【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

64 / 75
第六十四話

 GVは引き続き情報を引き出していく。

 この間、ジーノさんとモニカさんはGVから齎された情報を纏めるのに集中しており、

通信を一時カットしている状態である。

 流石は皇神の様々な情報が集まるデータバンク施設。

 次々と私達の知らなかった情報が判明していく。

 その中で、遂に電子の謡精(サイバーディーヴァ)に関わる情報を得ることが出来た。

 皇神未来技術研究所に勤務していた神園博士と呼ばれる人物。

 その娘である神園ミチルが電子の謡精(サイバーディーヴァ)の能力の本来の持ち主である事が判明した。

 ミチルは誕生してから直に、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の強大な力に蝕まれていた。

 そんな彼女を救う為に、神園博士が娘であるミチルに対して因子摘出手術を行い、

彼女の命を救ったのだそうだ。

 その代わりに声を失い、病弱な体となってしまった後遺症が残ったけれど…

 後にこの電子の謡精(サイバーディーヴァ)の因子は皇神の裏工作により回収され、

プロジェクトガンヴォルトの過程で生まれた因子適合用の実験体クローン、

「デザイナーチャイルド」…そう、私に移植される事となったのだ。

 …まさかこんな形でアキュラの妹のミチルと関わる事になるなんて思わなかった。

 そして、私の第七波動でミチルの体調が良くなった理由も判明した。

 この力は、元を正せばミチルの力だったのである。

 …この事実は、私の心を打ちのめした。

 何故ならば、私は…作り物だったから…皇神に作られた、能力者だったからだ。

 

『私は…作り物だったんだ…電子の謡精(サイバーディーヴァ)を扱う為だけの、皇神に作られたお人形…

ううん、()()()()()()()()()()()…それが、私だったんだ…

モルフォ…私のこの想いも、願いも、作り物だったのかな…』

『シアン…そんな事は無いわ! 確かに生まれはそうなのは分かったわ

でも、シアンが今まで生きてきたその過程…

GVとの日々は皇神に作られた物なんかじゃないわ!

そしてその日々で培われた想いも、願いも、そして想い出は、

間違いなくアタシ達の中でその時に出来た物なのよ!』

『モルフォ…』

『それに、そんな事でGVがアタシ達を見捨てるなんて思う?

…アタシ達のオウカに対して酷い感情を持っていた事だって受け入れてくれたんだもの

GVだったら間違いなくそんな事を当たり前のように受け入れるわ!』

「…………モルフォの想った通りだよ、シアン…

二人の生まれが何であれ、僕の二人を想う心は決して揺らぐことは無い

むしろ僕は嬉しいんだ、こうして二人の起源を知ることが出来たんだから…

それに僕だって皇神に作られた能力者…シアンと同じなんだ」

 

 GVはネームレスの時の演技を止めて、私に対して優しく語り掛けた。

 …GVはこんな私でも当たり前のように受け入れてくれる。

 愛してくれている。

 この揺るがぬ意思は、私達の事を何時だって助けてくれた。

 この後に起こった再び皇神に攫われてしまった時だって、

あの暗黒の空間の時に敵対していた私に対してだって、その意思を貫き通したのだ。

 

『ほらね? 聞いたでしょ、シアン…GVはこの事実を聞いても、

アタシ達の事を想ってくれているわ…迷いもなく、揺らぐこともなくね

それに、シアンの本心とも言えるアタシがこう言ってるのよ?

シアンだって、本当は分かっているはず…

ただその事実が重かったから、GVに甘えたかったのよね…だったら甘えればいいわ

今はモニカもジーノも向こうじゃ忙しいみたいだし』

『GV…モルフォ…』

「…………シアンは今知った事実に押しつぶされようとしていたんだ

だから僕はそれを支えて跳ねのけてやるさ

…僕はあの時からシアン達に甘えてばっかりだった

だから今度は、シアン達が僕に甘えて欲しい」

『え…アタシは…このくらいどうって事…』

「…………モルフォ、僕にはそんな誤魔化しは通らない

本当はモルフォだってこの事実に打ちのめされている事くらいはっきりと分かる

僕は二人の想いによるコミュニケーションを、あの時からずっとして来たんだから」

『GV…やっぱりGVには隠せないわよね…』

 

