【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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Chapter:幻夜

真夜中の(フェザー)の施設に踊る愛欲の蠍
色惑う夢幻鏡(ラストミラージュ)
狂う色欲を追う最中、蒼き雷霆(アームドブルー)夢幻鏡(パンテーラ)夢想境(アリス)の対峙を目撃する



第四十五話

 エリーゼのミッションの詳細な報告終えてから一か月たったある日の夜更け――

ランニングのノルマ終え、夕食の鍋料理を食べ終えて後片付けをし、

台所で椅子を使って高い所の収納スペースに鍋を戻そうとしたシアンがバランスを崩し、

それを僕が庇った結果、シアンが僕を押し倒す形となった。

 

「……シアン、大丈夫? 怪我はない?」

「あぅ…GV、助けてくれてありがとう 私は大丈夫

それよりも、GVの方こそ怪我は大丈夫なの?」

「僕の方も大丈夫 何ともないさ」

『…………(この状況、チャンスかも…頑張りなさいよ、シアン♪)』

 

 モルフォが何を思ったのかシアンの中に戻り、僕とシアンは二人きりになった。

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 …シアンが僕に全身を委ねている形になっている。

 そのお陰で僕はシアンの温もりを直に感じる事が出来る。

 …僕はその温かさをもっと感じたいが為にシアンの背中を片腕で抱きしめ、

もう片腕の(てのひら)で顔の頬に優しく触れる。

 あの時シアン達を助け出してもう九か月…

シアンは体作りをずっと続けて来たお陰で最初の頃と比べて体力も付き、

背も伸び、肉付きも良くなってどんどん可愛く、綺麗になっていった。

 もう最近では家に居る時はそんなシアンの事ばかり考えている。

「GVの頭の中身、九割くらいシアンちゃんで構成されてるんじゃないのか?」

とあの時ジーノが言った時、思わず本音が出てしまった程だ。

未来のシアン達もそんな僕を見て微笑ましい感情を送ってくれている。

 

「…………(それにしても…温かいな…この温かいシアンの体温を、僕はもっと感じたい)」

「…………(GV…温かいなぁ…私を抱きしめている(たくま)しい片腕も、

私の頬に触れている優しい掌も…GVの温もり…もっと感じたい

もっと、もっと……)」

 

 シアンもそう思っているのだろう、シアンの両腕が僕の首の後ろを通り、

完全に僕に体を委ね、抱きしめる形となった。

 僕も頬にあった片腕をシアンのサラサラで綺麗でいい匂いのする長い髪を、

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 そして僕はシアンの耳元でその感想を甘く(ささや)く。

 

「温かくて、とても心地いいよ、シアン…

もっと、もっとシアンの事を感じたい…」

「ああぅ……! GV…もっと私の髪を撫でて…

もっと貴方の体温を感じさせて…もっと私の耳に優しい言葉を囁いてぇ…

(GVに髪を撫でられるの、凄いよぉ…

撫でられる度に体全体に電気が走ってビクビクってなっちゃうの…

それに耳元でそんなに甘く囁かれたら、頭の芯がトロトロになっちゃう…

お腹の下の辺りがキュンって切なくなっちゃうよぉ…)」

 

 シアンの両足が僕の両足と絡み合い、僕に全身を擦り付ける様にして甘えている。

 そんなシアンが愛おし過ぎて、僕は思わずシアンとの位置を転がる様にして変更し、

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 僕はシアンの表情を、全身を見た。

 目を潤ませ涙が流れており、(とろ)け切った表情で口を開け、

その口角(こうかく)からは涎が流れ落ち、長い髪が床に散らばる様に広がっている。

 服も心なしか(はだ)けており、下着も開けた隙間から見えており、

魅惑的で扇情的な姿を僕に見せつけていた。

 …もう完全にまな板の上の鯉と言っていい状態だった。

 そんなシアンが僕にはとても魅力的で、愛おしくて…

もう滅茶苦茶にしてしまいたい衝動を抑える事が出来なくなってしまった。

 

「綺麗だよ、シアン…」

「GV…いいよ…私の事を好きにしても…ううん、好きにして…

私の事、GVの色で染めて欲しいの…」

「そうしたいけど、その前に言わなきゃならない言葉があるんだ

……聞いてくれるかい? シアン」

「ぁ……ふふ、そうだね

GV、その言葉を私に聞かせて…頭の奥に刻み付けて…その言葉を絶対に忘れられない様に」

 

