仮面ライダー剣―Missing:IS   作:断空我

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半分の実力だ。何に対してかは内緒。


第二十七話

富樫始とシャルロットの二人は薄暗い部屋にいた。

 

薄暗いといっても今が夜とかそういうわけではない。

 

部屋に案内した人間が意図的に室内を暗くしているのである。

 

始は目を瞑って時間を潰していた。

 

「ねぇ・・・・本当に大丈夫かなぁ?」

 

「さぁな、やばくなったら逃げるしかないが・・・・状況次第だ。まぁ、安心しろ」

 

ぽん、とシャルロットの頭を撫でる。

 

彼女は頬を赤くしながら彼に撫でられ続けていた。

 

しばらく時間が流れて、二人の前のドアが開く。

 

「おそくなってしまい、申し訳ありません」

 

「いいさ、アポもなく押しかけたのはこっちだからな」

 

「まずは確認ですが、富樫始様とシャルロット・デュノア様でよろしいですか?」

 

「・・・あぁ、と言っても、あんたらの事だから既に指紋とかで確認してんだろ・・・・更識の暗部さん」

 

始の問いに目の前にいた少女、布仏虚は表情を変えずに座る。

 

「早速ですが、取引きの内容について確認しますがよろしいでしょうか?」

 

二人が頷いた。

 

「こちらが保証するのは二人の身の安全の保証、シャルロットさんはIS学園への転入となり、始さんはBOARDに身柄を拘束するというものですが・・・・」

 

虚は表情を変えずに告げた。

 

「片方は受諾しますが、もう一つ、始さんの身柄をBOARDに拘束というのは受け入れられません」

 

「え!?」

 

「それで?」

 

シャルロットが不安そうに隣を見るが始が続きを促す。

 

「BOARDではなく、貴方もIS学園への転入と扱いという事になります。勿論、二人目の男子という情報は公に発表されることはありません。秘匿情報ばかりでの転入となるので制限が多くなりますが、受け入れてもらえますか?」

 

「まぁ・・・・どっかの実験施設とかだったら拒否するところだけれど、IS学園ねぇ。こんな俺が学生生活送れると思うか」

 

「当然の事ながら、二人には監視がつきますので安心してください」

 

どこに安心できる要素があるのかわからないが始は頷いた。

 

「次にこちらの条件である亡国機業のアジト、構成員、計画などを話してもらいます」

 

「ほらよ」

 

始は懐からUSBメモリを取り出して机の上におく。

 

「この中に俺らが知る限りの情報を入れてある・・・・」

 

「確認させてもらいます」

 

「ただし!」

 

始がまったをかける。

 

「それは俺らが抜ける一ヶ月前の情報で、まだ組織がマトモだったころの情報だ」

 

「といいますと?」

 

「最近、あの組織の臭さが増した」

 

言葉の意味がわからず虚は首をかしげる。

 

「えっと・・・・元々、国家の施設に盗みに入ったりとか色々あったんですけれど、それでも、超えちゃいけない領域には絶対に手を出さなくて・・・・えっと・・・・」

 

「超えてはいけない領域というのは?」

 

「ただの、破壊活動になってんだよ。最近、人の形したロボットがIS纏って、ただ、施設を破壊する、人を殺し続ける。破壊前提の組織になっている。俺らが入ったときはそれぞれの目的を持って動いている連中ばかりだったのが今は一つの目的の為だけに行動している。それが気持ち悪くて、俺達は抜けた」

 

「一つの目的というのは・・・・」

 

「理由もへったくれもないただの“破壊”だ」

 

「破壊・・・・ですか?」

 

「そ、破壊、赤ん坊やガキみたいに物を投げたり泣きじゃくったり理由のない行動を組織はとり始めている。そんなところについていたら何されるかわかんねぇ」

 

「理由はわかりました・・・・。情報が本物かどうか確認しますのでお二方はもうしばらくここでお待ちいただけますか?」

 

「はいはい・・・・あぁ、ところで布仏さんとやら」

 

「なんですか?」

 

「更識の暗部にさ、水色の髪したヤツっている?」

 

ぴくっ、と彼女は反応するが、表情は変えずに頷いた。

 

「いますが、それが?」

 

「二年前に組織の命令でIS乗って、そいつと戦ったんだけど、あれから強くなったのかなぁ・・・・っていう、興味本位だ、別に名前を知りたいとかそんなんじゃない。こうゆう世界ってのはふとしたきっかけでいなくなるからな・・・・確認だ」

 

