【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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嵐の前の静けさ
第五十七話


 GVがメラクを倒し、七宝剣の能力者の全滅を確認してから一週間。

 この間珍しくミッションの依頼が来ることが無く、

私達はGVと今の私達の情事を只管観察する事となった。

 あの時の私達は半年前から、

そしてGVは十四年前からずっとお預けを食らっている状態だった。

 それがついこの間解禁となり、お互い歯止めを利かせるつもり等無かった為、

GVも今の私とモルフォも只管三人で交わいあった。

 日課であった体作りも年相応となってやる必要が無くなり、空いた時間が増えたのもある。

 この一週間の間、只管重く甘い空気がGVの拠点を支配した。

 

『うわぁ…私、あんなにはしたない表情してたの…?

それにあんなに足を広げられて…いいなぁ…』

『完全にGV専用にされてる…アタシの体全部、GVにマーキングされちゃってるよぉ…』

 

 その光景はそれはもう口には出来ない事で埋め尽くされていた。

 ベッドやお風呂場だけでは飽き足らず、

玄関でも台所でもお風呂場でも訓練所でも所かまわずだ。

 当時の私達は只管GVの事が欲しかったから気にならなかったけど、

こうして客観的に見ると、それはもう恥ずかしい気持ちで一杯になる。

 発情してGVに媚びておねだりしている私達の姿はそれはもう淫らで、

完全に発情した雌その物であった。

 そしてそんな今の私達とGVを窓の外から観察している存在を、

アリスちゃんを私達は発見した。

 

『アリスちゃん!? 嘘、今の私達のこの状態を見られてたの!?』

『アリスたら…顔真っ赤で今のアタシ達の事を見ているわね…』

 

 私達はアリスちゃんに気付かれない様に近づき、その様子を観察した。

 

「久しぶりに遊びに来たのですけれど…凄い場面に遭遇してしまいましたね…

ふふ…やはりこうしてお互い愛を与え合う光景は素晴らしいです…

これこそ真実の愛! 本当の愛、絶技! なのです!」

 

 その言い方、あの男の姿をしたパンテーラみたいだよ、アリスちゃん。

 …案外、あの時の姿の可笑しな言動も素なのかもしれない。

 でも顔が真っ赤な状態で冷静さを装う言い方をされると、

何だかやせ我慢をしているように見えて微笑ましく思えてしまう。

 だけど、私達がそう思えたのはここまでだった。 

 

「あぁ…シアンちゃんを煽ってくっ付けた甲斐がありました

あのままではいつまでも進展しなさそうだから今まで煽って来たのですけれど…

全く、アシモフさんもモニカさんも不甲斐ないのです

あんなタイミングでミッションの依頼を出して二人の愛を引き裂くだなんて…」

 

 煽ったって…! まさかあの挑発全部、演技だったの!?

 私達はまんまとアリスちゃんの術中に嵌っていたの…!

 

「それにしても…GVの大きいソレをあんな簡単に…シアンちゃん、気持ちよさそう…

モルフォもそんなはしたない表情で大人のキスをされながらGVの指に恥ずかしい所を…

やはりテセオに教えてもらったネットの動画とは全然迫力が違いますね…

…あの時勢いで言ってしまった愛人宣言、本当に実行してしまおうかしら…

でも愛を与えるのが信条の私にとって略奪愛は趣味じゃないですし…」

 

 今の私達の恥ずかしい状態を実況しないで! それにその倒錯した宣言も勢いだったの!?

それと本当に実行何てしなくてもいいから!! そのままのアリスちゃんでいて? お願いだから!!

