エターナルメロディ・悠久幻想曲SS集 恋と冒険と鉄骨と 作:レトロ騎士
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「皆、頼みがある。どうか、力を貸して欲しい」
レミットの誕生日を祝うために、懐かしきメンバーが集まったその部屋で――。
幾分たくましく成長していたあの青年が、集まった一同に頭を下げた。
詳しい説明が、できるだけ簡潔に、そして全員に伝えられると、皆がそれを快諾する。
◇
「カレン、リラ。祭壇の洞窟は、王族だけが入れる特殊な道以外は、住み着いたモンスターを警備代わりにしてあったり、トラップがあったりと、普通のダンジョンと変わらない。俺のサポートを頼みたい」
「おねーさんの強さ、見せたげるわ」
と、おどける様にカレン・レカキス。
いつの間にか、お姉さんぶる余裕がなくなるくらいに成長していた青年と、一人で悩みを抱えていたレミット。
いまさら二人の保護者ぶるわけではないが、パーティを守るのは、「仲間」の役目、だ。
冒険者は、決して仲間を裏切らない。
「よぉーし、こんな面倒ごと、とっととやっつけるわよ」
と、屈伸しているのは、リラ・マイム。
大切なものは盗むのでも奪うのでもなく、自分で探して守るもの。盗賊をやめた今だからこそ、それが分かる。
だから、大切なものを自ら捨てようとするのは、許せない。
洞窟を前にして、二人は再び「冒険者」の顔になる。
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「キャラット、アルザ、君達の足の速さを借りたい。一人は『祭壇の洞窟』を大きく取り囲むように円を書いてほしい。……多分いくつか森を突っ切ることになるから、動物に邪魔をされないキャラットに頼む。アルザはその円の中に五芒星を、洞窟が中心に納まるように描いてくれ。走る距離が数キロになると思うけど、頼む」
「ボクだって!」
と元気良く気合を入れたのは、フォーウッドのキャラット・シールズ。
広い世界を自分の目で見て学んだあの冒険。楽しいことも辛いことも、皆で分け合ったからこそ、価値があった。
レミットの行為が正しいかどうかなんてわからない。それでも、彼女が辛い思いでいるのなら。勝手に、一人で悩ませてなんてあげない
「うちのスピードは伊達やないで!」
と、ギューフィーのあぶり肉をかじりながら頼もしく叫ぶ、アルザ・ロウ。
あの冒険は、楽しかった。ただ、ひたすらに面白かった。
だから、仲間もライバルチームも全員が友達だ。
友達は全員笑っているほうが、楽しいに決まってる。
それが理由で、それが全て。
お互い、柔軟を十分に。そして背を合わせて、軽く「ちょん」とお互いの手を触れさせて――駆け出した。
◇
「楊雲、描かれた五芒星の基点となる頂点に立ち、魔法陣を作成。内容は魔力減衰と魔力増幅の二重属性。片方は魔法結界を弱らせ、片方は対象の魔法力を支援するという、相反する内容の複雑な術式だ。できるか?」
「……いきます」
と、小さく、それでも確かな自信と決意で、楊雲は術式に望む。
影の民という自分の存在を呪ったこともある。だが、それがいったい何なんだ、と、仲間達は気にもしなかった。
今では誇るまでにもなった力が、自分に言う。あの小さな少女は、幸せになるべきだ、と。
さきほどアルザとキャラットが駆け出したスタート地点に立って、術式をつむぎだすと、走り去ったあの二人の足に付けられていた魔水晶の粉末が、魔法文字として地面に刻まれていった。
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「ティナ、ウェンディは基点から見て一番大きな三角形が描ける五芒星の頂点……基点を一としたとき、右回りに順に数えて三番目と四番目になる五芒星の頂点だ。
楊雲一人では対処できない部分を、二人が支援して術式を完成させてくれ。術式の詳細は、楊雲に聞いてくれ」
「私の番ですね」
と、ティナ・ハーヴェルは目の前に作られた五芒星の頂点に降り立った。
ティナは、レミットと彼の『絆』を信じている。
だから自分は、そのお手伝いをするだけ。
冒険中、仲間たちの信頼によって己の呪われた血をもコントロールできるようになった今、『絆』という確かな自信でそれに望む。
「負けないんだから」
と、ウェンディ・ミゼリアが魔法陣の術式を開始。
運命は自分で決めるのだと気づかされた、あの冒険。だから、少女のそんな『不幸』は認めない。レミットが受け入れたって、私が認めてやらない。
もし、それでも「運命」が二人をいじめるというのなら。
そんないじめっ子は、私がやっつけてあげる。
◇
「若葉、メイヤーは残りの頂点へ。魔法陣の魔力が正しく流れるように、魔力のコントロールに集中。若葉は魔法陣そのものの魔力を、メイヤーは『俺』と魔法陣を繋ぐコントロールだ。ついでに通信水晶での連絡係になってくれ」
「まいります!」
と、紅若葉は『気』を充填させる。
料理はいまだうまく出来なくても、魔法の使い方なら、魔族の少女リリトとの訓練で自信がある。
お願いされたからついていったあの冒険だけれども、それは自分の成長にも、親友との出会いにもなり、そして、自分自身が助けられた旅だった。それは、パーティの仲間だけでなく、ライバルだった人たちも、全員だ。
だから、その恩返しを、今ここで――。
「恋は、人類の歴史なのだわ!」
と、ちょっとよくわからない情熱と共に、メイヤー・ステイシア。
遺跡大好きの変人だということは、自分でもよくわかっていた。それでも好きだからと周りを気にせず熱中していたけれど。
あの冒険は、それを認めてくれる人がいる嬉しさを教えてくれた。認めてくれる人たちの大切さを知った。
その人たちに、自分が集めた古代の神秘の力が必要だというなら――いくらでも、手を貸そう。
◇
「カイル、お前は魔法陣に魔力を思いっきり流してくれ」
「なんでオレが貴様の命令を――!」
「信頼してる。お前じゃなきゃ、無理だ」
「……ふん、まあこんな大規模魔法陣、オレ様くらいの魔力がないと動かないだろうな。ハーハッハッハ!」
と、カイル・イシュバーンは満足げに高笑いを上げて、最後の頂点へ。
「……ふん、ライバルは本調子でなければ、つまらんからな」
そして魔法陣に、膨大な魔力が流し込まれる。