私は今、なんと言葉にしたら良いか分からない程に嬉しい気持ちで溢れていた。
だってGVが私の事を一瞬だけとはいえ見てくれたからだ。
たったそれだけの事である。
でもどう表現したらいいか分からない程に、私は喜びで心を満たしていた。
恐らく歌も聞こえていたのだろう。
そうで無ければあの涙は説明出来ない。
あの時のGVは目に海水が入った等と言い訳をしたけどそんな痕跡はどこにも無かったのだ。
…でもここはGVの
私と転生前のGVとは何も接点などないはず。
私自身の過去を
まず、そもそも時間所か世界だって違う。
どう考えても可笑しいのだ。
…そこで私は、初めてGVに出会ってからアシモフに撃たれるまでの過去を、
とある仮定を加えて思い返してみた。
そう考えてみると思い当たる節がいくつかあったのだ。
機械に繋がれた私と表情の無いモルフォを見た瞬間、
GVはまるで大切な物を汚されたかのような、
強い怒りの感情を一瞬でも顔に出すほどに激しく怒り狂っていた。
モルフォの歌を聴いている時、まるで何かを懐かしむような、そんな表情をしていた。
「僕には前世の記憶がある」とGVが言って私が懐疑的な表情をしていた時、
何かを堪えるような悲しそうな表情をしていた。
私が髪を腰まで伸ばした姿を見た時、何かを確信したような表情をしていた。
私が空を飛べるようになった時、GVは私を抱きしめて嗚咽を漏らしていた。
その時に「青写真」を初めて歌った時なんて、もう涙で顔がぐしゃぐしゃだった。
それに恐らくだけど、これが一番決定的な事だと思う。
あの何もない空間には
今の私よりもGVの
でも…うーん…なんだか頭がこんがらがってきちゃったな。
今は考えるのはやめよう。
GV達が水着から私服に着替えようとしてるし、GVに寄り添って体の隅々まで観察しなきゃ。
『水が滴るGVも、また違った魅力があるなぁ』
私は今とても人様には見せられないだらしのない表情をしているのだと思う。
そのくらいこの瞬間は至福の時間なのだ。
もっと見ていたい。
もっと、もっと! あぁ…
次の機会はまた来年辺りかな。
うん、来年はもっとGVはカッコ良く、逞しくなってるだろうから楽しみだなぁ。
『ふふ…今日も一杯GVの事を知る事が出来ちゃった…明日はどんなGVが見れるかなぁ』
GV達が着替えを終わって各自着替え部屋から出て行く。
最後にGVが部屋から出て行く時、GVは忘れ物を確認してから部屋を出た。
その帰り道、夕暮れの綺麗な道を男友達と別れたGVは一人歩いて帰路に就いていた。
そしてGVに危機が迫っていた。
『……! GV!!』
GVは気が付いたのか振り向いて後ろから迫ってくるトラックに気が付いたが…
もう今から避ける時間は無い。
このままではトラックに撥ねられてしまう。
『ダメ! そんなのダメ…ダメなの!!』
そう叫んだその時だった。
急にトラックの動きが止まったのだ。
…いや、良く見ると非常にゆっくりとだが動いている。
GVも、周りの景色も同様だ。
…ここはGVの
もしかしてこの現象が起きているのは今GVは走馬燈を見ているからなのだろうか?
…私はこの瞬間の出来事を生涯忘れないだろう。
この
『私の歌が世界を越えてGVに聞こえたという事は…
もしかして、
なら、
今にして考えてみればなんて的外れな考えなのだろう。
私は歌がGVに伝わった事を理由に間違った答えに、偽りの希望に縋りついた。
私は今持てるありったけの能力を駆使してこれから起こりうる未来を打開すべく力を振るう。
『迸って!
天体の如く揺蕩え雷! 是に到る総てを打ち払わん!
ライトニングスフィア!!』
自身を中心に周囲に雷球を発生させる
皇神の戦車だってひとたまりも無いこの一撃。
こんなトラックなんて!! …そう思っていた。
だが無情にもトラックには届かない。
当たり前だ。
歌が届いた事実に目を背けていたがここはGVの
直接的な干渉など出来ようはずも無いのだ。
『……っ! なら!』
『響き渡るは謡精の歌声! 轟かせるのは龍の嘶き! 総身総躯、雷神と化せ!
アンリミテッドヴォルト!』
その事実に目を背け、GVを守るために盲目的に能力を行使していく。
その行為が無駄な事であると心のどこかで理解しながら…
『煌くは雷纏いし聖剣! 蒼雷の暴虐よ! 敵を貫け! スパークカリバー!!』
雷の聖剣は、届かない。
『閃く雷光は反逆の導! 轟く雷吼は血潮の証! 貫く雷撃こそは万物の理!
ヴォルティックチェーン!!!』
反逆の鎖も、
『掲げし威信が集うは切先! 夜天を拓く雷刃極点! 齎す栄光! 聖剣を超えて!
