【完結】謡精は輪廻を越えた蒼き雷霆の夢に干渉する   作:琉土

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Chapter:女神

蒼き雷霆に全てを捧げる狂愛に呑まれし万物の女神(パーシテアー)
雷霆の奉仕者(インサニティディーヴァ)
自らの狂愛捧げし愛しき人の望みを叶える為、世界を越えし力を振り(かざ)


第七十三話

 私達は真の力を開放した紫電によって、

かつてGVと触れ合い、戦い、転生させた場所、「特異点」と呼ばれる場所に居た。

 GVはここに来る前に左腕を失い、何度も力尽きては起き上がった影響で、

何時も着ているフェザーの制服もボロボロな状態だ。

 

 そんな状態のGVであったが、この空間に来て、

ここが何所なのかが紫電によって判明した途端、

その表情は場違いなほどの笑顔を浮かべた。

 そんなGVの事を私達は「詩魔法(ライフシャワー)」を用いて傷を癒し、制服を修復していく。

 

 そう、ここならば周辺被害を気にせず「詩魔法」を使用できるのだ。

 だけど、GVの左腕に関しては、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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 そしてそんなGVを見て…いや、私達の第七波動を感知した紫電は驚きを隠せないでいた。

 

「馬鹿な…ガンヴォルトの周囲に漂うこの第七波動(セブンス)反応は、

モルフォの物と限りなく同じ物…何者だ!? 姿を見せろ!!」

「シアンちゃんに限りなく近い第七波動だって!? ガンヴォルト!!

テメェ…シアンちゃんにゾッコンとか言いながら、浮気相手が居たのかよ!!」

「デイトナ…君が喋ると面倒になるから黙ってて欲しいな」

 

 私達は紫電に言われた通りに電子のサイズから元のサイズに戻った。

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 それと同時に私達は翼を展開し、私はGVの右側に、

モルフォは背中から寄り添い、紫電達を睨みつける。

 

 GVはそんな私の体をまだ無事であった右腕で抱き寄せ、

そしてモルフォに背中を預けながら、紫電達を見つめていた。

 GVは私達と本当に触れ合えるのかを確認していた。

 私達は完全に隙だらけな状態であったが、誰も手出しをする事は無かった。

 

 私達は互いに温もりを確かめ合った。

 オウカとの訓練の時の際の温かさとはやはり違う。

 私達が焦がれていた、望んでいた温もりは、やはりGVの物なのだ。

 そして、この行動に真っ先に反応したのはデイトナだった。

 

「シ…シアンちゃん!? シアンちゃんは確か紫電の野郎に取り込まれたはずだ!!

いや、それよりも…テメェ!! シアンちゃんから離れろ!!

シアンちゃんも、そんな変態野郎から離れるんだ!!」

「嫌だね…デイトナ、あの時も言ったけど、シアンは僕の物だ

誰にも渡しはしない…お前にも、紫電にも、皇神にも、絶対に渡しはしない!」

『機械で繋がれてる私を見て興奮する人の言う事を、如何して聞く必要があるの?

私はね、そんな物よりもGVの鎖で繋がれていたい…

貴方のその気持ちに応える事は出来ないの』

「そっ…そんなぁ~…シアンちゃ~ん…

ガンヴォルト! テメェがシアンちゃんをこんなにしやがったんだな!

絶対に許さねェ! その澄ました顔を蹴り飛ばす!!」

 

 次に反応したのはカレラだった。

 先ほどの詰まらなそうな表情から、一転して凄まじい歓喜に満ちた表情をしていた。

 どうやら私達の第七波動を感じて、そうなったようだ。

 カレラが第七波動を練りながら私達に話しかける。

 

「この第七波動は…! ガンヴォルトが何度も立ち上がっていた時に発生していた物と同じで候

それに…ぬははははははははは!! この出鱈目な第七波動、

まるで神その物と対峙しているかのようでは無いか!!