始の言葉に今まで鉄面皮だった虚が二年前、と小さく呟く。

 

「一応、生きておられます。確認ですが、二年前というのは料亭で繰り広げられたIS戦闘のことでしょうか」

 

「よくしってんなぁ、そうそれ」

 

始は驚いていると虚はメガネをくぃっと指で戻すと半眼で彼を見てから、「わかりました。確認します」といって、出て行く。

 

「・・・・始ぇ、今いう事じゃなかったよね?」

 

「まぁな、ずぅっと表情変わらないからなにをいえば、崩れるのか実験しちゃった」

 

「もう、天邪鬼すぎるよ」

 

「悪い悪い」

 

「いつか、痛い目みてもしらないんだからね」

 

「わかってるって、ほどほどにしておく」

 

手を振って軽く言う始だが、四時間後に彼はこういう。

 

「本当にやめておけばよかった」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み前日、生徒達は実家に帰省する準備をしている中で、一夏はISの訓練をしようと考えていた。

 

ブレイドと白式が融合した状態について知りたいというのもあったし、なによりISの技術面を磨く事はこれから起こる戦いにおいて必要になるかもしれないと一夏は考えていたからだ。

 

本当は専用機持ちを誘ったのだが、無理だった。

 

箒は新しいIS紅椿についての委員会に呼び出され、他の専用機持ちは祖国に夏休みについてどうするかの連絡のために学園にいない。

 

故に、一人でISの訓練をしようとしていた一夏は小さくため息を吐いた。

 

「・・・・それで、何か用事ですか?更識さん」

 

アリーナでISの練習をしようとしていた一夏の前に現れたのは更識楯無だった。

 

彼女は腰に手を当てて道を通せんぼしている。

 

「突然だけれど、織斑一夏君。貴方は弱い」

 

「・・・・本当に突然ですね」

 

一夏はげんなりしつつ答える。

 

「確かに、俺は弱いですよ」

 

「あら、認めるの?」

 

「少し前に、色々ありまして」

 

思い出すのは合宿での一件だった。

 

始・カリスとの戦い。

 

彼の抱えていた内なる闇。

 

仲間の絆に亀裂が入ったこと。

 

カテゴリーKとの戦い。

 

富樫始の姿をしたクローン。

 

ブレイドキングフォーム。

 

めまぐるしいほどの出来事の中で一夏は思い知らされた。

 

自分という人間はどうしょうもないほど弱い。

 

ライダーシステムという力があっても、意思を貫けることができたとしても自分は弱い。

 

決められたレールの上を歩いているだけの人生を受け入れてしまって、疑問も考える事もしないそんな人間だと思い知らされた。

 

「だから、俺は強くなりたい。今のままじゃ、何も変わらないと思うので」

 

「ふーん、よくわからないけれど、色々あったというわけね・・・・さて」

 

楯無は扇子をひろげる。

 

そこには熱血指導と書かれていた。

 

「今日から私が貴方を鍛えてあげるわ」

 

「更識さんが?」

 

「そうよ」

 

「でも、俺、箒達と」

 

「確かに同世代の専用機持ちに教えてもらうことは重要よ。彼女はキミよりも長くISと触れている・・・・でもね」

 

 

 

――上には上がいるのよ?

 

 

 

 

「ぐがっ!?」

 

気がついたら一夏の眼前に槍が突きつけられていた。

 

楯無が片腕を部分展開して、槍を向けていたのだ。

 

「(み、見えなかった!?)」

 

アンデッドとの死闘で、それなりに強くなっていて、動きに注していたというのに、全く見えなかった。

 

「いいこと教えてあげる」

 

槍をつきつけられて動けない一夏に楯無は喋る。

 

「IS学園の生徒会長というのはね。面白い決まりがあるのよ」

 

「き、決まり?」

 

「そう、誰よりも強くアレ・・・・学園の生徒会長というのはね。生徒の頭であり、生徒の中で一番強いという意味をもっているの。つまり、ISにおいてこの学園の生徒の中で、私は最強というわけ・・・・理解できた?」

 

一夏は無言で頷く。

 

「というわけで、キミには強くなってもらいたいから今日から私がIS指導をしてあげる。この夏休みの間に貴方を代表候補生、ううん、それ以上の実力まで引き上げてみせるわ」

 

 

――覚悟してね、と楯無はウィンクする。

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ、私の予想では十分でダウンすると思っていたんだけれど、まさか一時間も保つとは予想外だったわ」

 

アリーナの“安全”な場所で楯無は扇子をひろげて口元を隠しながら感想を漏らす。

 

