駄作ですが、読んでくだされば幸いです。
限り無いほどの世界がある。ありえたかもしれない世界がある。
これは、とある障害を持った少年が描く、ありえたかもしれないIFの物語である。
とても古い夢を、見ていた。
「……んで…………こと!」
ずっと昔にあった夢。思い出したくない内容だったけど、結局のところ、過去のことだ。
「………てたのに……んで!」
だから、ただいやだ、と思うだけ。
これは自分の罪なのだから、受け止めなければならない。
そして、決定的な場面。自分がもっとも傷ついた場面。その場面で聞こえた声。それは…………。
「きょーすけが帰ってきたぞーっ!」
僕の目を覚まさせる声だった。
「ん? ……ん~!」
体を起こして伸びをして、まず電気をつける。そのまま正面にある鏡を見ると、自分の顔が映っていた。当然なんだけど。しかし、そこに映っているのは多分どうみても女の子の顔。
僕は男の娘、と呼ばれる姿をしているらしい。
名前も一輝神無(かずきかんな)と女子の名前としても通用しそうなもの。しかも略称はカナ、だし。
もうちょっと男っぽく生まれたかったなー。
などということを考えつつぼーっとしているとこのままもう一度寝てしまおうか、などと考える。そのとき、遠くから机を引っくり返すような音がすることに気がついた。
そこで、気づく。恭介が帰ってきた。それはつまり、あの二人が争うことができるということ。
「やばい、かも」
僕はすぐに駆け出した。
食堂に辿り着くと、やはりというか二人、僕の幼馴染が喧嘩していた。
片方は、筋肉質な体を持つ、井ノ原真人。片方は袴姿で竹刀を構えている、宮沢謙吾。
どちらもにらみ合っていた。
この二人がいるなら、と思い、近くを見ると、もう一人、幼馴染の直枝理樹がいた。
彼はどちらかというと、ひ弱なほうで、僕ほどじゃないが女の子っぽい見た目をしている。
声をかける。
「理樹」
「あ、神無! あの二人どうにかならない!?」
「恭介、探して。時間、稼ぐ」
「わ、わかった! ねぇ、恭介は!?」
棗恭介。僕らの幼馴染であり、あの二人を止められる数少ない人。あの二人も恭介には逆らえない。
理樹が近くにいる男子生徒に聞くのを見ながら、僕は小柄な体格を生かしつつ、二人に接近した。
「おおーっと! ここで風紀委員であるカナ様のご登場だ!」
じつはちょっとしたことで風紀委員になっちゃったんだ。
けどそれはいいんだ。今は重要なことじゃない。非番だし。
「待つ、二人とも。……やめて。いじめっこ、かっこ悪い」
「ぐ、な、なんでここでやめないといけないんだよ」
「そうだぞ、神無。お前でも、怪我することになるかもしれないぞ」
「でもって、俺は怪我すること前提かよ!」
そりゃ二人が喧嘩して怪我しないほうが珍しいと思うけど。
なんて口に出さずにいると。
「そうまで馬鹿にされて黙っていられるかァ!!」
なんて殴りかかりにいくし。
…………いつものあれ、いくしかないかな。
野次馬が身を引く中、滑らせるように前へ出て、ちょうどよく、二人の前へ。そして、
「ふっ!」
ぶつかりそうな二人の竹刀と拳を掴みうまく受けながす……!
「出た! カナ様の受け流し! 流石の二人もこれには姿勢を崩さずにはいられません!」
「うおっ! またか!!」
「ちっ!」
家の教えで習ってきた護身術。身を守ることになら免許皆伝までいった技をカウンターに専念すればまず負けることは無い。事実、ギリギリだったものの二人に勝ったこともある。もう二度とやりたくないけど。
とはいえ、今の自分はあくまで時間稼ぎ。しばらく時間を作るだけでいい。そうすれば。
「そんなに喧嘩がしたいのか? じゃ、ルールを決めよう」
恭介が仲裁にきてくれるから。
「素手だと真人が強すぎる。竹刀を持たせると、逆に謙吾が強すぎる。なので」
ここで恭介が野次馬のほうに顔を向ける。そして二人に向き直りつつ、こういった。
「お前らが、なんでもいい。武器になりそうなものを適当に投げ入れてやってくれないか。それはくだらないものほどいい。その中から掴み取ったものを、武器として戦え。それは素手でも竹刀でもないから、今よりかは危険は少ないだろ。……いいな?」
そういった。だれにも異論は無いようだったから、すこし、安心した。
「じゃ、バトルスタート」
といったものの、誰も投げ入れようとしないので、まず僕が適当に投げ入れる。ちなみに、亀の子タワシ。
それを皮切りに、どんどんものが投げ込まれる。そのなかで、二人が一言ずつ話していたようだけど、こっちまでは聞こえなかった。僕も結構物投げ入れてたし。
しばらくすると、謙吾が武器を手に取る。それは、僕が投げ入れたもののひとつ、銀球鉄砲だった。そこまで強力なやつじゃない。
と、そのとき。恭介が適当になにかを投げ入れたのが見えた。それは……白猫だった。
「は? え?」
その猫はバランスを取りながら飛んでいき……同じように武器を選ぼうとしていた真人の手に。
「あ……。ま、いい、かな」
