ダンジョンに大魔道士がいるのは間違っているだろうか   作:玲人

2 / 2
お待たせいたしました
ダンジョンに大魔道士がいるのは間違っているだろうか
第2話です

先に謝らせていただきます

まだダンまちと絡めてない件について・・・・

いや、本当にすいません・・・この流れはダンまちに絡ませる前にやっておきたい挿話なんです・・今後のポップをどうしていこうかと考えていたら、やっぱり絡ませておこうって思ったりと妄想が妄想を呼び・・・すいません・・・・


楽しんで読んでいただけたらと思います。それではどうぞ。




再臨

カール王国(跡地)上空を移動していると、聞き覚えのある声がポップの脳裏に響いた

 

「ポップさん、聞こえますか?」

「メルル?」

 

ロモス王城で別れたメルルから念話(テレパシー)が聞こえ、耳を傾けた

自分が大魔道士として覚醒するに至った運命の日(バーンパレス攻略戦)

メルルに注がれた莫大な治癒魔法は毒を打ち消し、生命力を回復させるだけではなく

ポップと直接念話をすることが出来る能力を開花させていた

 

「出発前にどうしても伝えたいことがあったのに何も言わずに去るなんてずるいです」

「うっ・・・それはその・・すまん・・・・」

「私がポップさんと念話出来なかったら怨んでいましたよ?私こう見えて本当に怖いんですから」

「メ、メルル・・?その声の低さは何とかならないか・・?」

 

数百キロ以上離れているはずなのに背中の冷や汗が止まらない

それほどまでにメルルの言葉は殺気を含んでいた

 

(・・・ポップさんとの直接念話は私だけのもの・・誰にも邪魔されない私たちだけの聖域(ホットライン)

例えマァムさんでも私た「ちの聖域には入れませんわ・・・ふふふ・・・・」

 

ポップの想い人であるマァムより一歩リードしている自分に優悦を感じているメルル

しかし昂った精神では抑える事が出来ず、気づくことが出来なかった

 

「メルル・・その・・・だな・・声が途中から出ちまってるよ・・・」

「ふふ・・え?・・はっ!?」

 

メルルの意外な黒い一面を見たポップであった

女の子って怖えぇ・・

 

「・・コホン・・ポップさん、いいですか?」

「お、おう・・・」

 

恐ろしい事を言われた後に何を言われるのか全く予想がつかず

一字一句聞き漏らす事がないよう全身全霊をかけてメルルの念話に集中した

 

 

 

「私、メルルは大魔道士ポップを愛しています いつまでも」

「・・・・」

 

「答えは今は聞きません、ポップさんに想い人(マァム)がいるのも承知です。ですが私は諦めるつもりはありません」

「・・・・」

 

「根暗で誰からも相手にされず、予知に纏わる話をすれば人は皆、私の事を気味悪がり逃げていきました。中には石を私に投げた人だっています」

「・・・・」

 

「人を信用せず、自分のために予知を使うと決め、叔母様と一緒にそこれからも生きていくんだろうと思っていました」

「・・・・」

 

「でも私は貴方に会う事ができました。予知を揶揄わず、私の手を取り、太陽すら霞む笑顔を私に向けてくれました」

「・・・・」

 

「この気持ちに嘘偽りはありません。何年、何十年かかっても私はポップさんの帰りを待っています」

 

 

 

聞こえていないわけではない

だがポップは喋ることは出来なかった、いや喋れなかった

これほどまでに自分を想ってくれている人がいる

一世一代の告白を前に安易に喋る事など出来るはずもない

 

だが告白の中に気になる言葉があり、ポップは投げかけた

 

「・・・気づいていたんだな」

「ええ、そして恐らくロモス王城にいた皆さん全員気づいていると思いますよ。

 そして私も予知を使わずとも感じました。恐らくポップさんは暫く()()()()()()()()()()と。ポップさんも気づいているのではないですか?」

「気づいているわけじゃねえさ。単純に直感・・いたずらしては親父から逃げていた第六感(シックスセンス)ってやつさ。自慢じゃねえが的中率100%だぜ?」

 

