世界を越えて、繋がる想い
私は今起こっている目の前の光景を見て驚いていた。
トラックに撥ねられてもう助からないと確信できる状況だったはずなのに、
GVが立ち上がったのだ。
立ち上がったGVに私は意識を集中させる。
私を絶望の底に叩きつけたあれだけの傷がまるで夢であったかのように全て消えていた。
…闇に沈み、何もかも色あせた世界に一筋の光が射す。
その光は瞬く間に広がり、世界は色鮮やかな景色を取り戻した。
この時の私の気持ちはこのような感じだった。
絶望に沈んだ深い悲しみが希望に満ちた歓喜に相転移していく。
今も流し続けている冷たい涙に熱が戻っていくのを感じる。
私はGVの傍に寄り添った。
寄り添って来た私にGVが触れようと手を伸ばしてきた。
だけどその手は私を捉える事が出来ず、空を切った。
GVはとても残念そうな顔をしていた。
『GV…私の姿が見えてるの? 私の事が分かるの? 私の声が聞こえるの?』
私は期待と喜びに満ちた気持ちでこの質問をGVに尋ねた。
でも…GVは首を横に振りながらこう答えた。
「喜んでいるのは分かるけど何を言っているのかは分からない」
少なくとも今、GVは私の姿が見えているようだった。
もちろんそれは嬉しかった。
でも言葉が伝わっていないのは少しだけ残念に思った。
GVは言葉を続ける。
「でも言葉に出来ない程に嬉しいという想いは伝わってくる」
言葉は届かなかったけど私の想いは確かにGVに届いていた。
その事が嬉しくて私は自然と笑顔が零れる。
GVも私の笑顔に釣られたのかとても嬉しそうな笑顔で私を見ていた。
でも私が笑顔を見せて少し経った時、GVは笑顔を辞めて辺りを見回すような仕草をした。
…どうやら私の姿が見えなくなってしまった様だった。
奇跡の魔法は溶けてしまった。
私はとても残念に思いながら辺りを見回すGVをその場で見ていた。
でもGVはその場に居た私に再び顔を合わせた。
また私が見えるようになったの? と期待に胸を膨らませたが良く見ると少し目線がずれている。
どうやら見えている訳では無いようだ。
でも…どうして私がここに居る事が分かったんだろう?
GVから見れば姿が消えた後、私が直ぐにどこかへ行っても不思議では無いはずなのに。
…私の馬鹿。
GVはさっき答えてくれたじゃない。
「言葉に出来ない程に嬉しいという想いは伝わってくる」って。
いつからそうだったのかは分からないけど、どうやら私の想いは伝わっているみたいだった。
そう思い顔を赤くしていた時、GVが言葉を紡いだ。
私にとって思いもよらない言葉を。
「僕を助けてくれてありがとう」
そうGVは答えた。
私はこの言葉に万感の思いを胸に抱いた。
私はGVを助ける事が出来たと心から実感出来た。
…声が聞こえないのは分かっている。
でも想いは伝わっているのだ。
だからこそ私は想いを込めて言葉を紡ぐ。
『私もGVを助けることが出来てとても嬉しい』
そう答えた私の言葉…想いを受け取ったGVは私にとびきりの笑顔を見せて微笑んでいた。
『GV…その笑顔は反則だよぉ……』
私は頬を赤く染めながらだらしのない表情をするのだった。
……私は今回の出来事でこのGVの
想いを伝える方法と歌を伝える事と私の姿を見せる方法が分かったのだ。
どうしてGVの
これを喜ばずしてどうするというのだ。
後
…もしかしてあの時初めて歌った時もGVは私の歌が聞こえていた? それ以降に歌っていた時も?
気になる…今GVに聞いてみよう。
きっと私の想いに答えてくれるはずだから。
GVの暴露、そして…
トラックに轢かれたGVは奇跡的に生存した。
物語だったらここで一区切りしたり終わったりするだろう。
でもここは現実である。
今GVはある問題を抱えていた。
GVはそれに気が付きどうやって家族に誤魔化そうかと頭を抱えていた。
でも帰り際に新しい服を買っていた事を思い出したようで、
なんとかなりそうだとほっと胸を撫でおろしていた。
そんな中私はそんなGVの様子を改めて見た。
……ボロボロになって引き裂かれた服からGVの肌がチラチラしている。
それを意識した時、私の顔が上気して胸が高鳴る。
『今のGVの姿…すごくえっちだよぅ』
チラチラしたGVの肌から私は目を離せない。
裸のGVの時とは違う新鮮で、危ない魅力を感じる。
私の妄想が止まらない。
この状態のGVを鎖で繋いだら…
ゴクリ…これはいけない。
こんなあられもないGVの姿を
でも幸いにもここは人通りは少ない方だ。
後はGVが着替えられる場所を確保出来れば……って
『どうしてその場で着替えを始めてるの~~~~!!』
確かにその方が早くて確実だろうけど…うぅ…
『前から思ってたけどGVは自分に対して無頓着すぎるよ
私、居るんだよ? どうしてそんな平然としていられるの?
