僕はとある研究施設に侵入していた。
その巧妙に隠されていた研究施設内部は、
これまでの施設とは桁が違うセキュリティが施されていた。
僕は慎重に
そしてこの施設内のデータベースのある部屋を見つけた。
この部屋はどうやら何かしらの兵器の試験運用も想定されている部屋の様だ。
(今は誰も居ないか…今の内に情報を取れるだけ取っておかないと…)
僕はデータベースにアクセスし、情報を抜き取っていく。
その情報の内容に僕は驚きを隠せなかった。
(これは…僕の、それとアシモフの戦闘データだ
それにあの時撃たれた時に流した血液からこんな物まで…
疑似第七波動…あの宝剣の欠片から
それに「バトルポッドRoRo」…見た目からは想像もつかない程のスペックだ
それにこいつの動力源…「ABドライブ」に「USドライブ」…
成程、これがアキュラが未来のシアン達を狙っている理由か
どうやらシアン達の力の余波を受けたガラスが切欠で
アキュラの家族である「ミチル」という少女の体調が良くなったのが理由だったのか…
この世界でも妹想いなのは変わらないみたいだな、明…アキュラは
…ここの研究施設を取り仕切っている人は間違いなく天才と言ってもいい
しかし、アキュラがあの時装備していた盾や武装のデータ所か、
アキュラの家族の情報までこのデータベースに収まっている
……この施設はアキュラと何か関りがある施設なのか?)
そうして情報を引き出し、いつも通りに痕跡を「力」で消し去って脱出しようとしたその時、
アキュラと浮遊する玉状の機械…「バトルポッドRoRo」がこの部屋に入って来た。
僕はアキュラが出てきた事に驚きながらも、
この事態は何時もの事と思いながら身を部屋の角に隠した。
……非常に驚いた事に、この研究施設を取り仕切っていたのはアキュラだった。
シアン達もこの事に驚きを隠せないようだ。
驚愕した想いが伝わってくる。
アキュラと相対した時間はほんの少しだけだったが、
少なくともアキュラは特殊な戦闘訓練を受けているのは分かっていた。
だが、自身の装備までアキュラ本人が開発していたとは思わなかった。
あの皇神の技術力ですらアキュラの技術力の前には霞んでしまうだろう。
……彼は間違いなく天才であり、
その上で僕には想像も出来ない程の努力を重ねているのが分かる。
戦闘訓練と兵器開発を両立させているのだ。
それは生半可な物では無い。
だけど、僕には分からない事がある。
ここまで能力のあるアキュラが何故能力者を化け物と呼び、殲滅しようとしているのか…
一体何がそうさせているのだろうか?
アキュラは僕が何を言っても能力者狩りを辞めるような事はしないだろう。
あの目は憎悪に満ちていたが、同時に自身がどうなろうともそれを成そうとする意思を感じた。
……だが、そんなものは僕にとってはどうでもいい。
アキュラは…奴はシアン達の心を傷つけた。
奴は僕の事を生かしては置けないと思っている様だが、それは僕も同じ事。
奴が能力者を化け物と言う様に、僕も奴の事を化け物だと思っている。
化け物が化け物たる理由に
そう考えていたら、アキュラはロロの試験運用を開始するようだ。
その時返事をしたのロロの声はエフェクトが効いていたが、
前の世界の僕の妹の
(ロロと聞いてもしやと思ったけど…
こうして声が似てるとどうしても
…初見だったら動揺して要らぬ隙を晒していただろうな
しかし、あの盾…エクスギア、それとロロが放った疑似第七波動…
あれは当たれば十分僕ら能力者を殺傷しえる
しかもこれは
この世界では未だ使ってはいないけど…
僕の切り札のSPスキル、
本当に厄介な相手だよ、お前は…)
そうして疑似第七波動の試験運用まで進んだところで、
アキュラに仕えているであろうメイドの恰好をした女性から通信が入った。
…心なしかシアン達から恥ずかしそうな、それでいて性欲に満ちた想いが伝わってくる。
恐らく彼女が着ているメイド服に反応しているのだろう。
どうやら彼女は僕らの潜入の痕跡を見つけた事をアキュラに報告している様だ。
この事に僕もシアンも驚きを隠せない。
(……っ! どうしてバレた!?
……この世界、「メイドだから」が通用する世界なのか!?
いや、そんな事よりも…
アキュラはロロのビットを使って僕の事を部屋をくまなく探している
これでは見つかるのは時間の問題か…)
僕はシアン達にタイミングを見計らって歌をお願いし、脱出する段取りを整えた。
そしてビットが僕の展開する「力」の防壁に接触し、とうとう居所がバレてしまった。
「……まさか本当に潜んでいたとはな、「ネームレス」
姿を現せ! さもなくばここで貴様を討滅する!
ロロ! 戦闘モードは維持しているな?
アロガントファングのレーザーを何時でも撃てるようにしておけ!
あれが今持つ武装の中で一番弾速が早い!」
『…………』
「…どうした!? ロロ!!」
『……っ! ゴメン! アキュラ君、
「ネームレス」とぶつかったビットとの位置計算が遅れちゃったんだ!
