わらない
では改めてガンヴォルト…神の名の元に、「人間」であるこの俺が貴様を討滅する!!」
そうアキュラが言った直後、アキュラとは別の方向からGVの左足に銃弾が飛んできた。
それは不意打ちだった。
今のGVはペンダントの機能をオフにしている。
これは今の私を抱えた状態で「カゲロウ」が発生してしまうと、
素通しして投げ出されてしまう可能性があるからだ。
故に、この不意打ちを受ける事となってしまった。
GVの左足の太ももから血が出ている。
なんとかGVは致命傷は避けられたようだが、足を使った機動性は大幅に落ちた。
そんなGVに、アキュラは銃を突きつける。
「ぐぁ……!」
「GV!! 血が…足から血が…!」
「ふん、まさかお前相手に一人で挑むほど俺が愚かだとでも思っていたのか?
油断したな、ガンヴォルト…両腕もその足手纏いで塞がっている以上、もう貴様は終わりだ
さあ、そのまま神の御許へと仲良く送ってやろう」
「足手…纏い…私が…GVの…」
アキュラ……私達の愛しいGVに、よくもそんな傷を付けてくれたわねぇっ!!
許せない…許せない…許せない…!! GVがこの先無事なのは分かっているの!
でも、それでも、目の前でこんな光景を見せられたら私達は、私達を抑える事何て出来ない!!
『『そんなに
特別に見せてあげる……貴方の死を対価にねぇ!!!
今の
私達の
あの時の出来事が切欠で既に完全に生まれ変わっており、別物となっている。
その気になればこのGVの
あの時
正体不明の
…モルフォもあの時とは違って自制が出来ておらず私と同じ気持ちなようで、
瞳の光を失った状態でアキュラへの殺意をむき出しに、
私と同じように「詩魔法」を紡ごうと
その時だった。
『こちらアシモフ…GV、そこを動くなよ?』
GVの持ってた通信機からアシモフさんの声が聞こえた。
アシモフさんがあの忌々しいアキュラに狙撃を試みたのだ。
だけどアキュラはその事を分かっていたみたいで、
装備していた大きな盾でその攻撃を防いでいたが、威力があったのか、そのまま吹き飛ばされる。
その瞬間、私達に理性が戻り、怒りのあまりに私達の正体が露見するのは防がれた。
「アシモフ! …ありがとう、お陰で助かった」
『GV、油断したな…ミッションは帰還するまでがミッションだ
フェザーを抜けたとはいえ、その事を忘れてもらっては困る』
「ゴメン、アシモフ…」
「アシモフさん、GVを助けてくれて、ありがとうございます」
『お前達が無事なら、それでいい
こちらも先ほど皇神の増援を始末した所で手が余っていたのだ
…奴ともう一人のスナイパーは私とジーノで貼り付けにしておく
今の内にその場を離脱しろ
では改めて…グッドラック! GV』
「了解!」
GVは即座にヒーリングヴォルトを使用して傷を塞ぎその場を後にした。
足手纏いと言われ意気消沈していた、今の私を抱えて…
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
※ミッション中に本名を呼ばなかったのに急に名前を呼ぶようになった件について
二十二話、二十三話でミッション中は通信の傍受を警戒して、
個人の名前の情報漏洩を防止する為に名前を呼ばずに徹底してコードネームを扱っています。
この話でGVやアシモフが自分の名前を出す様になったのは、
特殊な処理を済ませた二人だけの専用回線で会話をして居る為です。
実際にこのお話でのアシモフとの通信ではモニカとジーノが会話に参加していません。
二十三話での通信の最後にアシモフの名前を呼びましたが、
名前を呼んだ時には既に通信機を口から離していた状態だからです。
なお、アシモフはモニカやジーノとの専用回線も持っており、
聞かれても構わない内容と逆に聞かれたらマズイ内容とで通信回線を使い分けています。
ちなみにGVは普段フェザーの外で名乗っている名前は、
第二話でシアンに本当の名前を言っていたように、転生前の名前「優」を使っています。