いい、いいぞ!! これぞ正に神の試練!! 乗り越えがいがあると言う物よ!!」

「それを僕が許すと思わない事だ、カレラ!」

『アタシ達は神様なんかじゃないわ…ただの愛に狂った女なだけよ!』

「例えそうであっても、その神の如き第七波動があるのは間違いあるまい!!

…天よ、小生に与えたまえ!! この鬼神達をねじ伏せる力を!!」

 

 カレラの啖呵を聞き終わった私達は、視線をメラクへと向けた。

 どうやら、メラクは特殊な椅子の機能を展開している様だ。

 その様子を私達は電子と波を感じる能力で見た結果、

どうやらメラクは私達の第七波動を観測しているらしい。

 

「うわぁ…アームド椅子の第七波動観測機が完全に振り切れてる…

あぁ…考えるだけで嫌になるよ…」

「だったら隅でのんびりしているといい…メラク

僕の邪魔をしなければ手は出さないつもりだ」

『面倒なのは嫌なのよね? だったら私達の事、邪魔しないで欲しいな』

「確かにそうしたいけど、これは紫電の…いや、僕の意思だからね

面倒で嫌だけど、君達と対峙させてもらうよ」

 

 あの怠惰なメラクの、自分の意思で私達と対峙する決意を見て驚きつつ、

私達はイオタの様子を見ていた。

 どうやら私達の放つ異質な気配に戸惑っていたようだが、

その戸惑いを振り払い、私達を睨みつけ、光刃(ヤイバ)を構える。

 

「例えどの様な強大な相手であっても、私は決して退きはしない!

我が光は、決して曇りはしない!」

「お前の動きは能力の強化込みでも、もう見切っている

僕はあの時と違って、彼女達の呪い(祝福)を十全に受けられる

もう先ほどの時と同じようにはいかないぞ、イオタ!!」

『そうよ! ここにはアタシ達を阻む壁は無い…もう貴方には万に一つ、勝ち目何て無いわ!』

「…例えそうであっても、私はこの身を皇神に…いや、紫電に捧げる!

彼こそ我が国の未来に光を(もたら)す希望の天照(アマテラス)!

だから私は喜んで、尖兵としてお前たちの前に立つ!! 紫電に光を齎す、その為に!」

 

 イオタの決意を見届け、私達はストラトスさんの様子を見た。

 彼は私達の事を見て恐怖に歪んだ表情をしていた。

 彼は本来、戦いに向いた性格では無く、平和な日常でよく見かける好青年なだけなのだ。

 だけど私達の放つ狂気に体は震え、恐怖に怯えていても、彼はその場に立ち続けた。

 

「正直、こうして君達と対峙するだけで体の震えが止まらない

今すぐにでも逃げ出したい…その常に放たれている狂気を忘れ去りたい」

「ストラトスさん…そう思うのならば、これから始まる戦いに参加しないで欲しい

貴方の能力は僕の腕をこうしてしまう程に強力だけれど、

貴方は本来、エリーゼと同じように元々は唯の一般人なはずです」

『私達はストラトスさんが生きていた事、とても嬉しかったの

あの時の貴方を、私達はGVのミッションを通じて見ていたから…

だから、如何か私達に手を出させないで…

私達はGVに狂っているの、だから例えそんな貴方でも、

GVの邪魔をするのならば、容赦は出来ないの』

「…だが、俺はここから逃げる訳にはいかない

この五ヵ月間、紫電達にはとても良くしてもらった

能力者と差別されていた頃を思い出したくもない程にね…

だから俺は、俺の意思で君達と対峙する! たとえ勝ち目が無くてもだ!」

 

 恐怖に震え、それでも尚立ち向かう決意をしたストラトスさんとは対象的に、

弱気なエリーゼはその場でしゃがみ、頭を屈めて恐怖に震えていた。

 そんな弱気なエリーゼを庇う様に、強気なエリーゼと狂ったエリーゼが立ち塞がる。

 何時もと変わらない不敵な笑みを浮かべる強気なエリーゼと、

狂い切ったと目に見えて分かる三人目のエリーゼが。

 

