ロクでなし魔術講師とキツネの呪術師   作:モフモフ毛玉

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お久しぶりです。長い間更新できず申し訳ありません


学院襲撃

 

グレンとコハクは走っていた。つまり、遅刻である。

 

「だぁぁ!ちくしょう!なんでこんな時に限ってセリカが居ないんだよ!」

 

「そりゃ、グレンが最近じゃ遅刻せずに勤務してるし、魔術学会の準備があるからそりゃ早く出るでしょ」

 

「ぐっ、正論過ぎて何も言えん…」

 

そして魔術学院の目印となる十字路に着いた時、グレンは不穏な気配を感じた。

 

「……コハク、先に学院に行け」

 

「……ん、りょーかい。死なないでよ?」

 

「アホか、死ぬ訳ねーだろ」

 

コハクはグレンを置き去りにして学院へと走って行った。

 

「出てきな、後ろでコソコソしてんのはバレてんだぜ?」

 

グレンは後ろを振り返り、ある一箇所を鋭く見つめる。

 

「ほう……分かりましたか?たかが第三階梯(トレデ)の三流魔術師と聞いていましたが……」

 

「はっ、事前に調べはついてるって事か」

 

「ええそうです。そして貴方は私には勝てない《穢れよ・爛れよ・朽ち果てよ》!」

 

余裕ぶった男は自らの魔術を放つが、何も起こらない

 

「…は?」

 

「おいおい?余裕ぶっこいてこんなもんか?ざまーねぇな!」

 

「くっ、何故だ!?」

 

狼狽え、魔術をもう一度唱える男。

 

「無駄だ。どんだけ唱えようが、お前の魔術は発動しない」

 

「ぐっ……クソォォ!」

 

男が魔術では殺せないと分かるや否や腰のナイフを抜いてグレンへと襲いかかる。

 

(上手くやれよ、コハク)

 

グレンは男と対峙した。

 

 

 

 

魔術学院にてシスティーナは怒っていた。

 

「遅い!いつまで待たせるのよ!」

 

「そうだね……グレン先生最近は遅刻しなかったのに、それにコハクくんが遅れるなんて珍しいよね」

 

「そうね…どうせコハクの事だからグレン先生を起こして遅れたんじゃないの?」

 

そうすると教室の扉が開かれ、人が入って来た。

 

「なっ」

 

「あーここね。いやー勉強ご苦労様!あぁ、なんでこんな所におにーさん達が来たのはねー…」

 

「喋り過ぎだ」

 

「いてっ」

 

ヘラヘラした青年が後ろに居た男に頭を殴られる。

 

「なんですか貴方達は!ここはアルザーノ帝国魔術学院です。部外者は立ち入り禁止のはずですよ!」

 

「あ、そうなの?ごめんごめん、用が済んだら帰るからさー。とりあえず〜ルミアって子知らない?」

 

「なっ!?」

 

「ん〜?その反応って事は君の近くに居るみたいだね〜。大丈夫、そのルミアって子を連れてったら君らに危害は加えないと僕は約束しよう」

 

「何言ってんだよ!?」

 

「ふざけないで!貴方達を拘束します!」

 

システィーナは指をヘラヘラした青年へと構え

 

「《雷精の–––」

 

「はい《シュパッ》」

 

青年のふざけているような詠唱によってシスティーナの周りを囲むように鋭い風が通り過ぎた。システィーナの髪を少し切り裂き、皮を薄く裂いた。少量の血が滲んでいる。

 

「なっ……」

 

「うん、抵抗しないでね?こっちには馬鹿が居るから間違って殺しちゃったら面倒だし」

 

「それは俺の事言ってんのかぁぁ!?」

 

いかにも頭の悪そうな青年が突っかかる。

 

「よく分かったね!頭が良くなったじゃないか!」

 

「巫山戯てんのかテメェ!」

 

寸劇を演じる二人を見ながらシスティーナやクラスメイト達は彼の放った呪文の正体を悟った。

 

「い、今のは……【エアロ・ブラスト】!?」

 

「惜しい、【エアロ・フレイル】なんだよコレ」

 

黒魔【エアロ・フレイル】、鋭い風を発生させ相手を切り刻む軍用の攻性呪文(アサルト・スペル)だ。軍用の中ではマナの消費が少ないが、とても繊細な魔力操作が居る為、使い手は少ない。

 

