真・恋姫†無双Withパワーアップキット   作:アイソー

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三羽烏に会って

考輝は夢の中にいた。

 

 彼がそれを夢だと自覚出来たのは明らかにこの世の光景ではなく、そして前に一度来た事があったからだ。

 

 

 白い空間。

 

 彼が恋姫無双の世界に送られる前に神と話した所と一緒の場所である。

 ただ、前と違うのは彼が漂っているのではなく、しっかりと二本の足で立っている事だ。地面が見えないため、傍から見れば浮いているように見える。

 そして服装は彼が舟に置いてきたはずの学ランだった。しかし彼は夢と自覚しているためか、たいして驚きはなかった。

 

 

 

 

『よう。お前の異世界での奮闘、楽しませてもらっているぜ』

 

「……神か」

 

 突然、考輝の頭の中に声が響く。以前彼に神と名乗った者が話かけた時と同じ現象だ。

 しかしこれも二回目なので、彼は驚かずに普通に言葉を返す。

 

 

『そうだ。それよりお前は楽しんでいるか? なかなか刺激的な世界だろう?』

 

「まずまずだな……。それよりも、お前俺の頭を弄ったな? 俺は人の死を見て何も反応しないような無感情な奴ではなかったし、頭も良くなかった。一体何をした?」

 

 彼は責めるよう口調で問い詰めるが、雰囲気からして本気で抗議している訳ではないようだ。というよりも、どこか諦めているような感じだ。

 

 

『確かにお前の魂――能力と価値観には少し手を加えた。そうでもしないと、あの世界でお前すぐにくたばっただろうからな。だからお前としては不服だろうが、感謝こそしても、責めるのはお門違いだ』

 

「…………」

 

 神と名乗る声は特に悪びれた様子はない。むしろ自身に感謝をしろとまで言う。

 しかし改造される前の自分では、最初に賊に会った時点で死ぬ事が簡単に予測出来たので、考輝も反論は出来なかった。

 

 

「……そう言われると何も言い返せないな。――しかし、そこまでしてなんでお前は俺をあの世界に送った? 何か目的があるのか?」

 

 反論が思いつかなかったので、とりあえず考輝は感じていた疑問を訪ねる。

 わざわざ一般の学生であった自身を乱世で生き残れるように改造するのは、いささか非効率なように考輝は感じていた。

 

 

 

 

『……ただの暇つぶしだ。前にも言ったろ。それに人一人の魂を弄るくらい、別に造作もない事だ』

 

 考輝は小さく溜息を吐いた。

 どうやら神という存在は、彼の思っている以上に身勝手で傲慢で万能のようだ。

 

 ――それにこの様子では、万が一に何か目的があったとしても俺に話す事はないだろうな。

 

 

 

「……それで何で俺をまたここに喚んだ?」

 

 これ以上この話をしても時間の無駄だと感じた考輝は話を変えた。

 

 

『少し褒美をやろうと思ってな』

「褒美?」

 

 その単語に反応して考輝の眉がピクリと動く。

 

『まぁ、初陣祝いってとこだ。ともかく洛陽に着いたら左慈って奴に会え。それでそいつから褒美を受け取れ』

 

「相変わらず投げやりだな……」

 

 彼は心底呆れた表情をする。

 洛陽は巨大な都市だ。そこから人を一人見つけるのに、どれ程の労力がかかるか分かったものではない。

 

『まぁなんとかなるだろ。ともかくまた行ってこい』

 

 その言葉と同時に考輝は黒い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何処だここ?」

 

 考輝が目を覚ますと、彼はベッドの上で寝ていた。

 左側には壁があり、残りの三方は天井から吊された白い布によって周りから隔たれている。時折人の影が布に映り、消えていった。

 

 ――始めて見る場所だな。それにしても、何で俺はベッドの上で寝ているんだ? 眼鏡の奴を助けたところまでは覚えているが……。

 

 

 記憶が曖昧としていた考輝は、一先ず起き上がってベッドから降りる。すると後頭部に鈍い痛みを感じたが、痛みの原因も思い出せないので、ベッドの周りの白い布を持ち上げて外に出た。