いや・・唯一死にかけた事を覗いたら100%じゃねえなと一人ごちりながら笑うポップ

 

「ここから先は私の予知ですが・・・分かりません」

「というと?」

「私もこんな事は初めてです。ポップさんの行く末が黒い靄がかかっていて見る事が出来ないんです」

「穏やかじゃねえなぁ・・」

「・・・ですが一つだけ予知ではありませんが予感を感じました」

「それは?」

 

「黒い靄が何を意味しているのかは分かりません・・ですが今回の大戦に勝るとも劣らない出来事が待ち受けているような気がします」

「勘弁してくれ・・さっさとダイを見つけてとんずらしてえぜ・・」

 

念話をしている内にポップはバーンパレス落下地点へと到着した

ロン・ベルクが言っていた歪がどういったものか知る由もなかったが

現地に着き、言っている意味を理解した

 

(・・なんだ?)

 

見渡す限り、海

地平線が続いているだけの世界の中、()()()()()()()()()()()()()()

同時にポップの直感が見抜いた

 

(ここからが俺の長い旅路の始まり・・)

 

触れたら最後、二度と地上に戻ってこれないかもしれない

引き返すなら・・今、この瞬間しかない

 

・・そんな気は毛頭なかった

もうこれ以上相棒(ダイ)がいない日々なんて考えたくないね

何よりお姫様(レオナ)のどんどん老けていく顔なんて見たくねえや

 

 

「メルル」

「・・はい」

「・・行ってくる」

「・・・・はい」

 

ポップは歪曲した空間に触れ、意識を手放した

 

 

 

 

少年は旅立つ

全ては苦楽を共にした友を救うために

 

少女は護る

全ては愛する人の帰りを待つために

 

 

 

「ここは・・・」

 

意識が徐々に覚醒し、ポップの目に映った光景はあまりにも見覚えのあるものだった

 

「天魔の塔・・?」

 

天魔の塔の最上階、大魔王バーンとの決戦の舞台。玉座の間。

地面は至る所に亀裂が走り、壁は崩れ、柱は原型を留めていないほど破壊され尽くしていた

ダイと大魔王バーンの決戦がどれほど苛烈を極めたか一目で分かるほどに

 

だが先の決戦の時にはなかった物・・いや扉があった

堅牢な作りの扉・・魔界に続く地獄門を連想するような巨大な扉がそこにはあった

 

自分の居る場所を即座に把握し、ポップは目を閉じた

そして確信する

 

「バーンパレスが稼働している・・?」

 

正確にはバーンパレス内部に流れる微かな魔力をポップは感知した

だがバーンパレスから仲間達と共に脱出し、落下していく光景を見たのは

記憶に新しい出来事である

目の前の事実に動揺しつつ、ポップは思考を続けた

 

「しっかしなんでまた、こんな所に・・」

「余の玉座の前で随分と無礼な振舞いをしてくれる・・頭を垂れよ ポップ」

 

一瞬の出来事だった

ポップは声が聞こえた直後、戦闘態勢に入り、ブラックロッドを構えた

大戦後も鍛錬を欠かさなかったポップの始動は決戦時よりも更に洗練され、声の主を驚かせた

 

「見事」

「あんたに褒められても一つも嬉しくないがな、大魔王サマよ」

 

ポップは()()()()()()()()()()声の主である大魔王バーンに向けて言い放った

 

「余がいると何故分かった」

「内部に流れる魔力の質があんたの魔力と同じものだと分かったからな」

 

「フフッ・・・ハハハハ!!・・・・素晴らしい

 見事・・全くもって見事・・・余が未だ地上に君臨していたなら間違いなく魔王軍へ勧誘していたところだ」

 

「冗談じゃねえ、まだ好きな女の子の返事も聞けてないのにそっち(魔王軍)に下るわけがねえ」

 

「貴様は見たことあるのかは知らぬが魔界の女も捨てたものではないぞ

 磨かれた曲線美の体に加えて、極めつけは一度盟約を交わした男は決して裏切らない気高き精神 

 数多の男達が虜にされていったものだ」

 

