トータル・イクリプス Cold of united front【凍結】 作:ignorance
一方的な殲滅が既に始まっていた。
雑魚の数の暴力を圧倒的な質で確実に潰していた。
両手と左側の背部兵装担架に搭載されているA-97突撃砲が火を吹き、小型種を肉片に変えていく。
脛部のカーボンブレードと踵部のモーターブレードが大型種の肉を切り裂いていく。
(想定より多いな。それに他の方向からも湧いて出てきてやがる、あと5分もしない内に先端部が基地に到着する)
戦域図を見ながら考えてつつ、また一つとBETAを切り裂く。白を主とした塗装がBETAの血で赤く染まる。深追いせずに後退しつつ迎撃に当たる。
「来たか」
数十機以上の機動音。いずれ共に戦場を駆けることになるであろう仲間達。
残骸を乗り越え、湧き出てくるBETAに無数の弾丸の雨が降り注いだ。
『こちら、ジャール01。スコーレスト01だな、支援する。各機、兵装自由、BETA共をたいらげろ!!』
『『『『了解ッ!!!』』』』
大隊が3個中隊に分かれ、各場所のBETAの殲滅を開始した。
射撃を続ける白の機体の隣で青い機体が支援射撃を始めた。
「ジャール01、援護感謝する。だが通信妨害がある以上のうのうとしていられない。俺は基地周辺のBETAを掃討する。通信妨害を発している通信塔の破壊、頼んだぞ」
『了解した。1個小隊は私と共に通信塔を破壊しに行く。残る2個小隊はスコーレスト01と共に基地の防衛に当たれ。全員、生きて帰ってこい!』
『『『『了解!!!』』』』
周囲でBETAを駆逐していた1個中隊が3個小隊に分かれ、8機の
「時間が惜しい。このまま噴射滑走で行くぞ!」
返答を待たずに主機を吹かし、基地に向けて機体を走らせる。それに8機のジュラーブリクが続く。
基地までそこそこ距離があり、不知夜の最高速度ならものの数分足らずで到着出来るが、後続のジュラーブリクが追い付ける速度を維持しつつ時々迎撃をしながら基地に向かっていた。
(急がねぇとヤベェな。99式は帝国の機密兵器、失うことどころか奪取されるとなると面倒事にしかならねえ。それに唯依嬢を失うワケにはイカン)
機体速度を徐々に上げ、基地に向かう彼の顔には少々の焦りが見えた。
«唯依side»
(やられたな。全ては彼らの掌の上だったというわけか)
コンソールのモニターに映し出されているエラーコードを睨めつけながら毒づいた。
しかし、唯依の顔には焦りの表情は全く浮かんでいなかった。むしろ、その表情は少しばかり笑みが含まれていた。
「爆破処理はできないが、まだ不知火弐型と大尉の機体がある。不知火は無理だとしても大尉の機体が来てくれれば99式は持ち出せる」
キーボードから離れ、99式によりかかる。
現状、やれるだけのことはやった。あとはBETAが早いか、イムヤが早いか、それだけが気がかりだった。
『篁中尉、無事か?』
「大尉!やられました、爆破処理はできません」
『了解した、天井を突き破る。格納庫から出てろ。各機周囲を警戒、頼むぞ』
唯依が格納庫から出たのを確認すると踵部のモーターブレードを天井から突き刺し、勢いよく天井を切り裂く。
開いた隙間をマニピュレータでこじ開け、不知夜と99式が通れる間を作った。
『篁中尉。99式と貴官をこちらで保護する。異議はないな』
「了解しました。これからどうするつもりですか?」
『さあな。どうなるかわからん』
«イムヤside»
機体に膝をつかせ唯依が乗りやすいように体勢をつくる。
(99式と唯依嬢を無事に保護出来たのはでかいな。あとは
保護した一人と一つは元あるべきところに返して終わりだが、未だに姿を現さない爆撃機と光線級に疑問を持つも、イムヤは自らの仕事に集中するのだった。
次話以降まだ何も考えていねえ。
また間が空きます。