 

 

 

 考輝の寝ていたベッドは部屋の隅にあり、部屋の壁際には同じように白い布で囲まれたベッドが置いてあった。

 部屋の中央では、数人の人達が怪我人の手当てをしていた。怪我の程度としては軽い者が多いが、怪我人も手当てをする者も皆が皆生気が薄い目をしている。

 

 

 ――状況を見ればここは病院のようだが、それにしてはどうにも雰囲気が暗い。

 

 病院とういよりは、まるで処刑を待つ囚人の待機部屋のように思える程に、この部屋には絶望が渦巻いていた。

 

 

 

 

「あ、目が覚めたのですか?」

 

 考輝が部屋の雰囲気に違和感を感じていると、横から声をかけられる。

 そちらを振り向くと、銀髪で長い三つ編みをしている少女がいた。目がキリッとしているため、どこか真面目な印象を受ける。また全身に生々しい傷跡がついており、幼いながらも相当に鍛錬している事が伺える。

 

 

「……ああ。それでお前は?」

 

「申し遅れました。私は姓は楽、名は進、字は文謙と言います。若輩者ながら、この村の義勇軍の指揮をしている者です」

 

 少女――楽進は礼儀正しくきびきびと言う。

 

 楽進の名を聞いた彼は、彼女のステータスを開く。彼の知識では、楽進は魏の古参の武将であったと記憶していたからだ。

 

 

 

 

統:69 武:74 知:42 政:41

 

剣:B 槍:B 戟:C 弓:C 騎:C 兵器:B 水軍:C

 

特技:気術(気を扱える)

 

 

 能力の数値では、一般人に比べれば明らかに強いがそこまで高くはない。

 しかし、伸びしろが全能力で高い。特に武力はもしかしたら90近くまで行くのでは思える程だ。

 

 ――今はまだ未熟だが、未来の名将ってところか。気ってのは良く分からないが。

 

 

「あの……どうかなさいましたか? 怪我をした頭に違和感が?」

 

 楽進は少し心配そうな顔をしている。彼に反応が無いので心配になったのだろう。

 

 

「いや大丈夫だ。それで俺は姓は彰、名は義、字は紅炎だ。……そういえば眼鏡の奴も義勇軍を率いていると言っていたが」

 

 彼は先刻の眼鏡の少女との会話を思い出す。

 記憶は曖昧であったが、眼鏡をかけた少女が村の義勇軍を率いているという話は覚えていた。

 

「于禁の事ですか? 実はこの村の義勇軍は私と于禁ともう一人、李典という者の三人で率いているのです。

 それから先刻は彼女と村の子供を助けて頂き、有り難うございました」

 

 楽進は深々と頭を下げて礼を述べる。かなり低く頭を下げて、腰は90度近く曲がっていた。

 考輝はそんな光景を見て思わず苦笑してしまう。

 

「とりあえず頭を上げてくれないか? 流石に周りの視線が痛い」

 二人には周りの怪我人や手当てをしていた人達から視線が集まっていた。

 村の義勇軍を率いていて、村の中での実力者である彼女が頭を下げているため、周りは何事かと視線を送っている。

 

「あ、すいません……」

 

 彼女はその視線に気がつくと恥ずかしそうに頭を上げた。

 

 

 

 

「おぉ、彰義殿。目が覚めていたか」

 

「………………」

 

 ちょうど楽進が頭を上げた頃に趙雲と飛鳥が部屋に入って来て、二人に近付いていた。

 ただ飛鳥は頬を少し赤らめて、視線は宙を泳いでいる。

 

 

「まぁな。……それで何でそいつは変な様子なんだ?」

 

「それはもちろん先程の事を――お主、もしかして覚えておらんのか?」

 

 趙雲は目をぱちくりとさせ驚く。それは少し残念そうな表情にも見えた。

 

「全く覚えていない」

 

「…それは残念。もう少し飛鳥を弄れると思っ――」

 

 

 

 

「いいか、さっきは何もなかった! お前がこけただけだ! こけて頭を石にぶつけて気を失っただけだ」

 