「えっマジ?・・グヘヘ・・(鼻の下伸び~からの鼻血)・・ってそうじゃねえ!」

 

観客(英雄達)がいたら間違いなく白目で見られていたであろう陳腐な会話を終わらせ

ポップが本題へと入る

 

「で、大魔王サマよ 何処にいるんだい」

「頭をあげよ ポップ」

「さっきから下げろっつったり、上げろっつったり・・・」

 

愚痴を零しながらポップは視線を上にあげる

玉座の間のさらに上・・・大天蓋に覆われた大魔王バーンの玉座に

四肢は無く、胴体と顔だけの岩になっている大魔王バーンが鎮座していた

 

「その状態でも喋れるんだな」

「バランに敗北し、岩となった冥竜王(ヴェルザー)と会話をしている余を貴様は見ているだろう 余が喋れないはずもあるまい」

 

魔界を統治する強大なる力を持った

 

冥竜王ヴェルザー

大魔王バーン

そしてもう一人

 

これら三強者は、敗北した者は岩となる呪いを互いに掛け合った

誰が先に地底魔界に大いなる光(太陽)を齎すことが出来るかを賭けて

 

結果として

 

冥竜王ヴェルザーはダイの父親であるバランとの決戦にて破れ

大魔王バーンはバランの息子であるダイとの決戦に敗れた

 

ポップの質問はさらに続く

 

「単刀直入に聞く、何故あんたはまだ生きている」

「簡単な事、ダイに敗北したが死んではいなかった ただそれだけのことだ」

 

「・・・あんたの岩を壊したら全て終わるのか?」

「無論。ただし貴様は未来永劫ここから出られなくなるがな」

「俺一人の命で天下の大魔王サマを滅ぼせるなら・・やらない手はないな」

 

ポップは端から大魔王討伐などする気はない

今の自分には果たすべき目的がある

こんな所で時間を費やすほどポップは暇ではない

 

「やめようぜ大魔王サマよ・・何が目的だ?」

「目的?そのようなことなど」

 

「悪いがあんたと違って、こちとら人間なんでな・・時間()に限りがあるんだよ」

「・・・」

 

バーンは目の前の男を見据えると同時に感じていた

ダイの圧力を「豪」とするならば、ポップの圧力は「静」

静謐の中にある激情をバーンはたしかに見抜いていた

 

ゆえに確信する

この男になら()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

ポップの目の前にそれは現れた

漆黒とは比べものにならないほどに沈んだ黒色の球体

世界の終焉を示すような神々しい黒

否、この球体の色をポップは誘われるように口に出していた

 

「暗黒・・」

「正確には暗黒闘気の種といった所か」

 

「・・・もう一度聞くぜ、大魔王サマ 何が目的だ?」

「ポップ、一つ聞くが「闘気」とはなんだ」

「一言で言うなら生命エネルギーそのものじゃないのか」

「然り。己の体内にある生命力エネルギー・・生脈を正しく理解し、内から外へ放出した物を闘気と呼ぶ」

 

アバン先生の講座でもそんな事言っていた気がするなぁ

ダイは真剣に聞いていたけど俺は魔法使いだから・・うたた寝していたな

 

「拳撃や斬撃に特化すれば威力は増し、体外を覆えば防御力が増す、ここまでは貴様でも理解できるだろう」

「ああ」

 

「ならば()()()使()()()()()()()()()()()

「ヒュンケルに聞いたことはあるが、それは不可能と言われちまったよ。魔力操作をしながら、生命エネルギーをコントロールすることは、物事を考えながら、左手と右手で全く違う事をしている事に他ならないとな」

 

魔法とは内にある魔力を練り、放出することを指す

言葉にすれば簡単だが、ここに生命エネルギーの操作が加わると話は変わる

生命エネルギーの操作に集中しすぎると一方で練っている魔力は行き場を失い

体内で魔力暴走が起きて結果として自分がダメージを受けることとなる

逆もまた然りである

 

強大な呪文に闘気を使用する行為は一つ間違えれば死に繋がると言っても過言ではない

 

「唯一近しい事をやってのけた奴は知ってるがな」

「竜闘気砲呪文・・か」

 