「………アンタは下がっていな」

「…………キシャッ!」

「え…どっ…どうして?」

「アンタはドジでグズでノロマだけど、何だかんだでアタシ達の本体だからよ

…あのボウヤの傍に居る二人は、一見マトモに見えるけれど、

その心の奥底には、あのエリーゼ2以上の狂気に塗れているわ…

あの二人は、枷であるガンヴォルトの前だからこうしてアタシ達の話…

時間稼ぎにあえて応じているみたいね

それが無かったら、アタシ達はとっくに紫電を残して全滅している筈だもの

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…だから、アンタには何としてでも生き残ってもらうわ」

「…エリーゼ、君は本来唯の被害者なだけの女の子なんだ

だからこの戦いの決着が付くまで下がっていて欲しい

それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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『そう言う事、だから素直に下がっているといいわ

最悪、アタシ達が勢いで殺っちゃった人達を生き返してもらう必要があるもの

…そうね、アタシが隔離すれば問題ないわよね? 感謝しなさいよ、エリーゼ?

貴方はGVのお願いの為に生き残る事が確定したのだから…』

「……っ! こっ…これ……!」

(これだけ距離があるのに、ノータイムでエリーゼ1をピンポイントで隔離したですって!

まあでも、これで目的は達成できたわ…後はアタシの欲望の赴くままに能力を振るうだけ…)

「キシャァァァッ! ジゃあ、アそビのつづキヲたノシモうかァ~」

「アンタはぶれないわねぇ…でも、だからこそ頼もしいか…

行くわよ? 謡精の歌で強化された生命輪廻(アンリミテッドアニムス)の力、

とくと味わいなさい!! その骨の髄までねぇ!!」

 

 モルフォが弱気なエリーゼを電子結界で隔離した。

 これで私達はやり過ぎても問題が無くなった。

 GVは誰の息の根を止めずに今の私達の事を助けようとしているけど…

これは恐らく、海外の無数の組織や多国籍能力者連合「エデン」を警戒しているのだろう

 

 特に、紫電に死なれるのはマズイ。

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 その方針の内容は、能力者の人権を守ると言う点は変わっていないが、

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 この決定を下したのはアシモフさんであった。

 彼はモニカさんという恋人がいる上に、アキュラとの決闘により、

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 それ以外にも、新たにパイプを繋げた桜咲家の影響もあった。

 

 現段階では未だフェザーはこの国において、テロ組織なのは間違いない。

 だけど将来フェザーは名前を変え、桜咲家の大企業の傘下に収まる事になるのだそうだ。

 この事はまだ桜咲家内部で情報が隔離されている状態であり、皇神には知らされていない。

 だからこそ、その際の皇神の能力者代表となり得る紫電に死なれるのはマズイのだ。

 

 既に最近では、桜咲家によるこの国における能力者に対する印象操作が始まっている。

 そして、皇神も桜咲家が作ったこの流れに知らず知らずに乗っており、

その影響からか、ほんの少しではあるけれど、

能力者による殺傷事件等のニュースが減って来ていた。

 

 なお、海外のフェザーにはこの事を通達する事が出来ていない。

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 こう言った事も、アシモフさんが新たな方針を発表した理由の一つなのだそうだ。

 因みに、その一部のフェザーの生き残りの人達は既にアシモフさん達と合流しており、

アシモフさんの新たな方針を歓迎していた。

 なお、この事で桜咲家に貸しを与えてしまったのが新たな方針を決めた決定打となったようだ。

 

 それに、紫電が居なくなってこの国の治安が悪くなったら、

この世界ではとても貴重で有難い平和な日常を得られない。

 オウカの屋敷でのあの温かな日常は何物にも代えがたい物なのだ。

 だからこそ、私達の日常の為に、紫電には生き残ってもらう。

 

 …そんな風に私達が考えていた紫電は、私達を見て驚愕していた。

 何しろ、取り込んだはずの相手が目の前に出て来たのだ。

 驚かないはずが無い。

 紫電は私達に話しかけて来た。

 

「モルフォ…何故、そこに君が居るんだ!