 趙雲が言い終わらない内に飛鳥が考輝に駆け寄り早口で言う。さらに彼の肩を掴み、念を押すように前後に揺する。

 

「お、おう」

 

 それには有無を言わさない迫力があった。

 

 

 

 

「それはそうと楽進殿。先程から村老がお主を探しておるぞ?」

 

 趙雲がタイミングを見て言うと、楽進は何かを思い出したかのようにハッとする。

 

「あ! 話し合いの事をすっかり忘れていました! 教えて頂き有り難うございます。……それで皆様はどうしますか?」

 

「是非とも我々も参加させて貰おう。それて恋に高順殿も参加するつもりようであるぞ」

 

「心強いです。正規軍の方達の意見が欲しいですから」

 

 

 その二人の会話を聞き、飛鳥は考輝を揺らすのを止め、真剣な顔になる。

 考輝も何かを察したように目を細めた。

 

 

「……なんだ? 何か厄介事か?」

 

「かなり面倒な状況だぜ? どうにも世の中、どこも荒れてるな」

 

 飛鳥はどんな状況か既に知っているようで苦笑いを浮かべる。そして思わずといったように溜息を吐いた。

 

 

 

 

「詳しくは長老の部屋に向かいながら説明します。こちらへどうぞ」

 

 三人は楽進に連れられ、部屋から出て廊下に出た。

 

「まずこの村は場所は兗州の東郡のはずれにあります。普段はわりと治安は良いのですが、ここ最近南の陳留や北の冀州、少し距離がありますが西北の并州で大規模な賊の討伐があり残党がこの地に流れ着いています」

 

 廊下を歩きながら楽進が考輝に状況を説明をしていく。なお話しに出た并州は丁原、冀州は袁紹、陳留は曹操が治めている。

 

 彼等が歩いている廊下はかなり広く、その家の裕福さを醸し出ていた。廊下の右手には窓が等間隔に並び、日が少し西に傾いていたためもろに日光が入り込んでいる。

 

 

「それで賊の被害が拡大しているのか」

 

「はい。この数週間で近くの村が三つも潰されています。さっきの部屋にいた怪我人も、殆どがその村々から逃げて来た者達です」

 

 考輝はさっきの病院のような場所を思い出す。

 彼は布を吊しただけという簡易な造りの合点がいった。それは怪我人に急に流れ込んできたために、急遽造ったものだからだ。

 そしてあのような絶望的な雰囲気であった理由も。

 

「それで賊の数は?」

 

「根城に偵察に行った者と、逃げて来た者達の話しを聞く限りだと千五百人はいるようです」

 

「この村の戦力は?」

 

「潰された村、周囲で残っている五つの村から有志を募って編成した義勇軍は二百人。女子供や老人に無理矢理武器を持たせたとしても五百人に届くかどうか…………」

 

「…………」

 

 ――単純計算で敵はこちらの三倍。しかも義勇軍で正規軍ではない。勝率は限りなく……嫌、0だな。

 

 彼は心の中でため息をつく。奇跡でも起こらない限り、この戦況はひっくり返せないとまで彼は考えていた。

 

 

 ――普通ならここは逃げの一手しかないが、ここは軍ではなく村。食料の蓄えの問題はあるし、移動のスピードが軍とは違うから賊に追撃をくらい確率もある。下手に逃げる事も出来ない……か。

 

 

 彼がそうこう考えている間に、とある扉に四人はたどり着く。

 ちょうど廊下の突き当たりにあり、他の扉よりも一回り大きい。豪華な作りではないが、頑丈そうな木で出来ている。

 

 

「失礼します。遅れてすいません。少々話し込んでいました」

 

 楽進はその扉をノックもせずに開けた。

 会議室。端的に言えばそういった感じの細長い部屋だった。そして部屋の中央にある机を囲むように人々が座っている。

 

 中には呂布と高順もいて、考輝が助けた眼鏡の少女、于禁の姿も見える。そんな彼女は考輝の姿を見るとあっ、という感じで口を開けた。

 他にも何人か村の有力者であると思われる男性が数人いる。その内の一人は白髪に白い髭の年輩の老人がいた。机の中心に座っている事から、おそらく彼が村長だろう。

 

