巨大な骸骨がその腕を振るう。
「くっ…」
男は剣で相殺せずに躱す。
「その剣なら余裕に切れると思うけど」
コハクは呪符を周りに撒き散らしながら男に問う。
「…しまっ…」
骸骨に気を取られ、対応が遅れた。
「もう遅いよ、【足掻くな・諦め受け入れよ】」
すると周りに撒かれた呪符が男と剣に纏わり付く。そして紫の紫電を発し徐々に縮んで行った。
風が吹くと、そこには何も無かった。
「さてと、グレンは…別ルートからルミアの所に向かってるみたいだね…」
グレンとシスティーナの位置を式神で把握し、コハクも骸骨と進む。そして転送塔に辿り着く。
「…あれ、ガーディアンゴーレムが居ない」
「せん…せぇ…はぁ…ここにルミアが…?」
「コハクか…無事みたいだな…」
グレン、システィーナ、コハクの三人は合流し、転送塔の扉を開けた進もうとした。
「…っ…防げ!」
コハクの声に応えるように地中から先程と同じ巨大な骸骨が飛び出し、ソレを防ごうとした。
システィーナが突然現れた骸骨に悲鳴をあげるが、コハクもグレンも別の意味で驚いた。
骸骨はバターのように真っ二つに斬られ、そのまま地に残骸を散らばらせた。
「やれやれだなぁ…ホント…馬鹿は馬鹿のまま倒されたし、上司は油断でやられるし、本当になぁ…」
その人物の登場にシスティーナは硬直した。教室で高度な魔術で放った青年だった。
「…テメェも邪魔するんなら倒して行くぞ」
グレンは拳を握り構える。
「ん〜…通っていいよ」
何でもないように言う青年
「こっちも思想が一個って訳じゃないし、今回は邪魔が成功してくれた方がいい。さ、通っていってくれ」
サッと道を開ける青年
彼が何を考えて居るのかは分からないが戦わないのなら力も温存出来る。そう考えたグレンとコハクはシスティーナを連れたまま警戒しつつ進んだ。
そのまま転移塔内部の螺旋階段を登り、最上階の転移魔法陣のある部屋に辿り着く。
そのままグランが扉を蹴破る。
「……お誂え向きな黒幕さんだね、うん」
そこにはグレンが来る前の前任の講師、ヒューイが居た。そしてルミアは魔法陣の上に縛られたまま置かれていた。
「ここまで来るとは…しかしもう遅いですよ…ルミアさんの転移術式は発動していま…」
「【魔を食い尽くせ・蟲よ】」
コハクがそう唱える拳ほどの大きさの虫がコハクの掌に現れ、ギチチチ…と鳴いた。すると、部屋の中の魔力が薄くなった。
「くっ…何を…した…んです…」
ふらつき倒れこむヒューイ、グレンやシスティーナもふらつくがなんとか耐える。
「術式が起動してるならその分の魔力を無くせばいい、簡単な事だろう?」
「こんな…ことで…計画が…」
「もうそろそろここも鎮圧されるだろうから投降するのを勧めるよ」
そう言ってコハクはヒューイの首筋を蹴りを入れて気絶させた。
「……ルミア、ルミア!無事…?」
システィーナはルミアへと駆け寄り、縄を解いて呼びかける
「…ん、システィ…?」
朧気にシスティーナの名前を呼び、辺りを見渡すルミア
「…ぁ、グレン先生……あれ、コハクくんは…?」
「コハクのやつなら帰ったぞ…はぁ…後々の処理とか色々めんどくせぇな…手当て出るのか不安だ」
事の端末よりも給料の心配をするグレンを見て、システィーナもルミアも苦笑いを浮かべた。
「グレン先生…システィ…私…実は…」
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「しっかし、ルミアがあのエルミアナ王女とはね……驚いた」
「…こっちも驚いたよ…うん」
セリカの家でそう呟くのは正式に魔術講師となったグレン、そして呪符を作っているコハクだ。
事件の中心地にいたグレンとシスティーナ、そしてそそくさと帰ろうとしてセリカに捕まったコハクの三人は帝国政府に呼び出され、ルミアの素性を聞かされてその秘密を守るよう要請された。
「しかし、グレンが正式な講師になれるように学園長に言ったのは驚いたぞ」
そんな二人をニコニコと笑顔で見ながらセリカは言った。
「まあ……その、なんだ……ちょっと思うところがあってな。もう魔術のせいにするのはやめたんだよ。それに……」
グレンは思い出す、ルミアを救う為に勇気を出して付いてきたシスティーナ、自分に壮大な夢を語ったルミアを思い出す。
「見てみたくなったんだよ。あいつらが将来、何をやってくれるのかをな。続けるには十分な理由だろ?」
「いい事だね、グレン」
「あ、コハク。テメェ勝手に帰りやがって…あの後ルミアとシスティーナの説得が大変だったんだぞ…」
コハクが帰った後、ルミアからは無事かどうかを聞かれ、システィーナからは骸骨やら虫を扱った事について聞かれてんやわんやだったのである。
コハクが無事だった事は素直に話し、呪術に関してはある程度伏せておいたのだ。
「お前の呪術は強力だからな…というかお前の場合複合的な呪文が多いからバレると面倒だろ…」
「そりゃね…まぁ今日は時間の事もあってお休みなんだしゆっくりしよう」
「そうだなぁ…」
「なら久々に三人で風呂でも入るか?」
そう言ってクスクスとセリカは笑う
「誰が入るかっての!」
「僕は子供じゃないよ!」
「「「……あはは!」」」
こうして平和な時間を噛み締める三人だった
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「やーれやれ、帝国もしつこかったな」
青年がそう言う眼下には帝国騎士達の骸が転がっている
「生憎だけれど捕まるわけにはいかないからね、まぁいいさ…これで目的は達成したようなものだし…」
そう言って青年は空を見上げた。
「あの『孤児院』の子供達はみんな何かしらの『異能』保持者だ。その中でまだ『異能』使わなかった少年…興味深いね……他の孤児院出身者はみんな孤児院の運営に関わってて手が出せないし…そもそもあの孤児院の運営してるのがあの『氷獄の支配者』だし…あの計画の為とはいえ何の罪すらない『異能』持ちを狩るのはやだなぁ…」
はぁ…と下を向いてため息を吐く青年は切り替えるように顔を上げて走り出した