桜の名を持つ心優しき大和撫子
「桜咲櫻花」
女神の如き包容力、そして想い…それは謡精女王の持つ狂気をも凌駕する
GVは護衛ミッションをフェザー経由で桜咲家から依頼された。
その関係でオウカの護衛を務める事となったのだが…ある問題が浮上していた。
それはオウカが女子高に行っている時の護衛はどうするのかという問題だ。
流石に女子高に行ってる事を理由にオウカから目を離す訳にはいかない。
そしてここで問題となってくるのは、今回の依頼はGVに依頼されているという事である。
故に、既にフェザーに登録を済ませているネームレスの姿で護衛をする訳にはいかず、
それをどうしようかとGV達四人は相談していた。
幸いこの日から二日間オウカの学校は休みだったので時間は十分にあった。
「GVだったら姿を消せるし、私はそれで問題は無いと思うんだけど…」
『そうね、シアン…でも、万が一光学迷彩を解く場面が出てくるかもしれないわ』
「モルフォの言う通りだ…いきなり姿を現して、
オウカの護衛ですなんて言われても信用出来るはずも無いだろう
ここはあえて姿を見せてそれを周りに周知する必要が出てくる…」
「問題は、GVが男の人であることですよね…
流石に男の人を私の通っている女子高へと連れて行くのは目立ってしまいますし…」
「それ以前に、髪の色を変えた程度じゃあ追い出されてしまう可能性のが高いと思う
学校の方には話くらいは通ってると思うけど、
それでも女性が護衛である事が前提にあると思うし…となると、「アレ」をするしかないか…」
「「アレ」って…GV、何か方法があったりするの?」
「そうだよ、シアン…具体的に言うと、女装をしようと思う」
『G…GV? それ、本気なの?(GVの女装姿…興味あるかも♪)』
「GV、女装するの?(GVの女装姿…見て見たいかも…)」
「まあ! GVはそう言う事に抵抗は無いのですか?
ふふ…私、GVのそんな姿に、とっても興味があります」
…思えばGVがここで女装の事を切り出したのは、
既にネームレスの姿で女体化…女装に手慣れてたからだったんだね。
普通男の人ってそう言った事に抵抗あるはずなのに、この時のGVは全く抵抗無かったし…
そしてGVはオウカの屋敷におけるGVの部屋で新しい女装を済ませ、
オウカ達の前に姿を現した。
その姿を見たオウカ達は衝撃的な表情をしていた。
その姿は、
「シアン、モルフォ、オウカ、どう? 何処か違和感あったりする?」
『「「…………」」』
そのあまりの違和感の無さにオウカ達三人は沈黙してしまった。
しかも声や口調が変化していた為、余計に違和感の無さに拍車を掛けた。
その姿のGVはストレートに伸ばした金色の髪、手馴れた化粧技術、
オウカと同じくらいの背丈、女の人と分かるモルフォよりも一回り小さい胸等の体付き、
そして護衛であるとすぐに分かる服装で身を包んだその姿は、
実はGVは女の人で、オウカの護衛の人であったと簡単に納得が出来る程の完成度だった。
ただこの時の私達はまだ新たな
その時が来るのは体感時間も含めて百年以上待つ事となる。
そしてこの二日後、オウカとGVは早くに屋敷を出て、
オウカについての事前情報が送られている女子高の教員の人達と顔を合わせ、
お互いの認識の擦り合わせを行い、GVはオウカの護衛として認められることとなった。
但し表立って護衛と分かるのはマズイと学校側から言われたので、
GVはこの女子高の学生服を身に包み、
良く転校を親の都合で繰り返している生徒と言う設定を用意し、
オウカの通う女子高に一ヵ月限定で通う事となった。
そして今の私達はオウカの屋敷の若い家政婦という設定で、オウカの屋敷でお留守番しつつ、
オウカ一人では手が届かなかった部屋等の掃除を自主的に行ったりした。
そしてその日から十日ほどたった日の夜…
今の私達が寝静まった時、GVに私達の姿を見せてもいいか尋ねた。
『GV、私達の姿をオウカに見せてもいい?
