エターナルメロディ・悠久幻想曲SS集 恋と冒険と鉄骨と   作:レトロ騎士

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青年とお姫様と月の話 第四話

 

             ◇ 

青年は、二人の仲間と共に洞窟を駆ける。久々の実戦に奇妙な高揚感と、最深部に辿り着けない苛立ち。

 それでも、青年は、前へ前へと躊躇わずに進む。

 タイムリミット。レミットの誕生した今日のその「時間」まで――あと十分。

 

             ◇ 

「……あの、馬鹿」

 手紙を読んで、俺の第一声がそれだった。

 そこに書かれていたのは、レミットが悩んでいたという「俺へ」の贖罪。

 そして、それをやり直せるチャンスが今日であること。

 きっと止めるだろうから、書置きだけ残していくこと。

 そして最後に――俺への、想い。

 

「……ロクサーヌ、さっき言ってた足りない魔力代わりの生命エネルギーって、具体的にはなんのことだ?」

「生命エネルギー、すなわち寿命です。それが実際、何年かはわかりません。数日なのか数年なのか数十年なのか――。きっとそれも、願いの内容次第です」

「だろうな。楊雲のときのアレみたいなもんか。呼び出すための条件ってなんだ?」

「なに、簡単なことです。願いを叶える人物の魔力が最も高まる日であること。その者がこの世界に誕生した時と同じ星の配置であること。すなわち――誕生日、ですね。正確にいうなら誕生日の誕生『時間』です」

「よし、わかった。なら、まだ数時間の猶予がある。侍女ちょ……ええい、アイリスさん、今、皆がここに向かってるはずだ。付いたらすぐにここに通してくれるよう、手配してくれ。それから、王に俺が祭壇の洞窟に『洞窟側』から入る許可を取って欲しい」

「は、はい。………どうか、姫様を、お願いします」

「ああ、絶対に、おしりぺんぺんだ」

 俺の言葉に、彼女は少しだけ目を細め(これ以上ないが)、頭を下げて、自分が成すべき事の為、立ち去った。

 見届けて、ロクサーヌが俺に問いかけてくる。

「みなさん、ですか。王宮には伝えないので?」

「……正直なところ、信頼できる相手がここにはいない。王族しか通れない道を通って、レミットを説得してくれるような王族なんて、な。レミットを嫌ってるわけじゃないが、気にかけてもいないんだ、あいつ等は。王は、レミットをそれなりに愛して大切にしていても、こんな不確かな情報に、王自らが執務を中断してレミットを迎えに行く、なんてことは立場としてできないだろう。国王命令で兵を出すこともな。だから、俺、そして皆、だ」

「なるほど」

「……ロクサーヌ、一つ聞きたい」

「なんでしょう」

「お前は、こうなることを予測していたな? 裏で操ったって意味じゃねーぞ。レミットが自分の意思でお前に協力を求めた結果、こうなることは予測していたよな?」

「はい」

「何故、それを俺に教えなかった? レミットが口止めしていたにしろ、だ」

「何、簡単なことです。星が、教えてくれましたから」

「なにを?」

「そうすれば、面白いことになる、と」

 

 

             ◇ 

 幾多ものモンスターの襲撃とトラップをかいくぐり、たどり着いたのは、祭壇のある大広間。その真ん中に――

「レミット!

 

「――え?」

 他の何も見えなくなり、俺は剣を放り投げて「そこ」へと駆け出した。

 そして祭壇がある中央の魔法陣に入った瞬間――

「ぐ……ぁ!」

 

 俺は、謎の力場に吹っ飛ばされた。

 いや、謎、というのは間違いだ。コレが、儀式の際に王族達を守る、魔力場なのだから。

「な、なんできたのよ!」

「うるさい! あんな手紙残して何言ってる! 本心では止めて欲しいからあんな手紙書いたんだろうが!」

 力場に向かって拳を振り下ろすが、ただ自分の手が痛むだけだ。まるで、『あの時』の俺だ、と、唇を嚙む。。

 だが、止めるわけには行かない。

 それがただの意地になりかけているとはいえ、条件が達せられるあと一分後、レミットはその手にしている魔宝石で魔人を呼び出すだろう。

「メイヤー! まだか!」

 カレンの首にかけてある通信用水晶に向かって叫ぶ。

「もうちょっと、もうちょっとだけ、かかります!」

「頼む! ……なあ、レミット、俺は、俺たちはこんなこと、望んでいやしねえ、頼むから、やめてくれ……」

「だって……だって、アンタのあの姿、わたしは見たんだもん。なのに、わたしは、それをなかったことにしていくなんて、できないもん!」

 レミットの絶叫。

 それは、手紙にあった、「あのこと」を言ってるのだろう。

 だけどな、レミット。それは、お前の勘違いなんだ。

 俺の静止も聞かず、魔宝石で魔人を呼ぼうとするレミット。あと、数秒――!

「術式、完成しました!発動します!」

 水晶から、メイヤーの合図。

「エーテル・マキシマム!」

 打ち合わせどおり、魔法陣発動と同時に俺にかけられたカレンの魔法によって、全ての力が活性化する。さらに、魔力減衰の結界で魔力場が弱まった。

 だが、まだだ。まだ、この力場は破れない。

 あれだけの大きさの魔法円で力場を弱め、且つ、魔力を増大させた強力なエーテルマキシマムで力を得ても、まだ、足りない。

 だから、俺は最後の切り札を取り出した。理論上では可能でも、誰もやらなかった、阿呆な大博打――!

 俺が何をしようとしていたのか気づいたのか、水晶の向こうでメイヤーが俺を止めるよう、カレンとリラに叫んでいる。だが、もう遅い。

 俺は、撃鉄となる拳を振り上げ、そして、引き金を引くように力場に向かって振り下ろす。

 と、ある呪文を、唱えながら。それは――

 

 

「エーテル・マキシマム!!」

 

 

             ◇ 

 カレンとリラを促し、洞窟に入ろうとしたその時、ロクサーヌが俺を呼び止めた。

「なんだよ、用があるなら早くしてくれ」

「聞きたいことがあります。……なぜ、貴方は私に何も言わないのですか?」

「……」

「正直、殴られるくらいのことは、覚悟していたのですが」

 随分と、身をわきまえた暴君で、と、俺は苦笑した。

「ロクサーヌ、俺はお前を友人だと思っている。お前は?」

 俺の質問の意味がわからないのか、ロクサーヌは首を傾げながら

「……はい、大切な友人です。嘘ではありません」

「なら、いいよ。ここまでの『お膳立て』感謝するさ」

「……?」

 まだ、納得が出来ていないロクサーヌを見て、俺はコイツでもこんな顔をするんだな、と少し「してやったり」という気分になる。

「『おもしろいこと』になるんだろ?俺やレミットが不幸になることを、お前は『おもしろい』って思うのか?」

 ポロロン、と、いつもの笑顔でリュートを鳴らす、ロクサーヌ。相変わらず、憎たらしい、でも、憎めない笑顔だ。

 お互い、それで十分だった。

「ご武運を」

「ああ、お前の新しい歌の題材を、作ってやるよ」

 

 

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