第六十九話
――皇神の衛星拠点「アメノウキハシ」にて
「紫電様、モルフォの居場所が判明しました」
「本当かい? それはよかった!」
モルフォの探索を始めて一年半、僕が思ったよりも早く発見することが出来た。
最近のフェザーは能力者の保護と言う名の拉致のみに集中してくれていたお陰で、
他の部署からも人員をかき集めて探索をすることが出来た。
これが功を奏したのだろう。
「それで、彼らの居所は?」
「ハッ! どうやら、桜咲家の娘の住んでいる屋敷に潜伏していたようです!」
「桜咲家? …やはり、フェザーと繋がっていたのか」
桜咲家は日本国内有数の大財閥を持つ名家。
我が皇神とも桜咲モータースとの契約を通じて繋がっている。
最近、財閥解体の危機にあったのだが、内部に巣くっていた工作員達を叩き出し、
その危機を乗り越えたのだとか。
恐らくこの時に叩き出された工作員達の代わりに、
フェザーの工作員がどさくさに紛れて入り込み、
何かしらに手段で桜咲家とコンタクトを取り、
フェザーと繋がった…繋がってしまったのだろう。
あの屋敷に居た娘は実質人質みたいな物…フェザーめ…まさかここまで食い込んで来るとは。
「これは桜咲家に配慮した方法でモルフォを確保する必要があるね…
うん、最新式の光学迷彩装備をした特殊部隊があったよね?
彼らと…念の為、
「ハッ! ただちに手配します」
「やれやれ…これでようやくプロジェクトが進むよ
この施設が無駄にならずにすんでよかった」
このプロジェクトは本当に重要なプロジェクトなんだ…
皇神の為なのは当然だけど、それ以上に、
これを達成して僕の地位を上げ、不動の物とする事で、皇神所属の能力者の皆を守る。
僕の管轄外の部署だった等と言うふざけた理由で、
非道な実験を重ねて潰されたストラトスやエリーゼの様な事を繰り返す訳にはいかない。
…本音を言えば、一人の少女を…モルフォを犠牲にしてしまうのは心が痛い…
だが、それでも、僕の手の中に居る皆を守る為にはこれしか方法が無い。
それに、あの時イオタにも諭された様に、僕自身が迷うと皆が不安になる。
だから僕は迷わない。
僕のこの行いは正義だ。
だからガンヴォルト…モルフォを返してもらうよ?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
GV達がオウカの屋敷で生活するようになってもう五ヵ月。
遂に運命の日が…
GVはミッションに出かけて、オウカは女子高に通って、
今の私達はオウカの屋敷の掃除や夕食の仕込みをしていた、そんな当たり前の日常だった。
突然、光学迷彩装備の皇神兵がオウカの屋敷へと突入してきたのだ。
その時の私達はモルフォがその存在を感知出来たお陰で、
空を飛ぶことで一度は逃げ切ることが出来た。
でも、そんな私達の前に、
メラクが
それに対して私達は、時には高速で空を逃げ回り、
時には二人で電子結界を同時に展開して抵抗していた。
そうして抵抗している内に、ミッションから戻って来たGVが私達の視界に入った。
この時のGVはテールプラグが解けた本気モードで物凄い速度でメラクに目掛けて飛翔し、
射殺さんばかりの視線と殺気をメラクにぶつけて居た。
この時、私達がGVとの能力共有をしようとした事がいけなかった。
メラクが動きを止めた私達諸共、今までよりも一回り大きな亜空孔で、
その時二人で張っていた電子結界諸共、私達を転送したのだ。
そして、その先に待っていた紫電達に拘束され、
私達は再び、皇神に攫われてしまったのだった。
「シアン! モルフォ!」
「これにて任務完了…疲れたから僕は先に帰るね?」
「ご苦労だった、メラク…この場は私が殿を務めよう」
「そこを退け…お前に構っている暇なんて無い! 僕の邪魔をするな!!」
…GVから今まで感じた事の無い程の怒気と殺気を感じる。
そして、それを一身に受けているイオタはそんなGVに気おされながらも、
メラクの殿を果たし、この場を離脱した。
ただし、それ相応の手傷を代償に受けていたけれど…
「ぐ…この短期間でここまで追いつめられるとは…だが、殿は果たした…離脱する!」
「逃がしはしない! この場でお前を滅ぼす!」
『GV! この人を今追いかけても意味が無いわ!