もしかしたらオウカなら私達の言葉とかが伝わるかもしれないし』
「…………シアンはオウカに姿を見せたいのか…
確かに、オウカはシアン達の事を感じているのは分かる
その視線をずっと受けていれば、オウカなら正体にたどり着くと僕は思う
そして今僕らは後十八日ほどオウカの屋敷に居る事が確定している
この状況を考えるに、見せるしか選択肢が無い…
シアン、モルフォ、僕はオウカに二人の事を見せたいと思う
それに間接的にでもシアン達の言葉が分かる可能性があるのは、
今の僕にとってとても有難い事だ」
そう言う訳で、GVはオウカに私達の姿を見せる事を決定した。
もう寝ているだろうと思いつつ、オウカの部屋に足を運ぶ為に廊下に出た時、
その廊下を横切っていたオウカと鉢合わせとなったので、
丁度いいとオウカの部屋へとお邪魔し、GVは私達の話を切り出した。
「突然ゴメン、オウカ、どうしても話したい事があって…」
「いいえ、そんな事はありませんよ? それでお話とは何でしょうか?」
「…オウカ、僕らがこの屋敷に来てから、視線だけを感じ取った事があったよね?」
「ええ、三日前の夕食の時ですね。あの時の視線の感じからすると、
私達の事を微笑ましそうに見ていた感じがしました…
ひょっとして、GVはこの視線の事を何か知っているのですか?」
「その事なんだけど…どうか驚いて声を出さない様にしてもらいたいんだ
二人共驚いてしまうからね…姿を見せてやってくれないか?」
GVから許可を貰い、私達は電子のサイズからGV達と同じサイズに戻った。
GVは念のため「力」の結界を張り、声が部屋から漏れないようにしていた。
…オウカは驚愕の、そして絶望的な表情を私達に見せ、
大きな声を上げながら嘆く様に声を荒げた。
この時のオウカは完全に取り乱しており、
まるであり得ない光景を目の当たりにしていたかの様だった。
「嘘…嘘です…こんな事なんて嘘です!!
どうしてシアンさんとモルフォさんが
「オウカ!? どうか落ち着いて欲しい、このシアンとモルフォは…」
「どうして落ち着いて何ていられるのですか!! シアンさんとモルフォさんは…!!」
オウカが
『…オウカ、私の声、聞こえる?』
「……っ! シアンさん! 聞こえます! 聞こえています!!」
『じゃあアタシの声も聞こえるわよね? …今から事情を話すから、落ち着いて聞いて欲しいの』
そうして私達の姿を見る事が、声を聴く事が出来たオウカに、
今までの私達の経緯を簡単にまとめて説明した。
この際、GVにはオウカの部屋から出て行ってもらっている。
今オウカに話しているのは
タイムパラドックスを警戒しているGVに話す訳にはいかなかった。
そしてこの部屋も「力」の結界によってオウカの声がGVに届かないようになっている。
『オウカ…ここまで話したからもうわかっていると思うけれど、
どうかGVに
GVは今の私達を、そしてここに居る私達を深く愛しているの
それこそ、前世も含めた人生の全てを賭けて…ね
そんなGVにこの事を今話してしまったら…だから私達のこのお願いを聞いて欲しいの』
『アタシ達はこの先の未来で死んでしまっているけれど、GVの中で生き続けているわ
…オウカともまた会えるのよ? それにこの状態からでも実体化出来るようになっているの
だから実質、アタシ達からすれば何も変わってない所か、ずっとGVと居られて寧ろ幸せよ?
だから、オウカには悲しまないで欲しいのよ』
「シアンさん…モルフォさん…分かりました
この事は時が来るまで私達三人の秘密…そう言う事ですね?」
『うん…それでね、今からが本題なのだけれど…
オウカに私達がGVに何を言っているのかを伝えて欲しいの
GVには私達の声が聞こえていないから…』
「翻訳ですね? それだったら任せて下さい! …GVは凄いのですね
想いだけでシアンさん達とコミュニケーションを取ってしまうのですから…」
『そうなのよ! アタシ達のGVは凄いんだから!
