【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第六十話

 あのお泊りの翌日の朝、オウカとGV達は皆で朝食を作り、

昨日の夕食の時と同じ様に皆で楽しんでいた。

 この時の会話でオウカはこの後女子高へと行く事を知ったので、

GV達は屋敷を後にする事をオウカに伝えた。

 その事を伝えられた時、オウカは一瞬だけ表情曇らせた。

 GV達と別れてまた一人ぼっちになるのが嫌なのだろう。

 そしてその一瞬曇らせた表情をGV達は見逃さなかった。

 GV達はそれを何とかする為に電子の謡精(サイバーディーヴァ)のテレパシーを用いて、

オウカと会話を楽しみつつ作戦会議を行った。

 

(どうしようGV…オウカ、私達が居なくなるのを悲しんでる…)

(オウカのあの曇った表情を一瞬とはいえ見た以上、アタシとしても見逃すのはちょっと…)

(それは僕にも分かってるんだけど…これ以上ここに長居するのはマズイ

何しろ僕らは訳有りの身…これ以上はオウカに迷惑が掛かるだろう

それでも何とかするのならば…オウカの屋敷は街外れにポツンと立っている…

つまり屋敷への出入りを誰かに見られる事が無ければ問題は無いはず

でも夕食とか買い出し頻度の増加やそのゴミの量から足が出てしまう可能性があるね)

(屋敷への出入りだけだったらGVの光学迷彩で平気なのに…)

(買い出し頻度やゴミの増加の事、アタシは考えて無かったわ…

買い出し頻度の問題はアタシ達の方で食料なんかを持ってくれば誤魔化せそうだけど、

ゴミの問題はマズイわね…流石にオウカの屋敷をゴミで埋める訳にはいかないし…)

(この部分は僕らが持ち込んだ食料品から出たゴミのみを「力」で除去するか、

僕の拠点に持って帰るかで対処しよう)

(あ…GV、そういえばオウカは一人で学校に向かうけど、

あの女の人達の事放っておいて大丈夫かな?

またあんな事をオウカにされたら、今度は守れないと思うの…)

(シアン、それについては大丈夫

あの連中には僕の蒼き雷霆(アームドブルー)で記憶を覗いたり記憶除去をした時、

もうオウカには手を出せない様に脳を弄らせてもらったから)

(弄らせてもらったって…それって、アニメとかで良くある洗脳?)

(まあ、そういう事だね…正直引かれる方法だったからシアン達の前で使いたくは無かったけど、

あの状況を表面上穏便に済ませるにはこの方法を使わざるを得なかった…)

(大丈夫よGV…そんな事でアタシ達はGVの事を嫌いになんてならないわ

GVは何時だってアタシ達の事を考えてくれてるもの

GVが必要だと思った事をアタシ達は否定なんてしないわ…そうでしょう、シアン?)

(うん、私はGVの事信じてるから…(それに…洗脳かぁ…GVになら、私…))

 

 そうしてGV達の作戦会議が終わり、オウカに女子高が終わる時間帯を聞き出し、

その時間付近になったらまたお邪魔する事を伝えた。

 その事にオウカは桜の花が咲いたかのような笑顔で歓迎してくれた。

 やっぱりGV達が居なくなるのが寂しかったみたいだった。

 その後オウカは女子高へと向かい、GV達は拠点へと帰還した。

 そして帰還した直後、アシモフからミッションの知らせが届いた。

 

「それでアシモフ、今回のミッションの内容は?」

『今回のミッションの内容は護衛ミッション…GVにはある人物の護衛をしてもらいたい

その期間は一ヶ月…普段のミッションと違い、かなりの長丁場となるだろう』

「護衛ミッションですか…僕にそれが回ってくるのは珍しいですね」

『我々の現段階の襲撃可能な皇神の施設はもう全て襲撃完了しているのは知っているな?