 

竜の騎士であるバランとダイのみが放つことが出来る竜闘気砲呪文(ドルオーラ)

竜闘気(ドラゴニックオーラ)を膨大な魔力で超圧縮し、両掌を使って放出する呪文である

その威力は島国一つを一撃で滅ぼすことができる威力を秘めている

 

 

「その話とこの種はなんの関係があるんだ?」

「深い意味などない」

「おい・・」

 

拍子抜けした返答にポップは顔を顰める

 

「しいて言うのなら貴様という人間の旅路の果てが気になった」

「旅路?」

 

「ダイを探すのだろう?」

「・・・・ああ」

 

 

その時だった

バーンパレス全体が鳴動し、崩壊を始めた

 

 

「・・・なんだ!?」

「余に残っていた魔力を種に込めた結果だ。供給していた魔力が途切れ、崩壊をし始めた」

 

ポップは未だに迷っていた

魔界の王と言われる大魔王バーンがそれほどまでに自分の事を買っている理由が未だに分からないからだ

 

「余が貴様にそこまで尽くす理由が分からぬと言いたそうな顔をしているな」

「ダイや他の英雄達と違って、一般人の俺にそこまで尽くしてくれる理由を教えてほしいもんだ」

 

「地上の人間共はこう評しているのだろう? ()()()()()()()()()()()()()()() と」

「事実そうだからな」

 

「余はダイに敗北した訳ではない・・貴様に敗北したのだ!ポップ!!」

 

 

バーンパレス全域に聞こえそうな憤怒の声をポップは聞いた

 

「あの日・・貴様さえ居なければ余はダイを倒し、その仲間を皆殺しにし、地上を滅ぼすはずだった。貴様がいたことで全ての予定調和は崩れ、余は敗北する結果となった。それだけならまだいい!余は徹底した実力主義。敵味方問わず、強き者には敬意を払う!。だがいつぞやの(レオナ)にも説いたが地上の人間共は物事の本質を見ようともせず、上辺だけの結果で英雄達を称える。それが本当に我慢ならぬ!」

 

「敵であるあんたにそこまで思われると鼻が痒いな」

「たわけが」

 

英雄達の名声・・聞こえはいいが最大の功労者であるダイ以外の英雄達は日に日に地上の人々の記憶から薄れていくだろう

真っ先に誰が記憶から消えていくのかと問われれば、間違いなくポップである

 

「そこまで言われたら・・な」

 

 

ポップは目の前の種を手に取り、()()()()()()()()()()()()

種はポップの体内に入り、何も起きる事はなかった

 

「罠の可能性も考えなかったのか?」

「魔王軍の中には胸糞悪い奴らはたしかにいたさ。だがこと戦闘に関してはあんたは真正面から俺たちと対峙してくれた。これが罠だと見抜けなかったなら俺が間抜けだったってことだな」

 

 

バーンパレスの鳴動が、大きくなっていく

バーンは最後にポップへ言い放った

 

「努々忘れるな・・そして覚悟しておくことだ。今は種だが芽が吹けばどんなモノになるか想像も付かぬぞ」

「精々水やりは毎日して枯らさないようにはしておくさ」

 

 

ポップはそう言うとバーンに背を向けた

 

扉は開かれた

 

扉の奥は吸い込まれるような「無」

色はなく、匂いもない

時間が停止しているかのような錯覚に襲われるが辛うじて踏みとどまった

 

「またな、大魔王サマ」

「自惚れるな。次に貴様と会ったときは余に2度目の敗北はない」

 

「それじゃ言い直すぜ、()()()()()、大魔王バーン」

「・・・()()()()()、ポップ・・・いや、大魔道士ポップ」

 

 

 

言葉を交わし、ポップは門を潜った




ポップとマァム派
ポップとメルル派

どっちと問われれば私はポプメルです。
メルルには幸せになってほしいですね。


そしてバーン様との邂逅ですが如何でしたでしょうか?
無茶があるとは重々承知ですがこの絡みはどうしてもさせたかったんです。

ポップの中に入った種ですが色々と妄想が捗りますね・・!

それではまた次話で!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。