 まさかこんな形でアリスちゃんのあの挑発の意味を知る事になるだなんて…

あの時の嫌な予感ってこの事だったのかなぁ…

もしこの事を知らずにアリスちゃんに見せつけていたら…

多分、アリスちゃんも枷が外れて混ざって来てたと思う。

 …良かった、この段階で気が付けて。

 そして今の私達の情事が一段落付いた所で、

アリスちゃんはこっそりと嬉しそうに顔を赤くしたまま帰宅した。

 この情事の後、冷蔵庫の中身が空だったり生活用品が全滅寸前だった事に気が付き、

今の私達とGVは慌ててお風呂場で身を綺麗にした後、

普段表に出ない時間帯で買い出しに出る事となった。

 そしてこの事が切欠である人物と遭遇する事となる。

 危険薬物(ブースタードラッグ)を服用した能力者の暴漢達に襲われている女の人…

後の私達の初めての友達であるオウカさんと。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「一人ぼっちは、寂しいですね…」

 

 町外れにぽつんと建つ、だだっ広いお屋敷の中。

 お気に入りのぬいぐるみをぎゅうと抱き、私は独りごちる。

 私には国内有数の大財閥、「桜咲家」の血が流れていたけれど、

桜咲の性を名乗る事は許されていない、所謂庶子であった。

 私のこの「オウカ」という名前は性を名乗れずとも、

自身のルーツを感じさせる名前を付けようと親が考えた物だと私は推測している。

 …聞こうと思えば聞く事だって出来ると思う。

 でもその行為は大勢の人達に迷惑を掛ける事になるのは幼い頃の私でも理解できた。

 この広い屋敷と幾人かの家政婦を与えられ、

少なくとも私は表向きには桜咲家とは不干渉を貫いていた。

 そんな私の事が嫌になったのだろう、一人、また一人と年を追うごとに居なくなり、

最後には唯一人、私の事を孫の様に可愛がってくれた女性だけが残った。

 私はこの人が居たから寂しいなんて気持ちは三か月前まで無かった。

 そう、その人は心不全でその時に亡くなってしまったのである。

 桜咲家の人達は直ぐに新しい世話役(監視役)の補充を申し出て来たけれど、私はそれを断った。

 葬儀の日、私の一世一代のワガママを桜咲家の連絡員にこんな風に申し出たのだ。

 

「私ももう十六になります…結婚だって出来る年頃です

家事も人並み以上にはできます…どうか暫くの間だけ、一人暮らしをさせては頂けませんか?」

 

 そしてこの申し出は、一週間に一度の定例報告、

そして今通っている女子高に通っている間だけという条件であっさりと認められた。

 …この時の私は、今までの生活とは一体何だったのだろうかと思ってしまった。

 でも、これも桜咲家側の何かしらの思惑があって了承されたのだろうと私は納得した。

 だけど、私はその申し出が許された事に舞い上がっていたのでしょう。

 その時の連絡員の女の人の表情の不穏な笑みに、私は気が付く事が出来なかったのです。

 そして私は今のこの状況…一人暮らしをする事となったのです。

 

(この一人暮らしは元はと言えば私が言い出したことです…こんな弱気になってはいられません)

 

 そう思った時、私の小腹が鳴り、時計を見て見たらもう八時四十分を過ぎていた。

 今弱気になっているのはお腹が空いているからと思い冷蔵庫の中身を見て見たけれど、

中身がお菓子の類以外何も無かったので、私は買い出しに出る事に決めました。

 私は駅近くのスーパーマーケットに向かう事となりました。

 …私はスーパーマーケット内で必要な食料品や生活用品を購入していきます。

 その時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見かけました。

 その三人組の人達は互いに笑い合い、とても幸せそうな表情をしていました。

 

「ねえ(ゆう)、今晩のご飯は何にする?」

「そうだね…今日は少し疲れたし、簡単に出来て量のある物…鍋物にしよう

(まい)もそれでいいかな?」

「ええ、アタシもそれがいいと思うわ 何しろ今まで沢山セ…運動してたしね

紫明(しあ)、そういう訳だから精の付く鍋物を作りましょう?」

 

