家族とは
転生前のGVの記憶を見続けてからもう八年ほど経過した。
最初の内は微笑ましい気持ちでGVを見ている事が出来た。
温かな家庭だった。
これが本当の日常であり、家族と言う物なのだと。
「行ってきます」とGVがお母さんに言う。
学校で勉強をして、沢山のお友達と遊んで…
家に帰ってお母さんと妹に「ただいま」と言う。
仕事から帰ってきたお父さんに「お帰りなさい」と言う。
家族団欒で夕食を食べ、お風呂に入ってベッドで眠る。
そして再び朝を迎えてお母さんが優を起こして、また一日が始まるのだ。
『……いいなぁ』
私の物心が付いた時には皇神の研究員の人達が居た。
冷たい人達が大半ではあったけど親切にしてくれた人も少なかったけど確かにいたのだ。
でもこう言った当たり前で、温かで幸せな家族は居なかった。
だからここに居るGVがとても羨ましかったのだ。
そんな家族を眺めていたその時、ふと思い出す。
GVとしたあの時の会話を…
『GV…GVは、私のためにフェザーを辞めたんだよね…
本当に…良かったの? フェザーはGVにとって家族みたいな物なんでしょ?
わたし…GVの足…引っ張りたくないよ…』
『シアン… 僕は後悔してないよ
君が自由に生きる事が出来るようになるまで
『GV…』
『僕はこれからも、君の
だから泣かないで、シアン…』
あの時の私とGVはそんな事を言っていた。
あの時の私はGVの足を引っ張りたくないと、足手纏いは嫌だと思っていただけだった。
GVにとってフェザーは家族みたいな物だと認識はしていたけど、
それが本当にどういう事なのかを理解してはいなかった。
でも、この光景を見た後だと…
『私はGVからこんなにも温かで、大切な物を奪い取っていたの?』
『私は…私は……!!』
両目から涙が溢れてくる。
何度拭っても零れ落ちてくる。
私を助けてくれたあの時、GVがフェザーを抜ける事を決めた覚悟を、
私は今の今まで何も分かって無かった!!
その事がたまらなく悔しくて、悲しかった。
『GV…ごめんなさい…ごめんなさい…』
私は眠っているGVを目の前に涙を流し続けた。
このGVの
そう私は決心したのであった。
涙が引いたのはこの出来事から一週間が過ぎた頃だった。
この世界の娯楽
ある日の事、GVはとあるライトノベルを見ていた。
「フルメタルパニック!」と呼ばれるライトノベルだ。
小説はちょっと文字ばっかりで堅苦しい感じがして少し敬遠していたが、
横から話を聞くにライトノベルは小説とは違って気軽に読める物らしいので、
GVが読んでいたのを私も横から見てみる事にしたのだ。
そうして読み進めてみたらこれが面白い。
GVも面白いのだろう、買ってきた「フルメタルパニック!」の短編を含めた一巻から十二巻までを一週間かけて一気に読み切ってしまった。
七巻辺りからはもうハラハラしっぱなしだった。
そして十二巻の最後の方の展開なんて涙がずっと止まらなくて前が見えなかった。
それまでの展開でも涙を堪え切れなかった事が沢山あったけど、
あのどんな時でも死を恐れていなかった主人公のあの独白を読んだらもうどうしようもないよ…
GVもページを捲るのが遅くなっていた時が多かったので、
意識を少しだけ向けたらやっぱり泣いていた。
自身が
この記憶の世界に来て、初めてこの体に感謝した。
結局この余韻は3日ほど続いて今さっきようやく収まった。
『あぁ…GVの居た世界って本当に娯楽が楽しいなぁ』
以前GVがこの世界の娯楽を懐かしんでいたのを思い出した。
…私の居た世界の娯楽も負けてないとは思うけどこんなに面白い作品が沢山あったのならば、
GVがこの世界の娯楽を惜しんでいるのは非情に納得が出来た。
だってこんなに沢山の作品達を知ってもうそれに触れられない、
話題にも出来ないだなんてあんまりだと思たからだ。
『せっかくGVの記憶が見れるんだもの
GVが見ていた娯楽作品の全部を覚えて
戻ってきたらGVの事を驚かせてあげるんだから!』
まだ私が攫われる前、GVの隠れ家に居て結構な時間が経った時の事。
私の
記憶した内容を映像に出力する事が出来るようになっていた。
あの時はGVの記憶の中で最も印象に残ってたアニメのお話…
確か「穴掘り王と螺旋の姫の物語」という作品をGVの記憶を元にテストとして映像に移し出していた。
この作品は兎に角勢いが凄く、強烈で、間違いなく記憶に刻まれる。
でも悲しい場面は本当に悲しくて…特に最後の結婚式の場面は、
少しの喜びと、沢山の悲しみが混ざり合って涙でまともに見れなかった。
そんな作品だった。
GVも言葉には出しては居なかったけど、間違い無くこの作品の影響を受けてると思う。
何があっても諦めない所とか、いつも無茶ばっかりしてる所とか、
無謀だと思えるような事を無茶苦茶な方法で実現したりとか…
