【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第五十九話

 GV達は今、オウカの屋敷にお邪魔している。

 その屋敷はとても広く、庭まで完備されている。

 でも、こう言った屋敷には使用人等が居る物である。

 転生前の世界の明と美晴の屋敷にGVがお邪魔した時、

実際に屋敷を維持する為の使用人の人達が多く居たのだ。

 それなのに、この屋敷には人っ子一人居ない。

 それだけでは無い。

 この屋敷を訪れた時、街外れにポツンと立っていた。

 まるでオウカの事が除け者にされているかのように…

 

「さあ皆さん、どうぞ奥へと上がって下さい」

「お邪魔しますね、オウカ

(GVの拠点よりもすっごく広いなぁ…それにお庭まで完備しているなんて…)」

「お邪魔するわよ、オウカ

(この玄関にあるカレンダー…アタシの歌ってる姿が絵になっているわね…

オウカもGVと同じように、アタシの歌のファンなのかしら?)」

「お邪魔します、オウカ

(こんなに広い屋敷なのに人っ子一人いる気配が無い…

あの時の女の記憶の通り、彼女は一人の様だ…

だからこそあの時狙われてしまったのだろう

…桜咲家か、確か皇神グループと契約を結んでいる桜咲モータース…

それを保有する日本国内有数の大財閥を取り仕切る一族だったな

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そして、その分裂を決定的な物とする為にこの女はオウカの殺害を考えたのだろう

…まさかこんな形で各地で情報を漁っていた事が役に立つなんて思わなかった

あの時徒労だと思っていた情報がここに来て活用出来る機会が来るとは…)」

 

 そうしてGV達は屋敷にお邪魔し、

オウカは冷蔵庫にあった高そうなお菓子をふるまってくれた。

 そしてオウカはGVが銃を持っていた事に対して何も言及はしなかった。

 これはオウカなりの誠意と気遣いなのだろう。

 普通だったら、そんな武装した訳ありな人を家へとお邪魔などさせないはずである。

 そんなオウカの好意に甘え、GV達がそうしてくつろいでいる間に、

オウカが夕食の用意をすると言って部屋を出て行こうとしてたので、

GV達はそれに待ったをかけた。

 

「オウカ、もし良かったら僕達も夕食の準備を手伝おうか? 僕らは全員料理経験があるからね」

「え…あの…宜しいのですか?

皆さんには助けてもらったご恩もありますのに、これ以上ご迷惑を掛ける訳には…」

「いいんですよ、オウカ

一人でご飯を作るのって大変ですし、

皆でやれば楽しくお喋りしながら、早く出来ますよ?

それに、一人だとオウカが寂しそうで…」

「そうね、オウカを夕食の準備で除け者にするの、アタシは嫌よ?

それに早く夕食を食べたいし、料理を作るのって楽しいから、

オウカの言う迷惑にはならないはずよ

むしろこう言った申し出をするアタシ達の方がオウカに迷惑を掛けているはずよ

だからオウカは気にする必要はないの…寧ろ私達の方がお願いをする側なんだからね

…オウカ、もし迷惑じゃ無ければアタシ達にも手伝わせてくれないかしら?」

「皆さん…はい! どうか私のお手伝い、宜しくお願い出来ますか?」

 

