「俺さ、思うんだよね、働いたら負けだって」
まるで悟りを開いた僧のような顔で青年は言った。
「お前のお陰で俺は生きていける、本当に感謝してるんだぜ?」
「ふふっ、そうかそうか、なら私の為に死ねよ、穀潰し」
笑顔で物騒な事を言う金色の髪の美女に青年はこう答えた
「ふふっ、セリカは厳しいなぁ、あ、おかわり」
「そうかおかわりか……ふふっ……《それなら・さっさと・食い扶持稼げ》!」
セリカと呼ばれた美女が奇妙な発音で叫ぶと青年は爆発した。……いや、青年の目の前で爆発が起きたのだ。
「ばっ、馬鹿野郎!?俺を殺す気か!?」
「違うぞ?グレン、ゴミを片付けるのは掃除と言うんだ」
「俺はゴミじゃねぇよ!?」
「まったく、お前よりも後に引き取ったコイツはキチンと働いてるししかも家の手伝いもしているんだぞ?恥ずかしいとは思わないのか?」
そう言ってセリカが台所を指した。そこには狐のお面を顔につけ、着物を着た少年が台所で洗い物をしていた。
「おい待てよ!?アイツはお前に金を払ってないだろう!」
「私は子供からお金を巻き上げるような事はしない、なぜならまだ学ぶべき事があるからだ。お前は働けるはずなのに働かないだけだろう?丁度良くアルザーノ帝国魔術学院の講師に一つ枠が空いてな、お前が働くには丁度いいだろう?お前、成績は平均的だったが魔術の知識は広く深いだろ?」
「よりによってそこかよ!?セリカも知ってるだろ?俺があの時、魔術を嫌いになった事を……」
「グレン……」
すると炊事場での皿洗いが終わったのか少年が戻ってきた。狐の面は外しているようだ。
「……」
「終わったのか?」
「はい、洗い物は全部終わりました」
「そうか、……見たかグレン?お前よりも役に立っているぞ?」
(ん?待てよ?ここはアルザーノ帝国魔術学校の講師になって適当に授業すればいいんじゃねぇか?)
「そうか、講師になってくれるのか」
「お、おう!気が変わったから受けるぜ!」
「それなら安心だ、コハクもアルザーノ帝国魔術学院に入れようと思っていた所だからな。安心して通わせられる」
「は?コハクも来るのか!?」
「そうだぞ?お前の監視も兼ねているが、コハクの将来の為になる」
「……講師になるやめ……」
「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離せよ》」
セリカが早口でそう唱えながら手を向けるとグレンのすぐ横の壁が綺麗に丸い穴が開いた。
「は……」
「これを当てられくはないだろう?さぁ、講師をやるのか、死ぬか……選べ」
「まっ、ママぁぁぁぁ!」
「……いい大人が情けないなぁ……」
少年はそう言いながら外していた狐のお面を再び付けた。