第三十三話
今の私達が救出されてGVの拠点での新しい生活が始まってもう半年が経った。
GVはこの間に今の私達との生活を送りつつ様々な情報を仕入れていた。
皇神の能力者…特に「七宝剣」を扱う能力者の情報。
宝剣についての情報。
能力者一人の暴走で国一つ消滅した情報。
無能力者と能力者との争いが激しく続いている国の情報。
多国籍能力者連合「エデン」の情報。
他にも色々と情報を集めていたが主な情報はこんな所だった。
ただ、私達の
「アメノサカホコ」と呼ばれる軌道エレベーターの先にある衛星拠点、
「アメノウキハシ」に情報があるのは皇神第一ビルのデータサーバーの情報から分かっていた。
だけど何度か下見をしに行った時はそれはもう警備が厳重だったので、
結局ここを対象とした個人的なミッションは断念する事となった。
それに下手をするとあの
あの時は上手く逃げ切る事が出来たけど、次は無理かもしれないとGVは判断していた。
GVにしては弱気な判断だと思うかもしれないけど、
相手はGVの「力」による
それに前述に調べていた「七宝剣」を扱う能力者の情報の中に彼の名前があった。
その情報によるとこのパンテーラ、
なんと
しかも宝剣に能力を封じてる状態なのにも関わらずにだ。
この事実を私達が知った時、GVのあの即時撤退の判断は間違っていなかったのだと確信した。
…こんなやつが最低後六人も居るのかと考えると眩暈がしそうになる。
GVは良くこんな相手とやり合えた物であると感心してしまう。
…出来る事なら私達も直接介入してGVを助けたい。
私達の模擬戦を見ていたGVからは「二人は即戦力になるレベルだ」と太鼓判を押されている。
でも今の私達で直接的な介入が出来るのは「
それ以外の行為は何も出来ないのだ。
一応その気になれば「詩魔法」による援護も出来るのだけれど…
でもこの「詩魔法」、何かと目立つのだ。
この「詩魔法」を試しに最大規模に広げたGVの「力」の結界内で発動させてみた事がある。
その時の「詩魔法」は「EXEC_HYMME_
正確には「ライフウォーム」「ライフリフレッシュ」「ライフシャワー」という三種類の回復魔法に該当する「詩魔法」共通の詩が「EXEC_HYMME_
多分この時私達が発動させてたのは、
その三つの内の最上位版である「ライフシャワー」だと思われる。
そして発動させた結果、
小さな街を覆うほどの「力」の結界内全てを「ライフシャワー」で満たしてしまったのだ。
しかも「力」の結界から嫌な音が聞こえてきてあわや破られる寸前であった。
回復魔法でこれなのだ。
これでは目立ちすぎて「詩魔法」は使えないのだ。
しかも私達の
これでは私達の能力が
まあそれはさて置き…
今GVはフェザーからの依頼のミッションを終え帰宅しており、
モニカさんに任務を終えた事を報告していた。
「こちらGV フェザーへ、任務完了しました」
『おつかれさま、GV…ねぇ、GV?
結局の所、あなたが受ける依頼って殆ど内からの物なんだし…
また、フェザーに帰ってくる気はないの…?
ジーノも口には出してないけど、今でも少し寂しそうだったわよ?』
「フェザーからの依頼は実入りがいいから受けているだけですよ、モニカさん
あの時、アシモフが言った通りなんです
彼女には…「家族」、そう、「家族」が必要だと思うんです
僕にとってのアシモフや、モニカさんたちがそうだったみたいに…
だから、今は彼女達についていてあげたいと思っているんです」
『…はぁ、わかったわ ごちそうさま GV? シアンちゃんによろしくね』
「ごちそうさまって…(やっぱりモニカさんには誤魔化せないか…)」
そういったやり取りがあった後通信を終え、GVは今の私に声を掛けた。
今の私は何時もの様に夕食を用意してGVを待っており、
GVの姿が見えた途端モルフォも表に出てきて、今の私達は笑顔でGVを迎えた。
「おかえりなさいGV、お仕事お疲れ様…
今丁度夕ご飯が出来たの GVの分も用意するから椅子に座って待っててね?
…本当は
『おかえりなさいGV、今日も怪我が無くてよかったわ』
「ただいま、シアン、モルフォ…シアン達は十分に僕の力になってくれているさ
こうやって二人に「おかえりなさい」って言われるととても心が安らぐんだ
それにその夕食だって僕の好みや必要な栄養を二人で考えて用意してくれているだろう?
