【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第二十七話

永遠を望む二人

 

 

 私達は今GVの部屋に居る。

 GVは今フェザーの脱退やモニカさんに今の私の着替えや下着等の手配のお願い等に必要な書類を纏めている。

 その部屋は特大のモルフォのポスターが一枚貼られており、私達の世界に来てから、

すっかりGVはモルフォの歌にどっぷりと嵌っていた事を示していた。

 基本モルフォの歌はDLで入手するのが普通なのだが、GVはわざわざCDも購入しているのだ。

 これを私達が初めて知った時、嬉しかったなぁ…

 GVは恥ずかしそうに顔を少しだけ赤くしてたし、そういうGVも見れて一石二鳥だった。

 そして今、私達はGVが今の私達に隠していた本を見ていた。

 そう、所謂「えっちな本」だ。

 今と未来の私達の目を隠して、ラムダドライバでこっそりと生成していたのだろう。

 

『むぅ……GVったら、私達が居ながらこんな本を隠し持ってたなんて!』

『……でもシアン、GVは今転生前の時と違って私達の姿があまり見れない状態にあるのよ?

このくらい、許してもいいんじゃないかしら

男の人は溜まってしまった物を吐き出せないと辛いのは転生前のGVを見ても分かるでしょ?

……まあ、それと今感じてるアタシ達の気持ちとはまた話は別だけど…ね』

『うぅ…確かにそうかもしれなけど…でも…例えそれが娯楽の中の話でも、

GVが他の女の子に目を向けるのは嫌だよ、モルフォ…』

『それにねシアン、本の女の子たちの特徴をよく見て見なさい 何かに気が付くはずよ』

 

 私達は「えっちな本」に対して意識を集中させる。

 モルフォの言うその特徴を把握する為に。

 そう、これはあくまでそれを把握する為の物、

決して私達が興味があるからでは無い…多分、きっと…

 

『あ…』

『気が付いたみたいね、シアン』

『…私達にそっくりな女の子ばっかりだね、モルフォ』

 

 それを知った途端、私達の中の嫉妬の心が和らいだ。

 そして今度は、その内容を把握してみる。

 うわぁ…何この衣装…殆ど裸じゃない…

それにこっちの衣装はちゃんとしているのに不思議とえっちな気配が凄い…

これは確か「メイド服」って言うんだっけ? スカートの中の下着もえっちだ。

 ふむふむ…「ガーターベルト」って言うのね…

普段は見えない所なのに、ふとした拍子にチラっと見えると凄いえっちだ…

それに「ご奉仕」だなんて…

 

『GV…私達にこんな事がしたいんだ…』

『この格好はアタシもかなり恥ずかしいわ…』

 

 その内容は口では言えない様な事が一杯溢れていた。

 私達はそんな過激な内容を顔を赤くしながら夢中になって読み進めていく。

 もう最初の時の目的何て頭の中からすっかりと無くなり、

今後の疑似的な「アレ」の参考にしようとそのピンク色な知識を貪っていった。

 

『「ご主人様」かぁ…』

『「ご主人様」ねぇ…』

 

 中でも私達の琴線に触れたのがこの言葉だ。

 GVにあの時身も心も捧げた私達にとって、この言葉は魅力的に思えた。

 ……GVに私達の「ご主人様」になってもらって私達は跪き、首輪を付けてもらうのだ。

 そして「ご主人様」に命令され、私達は自身のスカートをたくし上げ、

はしたない恰好で「ご主人様」におねだりするのだ。

 どうか私達を滅茶苦茶にして下さいと。

 もしくはGVに「ご奉仕」を命令されて私達は卑しい表情をしながらその身を捧げるのだ。

 そしてその「ご奉仕」をしたご褒美をいっぱい「ご主人様」に貰うのだ。

 それで、それで…

 …そんな妄想を私達がしていたらGVが話しかけてきた。

 

「……シアン? モルフォ? 何をしているんだい?」

『『ひゃあっ!』』

 

 私達は書類を纏め終わったGVに声を掛けられ妄想を切り上げGVの方を向く。

 恐らくGVには筒抜けだったのだろう。

 その表情が私達の心を弄んでいる時の被虐愛を刺激する表情なのだ。

 …今の私達は今は眠っている。

 だったらこの時くらいはGVに甘えてもいいよね?