しかしそんな魔術を一節相性で唱えた目の前の男が自分達よりも技量が高い事が証明された。そしてそれは自分達が束になっても勝てないという証明でもあった。

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

「い、いやぁぁぁ!」

 

パニックを起こす生徒達

 

「み、みんな落ち着いて!」

 

すると硬い物が打ち付けられる音が響いた。それはさっきの青年の待つ杖からだった。

 

「あのさぁ…早くルミアって子を差し出してくれればいいだけなんだよ?喚く余裕があるなら早く差し出して貰える?」

 

ヘラヘラした顔では無く、無表情で生徒達を見つめる青年。

 

するとルミアは決心した顔で立ち上がった。

 

「私が、ルミアです」

 

「あ、うん。知ってたしこれ以上膠着状態が続くならサッサと連れてったよ」

 

すると青年は表情を軟化させ元のヘラヘラした顔へ戻った。

 

「え?」

 

「うん、名乗り上げないなら上げないで、一応プランはあるんだよ。名乗り上げる事が無ければ強引に君を連れってたし。寧ろ名乗ってくれてありがとう。この馬鹿が面倒事起こす前に解決出来た」

 

そう言って隣の男を見る

 

「おい、喧嘩なら買うぞ…?」

 

「うん、喧嘩するまでも無いからやらないよ」

 

剣呑な雰囲気が二人を包む

 

「それ以上絡むな。ジン、お前も冷静になれ」

 

「あぁ…お前ぶっ殺してやるからなぁ!」

 

「それはあり得ないからねー」

 

「なら今ここで殺してやろうか!?」

 

「いい加減にしろ」

 

男がジンと青年の頭を殴る

 

「私はその娘をあの男の所へ届ける。お前は私と共に来い。ジン、お前はこの教室の連中の事を任せる」

 

「え?コイツに?このお馬鹿さんに?うそだろ?」

 

「おいテメエ、マジで殺すぞ!?」

 

「それが当初の計画だ、手筈通りにやれ」

 

「真面目に計画書書いた人に文句言いたいなー」

 

男はぶつくさ文句を言いながらルミアの元へ向かった

 

「という訳で、一緒に来て貰おうか」

 

「その前に彼女と話をしてもいいですか?」

 

「いいよ〜、どうせ合うのも最後になるんだし、でも変な真似したら…分かるね?」

 

「……はい」

 

ルミアはシスティーナの前へ行き、膝をついて 目線を合わせた。

 

「行ってくるね、システィ」

 

「ぁ…」

 

システィーナは『行かないで』と言うはずだった、しかし、自分の口から出てくるのはか細い声だけだった。しかしルミアには届いたようだ。

 

「私は大丈夫だから。それにグレン先生とコハク君がきっとみんなを助けてくれるから、だから……」

 

ルミアがシスティーナに触れようとしたその時

 

「はい、お喋りは許可したけど触れ合いは許可してませーん」

 

いつのまにか青年がルミアに刀を向けていた。どうやら杖だと思っていたのは仕込み刀だったようだ。

 

「…何故ですか?」

 

「いや、なんかキーアイテムとか、逆転するような物を渡されたりとか小細工されると面倒だからねぇ?はい、手を引っ込めようか?」

 

刀をシスティーナへ突きつけながら青年はニコニコとルミアを見た。

 

「後、そのグレンとか言うの多分死んでるから」

 

「なー」

 

「嘘…先生」

 

「…ん?なーんか忘れてるような気がしたけど……まぁ大丈夫だろ」

 

本当ならここには居ないコハクも挙げられるはずなのだが、襲撃者達の記憶には無かったようだ。

 

「じゃ、来てもらうからね」

 

青年はルミアの腕を引っ張り連れて行った。

 

 

 

 

 

グレンは襲って来た男を倒し、学院へと入ろうとしたが入れなかった。

 

「くそ、何がどうなったんだ!?結界の設定が変更されてやがる!」

 

「グレン、先行ってるよ」

 

「は?」

 

するとどうだろうか、コハクはするりと結界を抜けて学院に入ってるではありませんか

 

「はぁぁ!?」

 

「ほら、グレンもこっから入って来てよ」

 

「お前………仮にも学院を守る結界だぞ?どう破った?」

 

「破ってないよ、ただ結界の認識をズラしただけだよ」

 

「あぁ……お前のお得意な呪術か…」

 

「早く行こうよ、嫌な予感がするし」

 

「あぁ……分かった」

 

グレンはコハクの通った場所を通り抜け、学院へと向かった。

 

 


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