 私達は元の大きさに戻り、再び作業に戻ったGVに寄り添った。

 そんな私達を、GVは「波動の力」の結界によって優しく包み込む。

 この「波動の力」はGVの生命の波動…その事が分かったお陰で、

この結界に包まれている事が今まで以上にとても心地よく感じるようになった。

 …本当は疑似的な「アレ」をして欲しかったけど、ここは敵地。

 そんな隙だらけな事をする訳にはいかないので、

このミッションが終わったらおねだりしてみようと思う。

 最近は今の私達に夢中だったからずっとご無沙汰だったし…

まあその代わりにオウカのちょうk…訓練に割く時間も出来ていたけれど…

 そう思いながらGVの作業を暫く眺めていたら、

モニカさん達からの通信が復活したので、私達は元の電子のサイズに戻った。

 その際、ミッションから帰還したアシモフさんも通信に参加していた。

 

(ネームレス、そちらの調子はどう?)

(ええ、今の所順調その物よ、モニカ)

(こっちの作業はほぼ完了したぜ、ネームレス

…アシモフ? どうしたんだ、そんな黙りこくって?)

(いや…私はGV…ネームレスの姿を見たのは初めてだったからな…

普段のGVとのギャップに驚いていた)

(確かにその気持ちは分かるぜ…あのGVがこんな美少女になっちまってるからな)

(私もよ、アシモフ…事前情報がなきゃ、まずGVだなんて気が付かないわ)

(皆がそう思ってくれているのなら、私はこの姿になった甲斐があったと言えるわ

…アシモフ、少し訪ねたい事があるの

このデータバンク施設で以前アシモフが教えてくれた事…

プロジェクトガンヴォルトに関する情報を見つけたわ

その時の非検体で、「タケフツ」という能力者の事を知ったのだけれど…

これは貴方の事かしら? …皆の居る手前だから、答えたくないならそう言ってよ?)

(大丈夫だ…私はその過去をモニカのお陰で乗り越える事が出来たからな

…その通りだ、ネームレス…私はこの時非検体となった事が切欠で、

能力者を救出し、能力者の人権を守る為の組織、フェザーを創設する決心をしたのだ)

(そうだったのか…アシモフ…

そんな経験をしてたら、確かにこの組織を立ち上げた理由が良く分かるぜ)

(…アシモフ、話してくれてありがとう…私はこれからも、貴方を支えるわ)

(モニカ…何時も済まないな…これからも私を後ろから支えて欲しい)

(ええ、もちろんよ…アシモフ…)

 

 通信先の向こう側でアシモフさんとモニカさんがいい雰囲気になっているのが分かる。

 モニカさんが能力者になった後、二人は恋人同士になったのは知ってたけど…

 それにしても、甘い。

 通信越しにこっちにまでその甘さが伝わってくるだなんて、

二人は相当仲良くなっているのが分かる。

 …やっぱりモニカさんも、蒼き雷霆で骨抜きにされているのだろうか?

心なしか、アシモフさんに対しての声が酷く甘く聞こえる時がある。

 

(うわぁ…こっちで甘い空間が出来上がっちまった…どうしてくれんだ、ネームレス!

この二人、こうなっちまったら三十分くらいこのままなんだぞ!!)

(その甘い空間を作ってるモニカとアシモフの仲を後押ししたのはジーノなんだから、

自業自得よ? それに貴方だってアリスに懐かれてるじゃない?)

(あんなちんちくりんに懐かれても嬉しくねぇ! …確かに悪い気分じゃねぇけどよ…

俺はもっとこう…ボン! キュ! ボン! なお姉さんに迫られたいんだ!

お前も男なら…今は女だけどよ…分かるだろ?)

(私にはシアン達が居るから…)

(あぁ…お前はシアンちゃんの事しか頭にない奴だったな…

いや、ちょっと待て…「達」ってどういう事だ!? 説明してもらうぞ、ネームレス!)