…それでね? これはアタシ達が気になっている事なんだけど…
…でも、オウカの目が諦めているようにはアタシ達には見えないの
だから聞きたいのよ…
「…私は、GVのお妾さんになりたいんです
そしてGVの事を支えてあげたいです…シアンさんとモルフォさんの三人で…」
お妾さんって…つまり、愛人って事!? オウカは桜咲家の正当な娘さんなんだよ?
そんな事を周りが許してくれるなんて思えない。
…でもこのオウカの屋敷での生活は
つまり、桜咲家もノリノリでオウカに協力しているって事なの!?
…GVが桜咲家に対してやった事を箇条書きすると、
財閥解体を阻止する為の情報を纏めて、オウカを助けて、苗字をオウカに返す切欠を与えて、
親子の絆を取り戻す切欠を与えて、オウカの護衛を引き受けて…
…桜咲家の人達、もしかして本気でGVをオウカとくっ付けようとしている…?
『オウカ…それ本気なの? GVには私達が居るんだよ?』
…やっぱり出来た。
今の私達とオウカの霊感の高さを合わせればきっと出来ると思っていた。
「……っ! シアンさん、何を!?」
『何って…オウカのその発言が本気か確かめるの
もし今言った事が本気だったら、私達が今からする事だって平気なはずでしょ?
…私達はね、オウカの事、初めての友達だからとっても好きなの
でも、GVの事が好きなオウカの事を私達はとても嫉妬しているの
…ねぇ、オウカ? 私達はね、オウカの事をめちゃくちゃにしたいの
この好きと嫉妬の感情がぐちゃぐちゃになっている今の私達の感情の様に
そしてオウカの心の中を私達で一杯にしたいの…GVの事を忘れてもらう為に』
『…さっき言った事を撤回するなら、今なら無かった事に出来るわ
だからGVの事を諦めて…アタシ達にとっての初めての友達である貴女を…
大好きなオウカの事を傷つけさせないで! 私達に、オウカの事を汚させないでよぉ!!』
私達はオウカに対して私達すら自覚している醜く、悍ましい感情を発露させてしまった。
私達は涙でオウカの事が見えなくなっていた。
こんな酷い事を言ってしまった私達はオウカとは友達ではいられない…そう諦めていた。
でもオウカは、四肢を鎖で繋がれたオウカはそんな私達に対してこう言い放った。
「シアンさん、モルフォさん……いいですよ、私の事を好きにしても…
二人のその想いを、どうか私にぶつけて下さい…私はGVの事が大好きです
でも、そんなGVと同じくらいシアンさん達の事も大好きなんですよ?
そんなシアンさん達からそこまで想われていただなんて、私はとても嬉しい…
だから遠慮なんてする必要は無いのですよ?
私は愛し合っている三人の間に割り込もうとしている悪い人なんですから…」
そう言いながらオウカは
…今にして考えてみれば、この時オウカと私達との間に「協力強制」が働いていたのだろう。
私達が
オウカはそれを
故に、オウカは無意識に私達の力を利用して鎖を引きちぎったのだろう。
その事を知らない私達はオウカが引き起こしたこの現象に驚愕しつつ、
その身をオウカに委ねた。
…こうしてGV以外の人の温もりを感じたのは本当に久しぶりだった。
私達は抱きしめられたオウカの胸の中で泣きじゃくり、酷い想いをぶつけ、
酷い事をしてしまった事を謝り、オウカがGVの将来のお妾さんとなる事を私達は認めた。
そして今あったオウカを拘束して酷い事をしてしまった事を外に居たGVに知らせ、
GVもオウカと同じように私達を抱きしめる素振りをした。
そして私達のこの酷い想いを把握していた事を明かし、
そんな私達の事を当たり前のように受け入れた。
そうしてめでたく? オウカは将来お妾さんとして、
GVの事を私達と共に支えていく事となったのであった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。