【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第四十九話

カレラを撃退したGVは宝剣の破片の回収をフェザー部隊の一部の人にお願いし、

パンテーラと交戦中であろうジーノさんへの救援に向かった。

 その道中で能力者狩り(ハンター)部隊と交戦しつつ、小さな宝石を拾い先を急ぐGV。

 そしてジーノさんが居ると思われる部屋の前で、血にまみれた女性隊員…

アリスちゃんの保護者の女性が既に事切れていた。

 一か月前に会った時はあんなに元気にしていた人だったのに…

GVもこの女性を見て、歯を食いしばりその内に秘めた怒りを抑え込むので必死だった。

 …この女性は半年前からアリスちゃんの保護者を買って出ており、

GVがアリスちゃんと知り合って以来、

ミッションの帰りの際に少しだけお邪魔する事が度々あった。

 …お邪魔する際は例によって女装した姿だったけども。

 その時のアリスちゃんとこの女性とのやり取りを見ていた私達は、

転生前で見たGV達の家族…本物の家族なのでは無いかと錯覚した。

 それはもうこの二人が親子なのだと言われたら、

何を当たり前な事をと言ってしまう程に。

 そんな人が、ここで亡くなってしまったのだ。

 

『酷い…全身に何かで穿たれた痕が残ってる…』

『これは銃なんかの弾丸で出来る痕じゃないわね

それにこの第七波動(セブンス)残滓(ざんし)…間違いない、これはパンテーラの第七波動(セブンス)ね』

「…………(これはパンテーラの仕業なんだね? シアン、モルフォ

……アリスちゃん達保護された能力者は皆無事だと聞いていたから、

貴女も無事だと思っていたのに…)」

 

 この徹底的に、まるで汚らわしい物を、憎らしい物を破壊するかのような跡…

あのパンテーラは美しいとか愛とか普段言っているにも関わらず、

こんな惨たらしい惨状を引き起こしている。

 パンテーラならば、もっとスマートに済ませそうだと私達は思った。

 …GVは彼女の亡骸に対して「力」を使った。

 彼女の血だまりは、穿たれた痕は消え失せ、破れたフェザーの制服も元の姿を取り戻した。

 だけど彼女は目を開ける事は無かった。

 …GVも蘇生は無理だと最初から諦めていたのだろう。

 せめてあの醜い姿を、アリスちゃんに見せないようにする為の配慮なのだと私達は思った。

 そうしてGVはジーノさんの居る部屋に突入し、信じられない光景を目の当たりにした。

 パンテーラとアリスちゃんが互いに睨み合っていると言う光景だ。

 その部屋の内部は凄まじい戦闘痕が残っており、その激しさを物語っている。

 特に気になるのが部屋の彼方此方(あちこち)に刺さっているカードと剣。

そして巨大な何かで叩きつけられたような跡が無数にある。

 GVは部屋の隅に居たジーノさんからこの部屋で何があったのか小声で尋ねた。

 

(ジーノ…無事で良かった お前なら必ず生き残ってくれると僕は思っていたよ

…所で、この状況は一体どういう事なんだ?)

(GV! 救援助かったぜ! そりゃあ俺は無敵のジーノ様だからな

こんなの余裕…でも無かったぜ…済まん、

実はかなりギリギリというか、ほぼアウトだったぜ…

…実は奴のSPスキルを食らって瀕死だったんだが、

鏡から突然出て来たアリスちゃんに助けられてな)

(そういえばジーノ…その服がボロボロなのはそれが理由だったのか)

(あぁ…それよりもGV、落ち着いて聞いてくれ、

アリスちゃんは…あのパンテーラのコピーで、

ネームレス…お前を探る為のスパイだったんだ)

 

 ええええええええええ!!!!!!!

アリスちゃんがあのパンテーラのコピー!? なによそれ!!

じゃあ今までGVに見せていた態度は全て演技だったの!?

ここを襲われた理由もアリスちゃんの仕業なの!?

あの時の私達の誕生日でのあのGVに対する態度も演技だったって言うの!?