…向こうに居るアタシ達はまだ大丈夫だから、今はフェザーの皆と連絡して、
この対策を取りましょう? 確かそろそろ、
「アメノウキハシ」へと突入するミッションが来るってアシモフから連絡があったでしょう?』
『GV…私達は直ぐにどうこうされる訳じゃない…
だからお願い、元の優しいGVに戻って…それに、今はオウカの事が心配なの
私達は最初、オウカの屋敷に突入してきた皇神兵に追われていたから…』
私達は元の大きさへと戻り、今の私達が攫われて怒り狂っているGVに寄り添った。
GVはそんな私達の声と想いを受け、その怒りと殺気を少しづつ沈めていった。
そうしてGVは落ち着きを取り戻し、皇神兵の襲撃にあったオウカの屋敷へと戻った。
…オウカの屋敷は、襲撃があったのにも関わらずに、
一部の窓が割られている以外は無事だった。
オウカ本人も丁度帰って来たばかりだったらしく、無事なのを確認出来て私達はホッとした。
GVは割られていた一部の窓や、一部荒れていた部屋の内部を「波動の力」で修復し、
襲撃前の元のオウカの屋敷に戻した。
…GVは目に見えて落ち込んでいた。
今の私達を守る事が出来なかったからだ。
そんなGVに対して、オウカは優しく抱きしめる。
…今の私達は、こうやってGVに温もりを与える事が出来ない。
だから、このオウカの行為に私達は感謝した。
そうしてしばらくしてGVが落ち着いてオウカが離れたそんな時であった。
GVが良く使っている通信機から聞きなれない声が響いてきた。
『…やれやれ、あのイオタをこうも容易くあそこまで追い込むなんてね』
この声…! 紫電の声だ! 恐らく、彼の能力である
この能力はデータバンク施設によると、
思念をエネルギーに変換し、空間や物体に干渉する最も原始的な第七波動であると言われている。
そして、戦闘能力に限れば
「…お前が紫電か」
『ふぅ、良かった…周波数はこれで合っているみたいだね
…初めまして、僕は紫電…僕の事を知っているなんて光栄だよ、ガンヴォルト
君やアシモフ、そしてアキュラが倒してきた能力者達の直属の上司さ』
「…………」
『君はこれまでうちの
そして、
挨拶と、お礼くらいはさせてもらおうと思ってね…小切手でいいかい?』
「…ふざけて居るのか?」
『ふざけて何て居ないさ、僕は本気でそう思っているんだ
…特に、ストラトスの事についてはね』
「そう思っているのならば、シアン達を返すんだ!」
『できない相談だね…彼女は今回のプロジェクトに欠かせない姫巫女だ』
「プロジェクト…
またシアン達に、歌いたくも無い歌を歌わせるつもりか!」
かつて皇神は、私達の歌を能力者の居場所を割り出すソナーのように使っていた。
私達の歌は、能力者限定で他者の精神に
その力を増幅し広範囲に拡散することで歌に共鳴した
その技術を応用する事で全ての能力者の精神を洗脳する事…
それが、
『もうその情報を掴んでいたとはね…その情報源はネームレスだね?
彼女には僕ら皇神もとても手を焼いていてね…
神出鬼没、そして確実に情報を抜き取り、痕跡すら残さないその手腕、
正直、我が皇神にとって君以上に厄介な存在さ
その見た目麗しい外見も含めてね…
お陰で、一部の皇神関係者の中にファンが出来てしまった程さ』
確かに、GVのあの姿は私達も新しい
それにメラクも言っていたように、ネームレスの姿のGVは皇神にとって厄介な存在の様だ。
あの姿のGVって、どうにも色気が凄いのよね…
だから敵であるはずの皇神にもファンが出来てしまうのだろう。
「…宗教に教育、マスメディア…洗脳なんて珍しい事では無い
お前のやっている事は実に効率的だ
このプロジェクトが上手くいけば、戦力と同時に治安回復も出来るのだから」
『へぇ…ガンヴォルト、分かってるじゃないか
僕のこのプロジェクトの有用性が…その上で、
君はこのプロジェクトを阻止するつもりなのかな?』
「その通りだ、紫電…僕は必ずシアンを取り戻す」
『…それじゃあね、ガンヴォルト
(君とはもう少し出会い方を間違っていなければ、
僕の良き理解者になれただろうに…実に残念だ)』
そうしてGVの通信機からの通信は途絶えてしまった。
GVは早速フェザーにこの事を連絡し、その対策を練る事となった。
…あの時、メラクとイオタが復活していた事、そして、
あの紫電の言動…もしかして、七宝剣の能力者達は何らかの手段で復活しているのかもしれない。
『紫電って野郎…明らかに俺たちをナメてやがるぜ…!』
『落ち着け、ジーノ…たった今、諜報班から報告が入った
どうやらシアンは皇神の衛星拠点「アメノウキハシ」に連れ去られたようだ
これまで得た情報通り、衛星軌道から全世界にモルフォの歌を拡散するのが狙いだろう
予定よりも少し早いが、「アメノウキハシ」強襲ミッション…
いや、「
『もう計画その物は出来上がっているのよね…
でも、
GVが言うには倒したはずのメラクとイオタが出て来たそうね?
