トータル・イクリプス Cold of united front【凍結】 作:ignorance
18話のトカラフの傷跡の経緯とかの話です。
これはイムヤがソ連に亡命してまだ間もない頃の出来事。
とある二人はとても仲が悪かった。出会っただけで口喧嘩は当たり前で、手を出すことも多々あるのにも関わらず、同じ小隊に配属されてるからなお、質が悪い。
そんな二人が少しだけ距離を縮めた命を賭けた死合がもうすぐ始まろうとしていた。
二人とは軍から支給されたスペツナズナイフとトカレフTT-33を持ち、対面していた。
「条件は大体わかってると思うが再確認するぜ」
「構わん。
「トカレフは装弾されている8発のみ、予備弾倉なし。スペツナズは刀身を飛ばしても構わない。あいてがギブアップするか、動かなくなるか、殺したら勝ちだ」
「ふん。先の2つは詭弁だろう。私達は互いに殺すことしか考えていまい」
「分かってんならとっとと殺ろうか」
二人が構える。開始の合図などはなく、この時点で始まっているのだが互いに警戒し、動こうとしない。
瞬間、イムヤがトカレフを抜き、発砲。
するも、回避されラトロワは距離を詰める。
「
「ケッ。そりゃどうも」
頸動脈を狙ったナイフを銃身で受け、膠着状態となる。
イムヤが左足で横蹴りを入れるも後ろに回避される。
途端、ラトロワはトカレフを抜いた。
が、発砲されるよりも早くイムヤはトカレフを蹴り飛ばす。
一瞬、優勢に思えたが、眼を狙った刺突に反応が遅れ、トカレフのグリップで対応したため、刺突の衝撃に弾き飛ばされる。
即座に二人は後方に下がり、ナイフを構え直す。
一瞬の間が空き、ナイフが重なる。
鍔迫り合いを征したのはラトロワだったが、イムヤは即座にラトロワの右手首と胸ぐらを掴み、背負投げの容量で叩き伏せた。
イムヤは反撃を警戒し、距離を取る。
も、腹部に鋭い蹴りが入る。
「クソッタレ。まだ沈まねぇか」
「当たり前だ。貴様が死ぬまで沈むわけにはいかんからな」
「執念深いのか、意地っ張りなのか、わっかんねえな」
「なんとでも言え」
「だが、嫌いじゃないぜ。そういうの」
「ふん」
二人が構え直し、目の前の獲物に全神経を注ぐ。同時に走り出し、互いの右拳が右頬を捉えるよりも早くイムヤが押し伏せた。
「これで決着か?」
「クソっ」
イムヤはマウントポジションを取ったことにより勝ち誇っていたが自分が掴んでいるモノに気づいていなかった。
しかし、周りの観客のざわつきように二人は違和感を感じる。
「なんだ?このざわつきようは?」
「貴様、どこを触っているッ!」
観客の声が聴こえたラトロワは状況を理解できたが、イムヤはイマイチ理解できていなかった。
「ドコって…」
ラトロワの声に反応し、手元を見るとラトロワの見事な双丘をしっかりと掴んでいた。
「「………」」
見事に二人共動けなくなり、沈黙した。
が、イムヤがラトロワの手を握り、
「逃げるぞッ!」
脱兎のごとく、走り出した。
訓練場から少し離れた路地裏で二人は息を整えていた。
「ハァ…ハァ…ハァ…。なんだってんだ」
「ハァ…ハァ…。逃げるなら貴様だけで逃げればいいだろう。私まで巻き込むな」
「ルッせ。俺が掴んでなかったらお前、あのままあそこで放置されてたんだぞ」
「それに関しては感謝している。だが、先程のはまだ許していないからな」
「そうかよ。だが、試合は無効だ。ソイツはまた別の機会にな」
「ムゥ…。…貴様、名前は?」
「名前だぁ?」
「そうだ。さっきから貴様やお前など、互いに名前を知らんではないか」
「考えてみりゃ、コールサインくらいで呼んだことしかねぇな」
「だから、名前を教えてくれ」
「…イムヤ。性はない」
「私はフィカーツィア・ラトロワ。よろしく頼むぞ」
「分かったよ。少なからず、お前には背中を預けられそうだ」
「ふん。気を抜けばスグに殺すからな」
「俺から一本獲ろうなんざ100年早えよ」
基地に帰ったあと、二人ともイジられたのは言うまでもない。
過去編はextrastageとして出して行きます。
ちょくちょく挟むかも。