グロリアスストライザー!!!!』
これが元の世界だったら宝剣持ちの能力者でも一溜りも無いはずの一撃。
真の力を解き放った雷の聖剣をもってしても届かない。
この八年間、GVの役に立とうと鍛えた
しばらく時間が経たないと力を再使用出来ない状態に追い込まれた。
『でも…! まだ、まだだよ!!』
まだ私には
そのバリアをGVの前方に集中して展開した。
このバリアも生前の頃の練習の成果で、
集中して防ぎたい箇所に力を収束させる事が出来るようになっていた。
でもトラックはそんな私の努力を嘲笑うかのように無情にもバリアを透過して行く。
『そんな…!!』
……私にはもうこの
いや、そんな物は最初から無かったのだろう。
『嫌…嫌だよ! …誰か、誰かGVを助けて!!』
辺りを見回す。
誰も居ない。
ならばせめてとGVとトラックの間に自身を割り込ませ両手を広げて阻もうとする。
そんな私自身すら、トラックは無情にも通り抜けていく…
もう私には見ている事しかできない。
そして
『あ……あぁぁ……』
GVがトラックと接触した。
腕が折れたのを感じた。
肩が砕けたのを感じた。
折れた肋骨の骨が、肺を貫いたのを感じた。
両足があらぬ方向に曲がり、関節が砕けたのを感じた。
ゆっくり、ゆっくりとGVの体を
今この瞬間私は、私のこの体の事を心の底から恨んだ。
GVが壊されていく過程を強制的に見せつけた、この体を。
……
そして後に残ったのは、ぼろ雑巾の様に転がって血だまりに沈んだGVの姿だった…。
『嫌ぁーーーーーーーーーー!!! GV-------------!!!!』
私は涙を流し叫びながらGVに駆け寄った。
もう無駄だと、助からないと心の中で私自身が囁くのを聞きながらGVに意識を集中していく。
…辛うじて生きていた。
あんな暴虐に曝されながら、それでもGVは生きていたのだ。
だけどGVの周りに人の気配は、誰かが助けに来る希望は、無い。
GVが助かる可能性は完全に潰えた。
もう私に出来る事は何も…いや、一つだけあった。
まだ試していない事が…
…でももう、無駄な事であるのは分かっている。
これをやったってもうGVは…ならばせめて…死にゆくGVに歌を届けよう。
私が今持つありったけの気持ち全てをこの歌に込めよう。
そう、「
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪』
私は
―――――――――――――――――――――――――――――――――
僕のそばに居る声の主の強い焦燥の気配に後ろを振り向いた瞬間、
これはもう助からないと僕は悟っていた。
フラついたトラックが目前に迫っていたのだ。
この時、僕の脳裏に色々な景色が物凄い勢いで変化していく。
これが走馬燈と言う物だろうか? …未練は、山の様にあった。
まだあいつらに最新刊の漫画を借りっぱなしだ…それに夏休みの宿題も終わってない。
妹の宿題も見なくちゃいけないのに…父さん、母さんにもやってあげたい事が沢山ある。
それに声の主…
まだ僕は死にたくない!! でも、もうこの出来事は止められない。
そしてその時が訪れ、僕はトラックに撥ねられた。
一瞬体全体に痛みを感じたと思ったら、直ぐに痛みを感じなくなった。
そういえば父さんが言ってたっけ、痛みを感じて無い時が一番危ないのだと。
その時脳裏に浮かんだのはあの時海で見た
……歌が聞こえる。
それに僕の目の前に女の子…
彼女は歌っていた。
目から流れ落ちる涙すら拭わずに歌を歌っていた。
彼女の想いが、願いが、その歌に乗って僕の体を包み込んでいく。
…僕の全身の体に痛みが蘇っていく。
その痛みも暫くすると立ち所に静まっていく。
体が動く。
僕は立ち上がった。
彼女は立ち上がった僕を見てとても驚いていた。
悲しみに満ちた彼女の表情が見る見る内に満面の笑顔に変わっていく。
悲しみの涙もすっかり消えて新たに喜びの涙を流していた。
彼女は感極まった表情で僕に寄り添って来た。
僕は彼女に触れようとしたが……感覚が無かった。
そして何かを話しているようだったが、何を言っているのか分からなかった。
僕は顔を横に振りながら、
「喜んでいるのは分かるけど何を言っているのかは分からない」と言った。
彼女は少し残念そうな顔をして僕を見ていた。
「でも言葉に出来ない程に嬉しいという想いは伝わってくる」と少し間を空けて彼女に伝えた。
彼女はとても眩しい笑顔で僕に答えてくれた。
そして暫く見つめ合って次に瞬きをした瞬間、彼女の姿は無くなっていた。
……でも彼女の気配は残っている。
恐らくまだ目の前に居るのだろう。
だから僕は彼女にまだ伝えていない事を口にした。
「僕を助けてくれてありがとう」と。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。