IS学園。
日本にあるIS操縦者を育成するために造られた学園。
学園には様々な国籍の女の子がISを操縦するのに必要な技術、知識などを学ぶ。
当然のことながらIS学園は教員も生徒も女性で構成されている。
しかし、今年は少し様子が違った。
一年生のある教室の中で一人男子生徒が混じっていた。
その男子生徒こそ、世界で唯一ISを動かせるという事が発覚した織斑一夏である。
「(うっわぁ・・・・想像していたよりもかなりキツイなぁ・・・これ)」
そんなことを考えていると副担任の山田真耶が自分を呼んでいることに気づかなかった。
「織斑一夏くん・・・・?」
「あ、はい!」
「あ、ご、ごめんね・・・・席順があ行からで・・・次が織斑君なんだよね・・・・悪いんだけど自己紹介をしてもらいたいんだ。い、いいかな?」
「あ、はい・・・いいですよ」
「ほ、本当ですよね?う、嘘じゃないですよね!?」
「はい・・・えっと・・・・・織斑一夏といいます。趣味はこれといってあまりありません。偶然、ISを動かせるという事実が発覚しましてIS学園に入学する事になりました。よろしくお願いします。以上です」
そういって一夏は席に座る。
他の生徒達はもっと話して~、という視線を向けてくるが、これ以上となると話す内容が思いつかないので静かに着席した。
「山田君。すまない、遅くなった」
一夏が席に座るとドアが開いて一人の女性が入ってくる。
黒いスーツをびしっと着こなし体に纏っている雰囲気は武人に近い。
一夏はその人物をよく知っていた。
なぜなら入ってきたこのクラスの担任、織斑千冬は織斑一夏の姉なのだから。
『キャーーー!千冬様ぁ!』
『一目見たときから大好きです!』
『反抗しないように躾してくださーい』
「全く、このクラスには変人しか集まらないのか?」
「(大変、御尤もです)」
千冬の発言に一夏は心の中で同じことを思う。
彼女はんふん!といってから一言。
「諸君、私が織斑千冬だ。この一年でISの基礎を叩き込んでもらう。嫌でもついてきてもらうぞ。反抗的な態度だろうと私の言葉には返事をしろ。いいな!」
『はい!!』
クラスメイト全員(ほとんど)の叫びに織斑千冬は満足したようだ。
「それで、何故、お前から先の自己紹介が進んでいないんだ?」
「・・・・わかりません。自分はしっかりと挨拶を終えたので」
「話しているときは相手の顔を見ろといったはずだが?」
一夏は危機感を察知してカバンを前に構える。
直後、繰り出された拳が大きな音を立てた。
カバンを覗き込むとカバンに拳をめり込む。
「織斑先生・・・・あなたは私を殺すつもりですか?」
めりこんだカバンに冷や汗を流しながら一夏は尋ねる。
「教育的指導だ。織斑」
バチバチと二人の間で火花が散る。
二人の険悪の雰囲気に周りの生徒達は冷や汗をダラダラと長していた。
「失礼します・・・・SHR終わりましたか・・・・って、あれ?」
その時、運がいいのかタイミングが悪いのかわからないが一人の男性が入ってくる。
名を白井虎太郎。IS学園の特別講師としてやってきた人物だ。
「・・・・白井虎太郎・・・・特別講師が一体、なんのようだ?」
刃のようにギロリと睨まれた虎太郎だが特に気にした様子もなく席に座っている一夏の手を引く。
「彼には次の授業で手伝ってもらいたいことがありまして、お借りします~」
虎太郎は呆然としている者達を放って置いて一夏を連れて教室へと飛び出す。
山田先生は修羅のようになっている千冬を残されて涙を流していた。
「助かりました。虎太郎さん」
「いいよいいよ。資料運びしてもらいたかったのは事実だから」
虎太郎の横でダンボールを運んでいる一夏は助かったと思った。
織斑千冬とは“あの日”を境に仲が悪化する。
どうしても避けられない道、そこで一夏と千冬の道は繋がっているように見えて別れてしまった。
