私が治癒を施したジーノさんは壁際に退避していたので、
先ずは私達との戦いの余波に巻き込まない様に結界を展開します。
「光の守護よ…ジーノさんを守って下さい…」
そして私はまず様子見で私の体の全方位に無数のカードを創造、展開し
そんな私の攻撃を
…ですがいくら幻惑で惑わそうと私は貴方の記憶も経験も持っています。
故に、その回避の癖だって把握しています!
「新しい力を得て舞い上がっているみたいだねぇ…けど、それではこの美しい私には届かない!」
「それはどうでしょう? …受け取りなさい!」
私がそう言った瞬間、放った全てのカードに命が芽吹き、
そんなカード達を
自身に当たりそうな物だけを狙って的確に撃ち落としていきます。
ですがこれ程の飽和攻撃、全てを躱し撃ち落とすのは無理でしょう?
「く…やってくれますねぇ…!」
「流石は私…侮れない愛を感じるわぁ」
「…そのくらい想定の範囲内です…剣よ、舞い上がり敵を刺し貫きなさい!」
無軌道に部屋全体を穿つようにそれぞれが突き進んでいきます。
これは放った私自身にも剣の機動は把握出来てはいません。
故にこの剣の内の数発を
そしてその事に気を向けている間に私は複数個所にカードを設置。
仕込みを終わらせます。
…
あの時言ったように、優奈お姉様の事の裏を取ろうとちゃんと頑張っていたのですよ?
貴女に出来損ないと言われたのだって別に気にしてはいないし、
無能力者達に惑わされたのも事実であると私は思っています。
ですが…貴女は、あの人を…お母さんを手に掛けた…!!
朝起きて目を覚ましたら用意されている朝食の有難さと美味しさを!
「行ってらっしゃい」って言って送り出してもらえたあの優しさを!
「おかえりなさい」って言って私を迎えてくれたあの温かさを!
今なら私の能力でお母さんを蘇らせる事も出来るでしょう!!
ですがその蘇ったお母さんは、私のイメージが色濃く反映されたまやかしに過ぎないのです!!
そんな私の大切なお母さんを、貴女は私から未来永劫手の届かない場所へと叩き落したのです!!
絶対に許せない…!! 憎い…!! 貴女が憎くて、私はもうどうしようも無いのです!!
私を決定的に壊したのは貴女自身なのです!! その報いを…お母さんの仇を取らせてもらいます!!!
この瞬間私は
私は仕込んだカードを質量のある鉄槌へと変換させ二人に対して叩きつけ、
そうして動きを止めた二人の
この歌は私の本体、そして「エデン」に対する反逆の決意を示す
そんな私のこの想いを…歌を受け取りなさい!!
「穿ちなさい…カードに秘められし鉄槌よ!」
「ゴハ!! この苦しみ…愛を感じるよ…!」
「あぅ!! この痛み…痛みもまた…愛の形…!」
「動きを止めましたね? これでチェックメイトです…!
埋葬の歌を奏でよう 偽りの楽園に縋る哀れな巫女に 私の憎しみと憎悪を込めて…!
行きますよ…
「「……! めくるめく! 愛の宴!
愛の姿は万華鏡 惑い見えるは走馬灯 ここはそう、境界なき鏡界!
…その愛の無い歌を止めなさい!
私の憎しみと憎悪を込めた呪われし歌がパンテーラ達を襲う。
そんな歌を歌っている私に対して、かつての私のSPスキルでパンテーラ達は迎え撃つ。
互いのSPスキルが衝突して私の歌の余波が女のパンテーラに直撃。
鏡が砕けたかのように崩れ落ち、消滅した。
私自身も余波を受けたけれど、
能力を全開に発動させている今の私に傷など付けられないのです。
「あぁっ! 愛は…散りゆく……」
「これで一人目…さあ、次は貴方の番ですよ?」
「これが美しい私の成長した能力となるはずの力…!」
そうして私達は奇しくも最初の立ち位置に戻り、お互い睨み合いの形に戻りました。
そして私が再びパンテーラに攻撃を仕掛ける為にカードを呼び出そうとしたその時、
彼がこちらに向かって来たのです。
その綺麗で靡く長い金髪の髪を持つ彼に、一瞬優奈お姉様の影が重なりました。
「…お前がパンテーラ…そして君がアリスだね?」
「…ん? おやおや、何と愛らしい少年か! …
君の噂は良く聞いているよ!
そんな君が私のこの美しき名前を知っていてくれたとは…愛を感じるよ!