 心無い家政婦達に囲まれ、その例外とも言える人すら無くした私にとって、

その光景は私にとって手の届かない、心から焦がれている光景でした。

 男の人…優と名乗る男の人は、背が丁度私くらいで長い黒髪を三つ編みのおさげにしている。

 まるであの最近出来た私の良く見るネットサイトで取り上げられているテロリスト…

蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルトみたいでした。

 最近この人の話題が私の女子高でも話題となっています。

 私自身も話について行く為にこのネットサイトを見ているのですが、

その容姿端麗な外見で金色の髪を靡かせ、

皇神の最新式の戦車を相手に何処からともなく出した鎖で貫いていく様は正に圧巻でした。

 学友曰く、ガンヴォルトは普段三つ編みのおさげなのだけれど、

その髪を解いた時、本気となるのだそうです。

 そしてこの時の映像は正にその貴重な場面を映し出した物なのだと力説していました。

 ですが、彼は電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォを()した張本人…

そのお陰で私の女子高は親ガンヴォルト派と否ガンヴォルト派、

この二つの派閥が言い争っている場面に出くわす事も良くあります。

 …私は表面上どちらにも属してはいませんが、どちらかと言えば否定的な方です。

 次に女の人…舞と名乗る女の人は何処かで見たことがある様な外見をした、

私と同じか先輩にあたりそうな女の人でした。

 そう、確か…電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォにそっくりな人でした。

 それこそ同じ衣装を着て髪を金色にしたらもう区別が付かないかもしれません。

 彼女はこの国の希望の象徴でした。

 そして私も例外では無く、彼女の歌う歌に希望を貰っていたのです。

 だからモルフォが()されてしまった事はとても悲しかったのです。

 ガンヴォルトに否定的なのはこれが理由なのです。

 この事が無ければガンヴォルトにも好感が持てるのですが…

 最後の女の人…紫明と名乗る女の子は長い髪に女の子と大人の女性の境界線にあたる外見で、

常に優と名乗る男の人と手を組んで心から嬉しそうに笑顔を振りまいている子でした。

 そんな三人と私はすれ違い、すれ違った後で私の目には無意識に涙が零れました。

 この涙はあの三人が羨ましいと思う気持ちからくるものなのだと私は思いました。

 そんな三人とすれ違った時、()()()()()()()()()()()()()()()

 その視線に対して私は気になったので振り向いて見たのですが…

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 私は皆には内緒にしているのですが、

()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 今回のこの視線は同じような感じがしたのですが、姿だけが見えないのです。

 私はその事に少し疑問を持っていたのですが、

その視線からは嫌な感じがしなかったので、私は気にせずレジへと向かいました。

 …姿を見せてくだされば、お話をしてみたかったのですが…

 そんな事もあったスーパーマーケットからの帰り道。

 私の持つ買い物バッグには食料品と生活用品がぎっしりと詰まっています。

 辺りはもう大分暗くなっており、屋敷まで結構な距離がありました。

 

(やっぱり、自転車を買っておいた方が良かったですね…

あの大きなお屋敷も、お店から遠く離れていますし…)

 

 最近は皇神グループの尽力のお陰で今の所治安はいい状態と言えます。

但し、海外に比べたらの話ではあるのですけれど…

 今だってテロリスト(フェザー)による皇神関連施設襲撃事件がまた最近起こったばかりであり、

第七波動(セブンス)を高める代わりに精神を破壊する危険薬物《ブースタードラッグ》の話題や、

第七波動(セブンス)能力者にまつわる事件を連日の様にニュースで眼にしています。

 私はその事を思い出し少し足を速めたのですけれど、

そんな事を考えていたせいなのでしょうか?

