【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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第六十八話

 僕がノワからの依頼を完遂させてから三日後、

アシモフからの依頼…アキュラとアシモフの戦いのジャッジの依頼が来た。

 

『私の伝言を伝えてくれた事、感謝する』

「…その様子だと、上手く戦う流れになったみたいだね、アシモフ」

『ああ…感謝するぞ、GV…もうわかっていると思うが、私からの新しい依頼だ

…私とアキュラとの戦いのジャッジを頼みたい

場所は…今では全焼し、完全な更地となってしまったあの場所…

皇神未来技術研究所のあったポイントだ

そこでGVは我々の戦いを見届け、招かれざる第三者の介入を防いでほしい』

「招かれざる第三者…ですか?」

『ああ、この場所は仮にも皇神の施設があった場所だ

奴らの目があってもおかしくは無い…この戦いはお互い重要な意味を持つ…

そしてこの場所での戦いはリスクはあるが、

お互いの因縁の場所であるここで行う必要がどうしてもあるのだ

我々の戦いは今から一週間後に始まる…その間にGVも準備を整えて欲しい』

「…了解、その依頼引き受けるよ…

アシモフ、お互いぶつかる以上、悔いの残らぬように戦って欲しい」

 

 こうして僕は二人の戦いを見届け、第三者の介入を阻止するミッションが始まった。

 今回の装備は「鳴神のレンズ+」×2 「セラフリング+」「神盾のペンダント+」、

ダートリーダーの受雷針カートリッチは「オロチ」を主体に「ナーガ」等を使い分け、

そして、アキュラの持っていた銃…「ボーダー」を持っていくつもりだ。

 

 この銃はアキュラのお父さんが使っていた形見の銃なのだとノワから聞いている。

 ならば、この銃を通じて神園博士にもこの戦いを見届けてもらいたい…

故に、僕はこの銃を持っていくつもりだ。

 それに、この銃を僕の目から離すのは正直怖いのもある。

 

 そして一週間後の、かつて皇神未来技術研究所のあった更地にて、

アシモフとアキュラの二人が対峙していた。

 アシモフは今回の戦いにダートリーダーと共通規格のあるハンドガン、

及び複数の特殊な手榴弾に手投げナイフを装備していた。

 

 対するアキュラは機動力重視だと思われる新型の強化ジャケットに、

フォトンレーザーを発射できる銃、そしてあのエクスギアに似た小型のX字の盾を装備し、

そしてバトルポッド「ロロ」を従え、アシモフと対峙していた。

 この時のアキュラの表情は、僕の知るアキュラとはまるで違っていた。

 

 あの時瞳の奥にあった憎悪が完全に消えており、

その表情はまるで憑き物が落ちたかのように穏やかな物だった。

 この様子ならば、あの時ストラトスさんを撃った時の、

あの愚行を行う事は無いと確信できる。

 

 そして、アキュラ側にも僕と同じように戦いを見届ける人が()()()()()

 ノワと、僕の前世で見覚えのあった少女…ミチルの姿があった。

 …シアンからミチルに対して、今までの中で最大級の警戒の想いを感じる。

 僕の前世の世界に居たミチル…美晴(みはる)は僕に対して積極的にアプローチをしていたのだが、

僕はシアンの事を優先する為に彼女を振っていた。

 

 それでも彼女は諦めておらず、その後あった話し合いを経て、

ようやく諦めてもらう事が出来たのだ。

 シアンはその事を思い出しているのだろう。

 また同じことがこの世界でも起こるのではないのかと。

 

 僕はミチルの様子を見た。

 その姿は前世の時の黒色だった髪が白色に、そしてアキュラと同じ赤い瞳をしていた。

 その儚い雰囲気も、どこか守ってあげたくなる所も変わっておらず、

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな彼女は、アキュラに対して心配そうにその視線を送っている。

 

 …気のせいだろうか? ミチルのアキュラに対して送る視線が、

シアンが僕に対して送る視線と重なって見える。

 これは既にP(フェニック)-ドール形態になっているロロにも同じ事が言える。

 ロロならばまだ僕は理解できるけど…まさか、ミチルはアキュラの事が…?

