トータル・イクリプス Cold of united front【凍結】 作:ignorance
忙しい毎日の隙間で考えているので気長にお待ちください
これで何度目だろうか。
うちのメカニック達は化け物だと思ったのは。
目の前にそびえ立つ黒い戦術機【不知夜】を見ながらそう考えた。
不知夜の組み立て開始から一週間で完成まで行ったメカニック達に頭が上がりそうにない。開発主任の良佑が隈を作りながらも報告に来たときは驚いた。
『機体は完成した。資料は管制ユニットに入れてるから読んどけ。俺は寝る』
フルクラムの時は徹夜無しで4、5日で組み上げたらしく、不知夜に至っては徹夜で5、6日で組み上げた尊敬よりも畏怖の念が出かねないが彼らがいなければこの機体は組み上がらなかった。そこに関しては純粋に尊敬する。
管制ユニットに乗り込み、機体の各部調整に目を通す。が、新しい機体は動かさなければ不具合等は見つけられない。
「CP、シミュレーション最高難易度のハイヴで頼むぜ」
インカムからコマンドポストに連絡する。
戦闘服を脱ぎ、専用の強化装甲が姿を現す。
網膜にイメージが投射され、ハイヴの内部が視界に映る。
「不知夜、出るぜ!」
跳躍ユニットを吹かし、BETAの群がるハイヴを駆け出した。
CPに出入りしていた3人はその映像に度肝を抜かした。
黒い機体がハイヴ内を単機、疾走していく。
BETAにはあまり目もくれず、地面や壁を蹴り、加速していく。進路にBETAがいたときのみ、突撃砲か踵部モーターブレードで一閃する。それでも一瞬の出来事なので機体速度はぐんぐん上がっていく。
「…あれが大尉の新しい機体」
アレクサがポツリとこぼした一言にはいろんな感情が混ざっていた。
かつて自分達と戦い、今はともに戦った機体の後継機は前機よりも厳つくなり、見た目もTSF-94というよりかはSu-37やSu-47よりになっていた。
そんな機体が現在ハイヴを駆けている。チェックポイントを颯爽と駆け抜け、その度に機体が速度を増していく。
「大尉、楽しんでるね。そう思わない?姉さん」
クラリッサがモニターを見つめながら質問してくる。
「そうね。まるで新しい玩具を貰った子供みたい」
そう言ってみたものの、今後彼に自分達が追いつけるかどうか、そんな不安がアレクサの中を駆け巡っていた。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。大尉さん優しいもの」
アレクサの不安に答えるかのようにメリッサが呟く。
「悩んでる私がバカみたいね」
吹っ切れたアレクサが呟くと同時に新記録を叩き出したシミュレーションが終了した。
「ふぅ」
管制ユニットの中で溜め込んだ空気を吐き出すように息をはいた。
機体状況は良好。むしろ、まだまだ回せる感じがあった。
新たに新設された肩部装甲ブロックのスーパーカーボン製ブレードベーンや頭部のセンサーマストも増設され、機体的に見ればチェルミナートルの上半身とビェールクトの下半身を合わせたような機体に仕上がっていた。それと同時に壱型乙で使用していた大型跳躍ユニットを廃止し、従来のサイズに変更していたが、中身は大型とほとんど変わらないため、今までのように機体が自分の思うように動いてくれた。
以前、注文した脚部大型モーターブレードの代わりに脚部ブレードベーンがついているため文字通りの全身凶器の戦術機が組み上がった。
「最高だぜ、コイツは。俺が考えた以上の機体だ!コレならやれるな。IGNISの最終装置が!」