 そんな私の行く手を二人の怪しい男が現れ、私の行く手を遮りました。

 それは小太りの男、そして枯れ木の様に痩せた男でした。

 

「■■■■■■■■■■?」

「あの、今何とおっしゃいましたか?」

 

 そう尋ねた途端、小太りの男が私の手を突然掴み、私は驚いて思わず振りほどきました。

小太りの男はそんな私のあまり強くない力であっさりと尻餅をつきました。

 

「あ…あの……?」

「ギャハハ、バーカ、なァにやってんだよォ、すっころんでよォ!」

 

 嫌に間延びした掠れ声で尻餅をついた男を嘲笑う痩せた男。

 小太りの男は顔を真っ赤にして荒い息を上げ、怒りに震えていました。

 そして私は気が付きました。

 二人の男の視線が胡乱で、正気では無いと。

 そう思った瞬間、小太りの男が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして舗装を貫き木の根のようなものが現れ、私を拘束しました。

 

「くぅ…!」

「うっわマジかよ? マンガみてェー 

アサガオをちょーっち咲かせる程度だったおめえの第七波動がヨォー

()()()から貰ったクスリ、まァじすっげェのな!」

 

 そう痩せた男が喋った時、見覚えのある人の姿が私の目に映りました。

 ()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()

 

「やくそく…まもったぜェ…これでクスリ代はチャラだぜェ」

「■■■■■■■■■!!」

「ふふふ…これは私の独断だけど、貴女の存在を疎ましく思っている桜咲家の人間は多いのよ?

私の描いたシナリオはこう…

買い物の帰りに突然薬を使った能力者に襲われて貴女は無残に殺される

この時代のどこにでも起きうる事件としてニュースに取り上げられることも無くね…

そういうシナリオよ

貴女の存在は桜咲家にとっての汚点なのよ…だから貴女には消えてもらうわ」

「…………そうですか」

 

 やっぱり、私は…庶子である私は、存在してはいけないのですね…

それに私が死んでしまっても、困ったり、悲しんだりする人も居ない…

寧ろ居なくなってしまう事を望まれてしまう…私は…もう… 

 この時の私はもう目の前が真っ暗となっており、

夢も希望も、助けを求める事すら諦めていました。

 そんな時でした。

 私を拘束していた木の根が砕けたのです。

 

「■■■■■■■■■■■■!!」

「おいおい…クスリですっげェ強クなったはズの第七波動が…」

「……っ! 彼女を殺すのです! そうすればまたあの薬をタダで差し上げましょう!!」

 

 連絡員の女の人の呼び声で小太りの男が再び木の根を呼び出し、

今度は私を直接刺し貫こうと真っすぐに私の心臓目掛けて突き進んでいきました。

 そんな時、私を中心に何やら薄い膜のような物が展開され、

私に向かって来ていたその木の根を防いでくれました。

 その事に驚愕を覚えた桜咲家の連絡員を含んだ三人の前に、

先程の見覚えのある女の人が立ちふさがったのです。

 背中に綺麗な蝶の翼を携えた女の人が…あの時すれ違った舞と呼ばれていた女の人が。

 私はその蝶の翼から放たれている光を、姿を見て激しく心を揺さぶられました。

 何故ならば、その後ろ姿は完全に電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォその物だったからです。

 そんな私の肩を、紫明と呼ばれていた人が支えてくれていました。

 そしてその二人の連れであった男の人…

優と呼ばれていた男の人は手に黒い銃を持ち、舞さんと同じく私の前に庇う様に現れ、

目にも止まらぬ速さで桜咲家の連絡員を含んだ三人をその早業で気絶させました。

 

「舞! なんて無茶な事を!」

「優…ごめんなさい…でも、こうしないと間に合わないと思ったのよ」

「…その判断は間違っていないさ

あの時の僕の両腕は塞がっていたから初動が遅くなってしまったし、

誰かが彼女の守りを担当しなきゃいけなかったからね」

「そんな事を言ってる優も凄い銃捌きだったよね?

あんなに離れた距離からあっという間にあの人を拘束していた木の根を撃ちぬいたんだから…

あ…あの…大丈夫ですか? 怪我は無いですか?」

 

 そうして私は紫明さん…シアンさん達と知り合ったのでした。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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