彼女の視線の先には大小、様々なクレーターが出来ていて、その沢山のクレーターの一つにISが解除されて地面に上半身が埋もれている織斑一夏の姿がある。

 

「さすがに武装なしでこっちの攻撃避け続けるというのは無謀かなと思っていたけれど、これだけ動きがいいなら、武装変えたりの実戦形式でやらせていくのもありかもしれないわねぇ」

 

ぴくぴくと地面から伸びている足の様子からしてまだ、大丈夫だろうと推察して楯無はこれからの訓練メニューを考える。

 

「(戦闘センスに関しては問題ない・・・・問題があるとしたらISに関する戦闘経験が少ないという事、ISを使っての公式戦はクラスの代表決定戦と学年別トーナメントのみ。たった二回でここまでISを動かせる事は評価するけれど、ここから先が問題なのよね)」

 

そう遠くない未来、織斑一夏を狙って何かが動く。

 

楯無はそう予想している。

 

彼にはISを使って逃げ延びる。贅沢を言うなら撃退するほどの実力を有してもらわないといけない。

 

一夏の護衛を頼まれているとはいえ、毎日、やっていられるほど楯無は暇じゃない。

 

可能な限り時間を割いて、ようやく接触できた。

 

数少ない時間を費やして彼を鍛え上げる。

 

「さて、休憩終了よぉ~。織斑一夏君。出られるかしら?出られないならお姉さんが引っ張り出して・・・・ん?」

 

アリーナに入って、近づこうとした時、彼女のポケットの中の端末が振動していた。

 

取り出して表示を見ると、布仏虚となっている。

 

「はーい、虚ちゃん。どうしたの?」

 

『お嬢様・・・・見つけました』

 

「なにを?」

 

『例の男子です』

 

虚からの報告に楯無の体が、時が一瞬、止まった。

 

「本当に?」

 

次に開いた楯無の声は思った以上に低い。

 

底冷えするような声に電話の向こうは必死に冷静さを保とうとしていた。

 

『間違いありません。さり気なく確認を取りました・・・・どうしますか』

 

「確か、虚ちゃんが相手してるのって、IS学園へ転入させるのよね?」

 

『はい』

 

「だったら、試験を今日やっちゃいましょう。二人とも学園につれてきて」

 

『大丈夫でしょうか?』

 

「一通りの検査はやるわよ。悪いけれど、お願いするわ。こっちはアリーナの申請とるから」

 

『わかりました』

 

ピッ、と通信が切れる。

 

楯無は端末を仕舞いこむと扇子で口元を隠す。

 

もし、ここに楯無以外の人がいたら恐怖のあまり気絶してしまうかもしれない。

 

彼女は笑顔を浮かべていたが、目は全く笑ってなかった。

 

「(ようやくようやく、ようやく見つけたぁ!これからが本番よ)あ、一夏君!私やらないといけないことあるから、悪いけれど、休んでいて、戻ってきたら訓練再開だから!」

 

地面に埋もれたままの一夏に告げて楯無はアリーナからスキップを踏んで離れていく。

 

埋もれたままの一夏は様子を見に来た山田先生がみつけるまでずっと、動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始とシャルロットの二人は漆黒のリムジンに乗せられてIS学園に来ていた。

 

「これがIS学園かぁ」

 

「国のお金が集ってできた施設だからな、みすぼらしかったな問題だろ・・・・」

 

「どうしたの?」

 

シャルロットは始が普段と違ってそわそわして落ち着かない様子に気づく。

 

「なーんか、リムジンとか豪華な車に乗るのって落ち着かないんだよなぁ。乗るなら日本製の車とか、バイク乗っているほうが俺の性にあってる」

 

「始らしいね」

 

「庶民らしいといえ。ショ・ミーンと」

 

「なにそれ?」

 

「気にすな」

 

「到着しました。車からおりてください」

 

虚に促されて二人はリムジンから降りる。

 

目の前にはIS学園の校舎が聳え立つ。

 

これから二人が通うことになる学校。

 

「これから、お二方には試験を受けてもらいます」

 

「・・・・試験、ですか?」

 

シャルロットの言葉に虚がはい、と頷いた。

 

「試験といっても、お二方の実力を見せてもらうだけです。ISの実力をです」

 

ISといわれて、二人の表情が変わる。

 

「使うISは?学園に置かれているやつか?」

 

「はい・・・・不都合でしょうか?」

 

「いいや、そのISが俺達の動きについてこれるか不安なだけだ。こんな風にな!」

 