と、僕が思うと、謙吾が真人に問いかけるところだった。
しばらく問答をしていると、だれかがわざわざ持ってきたのか、ゴングが鳴った。
憎めない筋肉馬鹿一直線
井ノ原 真人
VS
最強の男児にして真人のライバル
宮沢 謙吾
バトルが始まった。
んだけど。
どっちの攻撃も相手にほとんど効果が無い。0、1、2程度しか与えられないという、すごくつまらない結果に……。どっちもタフすぎるよ。
などと見ていると、
「こらああぁぁーーーーーー!!!!!」
野次馬の歓声より大きな怒りの声。こんな声を出せるのは……
「おおっ我らが鈴様のご登場だ!」
「きた、やっぱり。面白く、なった」
僕たちの幼馴染の一人、棗鈴。本人は隠せているつもりのようだが、かなりの愛猫家。
見た目もかわいいし、中々気を許さない辺りが人気らしい。が、僕たち相手には容赦なくハイキックをお見舞いしてくる強敵。
「弱いものいじめは、めっだ!」
ただこういうときの文句はとてもかわいらしい。
ちょっと様子を見ていると、二人が言い合いをはじめる。
「いけ、我が支配にある猫よ!」
「にゃー」
「その猫だーーっ!」
ずがんっと。すごい強いハイキックが叩き込まれる。そのまま受け答えする真人はすごい。
猫をどうしたのか、という問いに対して、僕が恭介が投げ入れたことを教える。
そして、その猫を奪い取り、真人が新しい猫を要求し、またハイキックは炸裂。
こりないなぁ。
そして、なんで喧嘩になっているのか、という問いに対し、
「こいつが俺に、目からごぼうという嘘のことわざを教えやがったんだ」
という回答。
謙吾が呆れながら詳しいことを告げる。本当に馬鹿だ。まぁ真人が馬鹿なのは昔からだけど、どこか憎めない。それは真人の魅力がなのかもしれない。
そして謙吾が去っていた後、
なぜか、鈴と真人が戦うことになっていた。
「えー……」
しかし、止めない。なぜなら、面白そうだから。
「みんな、投げ、入れて!」
僕が開始の合図を送る。いろんなものが投げ込まれる。
そのなかで僕も適当に近くにあったものを投げ入れる。参加したほうが面白そうだし。適当にうなぎパイを投げた。
すると鈴が武器を選んだ。それは……三節根!?
しかも真人、僕が投げたうなぎパイとってるし。
カーン、とまたゴングがなった。
中々人に懐かない気高き仔猫
棗 鈴
VS
憎めない筋肉馬鹿一直線
井ノ原 真人
「バトル、スタート」
そして、勝負が始まった。
鈴が三節根で殴ると流石の真人にも大きなダメージが入った。本物の武器だからすごい強い。
真人も負けじと殴りかかるけど、武器がうなぎパイだから、すこし殴るとあっという間に砕け散った。
「俺のうなぎパイがァーーー!!」
一応夜だから静かにしてほしかったりする。
そして、次の鈴の攻撃で真人が気絶した。まぁ、本物の武器だし。
鈴を称える声を聞きながら部屋に戻る。
今日みたいな出来事は別に珍しいことじゃない。それはそれで問題かもしれないけど。
さっき見た夢と同じことがあってすぐ、僕は恭介と出会った。
けど、そのとき僕は拒絶した。当時僕は荒れていて、誰も信用できなかった。恭介もなんども追い返した。
けど、恭介は何度もしつこく僕を追いかけてきた。そして、友達になった。見た目だけで人を判断しないのが気に入ったのもそうだけど、一番のきっかけになったのは、僕の先天的な病気のことを知っても、むしろ近づいてきたことだった。
僕が生まれたときから持っていた病気。吃音症。
吃音症、それは発語時に言葉が連続して発せられたり、瞬間あるいは一時的に無音状態が続くなどの言葉が円滑に話せない疾病。言語障害の一種のような症状を示す病気、らしい。詳しくは検索。
僕は生まれつきそれだった。僕はずっと無声型。いつ途切れてしまうかわからないからもともと短く区切るようにして、より無口になった時もある。けど今更治そうとは思わないし、隠す気も無い。辛かった時期もあった。でもそれを変えてくれたのが、恭介だった。
なにか言われるのが嫌で、しかもちょうどそれと関係のあることで嫌なこともあったから、余計に人を遠ざけて。それでも手を差し伸べたのが恭介で、恭介のおかげで全てうまくいくようになった。
そして、僕らはひとつのチームをつくったんだ。
そのチームの名前が、リトルバスターズ。
リーダーは恭介。ちょっと子供っぽいけど、とても面白いリーダー。僕の憧れでもある。リーダーというかっこいい響き。うらやましい。
すぐに理樹もはいった。あの時は爽快だった。新聞にのって恥ずかしい思いをしたりもしたけど、懐かしい。今もみんながいるし、近くに人も気にかけてくれる。見た目のおかげ(?)で男子にも人気だし。ちょっと、複雑だけど。
けど、今は毎日が楽しい。
…………だから、不安になるんだ。このまま恭介が卒業して、その後みんながばらばらになってしまうんじゃないかって。
そう、思ってしまう。
吃音についてなどの細かい突っ込みはなしでお願いします。