 僕はシアンと目を合わせ顔をゆっくりと縦に振り、なけなしの勇気を振り絞る。

そしてその言葉を紡ごうとしたその時、フェザーから…モニカさんの能力による緊急連絡が入った。

 

『こちらフェザー! GV、応答…を…』

「…………(また、このパターンなのか…しかも今度はモニカさんに目撃されてしまった)」

「…………(もう少し、もう少しでGVの告白の言葉を聞けたのに…

私の身も心も捧げられるチャンスだったのにぃ~~~~! 酷いよ、モニカさん!!)」

『…………(何となく嫌な予感がしてたけど、どうしてこんな時ばっか当たるのかしら…

もう! 本当にあと一歩だったのに!

上手くいったらアタシも混ざってGVに好きにしてもらうつもりだったのに!!)』

 

 僕とシアンはモニカさんに対して無言の抗議を行う。

 モニカさんもばつの悪そうな、申し訳なさそうな顔をしていた。

 …元はと言えば緊急連絡をよこす程の事態を引き起こした奴が悪いんだ。

 モニカさんは悪くない。

 僕はありったけの気力を振り絞りシアンと離れモニカさんと向き合い、その内容を聞く。

 

『本当にごめんなさいGV、シアンちゃん…この埋め合わせは必ずするから』

「元はと言えばモニカさんに緊急連絡させる程の事態を引き起こした奴が悪いんです

…それよりも、緊急連絡の内容を教えてもらえませんか?」

『えぇ、私達フェザーの複数ある拠点の一部を襲撃されたのよ

丁度アシモフがミッションで抜けているタイミングを突かれてしまったお陰で、

今戦力が足りない状態なのよ』

「なんだって!! それでその襲われているという場所と首謀者は!?」

『GVに分かりやすく言うと、最近とある能力者を保護したでしょう?

名前は確か…「アリス」そう、アリスちゃんを保護した拠点が襲撃されているの

首謀者は宝剣「小烏丸(コガラスマル)」の所有者で夢幻鏡(ミラー)を持つ能力者、パンテーラ

…貴方が七宝剣の能力者の中で最も警戒していた相手よ

幸い、アリスちゃんや他の保護した能力者の人達が巻き込まれている訳では無いわ

それが確認出来ているのが不幸中の幸いだけど…』

「パンテーラだって…!」

『ええ、今パンテーラが自身の能力者狩り(ハンター)部隊を率いてそこを襲撃しているの

…今はまだGVがくれた事前情報のお陰で先に現場に向かったジーノや、

現地のフェザーの部隊が何とか持ちこたえているけど、

このままでは全員戦線離脱…いえ、全滅してしまう可能性のが大きいわ』

 

 ジーノは普段の態度は軽いが、その戦闘技術に関してはフェザーでもトップクラス。

実際に僕も能力無しの純粋な格闘戦や射撃戦ではまるで歯が立たない程なのだ。

 パンテーラは事前情報を知ったそんなジーノを相手に其処まで追いつめる程の能力者…

 やはりあの時の僕の即時離脱の判断は正しかった。

 

「…モニカさん、その緊急ミッションを受けさせてもらいます」

『ありがとう、GV 早速で悪いけど急いで現地に向かって欲しいの

今からは時間との闘いになるわ

ルートは私が今データを送ってるから、それを参考にして急いで向かって』

「了解! …ゴメン、シアン 僕は行かなくちゃ…

もう夜も遅いから、シアンはもう眠るんだ」

「ううん…私、起きてる

起きて、GVの帰りを待ってる…ずっと待ってるから」

 

 シアンが僕の顔を真っすぐに見つめている。

 この目をしたシアンはもう何があってもその意思を変えないだろう。

 

「分かった、なるべく早く戻る…行ってくるよ、シアン」

「うん…行ってらっしゃい、GV

貴方の無事をモルフォと祈りながら、待ってるからね」

 

 シアンのこの言葉を聞き、僕は「力」を用いて瞬時に装備を整える。

装備の内容は前回のエリーゼ救出ミッションの時とほぼ同じだ。

 但し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 …今回のミッションは未来のシアン達の(チカラ)も借りるつもりだ。

 相手はあのパンテーラである以上、

フェザーの目があるからと言って出し惜しみしては居られない。

 僕が…僕達が持つ全力で、パンテーラを迎え撃つ!!

 そう僕は決意して、今襲われているフェザーの施設に向かうのだった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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