始は銀の福音の腕を展開して、飛来した弾丸を叩き落す。

 

斬りおとされた弾丸は真っ二つに斬られて地面に転がる。

 

「いきなり弾丸、飛ばすっていうのは挨拶だなぁ」

 

ぎろり、と始は弾丸の方を睨む。

 

入口のほうを見ると、素敵な笑顔を浮かべている水色の髪をした少女がこちらを見ていた。

 

にやり、と少女が笑うと地面を蹴る。

 

くるか、と始が身構えているとあろうことか少女は始に抱きついた。

 

「えっ!?」

 

「会いたかったわぁ~~」

 

 

 

 

――ダーリン! と更識楯無は富樫始の頬にキスする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・なぁ、機嫌なおせよ」

 

「ツーン」

 

アリーナへの道を始とシャルロットは歩いていた。

 

だが、シャルロットの機嫌がかなり悪い。

 

頬へのキスからずっと、目をあわせようとしなかった。

 

「(わかってるよ。始が悪くないっていうのさ・・・・でもさぁ)」

 

シャルロットはちらり、と始の、左腕に抱きついてほくほく顔をしている楯無を見る。

 

始の話によると二年前に出会って以来、会っていないそうだが、なにをどうやったらダーリンと呼ばれるような状況になるのだろう。

 

「(頬にキスなんて・・・・、私だって・・・・)」

 

隣を歩いている始の顔を見ようとすると、目が合う。

 

「なぁ」

 

「・・・・ぷぃっ!」

 

恥ずかしくて始が言葉を発する前に目をそらす。

 

だが、それを好機と見た者が一人。

 

「うがっ」

 

「ねぇ~~、ダーリン」

 

「んだよ」

 

始は少し苛々した表情で返す。

 

「結婚式はどこがいいかしら」

 

「勝手にいってろ、俺はお前と結婚する予定もするつもりもない(するなら・・・・)」

 

「そう(いいわ、いいわぁ!この後が楽しみね)」

 

「(始ぇ)」

 

混沌の一行がアリーナに辿り着いたのはそれから五分後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、始!?」

 

「・・・・なんだ」

 

「どうして、そんなにげっそり?」

 

「聞くな、頼むから聞くな」

 

一夏は目の前にいるのが富樫始だということに驚いているが、普段飄々としている彼がげっそりとした表情になっていたことにびっくりしていた。

 

「(シャルロットさんや更識さんが左右に抱きつかれているなぁ・・・・それにしても)」

 

ちらり、と楯無の方を見る。

 

思い出したのは簪の言っていた計画のことだ。

 

簪の言っていた相手が始だとしたら。

 

「強く生きろ」

 

「いきなり、なんだよ。気持ち悪い」

 

「はじめますのでこちらへ来てください」

 

虚に呼ばれて、始は置かれている打鉄の方へ向かう。

 

聞いた話によると始とシャルロットは打鉄とラファール・リヴァイヴにそれぞれ搭乗して、相手のISと戦う、勝ち負けではなく、どのぐらい戦えるのか知りたいとのことだった。

 

「始かぁ・・・・」

 

「あ、おりむ~~」

 

「のほほんさん」

 

振り返ると、ダボダボの袖を振り回しながら同じクラスの布仏本音がやってくる。

 

「どうしたんだよ。こんなところで」

 

「私~、生徒会の役員なんだ~」

 

「え!?そうなのか」

 

「うん~」

 

驚きの表情だ。

 

普段、のほほーんとしている彼女が真面目に仕事をこなしているのか気になった。

 

「おりむ~も見学?」

 

「そんなところ、よく考えたら始がIS使って戦うのまともにみたことないからさ」

 

「へぇ~~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナの中央で打鉄を纏った始の前に更識楯無が現れた。

 

「・・・・」

 

帰りたい、

 

今すぐ帰りたい、と始は後悔している。

 

「よーやく・・・・ようやく、ようやくきたわぁ」

 

ミステリアス・レイディを纏った更識楯無はぶつぶつと何かを繰り返している。

 

なのに、瞳はじっ、とこちらを捉えて離さない。

 

「さっさと、はじめようぜ?終わらせて帰りたい」

 

「ねぇ」

 

戦艦刀を構えた始にぽつり、と楯無はつぶやく。

 

「この試合、負けた方は勝った方のいう事を聞くっていうのはどう?」

 

「何故?」

 

 メリットがない、と始が呟こうとしてあることに気づく。

 

 楯無の瞳孔が大きく開いて、ぞっ、とするような殺気がほとばしる。

 