料理をそこまで考えて作る大変さは僕も良く知っている
だからシアン達は十分に僕の力になれているんだ」
『「GV…… (それでもあの時みたいに、GVに守られるだけの
「…………大丈夫、シアン達はもう僕に守られるだけの存在じゃない
今だって能力や体力を付ける訓練を続けているし、
ミッションの報告に
あの時から半年…そう、半年でここまで出来るようになったんだ
これからもっと出来る事が増えるはずさ
だからそんな悲しそうな表情をしないで、シアン達には胸を張って笑顔でいて欲しいんだ」
『「…ありがとうGV (GVはこうやって
そんな貴方だから
他でもない、貴方の為ならって…)」』
そういったやり取りをしてモルフォを実体化させた後、三人は仲良く夕食を楽しんだ。
その夕食が終えた後、モルフォは今の私と何かやり取りをした後で今の私の中に戻った。
そして今の私はGVに見せたい物があると今の私の部屋にGVを誘っていた。
「シアン? 見せたいものがあるって聞いたけど…」
「…以前GVは長い髪が好きって言ってた事を覚えてる?」
「覚えてるよ、あの時言った事だろう?」
「そうだよGV! …あの時から半年たった今まで私はずっと髪を伸ばしてたの」
そういって今の私はGVの前で髪留めを外し、その長い髪をGVの前に晒した。
…この時のGVは何かを確信していたような表情をしていた。
恐らく今の私が未来の私の髪型と一致して、GVにとって慣れ親しんだ姿に近づいたからだろう。
「どうかなGV? 私のこの髪型、似合ってると思う?」
「似合っているよ、シアン……とても綺麗で、本当によく似合ってる」
そう言ってGVは今の私の髪を優しく撫でる。
今の私は顔を朱に染め、そんなGVの顔を見ながらなすが儘だ。
GVと今の私の目が合う。
今の私の瞳が潤み、そんな今の私を見たGVは顔を近づける。
そうしてお互いの顔が近づいていき、互いの唇が…
重なろうとした時、フェザーからミッションの依頼を告げる音が鳴った。
「「…………」」
「G…GV! ご…ごめんなさい!! (もう少しでGVとのファーストキスだったのに!!)」
『……(もう! なんてタイミングで邪魔が入るのよ!!)』
「…………(もう少しだったのに…フェザーも空気を読んで欲しい)」
「GV?」
「ゴメン、新しいミッションが入ったみたいだ…僕は行かなくちゃ…」
GVはとても悲しそうな表情をしながら今の私の髪を少し撫でた後、
ミッションの詳細を聞きに向かった。
もう! 本当にどうしてあんなタイミングでミッションの依頼が入ってくるかな!
あのタイミングでさえなければこの時点で私のファーストキスをGVに捧げる事が出来たのに!
モルフォとも協力して準備は万端で、あわよくばGVとあんな事やこんな事だって…!
お陰でこの後実際にキス出来たのは更に半年ほど時間が掛かっちゃったんだよ!!
そう未来の私達は思いながらGVの後を追いかけ、ミッションの詳細確認に向かった。
今回の依頼はアシモフさんからであった。
『……どうしたGV? 少し前のミッションで怪我でもしてしまったか?』
「大丈夫だよ、アシモフ 少し疲れが出ただけだからさ
後でリフレッシュヴォルトを使って疲れを飛ばすから、僕の作戦行動に支障は無い」
『そうか…GV、あまり無理はするなよ?
お前はフェザーを辞めた後でも今まで休みなくよくやってくれている
時には依頼をキャンセルしても構わんのだぞ?』
「ありがとう、アシモフ…でも僕は依頼をキャンセルするつもりは無い
だからミッションの詳細確認をお願いしたい」
『了解した、GVの意見を尊重しよう では改めて…
今回、お前に依頼したいのは皇神の工場施設への奇襲攻撃だ
目標である工場施設の最深部にこちらで用意する小型爆弾をしかけて欲しい』
「了解 施設内にはどう侵入すれば?」
『目標施設は、定期的に自動運転の列車によって燃料物資の搬入を行っている
その列車に乗り込めば施設内部まで侵入できるはずだ
……無事にミッションを達成して欲しい、頼んだぞ、GV』
そうしてGVの新たなミッションが、
「七宝剣」を扱う能力者との初めての戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
※
この小説内におけるシアン達の
電子では無く物質の最小単位である素粒子、つまり電子、精神関連だけでは無く、
根本的な最小単位の物質にも歌で干渉出来るようになった。
これが「詩魔法」が本格的に扱えるようになった理由である。
この名前の由来は謡精の上位互換の謡精女王といえばティターニアだろというのが一つ。
電子の上位互換といえば…物質の最小単位の素粒子だろというのが一つ。
電子と書いてサイバー…
サイバーってインターネットとかのコンピューターネットワークって意味だったはず
じゃあこの言葉の上位互換と言えば…何だろう?
と言った理由で今まで名前が思いつかず、成長して名前が変化しているにもかかわらず
小説内で名前を上げることが出来ずに悩んでいました。
色々とネットの海を漁って漸くそれっぽい単語を見つけられました。
それがクロスホエンです。
この名前の由来は「世界の中心で愛を叫んだけもの」という小説に登場する用語です。
後「終末少女幻想アリスマチック」と呼ばれるPS2で発売されたゲームにも出てきます。
意味合い的には「終末少女幻想アリスマチック」側の方で考えてもらえると助かります。
詳しく知りたければググって見てください。
PS2と書いてあるとおり、大分古いゲームですので…
なおタグの追加は行いませんので、よろしくお願いします。