間違っている設定とか、こうした方が良いとかあれば報告お願いします。
VRMMORPG ソードアート・オンラインが発売される二時間前。
夢の仮想世界が一万人の監獄と化す、その二時間前の事だ。
◇
──俺の家は、何と言うか……息苦しい感じがした。
「真優……真優っ!」
「……」
嫌な怒鳴り声、耳が痛い……俺の嫌いな父親の声。
テストの結果を見て、顔を真っ赤にしているのだろう。何も最悪な点数じゃない、平均点は取っている筈──なのにだ。
「なんだこの点数は!」
「……」
なぜ怒られなきゃいけない? 確かに俺は有名企業の跡取り息子として、平均以上の点数、そういった振る舞いをしなければならないのだろう。
だが、俺は俺だ。一言も跡を継ぐなど言っていない、敷かれたレールの上を生きるのはもうまっぴらだ。
「おい、聞いているのか!」
「……うるせぇよ」
後から考えれば、俺は思春期真っ只中の歳だ。
親に反抗するのは、周りからみれば当然だったんだろうな。だけど、その反抗で少し言い過ぎてしまったらしく──。
「なっ、父さんはな……お前のことを!」
「じゃあ、アンタは俺の立場になって考えた事があるのか?」
ことはあろうことか、俺の父親はそこで言葉を詰まらせてしまう。
「……そうだよなぁ、アンタは家よりも会社が大好きなんだよなぁ?」
「そ、それは……」
「顔を背けるなよ、ちゃんと目を見ろよ」
俺はたじろぐ父へ詰め寄る、父の表情には明らかに後ろめたさが現れていた。それはそうだ、母一人を残し数年間俺達の元へ帰らず会社に勤めていた。
忙しいのも分かるが、連絡や顔を出すくらいはあると思う。だが、この男はしなかった。
この男は、時間の無駄という理由で俺達へ顔を出す事を拒否した。
「その挙句に、俺にあの会社を継げだァ? 冗談はよせよ」
それ以前に、俺はコイツを父親として呼んだことがなかった。
子供の頃からそういう認識だったのだろう、この人は父親として不出来だ。だから母さんが一人で頑張っていたんだ……と。
そのせいで、俺の母さんは死んだんだ。
「アンタは俺の父親である資格は無い、二度と父親ぶった真似すんじゃねぇ」
「──ッ!」
乾いた破裂音に似た音、左頬に薄く広がる痛みと共に俺の父親は去っていった。
(言い過ぎたか……)
これが最初で最後の、父との喧嘩になるとは思いもしなかった。
◇
机に置かれたヘルメットにも似たゲーム機、これは『ナーヴギア』。仮想世界へ旅立つために必要な機械、そして旅立つ世界の名は剣の世界──ソード・アート・オンライン、浮遊城アインクラッド。
βテストに奇跡的に合格した俺は、日夜あの城の中で剣を振るった。身の丈もある巨大な剣を振るえる爽快感は、すぐに俺をこの剣の世界の虜にした。
(まだ12時51分か……)
壁に掛けてあるデジタル時計を一瞥し、据え置きPCを立ち上げ、素早くとあるアルファベット三文字検索ワードとして打ち込む。
S、A、O……と、するとそれらしき関連ニュースがドバっと出る。パッと見分かるのは、購入……というか一万人だけがSAOの参加資格を得た事、そして今日の午後一時からが正式サービス開始という事だ。
ふぅ……とため息を付くついでに見ると時計は57分を表す。
PCを閉じ、ベッドに置かれたナーヴギアをかぶる頃には59分だ。予定通り、心地の良い起動音と共に12という数字が13に切り替わった瞬間──。
「リンク・スタート」
虹のリングを通る、そして──。
──
青いイノシシ型モンスター、《フレンジーボア》を上段《両手剣》スキル《アバランシュ》が直撃する。後方へ勢い良く吹っ飛ぶイノシシを尻目に、次のモブを探し始める。
既に《両手剣》スキルは練度100を超えており、基本スキルはほぼ取っていた。この初期フィールドでひたすらイノシシを狩ること四時間、次のフィールドへ向けて《索敵》か《隠密》などのスキルを取ろうかと悩んでいた。
「まったく、一々《片手剣》スキルの熟練度を100まで上げないと使えない武器だからな、結構時間を食っちまったよ」
スキルスロットから《片手剣》を抜き、新たに《索敵》のスキルを入れる事にした。スキルスロットは現段階で二つ、レベルを上げると増えていくんだろう……うん。
頼りないスキルスロットと同じく頼りないHPゲージを見て、俺はため息を付く。
「βの頃に戻すのしんどいなぁ……」
新たに出現したイノシシを今度は《ブラスト》で吹き飛ばした。
ブラストって単発だよね?なんか、2hitとか表記が色々あったけどここでは1hitにしました。