 こうしてGV達はオウカと一緒に夕食の準備に取り掛かった。

 そしてこの夕食作りが切欠で私達とオウカは友達となったのだ。

 …思えばこの時からオウカはGVに好意を持っていたのかもしれない。

 心なしかGVを見る目が私達を見ている目とは少し違っていた。

 あの時の出来事は今芽生えたほのかな好意を決定的に後押ししたのだろう。

 そしてこの事に今の私達は気が付いていない…

 この時のオウカは本当に嬉しそうで…そんな嬉しそうなオウカに釣られて、

GV達も嬉しそうに夕食の手伝いを進めていく。

 その時の連携が初めてだったのにも関わらず、

それぞれが息の合った迷いの無い手捌きで手早く作業が進んでいった。

 GVが、私が、モルフォがオウカの事を想い手伝った事が嬉しかったのだろう。

 オウカの目から涙が零れていた。

 この時のオウカは玉ねぎを刻んでいたのを理由に誤魔化していたけれど、

 あれは喜びの涙なのだろう。

 オウカは最後の家政婦の人が三か月前に亡くなってからずっと一人だったそうだ。

 そう考えると、この時のオウカの涙は理解できる。

 そしてこの時出来上がった夕食は私達とオウカが購入した材料を合わせた豪華な鍋物だった。 

 その出来上がった鍋物、その調理の過程で何回かしていた味見を皆で行った。

 この鍋物は皆で力を合わせて出来た物。

 それ故にその美味しさもそれ相応…いや、それ以上の物だった。

 その事を確認し、テーブルの上にあらかじめ用意していた鍋敷きの上に、

出来上がった鍋物を設置し、後はご飯や細かい総菜なんかを用意して皆の夕食が始まった。

 その鍋物を頂く時のその独自の和気藹々(わきあいあい)とした雰囲気はとても心地が良かった。

 皆が楽しそうに食事を楽しみ、会話を交わし、笑顔で満ち溢れている。

 その光景を客観的に見ていた私達もこの時の事を思い出し、

とても微笑ましい気持ちで見つめていた。

 そしてそんな私達の居る空間にオウカは目線を向け、じっとこちらを見ていた。

 

「あの、そこに何か気になる物でもあるんですか?」

「紫明さん…ええ、実は私…

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「え…それって…もしかして…今オウカが見てるのって、ユーレイ?」

「…さあ、どうでしょう? ふふ…」

「お…オウカ…紫明とアタシ、ユーレイとかそういうのダメなのよ…

流石に冗談よね? 何もいないよね?」

「……少なくとも、視線は感じますよ? 間違いなく、あそこには何かが居ます」

「「……っ! ゆっ優~~……」」

「…大丈夫、何があっても僕が付いているから

(あの位置には未来のシアンとモルフォが居るはず…

オウカはまさか、この二人の視線を感じ取ったのか?

二人には念のため「力」の結界を極小に展開している筈…

「力」の結界も万能ではないという事か

…まさかアキュラに付き従っているメイドの人も、

その類の力であの時の僕の潜入に気が付いたのだろうか?)」

 

 …やっぱり、オウカは私達の事に気が付いている。

 今夜相談するのは…今の私達の様子を見る限り、三日は無理だろう。

 そう私達は思いながら、皆の会話が続いていく。

 そしてオウカが何かを決心した表情をしてこう切り出してきた。

 

「あの…舞さん…貴女はひょっとして、電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォなのですか?」

「……(GV…アタシの事をオウカに話しても大丈夫かしら?)」

「……(GV、私はオウカに話しても大丈夫だと思うの

…この話を切り出す時、辛そうな表情をしてた…

多分、断られるのを前提にしているみたいに感じるの)」

「……(そうだね…オウカを相手に記憶を弄る真似をするのは避けたい…

だけど、既にモルフォの翼を展開している所を見られている

その情報だけで皇神からすれば特定するのは十分だ

…このまま黙っていても居なくても、結果は変わらない…か

……この屋敷には盗聴器の類は無いな

ならば話そう…オウカは危険を承知で僕らを屋敷に招いてくれた

その誠意に、今度は僕らが応える番だ

それに、僕自身の事も話そうと思う…

万が一オウカ経由でモルフォの情報が洩れても、傍には常に僕が居る

そのアピールをすれば皇神も簡単には手は出せない…

その間にまた行方をくらませれば大丈夫のはずだ)」

 

 GV達は、電子の謡精(サイバーディーヴァ)による能力のテレパシーでそうやり取りをし、

オウカのその覚悟に答える為に、GV達は正体をオウカに話す事を決定した。

 そして今の私は今のモルフォの髪の色を金色に、服装を何時も着ている服に戻し、

オウカの前に本当の姿のモルフォをさらけ出した。

 それと同時に今の私は紫色の髪に、GVは金色の髪に戻った。

 それを見たオウカは息を飲んだ。

 

