トータル・イクリプス Cold of united front【凍結】 作:ignorance
帝国及び横浜基地が主体になっていきます。
「それで不知夜はどうなったのかしら?」
「結果から言えば成功した…だな。ただし、想定よりも機体性能が上回ったからあんたの頭を借りに来たってわけだ。そこまで忙しくないしいいだろ。香月博士」
部屋には一組の男女。片方は黒い近衛の服を着ており、もう一人は白衣をまとっていた。
近衛の男は傍らに資料を置いており、この世界では貴重品であるコーヒーを啜っていた。
「結果的に成功しているなら十分じゃない。それともその結果に不服があるから私のところに来たの?」
「そのトーリ。不知夜は既に戦術機として機能していない。いや、機能はしているが…そうだな、資材を喰い潰しかねないトンデモ兵器になっている。見てもらったほうが早いか」
男は懐に入れていたUSBメモリを投げ渡した。
博士が視聴開始から少しばかり時間がたち、視聴をやめた。
「…欠陥機にしても性能が良過ぎるじゃない。アレ相手に当然のように勝利をもぎ取ってるなんて」
「あんたから見ても欠陥機のレッテルか。ま、機体性能は折り紙付き。使える衛士は一人だけ、使えば確定完全分解整備。ここまでくればね〜。」
「最ッ高じゃない!専用機ってところは抜かしても十分過ぎる戦果よ。あの阿呆から一本取ってくれるなんて。…それで、どうしたいの?」
「興が乗ってくれたようでなりよりです。コイツが完全分解整備をしないでもいいようにしたいんですよ。主任からどうしたかは開発資料にも書いてあるんで」
「そういえば本人はどこいったのよ?」
「アイツなら今帝国ですよ。元近衛として久々に行きたいんじゃないですかねぇ。たまには羽も伸ばさせてやらねぇと、歳でポックリ逝っちまいますよ」
「簡単に死ぬわけないでしょう、彼が。でも、歳なら逝きそうね」
「あんたが言うと、マジにしか聞こえねえや」
「あら、言い出したのはあなたの方じゃない」
「違いねえや。それでいつから始めますか?」
「今からでも始めるわよ。彼、まだ戦う気でしょ?」
「そうですね。第四計画の為にも」
一方、帝都にて
「コイツを着るのは久しぶりだな。さて、急ぐか」
山吹色の礼装を着こなし、長年行くことのなかった
帝都に足を進めた。
本来、彼は無名であり、アメリカ育ちであるため近衛にいる時点でおかしいのだが、篁唯依の父親である篁祐唯の計らいにより近衛として戦ってきた。
イムヤの存在は帝国にとって意外と重要な位置におり、世界を周り情勢を帝国に伝えると言う使命であった。
そのため、戦闘データの一片ですら重要視され近衛及び帝都守備隊に大きく貢献し対人戦闘における戦闘力が昔に比べ格段に上がっているのである。
今回は特に上物であり、各国の改修機及び新型、それだけでなく米軍の新型機『F-22』のデータも持っている。
帝都守備隊には友人である沙霧尚哉がおり、F-22は彼ら帝都守備隊がぶつかる壁である。
それは未来のことではあるが、イムヤ自身は既に経験済み、そしてそれを回避する方法も計算済みであるがそれがどう転ぶかが問題だった。
だが、それすらもイムヤは頭の隅に置いているだけで本来は第四計画の遂行を第一に考え、幾つか前の記憶の再現だけは絶対に阻止する考えだった。
「…ハァ。結局、こういうのばっかりだな。でもこういうのが性に合ってるのかもな」