…普段は髪をおさげにしていると聞いていた…それを解いた君の姿は実に愛らしい!」
「貴方が
「…アリス、ジーノから話は聞いている…彼を助けてくれてありがとう
君が居なかったら僕はジーノの救援に間に合わなかっただろう」
「ガンヴォルト…いえ、私は当然の事をしたまでです
お礼を言われるような事ではありません
それに…この惨状は私が引き起こしたような物
だから私は…もう…ここには…いられない…いられないのです…」
この惨状は私が引き起こしたような物と口にした瞬間、涙が勝手に溢れてきました。
そう、これは私が引き起こした物…
お母さんが死んでしまったのだって元はと言えば私が悪いのです。
そしてもう私は学校に通う事も、はたちゃん達とも会う事は出来ないのでしょう…
この涙は、それが理由で溢れてきているのでしょう。
そう思っていた時、彼は…ガンヴォルトは私に近づき、私を抱きしめたのです。
…私は今、ガンヴォルトに…
その抱擁はとても優しくて…温かくて…そして私の頭を撫でるその手付きに、
孤児院時代の私達の面倒を見てくれていた経営者だったお爺さんの手付きを思い出しました。
(間違いない…
現にこうして抱き着いた事でまたあの能力者の
…お姉様も
何だか私達、似た物同士みたいで嬉しいです
それにこの
今感じている波動……
あの時はまだこの波動の正体が分からなかったのですが、
今それが分かった以上、貴方がお姉様なのは紛れも無い事実…
もしかして私も、
それにしても…この頭を撫でてくれているこの手付き…心地いいです)
私はお姉様…ガンヴォルトの顔を間近で見ました。
その整った顔立ち、金色の長い髪、蒼い綺麗な瞳…
どうしてなのでしょう? ガンヴォルトの顔を見ていると、
私の顔が何だか熱く感じるのです…それに、頭がぼーとして、何も考えられなくなるのです。
あの時、お姉様を始めて見た時と同じ…いいえ、それ以上の想いが溢れてくるのを感じます。
これが異性に対しての恋…そして愛なのでしょうか? とても甘美で、心地いいです…
そんな私を後目に、ガンヴォルトとパンテーラの会話が続いていきます。
「おやおや、その裏切り者の事を信じるのかい?
君は実に愛らしいお人よしの様だ…」
「…生憎だけど、僕はもうジーノからは事情を聴いている
お前の言動に惑わされるつもりは無い」
「そのやり取りも演技かもしれなのにかい?」
「もしそれが演技ならば、僕らの見る目が無かっただけの事だ」
「…少年、君とは是非心行くまで愛を語らいたかったが…
私もこの裏切り者との戦闘で大分消耗してしまってねぇ…
ここは愛の逃避行とさせてもらうよ!!」
そうしてパンテーラは私達の前から姿を消しました。
その後、私はこの部屋の前に居たお母さんの姿を…亡骸を見ました。
その姿は傷一つ無く、とても死んでいるようには見えず、ただ眠っている様に見えました。
(GV、こりゃあ一体どういう事だ?
彼女は血だまりに沈んで、全身に穿たれた跡があったはずだぜ?)
(アリスにそんな姿を見せたくなかったんだ、ジーノ
だから「力」を使わせてもらった…あまり褒められた事では無いのは分かってる
でも、あんな光景を見せるのは…)
「……お母さん?」
私は駆けより、お母さんに声を掛けました。
「お母さん、起きて下さい」
お母さんは起きません。
「お母さん、目を開けて下さい」
お母さんは目を開けません。
「……お願い! お母さん!! 返事をして!!! 居なくなっちゃやだ!!!! 居なくならないでぇ!!!!!」
「「…………」」
私は二度と目を覚まさないお母さんに縋りつき、
涙でお母さんの服を濡らし、慟哭を上げました。
これは後に聞いたのですが、お母さんは本来血まみれで全身に何かで穿たれた痕があって、
それをガンヴォルトが私の為に癒し、お母さんを綺麗な姿で会わせてくれたのです。
…その後の私はガンヴォルト…GV、ジーノさん、モニカさん、
そしてフェザー創設者のアシモフさんの尽力によって、
引き続き学校へと通い続ける事を許可されました。
その代わりに私はフェザーへと入隊する事となったのです。
…これは私の予測なのですが、私を裏切り者として放逐するよりも、
近くに置いた方がまだいいと判断されたのでしょう。
しかし気になる事があります。
パンテーラの戦死の情報が入った事です。
恐らくですが私がパンテーラの事情を話す事による情報漏洩を危惧して姿を消したのでしょう。
…今の私の保護者なのですが、
ジーノさん、モニカさん、そしてアシモフさんが交代交代で私と過ごすようになりました。
時々、GVも来てくれます。
そうして家で過ごす際、色んな人が出入りするようになって賑やかになりました。
…でもその中にお母さんがいません。
私はせめてクラスの皆…そしてはたちゃんを守る事を誓い、
今日の一日を終え、眠りに付くのであった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。