この一ヵ月間は新たに他の皇神の施設の情報を集める為の期間だ

…この依頼は最悪GVが断ってもなんとかはなるだろう、その場合はジーノを贈る予定だ。

GVはこれまでのミッションでフェザーに多大な貢献をした

故に、このミッションを断って一ヵ月休みを得ても問題は無い。』

「…ミッション内容を聞かせて下さい、その内容次第で決めようと思います」

『了解した…では詳細情報を開示しよう

GV、半年前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()

今回はそれに関わるミッションだ…GVも知っての通り、この大財閥は解体の危機にある

この財閥には当然フェザーの工作員も紛れ込んでいるのだが…

この財閥の傘化にはそれ以外にもフェザーが秘密裏に運営している企業も多数存在している

なにしろ桜咲家は皇神グループと繋がっている

この位置に属していれば我々は資金源にも情報源にも困らない

故にこの財閥解体を防がねばならん…この解体を防ぐ事に関してはもう大詰めで、

フェザーの敵対組織の工作員を我々の工作員に置き換える作業も完了しつつある

だが、そこである問題が発生したのだ』

「ある問題…ですか?」

『うむ…GV、桜咲家には庶子の娘が居る事を知っているか?

その娘の殺害をどうやら追い出された工作員達が企んでいるらしいのだ

…もう誰を護衛するかが分かっただろう? GVにはその娘の護衛を頼みたい

我々はこの大掛かりなミッションを一部を除いたフェザー全体で行っている為、

辛うじてジーノを送り込む事が精一杯なのだ』

 

 桜咲家の庶子の娘って…それってオウカの事じゃない!

…この事があったから、今の私達とGVはオウカの屋敷に入り浸る事になったのね。

 

「…アシモフ、僕はこの依頼を受けようと思う」

『…そうか、何時も済まないな、GV…ならば護衛対象の居る座標を贈る

向こうには既に話は通してある、だから後は向かえば問題は無いはずだ』

「了解…そういえばアシモフ、この護衛ミッションの依頼は一体誰が出したんです?

庶子の子なんて、寧ろ桜咲家にとって疎ましいはずだ」

『…その桜咲家の当主から出された依頼なのだ』

「……っ! アシモフ、実は…」

 

 GVはアシモフに昨日あった出来事を、そしてその女から抜き取った情報を話した。

 

『何と言う偶然か、正にこれはディスティニー(運命)と言えるだろう

GV、君は実にいいタイミングで彼女と知り合ったようだ

…そしてGV、彼女が疎ましく思われている事なのだが…

その情報は桜咲家による巧妙なフェイクだ

彼女を今行われている事に巻き込みたくなかったが為に表面上その様な態度を出し、

その誤情報を意図的に流していたのだ

この事はこの護衛ミッションの依頼を頼まれた時から確認している

あの女は見事にその誤情報に踊らされていたという事だ

…恐らくその事を吹き込んだのは我々と敵対している工作員達だろう

末端の人間がその様な事を知ると言うのはこう言った事が無ければあり得ないはずだ

…もし彼女が昨日の内に殺害されていたら、我々のこれまでの苦労がバブル(水泡)に帰し、

その工作員達の思惑通りに一気に財閥解体への動きが加速しただろう』

 

 …オウカは桜咲家の人達に嫌われてたんじゃなくて、寧ろ好かれていたって事なのかな?

 そうじゃなきゃオウカの事を巻き込まない様にしようだなんて発想なんて出てこないだろうし…

 

「……アシモフの言う事が本当だと言うのは分かります

だけど庶子であるオウカが死んでしまったら財閥解体と言うのが分からない…

もうフェザーが大詰めを迎えているのに、彼女が死ぬと何故そうなるんだ?

それにどうやって桜咲家の当主とコンタクトが取れたんだ? アシモフ」

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その目論見は上手くいき、権力闘争もこの世界の取り巻く環境によって、

そんな事をしている場合では無いと桜咲家は最近漸く団結した

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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そして桜咲家の当主とのコンタクトについてだが…敵の敵は味方…そう言う事だ、GV』

 

 オウカって本当のお嬢様だったの!?

…思えばオウカの動きって何処か気品のある感じがしたけど、これが理由だったのかな?

