仮面ライダー剣―Missing:IS   作:断空我

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第十話

「引越しでーす!」

 

「・・・・はい?」

 

夕方。正確には夜。

 

寮の部屋に副担任の山田真耶がやってきて応対した織斑一夏に向かってそういい放つ。

 

ベッドの方で本を読んでいた箒も一夏の様子に何事かと思いやってくる。

 

「何事ですか?」

 

「ですからお引越しでーす!空いている部屋が出来ましたので、篠ノ之さんにはソッチの部屋に移動してもらいますね!」

 

「な、何故ですか!?」

 

「え?だって、年頃の男の子と二人っきりって色々と大変だと思うんですよ!ですから」

 

「結構です!」

 

「え・・・・あの」

 

バタン!と真耶の眼前で乱暴にドアを閉めて箒はベッドのほうへと歩いていく。

 

「あー、箒さん・・・・?」

 

「・・・・お前は私と離れるのは嫌か?」

 

「嫌に決まってるだろ?箒は」

 

ドガンとドアが開いた。

 

それもおかしな音と共に。

 

「篠ノ之!“一夏”!いるな?いないとしても入るぞ」

 

「い、いますよ?織斑先生」

 

「今は授業中ではない。いつもどおりの呼び方でいいぞ」

 

「あ・・・・うん、千冬姉」

 

「ふむ・・・・さて、篠ノ之、山田先生から事情を聞いて拒否したことは見ていた。しかし、部屋割りは既に決定したことだ。明日までには移動しろ」

 

「は・・・・はい」

 

千冬の威厳に箒はびくつきながらも頷いた。

 

それだけをいいたかったのか、千冬は部屋を出て行く。

 

フレームが少し歪んだドアから。

 

「一夏・・・・・・少し聞きたいことがある」

 

「お、おう?」

 

「何時から織斑先生のことをまた名前で呼び合うようになったんだ?」

 

「あぁ・・・・少し前に和解して・・・・それからだ」

 

「そうか・・・・ならいい」

 

それだけ聞いて満足なのか、箒は荷物を纏め始める。

 

「そうだ、一夏」

 

「ん?」

 

「こ、今度の休みに買い物に付き合ってもらうぞ」

 

「え・・・・おぉ」

 

箒にいわれて一夏は頷く。

 

だが、予測できるだろうか?今度の休みに起こる出来事。

 

その出来事により悪化する事態を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカの軍事施設、カリスはそこを単独で“襲撃”していた。

 

多くの兵隊や兵器が侵入者を撃退しようとするが、一撃の下に無力化させられていく。

 

「他愛ない・・・・・・」

 

カリスは隔壁を壊して目の前にあるISに近づく。

 

この名もない基地にて開発され、研究されているIS。

 

名前を銀の福音《シルバリオ・ゴスペル》。

 

米軍の開発した兵器としてのIS。

 

カリスは亡国機業から奪取するよう命令を受けていた。

 

「さて・・・・とこいつをいただくとしますか」

 

そういって銀の福音に手を伸ばそうとして気づく。

 

こちらを見ている存在がいる。

 

「・・・・・・誰だ?」

 

「流石ですね。カリス」

 

壊れた隔壁からゆっくりとメガネを掛けた青年がやってくる。

 

腕には指輪をはめて、耳にはピアスをつけていた。

 

「一つ聞きたいことがあるのですよ。貴方は人間ですか?それとも、カリスが変身した人間ですか?」

 

「はっきりいって、お前のいっているカリスではないだろうな。俺とあんたは初対面だ」

 

「・・・・またですか・・・・・・では、貴方は何故カリスの姿を?貴方がカリスを封印したのですか?」

 

「いいや、このカードは元々封印されていたもの・・・・」

 

「でしたら渡していただけないですか?」

 

「何故?」

 

「封印を解く」

 

男は目的をあっさりと述べる。

 

「・・・・解放させて人でも襲わせるつもりか?」

 

「人間を襲わせるなんて真似はしないでしょう・・・・私達はこの戦いを勝ち抜くのですよ」

 

「戦い?」

 

「“バトルファイト”・・・・この戦いで互いに勝ち抜き最高の敵として戦おうと約束をしたのですよ」

 

「ふぅん・・・・ならやるよ」

 

変身を解除してKはカテゴリーA・チェンジマンティスのプライムベスタを男に投げる。

 

男は受け取り驚いた表情をした。

 

「いいのですか?」

 

「そのカードを失う事は俺にとってデメリットだが・・・・あんたとそのアンデッドが他のアンデッドを倒してくれるんだろう?メリットがある」

 

「メリット?」

 

「ハートスートのプライムベスタを全て集めることが目的だが、あんたらが多くのアンデッドを封印してくれるというなら目的の達成が早くなる・・・・だから渡す」

 

「・・・・貴方の思い通りになるとは限りませんよ?」

 

「別にいいさ。そうならないなら俺の自身の手で全て倒すだけだ。これは興味本位からの行動だし」

 

それだけいってKは銀の福音を纏う。

 

白式が白で統一されているのに対して銀の福音は銀。

 