 

 …これ以上深く考えるのはやめよう。

 恐らくこの問題はノワが何とかしてくれるはずだ…きっと。

 そして僕はこの事を頭の隅に追いやり、

今から始まる二人の戦いに水を刺されないように、

「波動の力」でここら一帯を封鎖した。

 

 そして、その事が合図となったのだろう。

 二人の戦いが始まった。

 まず先手を打ったのはアキュラだった。

 その身を瞬時に空中に高速移動しながら、身に覚えのあるレーザーを発射した。

 

(あのレーザー…あれはメラクの使っていたSPスキル、「レイジーレーザー」か!)

 

 そしてアシモフはそのレーザーを余裕を持って避け、

ハンドガンでアキュラを狙おうとするが、

別方向からロロが同じレーザーを放った事が切欠で、

アシモフは回避に専念する事となる。

 

 そう、このレーザーは亜空孔でレーザーの進路を変更出来るのだ。

故に、避けた筈のレーザーがアシモフの死角から迫り、カゲロウを使わされた。

 アキュラは一定以上の距離をアシモフに対して稼いでおり、

決して自分から近づこうとはしなかった。

 

 これは以前の僕との戦いの経験…雷撃麟によるハッキングを警戒している。

 あの機動力のある新型の強化ジャケットは、

そんな雷撃麟の範囲外を常に維持する事が目的なのだろう。

 だけど、アシモフはフェザー最強の戦士。

 

 この程度でどうにかなるような人では無い。

 アキュラは気がついていないみたいだけど、少しづつ間合いを詰められている。

 そしてアシモフが持つハンドガンがアキュラを捕え、アキュラもまたカゲロウを使わされた。

 その事にアキュラが動揺している隙に、アシモフは手投げナイフをアキュラに投げつけた。

 

 そのナイフをアキュラは回避するが、そのナイフに繋がれていた細い鎖を見逃し、

 その鎖がアキュラの腕を捕えた。

 そしてアシモフはその鎖を引っ張り、強引に自身の雷撃麟の範囲内に収め、

アキュラの事を無力化しようとした。

 

 そこにロロが「波動の力」で強化したビットで割り込み、アシモフの鎖を切断しつつ、

ブレイジングバリスタをアシモフの足元に放って視界を塞ぎ、アキュラを守った。

 アキュラはそんなロロにお礼を言いつつ、あの時のエリーゼが使っていたスキル、

ジェラシックゴルゴンをアシモフに向けて放った。

 

(やはり、アキュラは「波動の力」を解析していたか…

その制御をロロに任せる事で、自身は戦いにに集中出来るようにしているみたいだ)

 

 アシモフはその光を正面からまともに浴びてしまい、

あの時のアキュラと同様に、石化状態に追い込まれた。

 だけどその意志の強さは流石と言うべきか、即座にその石化を解き、

 ハンドガンに「波動の力」を乗せ、アキュラを狙い打った。

 

 アキュラはとっさに盾を構えつつ、ロロがその盾を「波動の力」で強化して、

アシモフの攻撃を防いだ。

 こうしてアキュラとロロの動きを見ると、互いに互いを信じあっており、

こんな緊迫した戦いの中であるのにも関わらず、僕は笑みを浮かべてしまった。

 

 そういった戦いが二人の間で展開される中、僕の張った結界の範囲外に

招かれざる客が…皇神兵達が第九世代戦車を複数連れて現れた。

 …ここからは僕の仕事だ。

 僕はノワに近づき、事情を説明した。

 

「ノワ、外に二人の戦いを邪魔する招かれざる客が来たみたいだ」

「そうですか、この場は私にお任せを…

ガンヴォルトは招かれざる客への御持て成しをお願いします」

「それもとびっきりの物を…ですね?

…迸れ 蒼き雷霆よ!(アームドブルー)

招かれざる者を阻まんと叫ぶ、誓いの雷鳴を響かせろ!」

 

 僕はダートリーダーを構え、結界の外に居る皇神兵に対して戦闘を開始した。

 その皇神兵は最新式の装備をしており、第九世代戦車も改良されているようだ。

 そのせいなのだろう、何時もよりも殲滅に時間がかかっている。

 まあそれでも、この程度では僕を止めるのは不可能なのだけれど…

 

「これが…蒼き雷霆(アームドブルー)…ガン…ヴォルト…なの…か」

「俺達は最新式の装備に改良型の第九世代戦車を複数与えられたんだぞ!