まあ兎に角、私がこの世界での娯楽を覚えていけば記憶した内容を映像に出力出来る。
つまりGVにまたこの世界の娯楽を見せて上げる事が出来るのだ。
私はGVの為にこの世界の全ての娯楽…は無理だと思うけど、
せめてGVの知っている範囲の娯楽は覚えておきたいと私は思った。
GVの寝顔を見ながら
夜になってGVは眠りについた。
私はこの体になってから
それに眠くもならないのだ。
そしてこの時間はある意味では一番の楽しみと言える時間帯だ。
GVの寝顔を落ち着いてずっと見られる、そんな素敵な時間帯なのだ。
『……ふふ、可愛いなぁGVは』
髪の色は黒で転生前のGVは転生後のGVと似ていないと髪の色だけで判断してしまっていたけれど、
こうして顔をじっくり見ると顔立ちとかがとても良く似ていて、
やっぱりGVなんだなぁと嬉しそうに私は見つめていた。
このGVが大きくなったら間違いなくカッコよくなって女の人に…
GVには以前モニカさんについて問いただしたことがあった。
モニカさんってどんな人なのかと。
あの時のGVは「チームのお姉さん」って言ってたからモニカさんは大丈夫だと判断した。
でも……この質問をした時、私は激しく後悔した。
『……そういえば、GVには転生前に気になる女の人って居たのかな?』
『そうだね…居たよ、憧れだった女の人が』
『っ……!!』
その言葉で私の頭の中は真っ白になった。
私は激しくGVの言葉に動揺してしまったのだ。
『シアン…?』
『――! 何でもない、何でもないよGV!』
なんとかGVを誤魔化して自分の部屋に逃げ帰るので精一杯だった。
そしてベッドにそのまま飛び込み涙を流した。
GVにその女の人を相手に激しく嫉妬している私の醜い姿を見せたくなかった。
そんな時、既に表に出て私の部屋に居たモルフォが話かけて来た。
『シアン、どうしたのよ? そんな涙を流して…』
『モルフォ…あのね…』
そうしてモルフォに先程あった会話の内容を私は説明した。
『大丈夫、この部屋にGVが入って来て事情を求めて来たらアタシが適当に誤魔化しておくから』
『ありがとう、モルフォ』
『自分の醜い姿を見せたくないのよね…アタシはあなたの本心だもの…そうせざるを得ないわ』
でもそう言っていたモルフォの顔も酷く歪んでおり、涙を流していた…
大人っぽくて気が強くて、自由奔放な性格をしていてもモルフォは私の本心。
モルフォもやっぱり辛いんだ…
『モルフォも酷い顔してる…』
『……大丈夫、アタシは大丈夫だから』
この後お互いに落ち着いて部屋から出てきた私達の様子を見たGVは、私達に謝罪していた。
「泣かせてしまってゴメン」と。
その憧れだった女の人はGV以外の人と付き合ってその人と結婚した事をGVが教えてくれた。
その時の結婚式にGVも参加した事も話してくれた。
勿論GVの記憶からの映像付きで。
『……今になってこんな事を思い出すなんて』
記憶の旅を終えれば、私はGVと一心同体の状態なのだ。
そんな状態でGVが他の女の人に惹かれてしまうような事があったら…
私は嫉妬で狂ってしまう……!!
『GV…私の大好きな人…絶対に…他の人には渡さない……!』
こんな考えを口にしてしまっている時点で私はもう狂っているのではないか?
そう心の片隅で私は思い、そんな未来が来ない事を心から願った。
……でもそんな未来が来る事など絶対に無い事をこの時の私は知る由も無かった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
※記憶の中で八年経っている事について
夢の中では八年経っていますが現実では融合を果たしてから時間はまだ1秒も経過していません。
なおこの時の転生前GVの年齢は14歳であり、
見た目はおさげが無くなって黒髪なGVだと思ってもらえれば大丈夫です。
※シアンが涙を堪え切れない事について
トークルームにてGVがシアンに対して
「元アーティストだけあって感受性が豊かなんだろうな…」
というような事を考えていたのを反映してみました。
※この世界の娯楽で出てきた作品について
「フルメタルパニック!」はGV転生後の重要な伏線です。
この話の投稿が終わり次第タグに追加します。
「穴掘り王と螺旋の姫の物語」は…伏線とかそういうのは無いので、
直接的な名前は出しませんが「ドリルなお話」と書けばピンと来る人も居るのではないでしょうか?
何気にシアンも無自覚ですが影響を受けています。
そうで無ければ第一話の
※記憶した内容を映像に出力する事が出来るようになった事について
能力共有による
何気にこれが出来るようになって以降、
フェザーでのミッションをGVの自室からのモニター経由での報告する際に利用するようになりました。
シアンはGVから様々な物を貰ってばかりだと思っていますが、
GVもこういった形でシアンから貰っている物が沢山あると思っています。