折角こんなにいっぱいえっちな事を知る事が出来たんだもの。

 私達は久しぶりに疑似的な「アレ」を楽しんだ。

 今得た知識を生かしながらGVに身も心も捧げ、夜が明けるその時まで注ぎ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……私達はずっと、今度こそずっと一緒に居たい。

 あの時みたいに、死にゆくGVなんて見たくない。

 消えていく見慣れた街並みを、あの綺麗だった夕焼けを見たくない。

 あの絶望的な光景は、今も目に焼き付いて離れないの。

 だから…お願いだから、今度こそ私達を離さないで。

「ご主人様」って言うから。

 首輪だって付けるから。

 口では言えない、恥ずかしい恰好だってするから。

 GVの為なら、私達は「ご奉仕」でも何でもするから。

 だからどうか、もう私達を置いて逝かないで…

 ……この願いはきっと叶わぬ願いなのだろう。

 特にこの世界(地獄)では…

 だからあの時みたいにまたGVが逝く時が来たら…

 私達もその時は一緒に逝こう。

 GVと心中しよう。

 もしくは…GVには人間を辞めてもらって、私達と永遠を生き続けて貰おう。

 私達の呪い(祝福)を注ぎ続けて、永遠に束縛しよう。

 その綺麗な翼を捥いで、首輪を付けて、鎖に繋ごう。

 後は…GVの時間を止めよう。

 時間と言う強大で、残酷な存在からGVを守る為に。

 あの時の私達では遅らせるだけしか出来無かったけど、今なら出来る。

 今もなお私達の第七波動(セブンス)は成長を続けているのだ。

 その確信が私達にはあるのだ。

 だから時が来たらGVの時間を止めて、ずっと、ずっと一緒に居てもらおう。

 GV? 今までの貴方が私達をこんな風に調教したんだよ。

 あの時も言ったけど、ちゃんと責任を取ってね。

 GVならきっと嬉しそうに喜んでそうしてくれるって、私達は確信してるんだから。

 永遠に…この世界が滅びて人っ子一人居なくなってもそうしてね? GV。

 私達は絶対に貴方を離さない…永遠に、離しはしないからね。

 

 

 

ガラス片

 

 

 くそ…後一歩で仕留める事が出来たのに…ガンヴォルトめ、悪運の強い奴だ。

 まあいい、少なくとも奴は正体不明の第七波動(セブンス)反応について何か知っているようだった。

 知らないなどとほざいていたが、一瞬だけ目が泳いでいたからな。

 それに何も収穫が無かった訳では無い。

 あの時、奴はノワの狙撃で傷を負い()()()()()

 奴の…蒼き雷霆(アームドブルー)の能力因子のサンプルを手に入れる事が出来たのだ。

 これを研究すれば、また俺は力を付ける事が出来るだろう。

 忌々しい、汚れた力を。

 だが例えこの身が汚れようとも、俺には為さねばならない事がある。

 第七波動(セブンス)能力者達の根絶…そして、「ミチル」の体調を治す事だ。

 それはあの正体不明の第七波動(セブンス)反応があった皇神の研究施設…

そこの第七波動(セブンス)反応の中心点にあった、

()()()()()()()()()()()()()()()をミチルの居る病室に偶然持ち込んだのが切欠だった。

 

『んー…何これ!? アキュラ君、これ本当に何の加工もされて無いガラス片なの!?

複雑何て通り越してもう訳が分からない構造な上に、

尋常じゃない程の第七波動(セブンス)の力を感じるぞ!?』

 

 こう喋っているのは、

今俺が開発中である学習型超AI搭載の戦闘支援ロボット「バトルポッドRoRo(ロロ)」だ。

 調整は()()()()()()()()()()ある程度済んでいる為、

テストも兼ねてこのガラス片を組み込んで解析してもらおうとしたらこの反応だ。

 このガラス片は少し前に父さんの死因を調べていた時に手に入れた物だ。

 一見、何の変哲もないガラス片…

だがこのガラス片には正体不明の第七波動(セブンス)、その力が凝縮されている。

 しかも何の特殊な加工もされていないのにも関わらずにだ。

 おまけにどういう訳かメイン動力源にするには不安が残るが、

動力源を積んでいないあのロロをバトルポッドとして起動させる事が出来たのだ。

 

「やはり、ロロでも解析は無理だったか」

『ちょっと~? アキュラ君、

最初っから期待してなかったって聞こえるんだけど、どういう事なのさ~?』

「俺の方でも色々と解析を試みてみたが、結局はロロと同じような感想だったからな

それに、元々の目的はロロの性能のテストがメインだ

そのガラス片の正体不明の第七波動(セブンス)が最初から解析できるなどとは思ってはいないさ」

『むぅ~~~』

「……すまない、ロロ」

『……っ! もう、しょうがないなぁアキュラ君は 今回は特別に許してあげる

それよりもさ、早くミチルちゃんの様子を見に行こうぜ?』

 

 ロロにそう言われ、俺はミチルの居る療養施設に向かうことにした──

 

「ミチル…あまり元気じゃないようだな」

《ごめんなさいアキュラ君、今日はあまり調子が良くないの》

 

 そう書かれたタブレットを見せるのはミチル──オレの妹だ。

 ミチルは生まれつき体が弱く、幼い頃の手術が原因でその声を失っていた。

 今でも回復の兆しは無く、世間の医者も原因不明と匙を投げたため、

一般の病院ではなくオレたちの実家が有する施設で療養している。

 