“あの日”を境に一夏は家に帰らずBOARDに設置された社員寮で生活をはじめて、家へは一度も戻っていない。
「その様子だとまだ喧嘩したままみたいだね」
「はい・・・・・」
「まぁ、向こうはキミを思っての発言だったからね。曲げるつもりもないんだと思うよ」
「それはこっちも一緒ですよ・・・・にしても、この箱の中に入っている本。何に使うんですか?」
「授業で使う参考書だよ。いやぁ、IS学園の特別講師の待遇って素晴らしいね。この本を注文したいって、頼んだらあっさりと許可してくれるんだもん。国が作った学校っていいねぇ」
「・・・・もしかして」
箱を開けて中を覗き込むとびっしりと同じ名前の本が入っていた。
手伝いを終えて戻ると一時間目開始少し前の時間らしくお叱りを受けずに済み。一夏は授業を受ける。
ほとんどの授業がISに関する専門知識で、事前に貰った電話帳のような厚さの本を読んでみたけれど、訳がわからない。
その事を伝えると山田先生が特別授業をしますと張り切ってくれて、少し助かったと内心思った事は内緒だ。
そして、休みの時間となり。
「(暇だなぁ)」
周りを見渡そうとすると全員がこっちを見ていたらしく慌てて視線をそらす。
こういう時は何も考えず読書でもしていたほうがいいな、と判断してもってきていた本を
読み始める。
表題は『仮面ライダーという名の仮面』
本を読んでいると遠くから生徒の話し声が聞こえてくる。
『ねぇ、あの本って・・・』
『少し前にベストセラーになった本よね?』
『でも、あの本。他の授業で配っていたらしいわよ?』
「ねぇねぇ~~」
本を読んでいると一人の女の子が話しかけてくる。
どこかのほほーんとした雰囲気で着ている制服は袖のサイズが大きいのかダブダブで手が見えない。
「えっと・・・・」
「あ、私の名前は布仏本音だよ~」
「布仏さんか、初めまして。織斑一夏だ」
「知ってるよ~。テレビとかに出ていたよね?」
「テレビとかはともかく、面と向かって話すのは初めてだからしっかりと挨拶はしないと」
「成る程~~」
「それで・・・・何か用?」
「あ、うん。ねぇ、その本って、仮面ライダーという名の仮面だよね?」
「知っているの?」
「うん~、私の友達が読んでいたんだ~。面白い~」
「あぁ、色々と考えさせられるよ」
この本の内容自体はファンタジーモノと見られている。
だが、一夏は色々なことからこの本を読んで、色々と教えてもらっていた。
布仏とこの本について色々と話しこんで。今度、その友達と話をして~という約束をして次の授業を受けることとなる。
篠ノ之箒は顔をしかめて織斑一夏を見ていた。
今すぐにでも幼馴染である織斑一夏と話をしたいと望んでいたのだが、ずっとそれが出来ないでいる。
授業開始前に話をしようとしたが周りの雰囲気で行く勇気が出なかった。
休み時間、話しかけようとしたらのほほーんとした雰囲気の子があろうことか自分より先に話しかけた。その子と一夏が楽しそうに見ているのを見て箒は嫉妬する。
「(私に会いにこないんだ・・・それに、どうしてあんな親しげに話すのだ)」
他の休み時間、一夏に話しかけようとする箒なのだが、あの子が引き金となって他の女子が話しかけようと雪崩のように込み入ってしまい会いに行く事ができない。
嫉妬していた箒だが、次第に焦りだす。
「(ま、まさか・・・・・一夏は私だと気づいてないんじゃ?)」
そんなことはまずありえないとすぐに否定した箒だが、目の前に居るのに会えないという事実により段々と気にするようになっていく。
昔と比べてお互い色々と成長しているが大好きな幼馴染の事を箒は一日たりと忘れたりしなかった。
ISを動かせる男性としてニュースとなった時も一目見ただけで一夏だとわかった。わかったのに、あっちは自分のことなど忘れてしまったのだろうか?