 

(…それは本当かい? ジーノ)

(あぁ、間違いない…間違い無いんだが…

問題なのは、あのパンテーラがここを襲撃した目的が、

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それにアリスちゃんはお前の情報をパンテーラに報告していない…

それ所か俺の傷を治してくれたし、その動機にも納得が出来た

…彼女は恐らく、パンテーラに復讐をしようとしているんだろうぜ

親代わりだったあの人の事をパンテーラに尋ねていたからな

…表面上はその見た目に合わない冷静さを出していたけど、

内心(はらわた)煮えくり返ってるはずだぜ

その理由はGVも道中で見ただろ? 

…すまねぇ、俺が来た時は既に彼女はあの状態だった)

(…コピーとしてアリスが送られたのは本当だけど、

アリス本人は今の所白である…そういう事かな? ジーノ)

(おう、この俺の話の裏はモニカが取ってくれてるぜ

何しろ俺がリアルタイムでこの情報を送りつつ一緒に聞いていたからな

モニカの新しい能力、便利だよなぁ

…お前が来るまでの間、お互いすげえ能力の応酬だったぜ

部屋にあったカードに剣、でっかい何かで叩きつけた痕を見ただろ?

アレ全部アリスちゃんがやったんだぜ?

俺はこうやって部屋の隅に居たから何とかなった…

いや、余波は普通に飛んできたけど、

アリスちゃんの張った結界に守られたお陰で無事だったぜ

…俺より年下の女の子に守られるっていうのは男として恥ずかしいけどな…

まあその代わりに俺はこうしてモニカに情報を送って、

アリスちゃんの居場所を守ってるんだけどな

…GV、頼みがあるんだが、シアンちゃんの力を借りたいんだ

あの記憶を映像化出来るやつ、あれを俺に使って欲しい

それとモニカに送った情報を合わせればアリスちゃんの身の潔白を証明出来るはずだ)

(確かに、アリスが白である証拠をモニカさんに送ればアシモフの目にも止まる

それにジーノの記憶の映像を上乗せすれば…)

 

 …そっか、アリスちゃんは裏切っては無かったんだね。

 私達はこの事に安堵した。

 何故ならあの二人の家族としてのやり取りを偽りの物だったと認めたくなかったからだ。

 …でもGVは渡さないからね? アリスちゃん。

 そして部屋に侵入してきたGVにも気が付かない程に睨み合っている二人に目を向けた。

 パンテーラの方はあの常に余裕だった態度が無くなっており、

油断無くアリスちゃんを睨みつけている。

 アリスちゃんの方は対照的にその表情に余裕の笑みを浮かべていた。

 …だけど、その眼だけは違った。

 その眼はまるでパンテーラを射殺さんばかりの凄まじい怒り、そして憎悪を感じた。

 …半年だけとはいえアリスちゃんは家族を、お母さんを得ていたのだ。

 それをパンテーラが理由で失ったのであるならば、あの眼にも納得が出来る。

 そしてGVは一通り事情をジーノさんから聞き終え、睨み合っている二人の前に出た。

 

「…お前がパンテーラ…そして君がアリスだね?」

「…ん? おやおや、何と愛らしい少年か! …蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルトだね?

君の噂は良く聞いているよ!

そんな君が私のこの美しき名前を知っていてくれたとは…愛を感じるよ!

…普段は髪をおさげにしていると聞いていた…それを解いた君の姿は実に愛らしい!」

「貴方が蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト…お姉様から噂はかねがね聞いておりますわ」

「…アリス、ジーノから話は聞いている…彼を助けてくれてありがとう

君が居なかったら僕はジーノの救援に間に合わなかっただろう」

「ガンヴォルト…いえ、私は当然の事をしたまでです

お礼を言われるような事ではありません

それに…この惨状は私が引き起こしたような物

だから私は…もう…ここには…いられない…いられないのです…」

 

 アリスちゃんの目から涙が零れ落ちる。

 フェザーの施設が襲われた理由が自分にあると思っているからだろう。

 あの余裕を浮かべていた笑みが一気に消え去り、その内に秘めた感情が表に出て来たのだ。

 そんなアリスちゃんにGVは近づき、彼女を抱きしめた…って、

GV!? 何をやってるのよ!! それにアリスちゃんの頭を撫でる行為を今すぐ止めなさい!!

 あぁ…アリスちゃんがあっという間に顔を赤くして女の顔になっちゃった…

 これが切欠でアリスちゃんはGVの事が好きになったのね!!

 もう!! GVのバカ!! この埋め合わせは絶対にしてよね!!