 

「団結の決定的な要因がオウカの存在…だとしたら、オウカが殺されてしまったら

再度分裂してしまう…そしてその事が引き金となって財閥解体に追い込まれてしまうと…」

『そういう事だ…GV、君の依頼達成率は極めて高い…

その事を桜咲家の当主に話したら迷うことなくこの護衛依頼を出したのだ

GVが既に有名なテロリストであるはずなのにも関わらずにだ

世間体よりも確実性を選ぶ…彼女は実に愛されているではないか?』

「ですが、その事が本人に伝わらなければ意味がありません…

アシモフ、もし僕の依頼が達成出来たら、

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昨日のオウカとの会話の中に本当の苗字を名乗れない事を気にしている節があったんだ

それにこの依頼が達成できた頃にはもうそう言った危険要素は無くなっているはずです

そしてオウカに事の真相を顔を合わせて話し、抱きしめてやって欲しいとも…

彼女は一人であの屋敷に居て寂しそうでした…だから…!」

『その事は私が責任を持って伝えよう、GV

但し、伝えても確実にそうなるとは限らない…その事は覚えておいて欲しい』

「ありがとう、アシモフ…所で、この事をオウカに話しても大丈夫かな?」

『問題は無いはずだ、GV…では、ミッションの成功を祈る…グッドラック!』

 

 こうしてGVはアシモフを介した桜咲家からの護衛ミッションを受ける事となり、

オウカの屋敷に入り浸る事が合法的に可能となった。

 …そっか、こうやってGVはオウカの(苗字)を取り戻したんだね。

 おまけに両親にも出会えるようにしてたなんて…オウカが惚れるのも納得出来るよ…

でも私達もこの事が嬉しい筈なのに、どうしてもオウカに嫉妬しちゃうよ…

我慢しなきゃ…だって、オウカは私達の友達なんだから…

 そしてGV達は再びオウカの屋敷へと足を運んだ。

 当初は光学迷彩を展開しながらこっそりと移動する予定だったけれど、

今回の依頼によってオウカの屋敷に普通に足を運ぶ事に問題が無くなった為、

何時もの外出用の恰好で向かう事となった。

 そして屋敷が見えて来たのだけれど…屋敷の大きな門の前にオウカが居た。

 その表情は不安に満ちた表情をしており、

今日の朝見せてくれた桜の花が咲いたかのような笑顔はすっかりと消え失せていた。

 …アシモフさんは向こうに既に話を通してあると言っていた。

 つまり護衛が来る事を知っているのだ。

 だけどその護衛が一体誰なのかが把握できていない…

それが理由でオウカはあんな表情をしているのだろう。

 そんなオウカは私達の姿を目にした途端嬉しそうに、そして何処か残念そうな表情をしていた。

 

「皆さん、また来て下さってありがとうございます…あの、実はお話があるのですが…」

「オウカ…それはひょっとして君の護衛の話の事じゃないかな?」

「え……どうしてその事を?」

「その理由はオウカの屋敷の中で話すよ…ここで話すのはちょっと不味いしね」

「ふふ…またお邪魔するわね、オウカ」

「またお世話になりますね、オウカ」

 

 そしてGV達はオウカの屋敷に入てから再び盗聴器の類を探し、

無かった事を確認して元の姿に戻った。

 そして広いリビングでGVは護衛ミッションの事をオウカに話した。

 

「…そうだったのですか、私は、庶子ではなかったのですね…もしかして、

私が一人暮らしをしたいとお願いした事が拍子抜けするほど簡単に通った理由も…

あぁ…私は…私は…お父様にも、お母様にも、皆にも、愛されていたのですね…」

「「「オウカ…」」」

 

 オウカはGVから護衛ミッションの事を聞き終わった後、涙を堪えながら…

でも、堪え切れずに目じりから少し涙が零れ落ちていた。

 GVを通じて自身の本当の事が、そして桜咲家の人達の真意を知ることが出来たのだ。

 その感動も一入なのだろう。

 それだけでは無く、GVは桜咲家の当主とオウカの両親に、

オウカと会う様に催促した事も大きい。

 そして、そんなオウカにGV達は近づき彼女を抱きしめた。

 GVは正面から、今の私はオウカの右腕に、今のモルフォはオウカの左腕へと。

 その事が引き金となってオウカの我慢していた涙は決壊し、声を上げて泣きはらした。

 そんなオウカの涙をGV達は受け止めた。

 そして、GVの護衛ミッションが…オウカを交えた一ヵ月間の共同生活が始まったのであった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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