「……紫明さん…髪の色が紫に…舞さん、その姿は、やっぱり…

それに優…その金色の髪…貴方はまさか…!」

「私はシアン、紫明という名前は偽名なんです…

必要な事だったけれど、嘘をついてしまってごめんなさい、オウカ」

『オウカ、改めて紹介するわね

アタシはモルフォ、紫明の…シアンの第七波動(セブンス)が意思を持った存在

それがアタシ、電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォよ』

「そして僕はガンヴォルト…蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト

巷で有名なテロリスト…それが僕です、オウカ」

「やっぱりモルフォだったのですね…

それに、モルフォがシアンさんの第七波動(セブンス)

そしてモルフォを()したとされているガンヴォルトがモルフォの傍に居るなんて…

……っ! もしかして、あの事件の真相は……!」

『ええ、アタシが説明するわね…実は…』

 

 そうしてGV達はオウカに正体を晒した。

 オウカは私達のこの自己紹介である程度の事情を察してくれたようだ。

 そして意外な事も分かった。

 オウカはモルフォの歌のファンで会った事。

 そしてそんなモルフォを()したとされていたGVの事に否定的だったと言う事が。

 でもモルフォの正体を知り、傍にGVが居た事、

そしてモルフォが説明してくれたお陰で事の真相を把握してくれたようだ。

 そのお陰で正体を現した直後のオウカの険しかったGVを見る目が、

何時もの穏やかな物に戻っていった。

 そしてこの時からオウカは優の事をGVと呼ぶようになったのである。

 

「そうだったのですか…GV、ごめんなさい…

事情も知らずに睨みつけてしまって…」

「…僕もオウカと同じようにモルフォの歌のファンなんだ

事情を知らなければ、僕はオウカと同じ行動をしていたよ

…それよりもオウカ、モルフォにサインを貰わなくてもいいのかい?

今なら貰えるチャンスだと僕は思うんだ」

『ふふ…オウカも良ければアタシのサイン、どうかしら?

今ならシアンのサインも付くわよ?』

「……オウカが良ければ、私もサイン、書きますけど…」

「モルフォさんのサインですか! それにシアンさんの分まで…!

あの…ちょっと待ってくださいね! 今すぐサイン用紙を用意します!!」

 

 オウカはシアンとモルフォにサインを書いてもらい、嬉しそうにサイン用紙を見つめていた。

 そしてモルフォはそんなオウカに気を良くして、今度は生歌を披露する事となった。

 その事にオウカは大感激で、モルフォは歌を一通り歌う事となった。

 この際、モルフォの第七波動(セブンス)が洩れない様にGVは「力」の結界を展開済みである。

 そしてモルフォが歌い終わった後、今度は皆で歌を歌う事となった。

 いつものトリオでは無く、オウカも交えたカルテットで…

 

『「「「~~~~~~~~~~~~~~~~♪」」」』

 

 この時の皆の表情はとても生き生きとしており、

そんな皆の歌声は、優しく屋敷を包み込んでいった。

 その後、GV達はオウカの屋敷にお泊りをする事となり、

オウカは久しぶりに孤独を忘れ、幸せそうに眠りについたのだった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




※GV達がオウカに事情を説明した件について
今回オウカに秘密を明かしましたが、
オウカ経由でGV達の事がバレるという事はありません。
原作ではオウカはこちらの事情の詮索をする事はありませんでした。
ですが、この二次小説内のオウカはモルフォのファンであるという設定が加わっている為、
どうしてもその辺りの事情を知りたくて、断られる事を前提に尋ねたのです。

追記

なお、公式では桜咲家と桜咲モータースとの関係すら不明な状態なので、
桜咲家についての云々はこの二次小説内での独自設定です。
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