それなのに…このザマなのかよ…」

「まだガンヴォルトは髪を解いていない…本気すら出していない状態で、コレか」

 

 そうして僕は招かれざる客を丁寧に持て成し、丁重にあの世に送り届けた。

 そして再びアシモフとアキュラとの戦いを見届ける事に戻ったのだが、

そろそろ決着が付きそうな雰囲気があった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 アシモフが持っていた手榴弾が既に無くなっていた事から、

どうやらこの手榴弾でアキュラの隙を作り、その隙にヴォルティックチェーンを放ったのだろう。

 だけど、二人を捕える事は出来たみたいだけれど、ロロのビットはまだ無事の様だ。

 恐らく、それが理由なのだろう。

 

 捉えられていた二人の瞳に諦めの雰囲気が無かった。

 ミチルはそんなアキュラとロロを見て、心配そうに見守っている。

 ノワは相変わらずの無表情であったが、それでも何処か心配している雰囲気を感じる。

 謡精の目で見たノワの尻尾も、心なしか元気が無い。

 

 そして、アシモフはヴォルティックチェーンを完成させ、

アキュラ達に止めを刺そうとしたのだが、

それよりも一歩早くアキュラ達が持つ切り札を発動させた。

 それはロロが持つ全てのビットに「波動の力」を乗せ、

嘗ての自身が持っていた怨嗟を断ち切る為の絶爪の一撃。

 

「舞い踊るのは我が半身…討滅せしは狂った決意(殺意)…怨嗟断ち切る無尽の絶爪!

行くぞアシモフ! お前に対する俺の持っていた復讐心諸共、

お前の過去(過ち)を討滅する! 天魔覆滅! ストライクソウ!」

 

 その展開したビット兵器が「爪」の字を描く斬撃の嵐に「波動の力」を乗せ、

怨嗟を断ち切る一撃を放つアキュラとロロの新たなSPスキル「ストライクソウ」。

 この一撃がヴォルティックチェーンを破り、

同時にアシモフはこの一撃を防ぐことに「波動の力」を使いすぎた影響で、

オーバーヒートを起し隙を晒してしまった。

 

 その隙をアキュラは見逃さず、アシモフにその機動性を生かして即座に接近し、

その銃をアシモフに突きつけた。

 だが、アシモフも負けじとハンドガンをアキュラと同時に突きつけていた。

 …お互いその状態で睨み合った。

 

「…その引き金を引くといい、アキュラ、君にはその資格がある」

「…………」

「分かっているのだろう? ()()()()()()()()()()()()

「……どいつもこいつも、命を粗末にしすぎる…今回は俺の勝ちだ

そして、この勝負を持って、俺はお前を許すつもりだ」

「……私は君の父親の仇…エネミーだ、そんな私を許すと?」

「……いけないか?」

「君の事はGVのレポートを通じてある程度知っていたつもりだったが…

この短期間の間に、随分とスピリット(精神)的な成長をしたようだ

…サンクス、私はこれでパースト(過去)を清算できそうだ」

「…礼を言うのならば、俺では無くガンヴォルトに言うんだな」

 

 そうアキュラは言い残し、ロロとミチルとノワを引き連れ、この場を去った。

 その時のミチルとロロはアキュラの両腕に抱き着き、

嬉しそうにアキュラにその笑顔を向けていた。

 ノワはそんな三人を見て、ほんの少しだけ表情を崩し、微笑んでいた。

 尻尾はこれでもかと喜びを表現して自己主張をしていたが…

 

 アシモフはこの戦いで負けてしまったが、

その表情はあの時のアキュラと同様、どこか憑き物が落ちた様な、

今までため込んでいた何かを解消したような、そんな表情をしていた。

 そうして僕はミッションの完了をアシモフに報告し、

シアン達の待つオウカの屋敷へと戻ったのであった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。




※ストライクソウの詠唱が変化している事について
この二次小説内のアキュラの精神的な成長、そして「波動の力」を上乗せしている事が理由で、
その内容が若干変化しています。
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