という事は、デイトナやカレラ達も出てくる可能性も高いと考えられるわ
だから、出来ればこの装備が完成するのを待って欲しいのだけれど…』
「恐らくですが、それを待っていると
だからモニカさん、折角の新しい装備だけど…」
『…そうね、私も能力者である以上、無関係ではいられないわ
ごめんなさい、GV…』
もしGVの新しい装備の新型のプロテクトアーマーがあの時あったら、
GVは左腕を無くさずに済んだのかな…
せめてあの時、私達がGVと合流する事を優先していれば…!
私達はそう思いながら、GV達の話し合いを見続ける。
そんな時、アシモフの通信機からとある人物…ノワさんから連絡が入ったのだ。
どうやって察知したのか分からないけど、
どうやらアキュラ達はこの計画に協力してくれるようだ。
…GVからノワさんは悪魔である事を私達に伝えられている。
恐らく、私達の知らない何かしらの方法でこちらを察知したのかもしれない。
それと少し間をおいて、今度はアリスちゃんがGVの前に現れた。
アリスちゃんはこの五ヵ月の間、実はオウカの屋敷へと足を運び、
私達やオウカ、そしてGVから料理の仕方や勉強を見て貰ったりしていた。
そして時にはGVと共同ミッションをしていた時もあったのだ。
今回のミッションはアリスちゃんの事はカウントされていない。
その力が強大で有用なのは間違いないが、まだフェザーに所蔵して日が浅いからだ。
だけど、予定よりも計画が前倒しになった影響と本人の希望も考慮し、
彼女もミッションに参加する事となった。
そうして「チームシープス」が、頼もしい味方が二人も増えた状態で再結成されたのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
僕はオウカの屋敷にあるシアンの部屋に足を運んでいた。
必ずシアンの事を助ける事を決意する為に。
…その机の上には、
…このペンダントの事を僕は知らない。
恐らく、あの時の「青写真」を聞かせてくれた時と同じ様に、
僕がミッションに出かけている間にコツコツと作成していたのだろう。
…このペンダントは僕にとって何も効果の無いペンダントのはずだ。
…僕は今装備している「神盾のペンダント+」を外し、
シアンが作った「手作りのペンダント」を装備した。
このペンダントから、シアンとモルフォの強い想いが伝わってくる。
…僕は謡精の目でこのペンダントを見た。
どうやら今まで集めたこの小さな宝石は、
だからこうして二人の想いをこのペンダントから強く感じ取れるのだろう。
この想いがあれば、
『GV…いいの? そのペンダントは…』
『何も効果が無いのよ? アタシ達としては嬉しいけど、
でも、こんな事でGVの足を引っ張りたくないわ
せめて一緒に神盾のペンダント+も…』
「いいんだ、シアン、モルフォ…
このペンダントから、今の二人の想いがこれでもかと込められている
だから、この想いが無くならない限り、どんな事があっても僕は戦える」
僕がそう言うと、二人は泣きそうな表情をして、僕に寄り添った。
…恐らくだけど、未来のシアン達に今のシアン達がもうすぐ追いつくだろう。
そして…僕は
あの時オウカが初めて未来のシアンを見て取り乱した時…
恐らく、シアン達が
…僕は例え守り切れなくて、シアン達が幽霊になってしまっても、
絶対に手放すつもりは無い。
今の僕ならば、「波動の力」でそれが出来る。
そして、シアン達がそれを嫌がっても、僕は止めるつもりは無い。
何があっても、絶対に…永遠に、離しはしない。
僕はそう、心に誓うのだった。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
ここ以降は独自設定のオマケ話みたいな物なので興味の無い方はスルーでお願いします。
※小さな宝石について
この想いを蓄積する機能というのはこの二次小説内の設定です。
シアン達はペンダント作成の際に、ありったけの想いを込めています。
故に、強くこの想いをGVは感じ取れるのです。
そして、この機能を謡精の目で看破した時、
手作りのペンダントの隠し機能を扱うことが出来るようになります。
この機能の元ネタは「アルトネリコ」に出てくるパラメノ結晶です。
※手作りのペンダントの効果について
この二次小説内の手作りのペンダントは、
小さな宝石の正体をGVが謡精の目で看破した為、隠し機能を扱えるようになりました。
その効果は、「カゲロウ」は使えませんが、
「必ず
必ずと付いているので、文字通り何度倒れても立ち上がります。
ヤンヤンガンギマリ状態のGVだからこそ出来る芸当であり、そしてこれが原因で…