 

「うむ。それでは席についてくれ。御三方もどうぞ、空いている席へ」

 

 四人は村長に促され、席に座る。

 

「……さて、いきなり本題に入るがの、この村は今重大な選択を迫られておる」

 

 長老は四人が座ったのを確認した後、重苦しく話し始める。それにより場の空気もより重々しい変わっていく。

 

 

「皆も知っている通り、今この地には賊が大量に集まり、明日の安全の保障もない。そんな中で我々に出来る選択は、無謀な戦いを挑むか、住み慣れた土地を捨て乏しい食料で逃げる事だけじゃ」

 

 村の者達は皆一様に険しい顔をする。彼等にとって村は生まれ育った唯一の故郷だ。それを捨てるのにはかなり抵抗があるし、食料の蓄えも少ない。

 だからと言って賊に戦いを挑んだところで成すすべもなく蹴散らされてしまうのは全員が分かっていた。

 

 

「これはかなり辛い選択じゃが、我々は選ばねばならぬ。例えどちらも上手くいかないにしてもじゃ」

 

『………』

 

 しかし誰も意見を言わない。この空気の中では当然と言えば当然だろう。

 

 

「東郡の太守の軍は当てにならねぇのか?」

 

 その空気の中、飛鳥が口を開くが村の者達の表情は変わらない。それどころか更に顔を険しくする者もいた。

 

「ふん! そんなのが当てになるなら賊は最初から集まってこねぇよ!」

 

 村の者が忌ま忌ましげに言う。その顔は怒りで満ちていた。

 

「……東郡の太守は無能という話。民からは徹底的に搾り上げ私腹を肥やし、上の者には賄賂を贈って保身に走る。もし舞様の配下にいたら即刻首を跳ねられている」

 

「ったく、世の中腐ってるぜ。くそったれ太守が」

 

 飛鳥は苦虫をかみつぶしたような顔をする。

 そういった不正が嫌いなのか、飛鳥の顔は忌々し気に歪んでいた。

 

 

 

 

 

 

「…………良い考えがある」

 

 沈黙していた呂布が口を開く。表情とかは変わらないが。

 しかし、その場にいた全員は食い入るように彼女を見つめた。

 

 

「して、恋。その考えとは?」

 

「……攻めればいい…………」

 

『…………』

 

 瞬間、空気が凍りついた。

 

 

「しかし……呂布殿? 戦力差は三倍近くありますが…………」

 

 いち早くフリーズから回復した楽進が恐る恐る聞く。この様子だとただ単に策も無しに突撃とか言いそうだと彼女は感じたからだ。

 しかし、彼女の言葉はかなり予想外のものだった。

 

 

 

 

「……勝つための策は……考輝が考えてくれる…………」

 

「……は?」

 

 思わぬキラーパスに、考輝は思わず叫びそうになるのをぎりぎりで止め、心の中に留めた。

 思いもよらぬ一言に、考輝は否定する事すら出来ずに茫然としていた。

 

 

「確かに、この前の戦もこいつの策のおかげで倍近くいた敵に完勝できたしな。劣勢をひっくり返す策考えるの得意だろ」

 

 そして彼が固まっている間に飛鳥が呂布の援護射撃をする。すると村の者達が期待を込めた目で彼を見始めた。

 そのあまりに重い期待に彼はたじろいでしまう。

 

 

「彰義殿……何か策がおありで?」

 

 村長もまた、期待を込めた声色で彼に尋ねる。

 しかし彼も万能ではない。そのように期待されても不可能なものは不可能だ。

 

 

「……嫌、流石にこの差を覆すのは――」

 

「策を立てるにもその場所を見ねばなるまい? まずは賊の根城の地形を見れば彼なら策の一つも思いつくであろう」

 

 だというに、彼の言葉は星に遮られ、皆に届く事はなかった。

 

 

「おお、頼もしい! 誰か彰義殿を案内してやってくれぬか!」

 

「それなら沙和が案内するの!」

 

「ウチも着いてくで!」

 

 長老の言葉に于禁と紫色の髪をした、関西弁の少女が立候補する。

 関西弁の少女は、虎柄の水着のようなものにマントのような物を羽織り、首にはゴーグルをかけていた。

 