 

 そんな事をアリスちゃんが知ったら、

その姿で迫られてからかわれるのがオチだと思うよ、ジーノさん。

 アリスちゃんは私達の第七波動を取り込んで能力が強化されたけれど、

今まで使っていた夢幻鏡(ミラー)の能力が使えなくなった訳じゃないと思うし。

 そんな和やかな雰囲気の中、

GVはジーノさん達とやり取りをしつつ、情報を引き続き収集していく。

 皇神の持つ無人戦車が能力者たちの暴走に対抗するために作られた物であるとか、

 紫電もプロジェクトガンヴォルトに参加していた事とか、

 神園博士の改竄された第七波動、

および能力者の危険性を記した資料が出て来た事とかが判明した。

 その中で私達が関心した情報と言えば、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 …アキュラの今までしていた行為は完全に無駄所か、

むしろ能力者を無差別に拡散させる行為である事が、この情報によって判明した。

 この情報を元に、アキュラのやっている事を止められればいいのだけれど…

それに七宝剣の能力者が撃破された時のあの現象…

ひょっとして、この能力の拡散を防ぐのが目的だったのかもしれない。

 そして、遂にGVが探し求めていたあの情報を…

歌姫(ディーヴァ)プロジェクトの情報を発見することが出来た。

 この情報は「アメノウキハシ」のみだけでは無く、ここにも存在したのだ。

 その内容は私達の知っている通りで、紫電が進めているプロジェクトであり、

電子の謡精(モルフォ)の歌が持つ精神感応能力を応用し、世界中の能力者を洗脳、管理する計画であった。

 

(何という悪鬼(デーモン)の所業…これは許される事では無い!)

(能力者の人権を、完全に踏みにじってやがる…)

(そうね…これは決してあってはならない事よ)

(…………だけど、合理的ではある)

(ネームレス? まさか、この計画を肯定すんのか?)

(…この国の視点で考えれば、この計画が成功した場合、

武力の確保と同時に治安の問題も一気に解決する…それも短期間でだ

この計画を立てた紫電という人物は恐ろしく合理的だ…でも…)

 

 GVは意外な事にこの計画その物は合理的であると評価していた。

 恐らく転生前の一般人の視点を理解できていたからこそだろう。

 でもネームレスの演技を忘れており、心なしか感情を必死に抑えている気配を感じる。

 そして、その感情が遂に爆発した。

 モニカさん達が建前でネームレスと呼んでいた事をすっかり忘れさせてしまう程に…

 

(だけどシアン達の犠牲で成り立つこの計画を、僕は許す事何て出来ない!

肯定何て、出来るはずが無い!

この計画は絶対に潰す…例えシアン達が関わっていなくても、

これだけは、認める訳にはいかない!)

(…いつも冷静なGVがあんなに怒り狂うだなんて)

(こんなGVを見たのは初めてだぜ…

それだけシアンちゃん達の事が大事なのは分かるけどよ…)

(当然だ、私もモニカがこの計画のサクリファイス(犠牲)になったらと思うと、

その怒りを抑えるのは不可能だろう…GVの気持ちも理解できる

…近い内にこの「アメノウキハシ」に対する強襲ミッションを計画する必要があるな)

(でもアシモフ、あの場所の皇神の戦力は凄まじく集中しているわ

時間を掛けて、上手く計画を立てないとこちらがやられてしまう…

幸い、計画の要であるシアンちゃんはGVが確保しているわ

だから落ち着いて、穴の無いように計画を立てましょう?)

 

 そうして情報を取り終えたGVはハッキングの痕跡を「波動の力」で無くし、

データバンク施設から無事脱出し、ミッションを果たした。

 そして、今の私達が再び皇神に攫われるまで、後五ヵ月に迫っていた。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。





※命を失った能力者の能力因子は魂に乗って彷徨う事について
これは霆龍玉(ていりゅうぎょく)及び吼雷降(こうらいこう)を覚える為に必要なABスピリット…
爪本編におけるアシモフの魂、その存在から出来た妄想がこの二次小説で形になった物です。

※攫われるまで後五ヵ月もかかった件について
GV達は学校に通っておらず、徹底して隠れていたので発見がここまで遅れました。
皇神が海底資源の復活によって余裕が出来て、
どっしりと構えながらロロの事も含めた調査をしていたのも理由の一つです。
では逆にどうやって発見されたのか…
予め言っておくと、GV達がヘマをしたわけではありません。
それは単純な時間と人員による人海戦術です。
この五ヵ月の間、フェザーは「アメノウキハシ」に強襲を掛ける為の計画や、
その活動を能力者の救出のみに集中させ、重要施設へのテロ行為がその期間無くなったお陰で、
皇神は人員を多く動員する事が出来たのです。
メタ的に言うと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。