ISを纏い浮かぶ姿に男は感嘆しながらもカリスのカードを懐に仕舞って、その場所を離れていく。

 

「さぁ・・・・この展開、どんな風に動くだろうな・・・・・・“一夏”」

 

Kは大空へ上昇して姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・で、なんでこんなことになっているんだ。弾?」

 

「それがさ、この前の戦いで蘭の前で正体見せちゃってさ・・・・それで問い詰められて困っていて、そんで・・・・」

 

「BOARDの社長室にその子をつれてきたというわけか・・・・弾」

 

「はい」

 

「後で修行だ。色々と誤魔化せるように対応力を身につけてもらう」

 

橘が手を目と目の間に押し付けながらこっちを見ている五反田蘭を見る。

 

「では、五反田蘭さん。キミは何をしにここに来たんだ?」

 

「兄をこの会社から辞めさせてください!」

 

「おい、蘭!何勝手に」

 

「おにぃは黙っていて!!」

 

「・・・・・・」

 

「立場ないな・・・・」

 

「ぐはっ!」

 

弾は縮まるしかなかった。

 

「何故かな?」

 

「おにぃがあんな危険な事しているなんて知りませんでした!こんなことを続けていたらいつか本当に死ぬかもしれない・・・・・・そんなこと家族として許せるわけないじゃないですか!それに貴方大人なのに、どうして貴方が――」

 

「やめろ。蘭!」

 

次の言葉が予想できた弾は止めるように怒鳴る。

 

しかし、家族を奪われるかもしれないという恐怖に支配されていた蘭はつい、言ってしまった。

 

戦いたくても戦う事ができない橘朔也に。

 

「貴方が戦えばいいじゃないですか!!」

 

「蘭!」

 

バシンと弾は妹の頬を叩く。

 

「今すぐ橘さんに謝れ!」

 

「おい、弾。落ち着け!」

 

「・・・・・・・・」

 

蘭は殴られた頬を手で押さえて外に飛び出す。

 

一夏は蘭を追いかける。

 

「・・・・戦闘では常に冷静な判断力が必要だと教えたはずだ。俺のことに関して怒ってくれたことは素直にありがとうというが・・・・家族は大切にするべきだ」

 

「すいません・・・・でも、橘さんの気持ちを考えたら・・・・」

 

「・・・・落ち着いたらしっかりと妹さんと話をするんだ」

 

「すいません」

 

 

 

 

 

 

「はい、これ」

 

蘭はBOARDを飛び出して近くにある公園のベンチに座っていた。

 

織斑一夏は息を切らすことなく近くの自販機で購入したジュースの入った缶を蘭に差し出す。

 

「・・・・ありがとうございます」

 

「それで殴られた所を少し冷やした方がいいよ」

 

「はい・・・・」

 

蘭はひんやりとした冷たさに気持ちよさを覚えながらも先ほどのことを思い出してすとんと胃の底の方に何かが落ちたような気分になった。

 

「あの・・・・一夏さんも戦っているんですよね?あの怪物達と」

 

「・・・・あぁ」

 

「その、怖くないんですか?一歩間違えたら死ぬかもしれない戦いですよね!?」

 

「そうだな・・・・でも、俺は一度も死ぬなんてことは考えた事はないな」

 

「え・・・・どうして・・」

 

「だって、俺は必ず生きて帰るって・・・・死ぬことを一回も考えずに戦っているからな。そうならないために毎日鍛えているし」

 

「・・・・・・」

 

「それに、弾も同じだと思う」

 

「おにぃも?」

 

「弾は俺が仮面ライダーになるというのを知って蘭ちゃんと同じように反対したよ?」

 

一夏が剣崎一真と出会い、仮面ライダーとなるのを決意した時。姉と同じように弾も止めた。

危ないぞ。命を捨てる気か!と。

 

弾の想いに嬉しさを覚えながらも一夏は仮面ライダーになることを諦めなかった。

 

その時だった。

 

弾がアンデッドに襲われたのである。

 

殺されるかもしれない状況の中、弾を助けたのは。

 

「フォウ!なんか楽しそうにしてる二人を発見!」

 

「誰だ!」

 

一夏と蘭の前にちゃらい感じの男が立っている。

 

耳元にピアスをはめてにやにやと笑みを浮かべていた。

 

「聞いたぜ?あんたがブレイドなんだって?ブレイド・・・・あぁ、その名前を思い出しただけで腕の傷が疼いて仕方ねぇええええええええええええええええええええええ!」

 

男の体が歪みカプリコーンアンデッドへと姿を変える。

 

「アンデッド!蘭ちゃん。逃げて!」

 

「あ、はい!」

 

「変身!」

 

蘭を逃がして一夏はブレイバックルを装着してターンアップハンドルを引いて目の前にオリハルコンエレメントを出現させる。

 

潜り抜けてブレイドになりカプリコーンアンデッドへ拳を放つ。

 

「フォウ!いいぜいいぜぇ!やっぱり俺はこうした方が性にあってる!あいつみたいに頭を動かすなんて向いてねぇええええ!」

 

「ぐぉっ!」

 

タックルを受けて近くの木に倒れ込む。

 