 

 

「…………」

 

 こんな状況になってしまえば彼は断る事は出来ず、村の者の期待を背負って賊の根城を見に行く事になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日は徐々に傾き、もう夕方になっていた。

 そんな夕日が差し込む森を三人の人影が移動している。

 

 

「そういえばさっきは有り難うなの〜。迷子になった村の子供を見付けたと思ったら、あんな事になって危なかったの」

 

「……気にするな――于禁でいいのか?」

 

 考輝の声には元気が無い。于禁の言葉も手短に返す。

 正直な話、考輝はストレスで胃がキリキリと痛くなっているのを感じていた。

 

 

「そうなの〜。沙和は姓は于、名は禁、字は文則なの〜」

 

 彼女はそんな彼の様子を知ってか知らずか、かなり陽気に名を名乗る。

 

「ちなみにウチは李典や。それにしてもお兄さん凄いんやな〜。腕も立つ上に策まで考えられるなんて、尊敬するわ〜」

 

「沙和もなの〜」

 

 二人はキラキラとした目で彼を見る。

 

 

「……誇張されすぎだ。実際、根城を見ても策を思いつくかどうかは分からないぞ」

 

 しかしそれは彼の胃の痛みを強くするだけだった。

 

 

 

 

 ――それにしても于禁に李典か。こいつも楽進と一緒で魏の古参の武将だったな。

 

 彼は二人のステータスを開く。

 

統:74 武:64 知:60 政:47

 

剣:A 槍:B 戟:C 弓:C 騎馬:C 兵器:C 水軍:B

 

特技:規律(部隊が混乱しにくい)

 

 

 これが于禁のステータス。

 

 

 

統:68 武:67 知:70 政:64

 

剣:C 槍:A 戟:C 弓:B 騎馬:C 兵器:A 水軍:C

 

特技:発明(兵器等の制作期間が短くなる)

 

 

 こちらが李典のステータス。

 

 どちらも楽進と同じく伸びしろのあるステータスだ。なお于禁は統率、李典は知力の伸びしろが大きい。三人とも得意分野は別のようだ。

 

 

 

 

「そろそろだから、ここからは気をつけて行くの」

 

「せやな」

 

 二人のステータスを見ている内に、賊の根城に近づいていたようだ。三人はペースを落としてゆっくりと進んで行く。

 

 

 三人が十分程歩くと、森の中に一本の亀裂が現れた。亀裂はかなり長く、百メートルくらいはあるだろう。彼等がその亀裂を覗き込むと、そこには洞窟が広がっていた。

 

 

 洞窟にはそこを根城にしている千五百人程の賊達がごった返しになっているが、それでもまだ空間に若干の余裕がある。

 

 

「こうやって見ると、やっぱり凄い数なの……」

 

「何とも暑苦しそうな空間やで……」

 

 二人は賊の数をあらためて見て、先程とは打って変わって暗い表情をしている。

 

 

「…………」

 考輝も打って変わって思案顔になっている。

 だがその顔には先程までの絶望したような表情は無い。

 

 

 

 

「……この洞窟には出入口は何箇所あって、ここみたいな大きい空間はいくつある?」

 

「昔はここは谷だったらしくて、大きい空間はここだけなの」

 

「出入口は大きいのが一つに人一人がやっと通れるのが後いくつか――――って、お兄さん? 何処に行くんや?」

 

 考輝は李典が喋っている途中で踵を帰して歩き始めた。

 

 

 

 

「村に戻るぞ。急いで策の準備をしないとならない」

 

 それを聞いた二人は笑顔を浮かべて彼の後を追う。

 

「一体どんな策なの〜?」

 

「村で説明する」

 

「いけずやな〜。今説明したって減るもんやないやろ?」

 

「何回も説明するのは面倒だ」

 

 彼はそんな軽口を叩ける程にまで余裕が出ていた。

 

 

 

 

「……ただ、惨たらしい方法ではあるがな」

 

 これで村が救われると喜ぶ二人には、考輝の呟きは聞こえなかった。

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