【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第五十五話

 GVの拠点に来て、遂に一年が経過した。

 そう、私達にとって待ちに待った時が来たのだ。

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 私はGVに飛行の訓練の成果を見せる為に私の翼を展開した。

 そしてGVの前で自由に空を飛んで見せたのだ。

 そんな私の姿をGVは目を離さず、瞬きもせずに見つめていた。

 私は一通り飛び回ってGVの前に降りた時、GVに抱きしめられた。

 そしてGVから嗚咽を漏らす声が聞こえた。

 GVは私が空を飛べるように私の能力の訓練にずっと付き合って来たのだ。

 その感動も一入(ひとしお)なのだろう。

 

「GV…ありがとう…私はもう一人で空を飛べる

GVが言ってくれたように私の力だけで、自由に飛べるようになったの」

「おめでとう、シアン…僕は…そんなシアンを…見る事が出来て…とても…とても嬉しい…」

「GV…泣いているの? GVは泣き虫さんだったんだね…よしよし…」

 

 私はそう言いながら少し浮き、GVの頭を私の胸に包むように抱きしめ、

GVのきめ細やかで綺麗な聖域とも言える金色の髪を優しく撫でていく。

 その髪はとてもスベスベでサラサラで、まるで女の子の髪のようであった。

 GVもそんな私をさらに強く両腕で抱きしめ、私の胸に涙を零す。

 あの日…物凄く辛そうだったGVをモルフォと一緒に抱きしめて甘やかした日を境に、

GVは私達によく甘えてくるようになった。

 その事が私達はとても嬉しく、

あのGVに振られても諦めていないアリスちゃんに対してのアドバンテージでもあった。

 

(甘えているGVは可愛いなぁ…GVはもっと、私達に甘えてもいいの

…あの時、疲れて眠っちゃたGVの服を脱がした時…GVの体、傷跡だらけだった…

その中にはあの時撃たれた時の傷跡も残ってて…

この沢山の傷跡を見ていると、今までGVはずっと無茶をしてきたと言うのが嫌でも分かるの

だからGVは、私達にもっと甘えて欲しいの…)

 

 そう思いながら私はGVの髪を撫でていく。

 そしてこの状態で私はGVに子守歌を聞かせる様に「あの歌」を歌う。

 本当はモルフォと歌うタイミングを打ち合わせしていたのだけれど、

私の中に居るモルフォからもOKを貰ったのでこのまま歌う事にしたのだ。

 

「~~~~~~~~~~~~~~~♪」

 

 私は目を瞑り、今までGVと過ごしてきた思い出を胸に、

GVに内緒で作曲した「青写真」を歌う。

 GVに私が持つありったけの想いを込める様に。

 今の私の想いがGVの心に深く届く様に、優しく耳に囁きかける様に優しく歌う。

 私のGVに対するあの時から今に至るまでの感謝と、

そしてこれからもずっとGVと共にこの色鮮やかな世界で生きていく事を。

 …私はありったけの想いをGVに優しく歌として伝えた。

 そしてGVにこの歌がどういった経緯で出来たのかを伝えた。

 

「GVは私達の事をとても良く理解してくれていたから、

GVの事を驚かせたくて私は、私達は…この歌をGVの留守中の間だけこっそりと作曲したの

私達のGVに対しての今までの感謝を、そしてこれからもGVと一緒に生きていく事を伝える為に…

この歌のタイトルは「青写真」…GVの為だけの歌なんだよ?」

 