『体調あんまし良く無さそうだね…無理に起き上がらなくてもいいからね? ミチルちゃん』

《ごめんね、折角アキュラ君もロロも来てくれたのに、私がこんな調子で》

「ミチルが謝る必要なんて無いさ

それよりも、今はもう横になった方がいい」

『そうそう、僕はミチルちゃんに元気でいて欲しいけど、

無理して欲しいって思ってる訳じゃないからね?』

 

 そう話していた時だった。

 ロロに異変が発生したのだ。

 

『あれ…何だろう? この感じ…何か良く分からない感情が流れ込んでくる…!』

《どうしたの? ロロ》

「ロロ、どうした!? どこかシステムに異常が生じたのか?」

『分からないよ…それに、僕の体の中が燃えるように熱いんだ!』

 

 そうロロが叫んだ。

 その瞬間、ロロは人型の姿…後のP(フェニック)ドール形態になったのだ。

 

『わっ! わっ! 何これ!? 僕、人の姿になっちゃった!!』

《すごい! もしかして、新しい機能?

電子の謡精のモルフォちゃんみたいで素敵だよ、ロロ》

『え? そっそうかな? ありがとう、ミチルちゃん……

ってアキュラ君! 僕、こんな機能知らないよ!? どうなってるのさ!?』

「何だ…コレは……まさか、ロロに組み込んだあのガラス片が反応しているのか?」

 

 一体どういう原理でロロが人型に…科学者としては気になるが…

 

『あれ…?なんだろ、この感覚…まるでミチルちゃんの考えが分かるみたいだ

…やっぱりミチルちゃん、無理してたんだね』

《私の事が分かるの? ロロ?》

『うん、この姿になった途端、ミチルちゃんの気持ちが伝わってくるんだ…

あれ? ミチルちゃん、体調が良くなってない?

ミチルちゃんの凄く楽になったって気持ちが僕に伝わってくるんだ』

「……なんだと?」

《…今のロロを見てから、体が羽の様に軽くて、苦しいのも収まったの…それに》

「あ…キ…ゅ…ら…ク…ん……ろ…ロ…」

「………っ!!!!! ミチル、お前、声が…!」

『ミチルちゃんが喋った! 喋ったよ、アキュラ君!!』

 

 ミチルの体調が良くなっただと!?

それにまだたどたどしいが、ミチルが喋った…夢にまで見た、ミチルの声だ。

 …ミチルの病気は診せた医者全員が匙を投げたんだぞ。

それが何故今になって…

あのガラス片に込められた正体不明の第七波動(セブンス)

これが原因なのか? ならば、調べなければなるまい。

正体不明の第七波動(セブンス)を持つ能力者…

こいつを見つけて討滅し、全てを暴き出してやる。

 それでミチルが今以上に元気になるのならば、俺に迷いは無い。

 ロロの動力源の問題も解決の糸口は入手済みだ。

 後は、行動あるのみだ。

 全ては能力者(バケモノ)の根絶と、ミチルの為に…




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




※ロロについて
 この小説内では、原作よりも早い段階で動力源の問題以外の各種調整がある程度済んでおり、
 後は実用に耐えうる動力源を如何するかが問題でした。
 それが今回の話で解決しました。
 そして、OPステージ後から皇神の能力者と戦うまでに半年は経過しています。
 後は、想像の通りになると思います。

※ガラス片について
 第二十話にて、悲鳴を上げるGVを目撃した結果マジギレして、
第七波動(セブンス)を垂れ流し状態だったシアンの近くにあったビーカーが、それに晒され、その後の部屋突入時の爆風で割れたのが、このガラス片です。
 つまりこのガラス片は、
「ただ単にマジギレシアンの第七波動(セブンス)の余波を受けただけの代物」なのです。
それでいて、ミチルちゃんにたどたどしい状態ではありますが、
この段階で声を戻してしまう程に回復しています。
つまり、今のシアンちゃんはそれだけヤバいのです。

※ロロがABドライブも無いのにPドールになった件について
第一話にて、シアンはGVの(記憶)の世界に突入する直前に、
GVの蒼き雷霆(アームドブルー)の能力共有永続化を確認しています。
この蒼き雷霆(アームドブルー)の情報もこのガラス片に込められているのです。
これがABドライブの代用品となっていると考えて下さい。


追記

※疑似的な「アレ」について
世界のありとあらゆる物を電子と音のゆらめきで感じ取れる能力と、
自身の姿形を変えられる能力を組み合わせています。
GVの動きを感じ、それの情報をエミュレートした結果の情報を自身に反映させているのです。
何気に高度な能力の使い方であり、この事も能力訓練の一環になっていたりします。
最初の頃は無意識で行っていましたが、意識して行う様になってからはより精度が高くなり、
十年くらい経った頃には生前の頃の触れられた感触の再現まで出来るようになっています。
転生前の段階でシアン達は膨大な数の疑似的な「アレ」を熟しています。
それこそGVの体に歌が届かなくなった時まで続けてきた行為なのです。
つまりシアン達は転生前から既に見えない首輪と鎖でGVに縛られているのです。

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