起き上がりホルダーからブレイラウザーを引き抜いて構える。

 

ちらりとカプリコーンアンデッドは視線を向けると、逃げている途中の蘭の前にジャンプして動きを拘束した。

 

「きゃっ!い、一夏さん!」

 

「蘭ちゃん!?お前ぇ!」

 

「おっと、動くなよぉ!この子を傷つけられたくなかったら変身を解除しろ」

 

「なんだと・・・・」

 

「聞こえなかった?この子傷つけられたくないならすぐに変身解除しろ」

 

「ひっ!」

 

カプリコーンアンデッドが蘭へ爪を突きつける。

 

爪を突きつけられて蘭は震えた表情を浮かべた。

 

くっ、とブレイドは仮面の中で呟いてブレイバックルを地面に置く。

 

「よぉし」

 

不適に笑うカプリコーンアンデッドは蘭を離さない。

 

「おい!彼女を離せ!」

 

「ことわーる!何故かというと、人間のいう事なんざ聞くわけねぇだろ!」

 

叫ぶと同時に爪を蘭に向かって振り上げた。

 

襲い掛かってくる痛みに耐えるために蘭は目を瞑る。

 

一夏も止めようと走るが間に合わない。

 

「(おにぃ・・・・助けて!!)」

 

蘭は大好きな兄を思い浮かべて助けを求めた。

 

銃声が響いてカプリコーンアンデッドがのけぞり、蘭は悲鳴を上げる。

 

一夏が視線を向けるとギャレンラウザーを構えたギャレンの姿がそこにあった。

 

「俺の妹に・・・・手ェだすなぁあああああああああ!」

 

ギャレンは一気にカプリコーンアンデッドに間合いを詰め、至近距離でギャレンラウザーを連射する。

 

体から火花を散らして後ろに仰け反るカプリコーンアンデッド。

 

「蘭!大丈夫か?」

 

「おにぃ・・・・おにぃ!!」

 

蘭は涙を流してギャレンに抱きつく。

 

ギャレンはぽん、と彼女の頭を撫でる。

 

「おいおいおい!?なんだよこれ!?なんなんだよぉ!?」

 

激昂するカプリコーンアンデッドを前にブレイバックルを手にとって一夏はブレイドに変身した。

 

ブレイラウザーのオープントレイを展開してプライムベスタを二枚取り出す。

 

 

『サンダー』

 

 

『キック』

 

 

『ライトニングブラスト』

 

「ウェェェェェェェェェエイ!!」

 

雷撃を纏ったキックをカプリコーンアンデッドに向けて放つ。

 

逃げようとしたがギャレンの攻撃が効いていて反応が遅れ、ライトニングブラストが炸裂する。

 

爆発してカプリコーンアンデッドの腰部のバックルが開く。

 

ブレイドはプロバーブランクを投げる。

 

プロバーブランクに吸収され、プライムベスタがブレイドの手の中に納まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間が経過して、弾と蘭はベンチで話をしている。

 

離れた所でみていた一夏はこの会話に自分が割り込む必要はない・・いや、割り込まない方がいいだろうと判断してその場所を後にする。

 

 

「おにぃ・・・・さっきはごめんなさい」

 

「俺に謝るんじゃなくて橘さんに謝ってくれ」

 

「・・・・あの・・・・一夏さんに聞いたんだけど、おにぃも一夏さんがライダーになるの反対したんだよね?」

 

「あぁ、聞いたのか。反対したぞ。ライダーなんて危ない仕事をするな。そんなことは大人に任せておけばいいって・・・・」

 

「それがなんで・・・・ライダーに?」

 

「俺もアンデッドに襲われてさ。目の前で大勢の人が死んで、俺も殺されるって時に助けられたんだ。ライダーに」

 

それが、橘朔也・仮面ライダーギャレンだった。

 

当時の橘は融合係数がかなり低下しており戦うのもやっとという状況。

 

なのに、人をアンデッドから守るために、戦う。

 

その姿勢に弾は感動した。

 

いや、感動という言葉では済まない。

 

戦うのがやっとなのに、戦おうとする姿勢に弾は尊敬し、そして、仮面ライダーになって人を守りたい。無力な自分は嫌だと感じた。

 

ISが普及したこの時代。

 

男性は戦うという選択肢がほとんどといっていいほどなく、女性が前に出て戦う事が当たり前。

 

狂ってしまった・・・・狂わされてしまった世界の中、仮面で素顔を隠して戦う戦士。

 

男として惹かれないわけがない。

 

「それで、仮面ライダーになった・・・・・・情けない話だよ。ミイラ取りがミイラになったというヤツでさ・・・・だから、蘭が止めようとする気持ちはなんとなくわかっちまうんだよ。でも、俺は決めた。もう止まるつもりもない」

 

 

「・・・・教えて」

 

「はい?」

 

「私にもアンデッドのこととか教えて!おにぃや一夏さんのサポートをする!」

 

「・・・・えぇーーー」

 

その後、行動力のある蘭は橘朔也のいるデスクまで向かって協力者になりたいと申し出て、めでたく採用された。

 

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