忘れられてしまったのではないか?という負の連鎖に箒は包まれていた。
「ということですが、わからないところはありますか?織斑君」
「いえ、むしろとてもわかりやすいですよ!山田先生!」
「そうですかぁ、よかったです」
えっへんと嬉しそうに胸を張る山田先生に笑顔を向けながら一夏は時間を見る。
そろそろ学園を出ないと寮に戻る時間が遅くなってしまう。
駐車場に止めてあるバイクのところに戻らないと、と思い一夏が立ち上がろうとしたところで。
「ここにいたか織斑」
「織斑先生、何か用ですか?そろそろ帰らないといけないんですけど」
「その事だが、学園側の都合でお前は今日から学園の寮で生活する事となった」
「・・・・・・生活用品、何も持ってきていないのですが?」
「それなら僕が持ってきたよ~」
「虎太郎さん」
千冬の後ろから現れた虎太郎に驚き、彼の手の中にあるボストンバッグの中を見ると、自分の部屋においてある物だということに気づいた。
「どうして虎太郎さんが?」
「橘さんから連絡が来てさ~。取りに来てくれって頼まれたんだ。はいこれ」
「ありがとうございます。それでは山田先生、織斑先生、失礼します」
部屋の鍵をもらって一夏は寮へと歩いていく。
「あ、待ってよ~」
虎太郎は後を追う。
ISの寮の中を歩いていた一夏は目的の部屋を見つけ中へと入っていく。
「ここか・・・・・・」
一夏が部屋の中に入るとそれなりに広く、生活用品も揃っていて生活にはあまり困らないだろう。
だが、
だが、これはどういうことだろう?と口にだして呟いた。
「どうしてシングルベッドが二つもあるんだ?一人用の部屋じゃないかのか?まさか、相方がいるのか・・・・」
嫌な予感がして部屋を出て行こうとした一夏だが、ドアが開いて一人の少女が部屋にやってきた。
「む、同室の者か?こんな格好ですまな・・・・・・」
「よ、よぉ・・・・」
現れたのはバスタオル一枚でポニーテールにしていた髪を下ろしていた篠ノ之箒。
シャワーを浴びた後だからか体から湯気がでていて色気がにじみ出ている気がする。
いや、にじみ出ているのだが一夏が気づいていないだけだ。
箒は呆然としていたがすぐに剣道着などが入っている袋から伸びている竹刀を掴んで一夏に切りかかろうとする。
「させるかぁ!」
その動きを予測していた一夏は箒の足を払いのけた。
しかし、場所が悪く、ベッドの上に倒れるどころかこのままでは堅い床に倒れ込んでしまう事に気づき、箒を抱きかかえるように変わりに床に倒れ込む。
ドシンと大きな音を立てて二人は床に倒れる。
もふ。
「・・・・」
「いってぇ・・・・箒、だいじょ・・・・うぶ・・・・か?」
自分のしている事に目を見開く。
倒れそうになった箒を抱きかかえている。
さらに彼女の豊満な胸を片方の手がつかんでいるという展開。
男なら喜ぶか、とんでもないことをしてしまったと反省する場面だろう。
だが、一夏はこの二つとは異なる事を考えていた。
――綺麗だ。
「よ、よかった。その様子だとどこも怪我していないみたいだ」
一夏は箒をベッドに座らせてから脱兎の如く部屋から逃げようとした。
だが、
「う・・・・・・うぇええーーーーーーーーーん」
子どものような泣き声にぴたりと立ち止まる。
この部屋には二人の人間しかない。
なのに、泣き声が聞こえるのはどうしてか?
答えは簡単、後ろにいる篠ノ之箒が泣いているのだ。
どうして泣いているのか?