大丈夫、アロガントファングは何時でも撃てるよ!!』
「よし…! …さっきの実験を見たはずだ
貴様が動くよりも、このレーザーはお前を穿つだろう
大人しく観念して出てきたらどうだ? ネームレス」
……本来ならば姿を見せる必要は無い。
このままシアン達の歌を受けて逃げればいいのだから。
だけど…アキュラには借りがある。
今のシアン達の心を足手纏いなどと言い傷つけた、その借りが。
僕は光学迷彩を解き姿を現した。
「姿を現したか…ロロ、奴の
『ネームレスから
「姿を現してくれて悪いが、例え
生かして返しはしない…せめてその綺麗な顔を傷つけずに神の御許に送ってやろう」
『綺麗な顔って…アキュラ君、まさかああいうのが好みなの?』
『意外ですね…あの堅物のアキュラ様がその様な反応を示すとは…』
「ロロ、ノワ、こんな状況で冗談を言っている場合では…」
うまい具合に勘違いしてくれたか。
…この今行われているやり取りを見ていると、前の世界の二人がチラついてしまう。
この世界では関係ないはずなのに…
だが、僕が姿を現したおかげで油断している様だ。
……仕掛ける!!
(シアン、モルフォ…僕に
『『行くよGV!! 一発決めちゃって!!
「三人とも随分と仲がいいのね? …あまり油断するのも良くないと思うけど」
そう僕は三人に語り掛けながらアキュラに急接近する。
その瞬間、ロロからレーザーが放たれるが紙一重で回避、
アキュラの胸に僕の掌底を叩き込み、ロックされたドアを蹴破った。
施設内のセキュリティが襲い掛かるがそれらを悉く回避し、僕はアキュラの研究施設から脱出した。
…流石に次来た時はもう出払っているだろうな。
今回の情報は実に貴重で重要だった。
…この情報の取り扱いには気を付けないといけない。
下手にこの技術を拡散すれば今の世界情勢では碌な使われ方はしないだろう。
後にアシモフのみにこの情報を開示し、アシモフも僕と同じ結論に達した。
…フェザーがこの技術を利用して戦力を大きく引き上げる事も出来るだろう。
だが、フェザーも出来る事は当然皇神も出来る。
故に結局現状維持が一番であると言う事となり、
今回得た情報は僕とアシモフの心の中にしまい、全て破棄する結論を僕らは出した。
…そういった事が話し合われる前の星が綺麗な夜の帰り道。
僕は潜入捜査で使っている黒のゴシックドレスから、
周りに溶け込める女物の服装に「力」を使って瞬時に着替える。
(早くフェザー…アシモフに報告してシアン達の所に戻らないと…
今日は昼頃にミッションに出たから、今なら夕食に間に合うはず
シアン達の作る料理は日に日に上達してるから、食べられないのは辛い
…これが胃袋を掴まれた感覚なのだろうか?)
そうして人込みに紛れフェザーの施設に戻って報告しに行こうと思った時、
何やら裏路地から騒がしい声が響いてきた。
それは下種である事を隠そうともしない男と思われる声、
そして二人の女の子の声が聞こえてくる。
「ダメじゃないか、こんな時間に女の子二人で出歩いちゃあ…
俺みたいな悪~~い能力者に乱暴されてしまうよ?」
「
「大丈夫です、はたちゃん …貴方だけでもここから逃げて下さい 私は大丈夫ですから」
「アリスちゃんを見捨てて逃げるなんて、そんなの出来ないよ!!
私には何も出来ないけど、せめて大きな声を上げて誰かに助けを呼ぶことくらいなら出来る!!
……お願い!! 誰か、誰かアリスちゃんを助けてぇ!!」
「こんな裏路地で助けを求めても誰も来やしないさ!!」
「……っ! いやぁ!!」
「……っ! はたちゃん!!」
裏路地を覗いてみると犯罪歴のありそうな能力者の男が二人の女の子を捕まえ、
良からぬ事を企んでいる様だ。
辺りにはMMORPGで有名な
「セプテンベル・ヒストリア」の攻略本やファンブック等が一面に散らばている。
…このゲームのファン感謝祭がこの辺りで行われる事をジーノから聞いた事があった。
その帰り道を狙われたのだろう。
実際、感謝祭が終了して丁度の時間帯なのだ。
…あの男の能力は簡単な金属を操る能力の様だ。
捕まっている二人の女の子の四肢がその金属によって拘束されている。
…この風景はこの国だけでは無く世界中の何所でも起こりうる光景だ。
それこそアキュラの能力者に対するあの憎悪にも理解出来てしまう。
こんな事をする一部の能力者が居るからこそ疎まれ、恐れられ、迫害されるのだ。
この被害者全てを僕が救えるとは思わないし、思えない。
でも目の前で起こって、僕の手が届く範囲に助けを求める声が聞こえたと言うのなら…
『『GV!! あの子達を助けなくちゃ!!』』
「…………あぁ!! 目の前で起こってる以上、見捨てる訳にはいかない!
(迸れ
無垢なる少女達を救う為の導きの光となれ!!)
そんな事は無い!! その助けを求められて、私はここに居る!! ………はぁぁぁぁぁ!!!」
僕は男を強襲し、顎に掌底を当て気絶させ二人の女の子達を救出するのだった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
追記
※二人の少女の件について
はたちゃんとはCUTOUT「シアン編」に登場する、
原作のシアンの学校のクラスメイトで友達の旗乃というキャラクターです。
持ち前の明るさと人当たりの良さで、ムードメーカー的ポジションに収まっていますが、
何かといい加減でトラブルメーカー的な存在でもあります。
そして無類のゲーマー女子でもあります。
なお、「セプテンベル・ヒストリア」もこのCUTOUT「シアン編」に登場するゲームです。
アリスちゃんについては…イッタイダレナンダロウナー