 

(……ゴメン、シアン、モルフォ、流石に放っておく事は出来なかったんだ…

必ず埋め合わせはする…だから許して欲しい…)

『…ミッションが終わったら私達の事、一杯めちゃくちゃにして?

そうしたら許してあげる』

『そうよGV! アタシ達の事、一杯虐めてもらうんだから!!』

(二人がそれを望むなら僕は構わないけど…)

「おやおや、その裏切り者の事を信じるのかい?

君は実に愛らしいお人よしの様だ…」

「…生憎だけど、僕はもうジーノからは事情を聴いている

お前の言動に惑わされるつもりは無い」

「そのやり取りも演技かもしれなのにかい?」

「もしそれが演技ならば、僕らの見る目が無かっただけの事だ」

「…少年、君とは是非心行くまで愛を語らいたかったが…

私もこの裏切り者との戦闘で大分消耗してしまってねぇ…

ここは愛の逃避行とさせてもらうよ!!」

 

 そうしてパンテーラは自身を足元に出現させた鏡に沈め、GV達の虚を突き撤退した。

 …GVに抱きしめられているアリスちゃんから、私達の第七波動(セブンス)を感じる。

 アリスちゃんはパンテーラのコピー…言わば第七波動(セブンス)の塊と言ってもいい。

 あの時アリスちゃんがGVの「力」の結界の内側に偶然潜り込んだ際、

私達の第七波動(セブンス)の波動を受けて混じり合ったのだろう。

 …以前アキュラが従えていたあの女の子…確かロロちゃんだっけ、

あの子からも私達の第七波動(セブンス)を感じた。

 あの子の予備動力源に私達の第七波動(セブンス)が込められたガラス片が使われているからだ。

 あんなほんの少しの残滓で予備とはいえ動力源として機能すると言うのなら…

 アリスちゃんが引き起こしたであろうこの部屋の惨状に納得が出来る。

 …私達の持つ力は、私達が思う以上に危険な力なのかもしれない。

 私達は隠蔽と力を抑える訓練をより一層頑張る事を心に決めたのだった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ノワ、奴を補足出来たか?」

『はい、アキュラ様 パンテーラはフェザー施設付近の、

私達が想定した逃走ルートを使うようです』

「そうか…ノワ、しくじるなよ?

これはあの能力者(バケモノ)を始末するチャンスだからな」

『了解です、アキュラ様…私の狙撃で動きを止めたら、

アキュラ様は既にチャージを完了させている、

H(ハート)-ブレイザー高精度狙撃モードで仕留めて下さい

……行きます!!』

 

 そうしてノワは奴…パンテーラを名乗る能力者(バケモノ)に対して狙撃を試み、見事に命中した。

 

「ぐわあああぁッ!!」

「よくやったノワ! …召されよ能力者(バケモノ)…神の御許へ

H(ハート)-ブレイザー高精度狙撃モード…

貴様のその幻惑、俺が討滅する!

真実の光よ! 奴の幻惑を暴き、浄化せよ!」

『ヘンタイさんは、これでサヨナラだーーー!!』

「バ…バカな…ワタシの愛が…こんなところで…!?

あぁ…しかし…この痛みは…どうだ…この死すら…愛おし…い……」

 

 そして俺は止めを刺すべく既にロロにチャージを完了させていた、

H(ハート)-ブレイザー高精度狙撃モードで奴を穿ち、浄化した。

 俺は浄化を済ませた後へと赴き、奴を仕留めたのを確認出来た。

 

「……討滅完了…今回は実に実りのある日だった

宝剣の能力者がこの世界から二人も消えたのだからな」

『そうですね、アキュラ様

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あと少しで現地のフェザー部隊に先を越されるところでしたが…』

『ねぇ、アキュラ君…』

「どうした、ロロ? 元気が無いようだが、何かシステムに異常でも出たか?」

『システムは問題ないさ 僕が言いたいのは…

あのヘンタイさんの能力因子のデータ、僕にも登録するんでしょ?』

「…能力者(バケモノ)共を殲滅する為だ、我慢してもらうぞ、ロロ」

『…………しょうがないなぁ、アキュラ君は

(アキュラ君を守る為だから、このヘンタイさんの力、受け入れてあげるね

だから感謝してよね! アキュラ君!!)』

 

 そうして俺達はフェザー連中に気が付かれる事も無く、この場を後にした。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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