君は僕が取り込んだはずだ! それに、その出鱈目な第七波動は何なんだ!

この僕が…「皇神」となったこの僕が圧倒される、その第七波動は!」

『アタシ達は、貴方が取り込んだアタシ達よりも未来から来たの

この第七波動は…まあ、その過程で得たような物だと言っておくわ

…ねぇ紫電、どうしてアタシ達に貴方の本心を語ってくれなかったの?』

「本心を語るだって? 機密情報が漏れないようにするのは当然の事だろうに!」

『そうね…でも、アタシ達は何も知らずに、何も聞かされずに、

無理矢理歌いたくも無い歌を歌わされてきたわ

だからせめてその理由を知ってさえいれば、

まだ歌を歌う覚悟が…歌姫(ディーヴァ)プロジェクトにも自分から参加してたかもしれないわ』

「……っ! 君は…僕がどんな想いで、

本音を黙っていたのか分からないからそんな事が言えるんだ!

僕だって、君がこんな風に犠牲になって利用されてるのを見るのが辛いんだ!

皇神の社内抗争を勝ち残る為には、そうした隙を晒す訳にはいかなかったんだ!」

『分かる訳無いわ! だって貴方、その事をアタシ達の前で言葉に出していないんだもの!!』

「…紫電、そう言った想いと言うのはね、黙っていては決して伝わらない物なんだ

僕にも近い経験があるから、その気持ちは分かる

機密だと言うのもあるだろうけど…だからこそシアン達に伝えるべきだった

機密情報である事も、隙を晒してしまう事も含めてね

そうすればシアン達は君に協力したと僕は思う」

「……全てはこの僕の、身から出た錆だったと、そう言いたいのか」

「そうだ、そしてシアン達が拒まなければ僕も皇神へと下り、君に協力する流れもあっただろう」

『GV…』

「…そうだな、認めよう、ガンヴォルト

これは僕の身から出た錆だ…だけど、これを認めたところで、

時間が巻き戻る訳では無い」

「だけど、僕達は紫電…お前の本音を知ることが出来た

今からでも決して遅くは無いはずだ!」

「遅いんだよ! ガンヴォルト! もう賽は投げられているんだ!

今更止まれる筈が無い! 歌姫(ディーヴァ)プロジェクトの成功には、

皇神の、この国の、能力者達の未来が掛かっているんだ!」

「…分かった、ならば決着を付けよう

紫電が勝てば歌姫(ディーヴァ)プロジェクトをそのまま進めても構わない…

だけど僕らが勝ったら、それを取り下げてもらうぞ

そして、僕が考えた歌姫(ディーヴァ)プロジェクトの代案を通してもらう」

「代案…だと?」

「当然だ、唯取り下げるだけじゃあ無責任じゃないか」

「いいだろう…そこまで考えているのならば、その考えに乗ってやろうじゃないか!

…皇神の御名の元、この僕が…君達に神罰を下す!

行くぞガンヴォルト! モルフォ! ()()()!() この僕の星をも動かす意思を…

止められるものならば、止めて見せろ!!」

「行こう、シアン、モルフォ…紫電を止めて、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()

迸れ! 蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 響け! 女神(ディーヴァ)の歌声よ!

シアン達との約束(誓い)…果たすための(チカラ)となれ!!」

『うん! GV! …モルフォ、私達も!』

『ええ!』

『『迸って! 蒼き雷霆よ(アームドブルー)! 響いて! 謡精女王(ティターニア)の歌声よ!

GVの想い(意思)…貫くための(チカラ)となれ!!』』

 

 そうして私達と紫電達との戦いの火蓋が切って落とされたのであった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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