 そう私はGVに伝え、目を開けた。

 その目線の先には、涙でぐしゃぐしゃになったGVの顔が映っていた。

 私の想いが伝わってくれたのが良く分かる、そんな泣き顔だった。

 そんなGVが、私にはたまらなく愛おしい。

 もっと私に甘えて欲しい。

 私は普段絶対に見る事が出来ないそんなGVを見て母性本能が刺激され、

再びGVの頭を私の胸に抱きしめ、涙を流し続けるGVを優しくあやした。

 そんなGVから、私はあるお願いをされた。

 一緒に歌いたいと。

 あの時の景色を見ながら、あの時約束した様に私達三人で一緒に歌いたいと。

 そうGVにお願いされた途端、モルフォが表に出て来た。

 そして私達三人は再びあの景色の見れる場所へ…「(そら)」へと飛んでいった。

 GVは「力」による結界以外、私達に何もしなかった。

 何故ならその必要は無いとGVは分かっているからだ。

 私達はGVと並んで空を目指した。

 GVの(チカラ)を借りずに、私とモルフォの力だけで。

 …自力でたどり着いた空は相変わらず何処までも遠く、何所までも広がっていた。

 そして私達は、こんな空を何所までも飛んでいけるのだ。

 私達の(チカラ)だけで。

 そしてこの場所で私達三人は歌を歌った。

 その歌の内容は様々だ。

 モルフォの持ち歌だったり、

GVの前世の記憶を見せて貰った時に聞いた歌だったりと多種多様だった。

 そんな私達の歌声はこの空に何処までも広がり、響き渡った。

 …その一週間後、私はGVからの告白を受け、遂に身も心も捧げる事が出来たのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 僕は今、夢を見ているのだろうか?

 先ほど僕の前で飛んで見せて戻ってきた時、

僕の前世であの時海で初めて見たシアンの姿と今のシアンが完全に重なったのだ。

 綺麗な紫色の長い髪、女の子と大人の女性の境界線上の年相応の外見、

そして背中の翼の…僕の大好きなシアン色の、あの綺麗な翼が。

 でもそれ以上に、シアンが遂に自力で自由に空を飛べるようになった事の方が嬉しかった。

 その事に僕は思わず涙を流し、嗚咽を漏らしてしまった。

 そんな僕にシアンは再び翼を展開して少し浮き、

僕の頭を自身の胸に押し付け両腕で抱きしめてくれた。

 その柔らかな胸の中を、僕は涙で濡らしていく。

 そんな僕の髪をシアンは優しく撫でていく。

 

(シアンの優しい手付きが心地いい…

それに胸の中が、シアンの体がとても暖かくて柔らかい…

もっと…もっとこうしていたい…)

 

 そうしてそのまま身を任せていたら、「あの歌」がシアンの口から聞こえた。

 …僕はこの歌をこの世界に来たその時からずっと探していた。

 この歌はシアン達が今まで歌ってくれた歌の中で僕が一番好きだったからだ。

 歌のタイトルはあの時の暗黒の空間に居た時に聞いていたので、

探せばすぐに見つかると思っていたのだ。

 だけど、何所を探しても見つからなかった。

 モルフォの歌を片っ端から漁っても見つからなかった。

 モルフォの歌以外の歌も、マイナーとも言える歌にすら手を付けたけど、何所にも無かった。

 あの歌…「青写真」は、今の今まで探してきて、ずっと見つからなかったのだ。

 そんな僕の焦がれていた、待ち望んでいた、

ずっと探していた歌が、シアンから聞こえて来たのだ。

 その歌をシアンはありったけの想いを込めて歌っている。

 僕はその事が良く分かる表情をしたシアンを見ながら聞いていた。

 そんな僕に対してシアンはこの歌の由来を教えてくれた。

 

「GVは私達の事をとても良く理解してくれてたから、

GVの事を驚かせたくて、私は、私達は…この歌をGVの留守中の間だけこっそりと作曲したの

私達のGVに対しての今までの感謝を、そしてこれからもGVと一緒に生きていく事を伝える為に…

この歌のタイトルは「青写真」…GVの為だけの歌なんだよ?」

 

 この言葉を聞いた瞬間、僕の頭が真っ白になった。

 視界が滲んで、前が見えなくなっていく。

 涙が勝手に零れ落ち、僕の意思ではもう止められない。

 何時もは制御出来ている筈の感情が完全に暴走している。

 嗚咽漏らす声が大きくなり、それすらも僕の意思ではどうにもならない。

 …今の僕はとてもシアンの前では見せられない情けない表情をしているだろう。

 そんな僕をシアンは再び抱きしめて、僕の事をあやしてくれた。

 僕はそんなシアンに対してただ只管泣きじゃくり、

持て余す感情を胸の中で発露させ続けたのだった。

 そしてこの一週間後…僕はシアンに対して僕自身の想いを伝え、

シアンはそれを嬉しそうに了承し、僕達は文字通り身も心も繋がった。

 …途中からモルフォも混ざり、色々と混沌としてしまったけど、

僕の蒼き雷霆(アームドブルー)の応用で対応する事でシアン達を満足させる事が出来た。

 その事後、ベッドで一緒に眠っているシアンとモルフォの幸せそうな横顔を見て、

僕はシアンとモルフォの二人と今を生きる幸せを噛み締めたのだった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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