それは一夏が自分のことが覚えているのか不安ということからきていた。
一夏と話す事を何度もチャレンジしていたが、その度に他の生徒達が話しかける。
放課後になってようやく話せると思ったらまさかの山田先生との個人勉強タイムに突入してしまい、話す事が結局できず。
ふと思っていたあの考えがむくりと頭を上げたのである。
一夏に忘れられていたのではないかという考え。
しかし、それは杞憂に過ぎなかった。
一夏はちゃんと覚えていてくれた。成長していても自分だとわかってくれた。
裸を見られたから暴力を振るおうとしたがあっさりと一夏に封じられてあろうことか胸をつかまれてしまい、箒の保っていた威厳とかそういうものがすべて粉々に打ち砕けてしまい。
本心というか思っている事がすべて表に出てしまっちゃったのである。
「一夏のバカぁ・・・・色々と不安・・・・だったんだぞぉ・・・・なのに、お前は・・・・お前は他の子とばっかり話をしてぇ・・・・私の事を忘れたのかと・・・・思って」
「・・・・すまない」
幼馴染にどれほど不安にさせてしまったのか、一夏は驚いて固まってしまう。
そんな一夏の背中に箒は泣きながらしがみつく。
「あ、あの日から・・・・お前に会うのが怖くなって・・・・再会しても私の事をわかってくれるかわからなくて・・・・」
「幼馴染の箒のことを忘れるなんて事あるわけがないだろ!」
「ほ、本当か!?」
「と、当然だ!俺は箒の事を忘れた事なんてないさ!大切な幼馴染のことなんて!」
「そうか・・・・嬉しいぞ。一夏・・・・」
そこでふと、一夏は気づく。
箒はバスタオル一枚の状態で自分に密着しており、こんな状態のまま居たら箒は風邪を引いてしまうかもしれない。
「あーーー。箒」
「ぐすっ・・・・なんだ?」
「そろそろ着替えた方がいいんじゃないか?風邪引いたらいけないし」
「っ!?」
箒は顔を真っ赤にして服を掴んでシャワールームへと逃げ込んだ。
「・・・・柔らかかった」
思春期の男の子である一夏は誰にも気づかれないように呟く。
薄暗い闇の中で五反田弾は周囲を警戒していた。
先刻、小型のアンデッドサーチャーにアンデッドの反応を察知してやってきたのである。
周囲には人影がなく、ただ電柱のランプが周囲を照らしているだけであり、ほとんどを闇が支配している。
その中で弾は鍛えられた視力で暗闇の中から迫り来るものに気づく。
懐からギャレンバックルを取り出して中心部のラウズリーダーにダイヤのAカードを装填する。バックルからカード状のベルト・シャッフルラップが自動的に伸張しバックルが装着される。
「・・・・変身!」
『Turn・Up』
叫ぶと同時にターンアップハンドルを引くことでリーダーが回転してギャレンアーマーを分解した光のゲート・オリハルコンエレメントを装着者の前面に放出する。
弾は駆けてオリハルコンエレメントを通過した。
通過すると同時に弾の体をギャレンアーマーが包み込む。
ギャレンとなると同時に暗闇からローカストアンデッドが襲い掛かってくる。
「うぉっ!?」
突然、飛び掛られたためにギャレンの反応が遅れそうになるが、反射神経による行動によるラウザーホルスターから醒銃ギャレンラウザーを抜いて銃口をローカストアンデッドへ向けてトリガーを押す。
弾丸が放たれてローカストアンデッドは後ろに仰け反る。
さらに追い討ちをかけるようにギャレンラウザーで攻撃をしていく。
全身に弾丸を受けて仰け反って倒れたローカストアンデッドに止めを刺すためにギャレンはラウザーのオープントレイを展開して中にあるラウズカードを抜いてスラッシュリーダーで読み取らせようとしたとき――、
「っ!?」
ギャレンの全身が凍りつく。
仮面ライダーとしてまだ日が浅い方のギャレンだが、戦闘をそれなりに経験しているからだいたいの殺気などにはもう慣れたつもりだった。
だが、これは違う。
これは今までと比較にならないほどの殺気。
殺気を浴びているだけで全身がダメージを受けているかのような感覚に襲われる。
その隙にローカストアンデッドは全身を小さなバッタのような姿に変えて行方をくらます。
「しまっ・・・・」
アンデッドが消えると同時にギャレンを包み込んでいた殺気も消えている。
「・・・・消えた?」
周囲を警戒するが殺気の主は見つからない。
「今の・・・・一体」
変身を解除して弾は疑問を口に出す。
それに答える者はいない。