そんな無防備でいると私、変な気分になっちゃうよぉ』
体が酷く熱く感じる。
私の口から熱い吐息がハァハァと無意識に漏れる。
お腹の下の部分がキュンと切なくなり、私の表情が蕩けていく…
…GVにアレな事を、モルフォと一緒に沢山してもらった時の事を思い出す。
そうやって私が色々悶々としている間にGVは着替え終わっていた。
GVはこちらを見て少し顔を赤くしながらどこか悪戯っ子っぽい顔で微笑んでいた。
『……まさか確信犯!?
GV…見られてると分かっててそうしたの? 酷いよGV…私の心を弄んで…』
そう言った私自身の声が酷く甘く、切なげに啼いているように聞こえる。
私はGVに酷いと言っておきながら内心GVに弄ばれた事に暗い喜びを感じていた。
なんだろう? この感覚…GVに弄ばれてると思ったら、何だか私…
そう思っていたらGVは衝撃的な言葉を放った。
「これは今までに僕の着替えやお風呂なんかをずっと覗き見てたほんのささやかなお返しだよ」
『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!』
まさか覗きがバレてたの!?
このGVの言葉に私は正気を取り戻し驚愕していたらGVは言葉を続けた。
「実は八年前のある日から今までずっと視線と大雑把な感情だけは感じててさ、
最初は不思議に思ったけど特に害は無かったし、直ぐに慣れたんだ」
『八年前って…それって殆ど最初っからじゃない!!』
そんな最初の頃から気が付いていたの!? 私の驚愕を他所にGVの独白は続く。
「その内君がどんな事を考えてるのかが簡単にだけど分かるようになってさ、
僕の動きを見て一喜一憂しているのが伝わってきたのが僕にはとても微笑ましかったんだ
それと同時にもし僕が君の視線に気が付いているのがバレたら、
君は居なくなってしまうかもと思ってずっと知らないフリをしていたんだ
ただバレンタインデーの時は参った
チョコレートが下駄箱から沢山出てきた瞬間物凄く怒っている事が伝わってきたから、
君は女の人なのかなと思って告白を断って来たのもあったけど…
それ以上に深い悲しみが伝わって来てさ、それが嫌で今までずっと告白を断って来たんだ」
もしかしてバレンタインデーの日での女の子達の告白を全て断っていた理由って…!
…私の為にずっと断っていたの? あの時はまだ歌も無く、姿も見せてなかったのに?
でもどうして? どうして姿も見えない私を優先したの?
そう思った時、私の想いが伝わったのかGVは言葉を紡いだ。
「これは……疑問に思っているみたいだね どうして君を優先したのかというのを
君の視線から伝わってくる感情が僕にはとても温かかったからだよ
嬉しそうだったり喜んだり、楽しそうだったりした感情が
でもただ一つだけ嫌な感情があった…それは悲しみだ…今でも君の悲しむ感情が嫌なんだ
この感情だけは僕には許容出来なかった…今まで何故かは分からなかったんだ
でもその理由も、今の僕なら分かる」
GVは一度言葉を止めた。
その言葉の先を言うのに勇気を振り絞っている様子が見て取れる。
……あぁ、分かるよ。
その言葉の先が。
私達の想いが複雑に絡み合い、一つとなる一体感を感じる。
GVもきっとそうなのだろう。
覚悟を決めた表情をしていた。
時間の流れが遅く感じる。
ねぇ、GV…早く、早く、その言葉の先を、私の心に、体に刻み付けて。
「……僕は君の事が、ずっと前から好きだったんだ
八年前から君のあの視線から込められた想いを初めて受け取った時からね」
勇気を振り絞り顔を真っ赤にしたGVの言葉は私の全てに刻み込まれた。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
追記
何でだろう? 八話の手直しをしている内に、
シアンちゃんがどんどん倒錯して行くぞ?
9/8 更に追記
※シアンの狂気の件について
シアンは転生前のGVとやり取りが出来るようになったお陰で、
その狂気が
それが何時になるのかは…読み進めていけばきっと分かるはずです。
因みにもしこのままやり取りが出来ずにそのまま見ているだけだったら、
その狂気は膨れ上がって大変な事になっていました。