「やるの?やるよね?やるに決まっていると思うんだけど」

 

「(こえぇ)・・・・じゃあ、俺が勝ったら二度と付きまとうな」

 

「うん。わかった」

 

あっさりと頷いた事に驚きながらも警戒を強めた。

 

開始のブザーが鳴って先に動いたのは意外にも始、戦艦刀を叩きつけるようにして楯無に振り下ろす。

 

刃が当たる直前で楯無は水を螺旋状に纏ったランス、蒼流旋で受け止める。

 

楯無がにっこりと笑ったのを見て、始は後ろに跳ぶ。

 

彼女が指を鳴らすと同時に小さな爆発が連続して起こる。

 

腕を盾にして顔に攻撃がこないようにしたが、ISのエネルギーが大きく削られてしまう。

 

「(なんだ?見えない爆弾でも設置していたのか?)」

 

始は楯無の動きに逐一警戒していた。

 

だが、彼女が何かを設置させたような動きは全くない。

 

「(あのISの力かなにかというわけか・・・・)」

 

「考え中?その間に倒しちゃう!」

 

「わっ、とと」

 

振るわれた蒼流旋を戦艦刀で弾き飛ばそうとするが向こうの方が強度が上で、刃の一部が欠けはじめていた。量産機と専用機との差に苛立ちを隠せない。

 

「くそっ、反応が悪い!」

 

「ふっふふ~♪」

 

次々と繰り出される槍とガトリングの雨に打鉄は抵抗むなしくシールドが削られていってしまう。

 

「ねぇ」

 

「んだよ!」

 

ワンサイドゲームに苛立ちつつあった始に楯無が微笑む。

 

「キミが勝った時の話はしていたけれど、私が勝った時の話はしてなかったわよね?」

 

「(いきなりなんだ?)」

 

戦いの最中の楯無の言葉に始は少し戸惑いの表情を浮かべた。

 

「勝ったら・・・・キミは私の婚約者になってもらうわ!」

 

「・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!?」

 

観客席で戦いを観戦していた一夏と本音の二人は更識楯無の言葉に驚きの表情を浮かべた。

 

「こ、婚約って、楯無さん、本気でいってんのか!?」

 

「あちゃ~~、お嬢様がいっていた人って、あの人だったんだぁ~」

 

「のほほんさん、知ってんの!?」

 

「うん、前にかんちゃんの話にあったしなんかね~・・・・なんだったかな?」

 

首をかしげる彼女に一夏はがく、と崩れながらアリーナの様子を見る。

 

動揺した始の隙をついて爆発が打鉄の近くで起こり、戦艦刀が手を離れて、楯無の蒼流旋の先端が突きつけられていた。

 

「や、ヤバクないか?」

 

「うーん、このままだと負けちゃうね~」

 

「いや、そっちじゃない・・・・」

 

一夏はアリーナではなく、少し離れた所、観客席の入口で不敵に笑って出て行ったシャルロット後姿を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふふふふふふふふ」

 

「すっげぇ、笑顔だな。おい」

 

「うふふふふふふふ、ようやく、ようやくよ!長い年月(二年)練り上げた計画が実を結ぶ時がきた!」

 

「・・・・質問なんだけどさ、なんで俺なわけ?お前とは一回しか会った記憶ないんだけど」

 

「・・・・何を言っているの?私は貴方と何度もあっているわ」

 

「は?」

 

意味が変わらず始は首をかしげてしまう。

 

「まぁいいや、いっとくけど、婚約者にしてもお前が悲しむだけだぜ?俺は」

 

「――人間じゃない、というんでしょ?」

 

楯無の言葉に始は目を見開く。

 

「色々と知っている・・・・調べたから・・・・それに、貴方が進化するところを見ていた」

 

「・・・・」

 

「でも、私は何も出来なかった」

 

震える声で楯無はつぶやいた。

 

「実際に貴方を助けたのは私じゃない・・・・悔しい、悔しいよ」

 

「それと、婚約することのつながりがみえないが?」

 

「惚けてる?それとも本当にいってるの」

 

「・・・・」

 

楯無の言葉に始は詰まる。

 

「貴方の体が人間じゃない。それは・・・・」

 

「言うな」

 

「でも!このままだと貴方は一人になる!そんなこと・・・・」

 

「お前はそのために自分を犠牲にするっていうつもりか?」

 

「私は!」

 

「これは、俺が招いた結果だ。俺のしたことにこれ以上誰かを巻き込むつもりはない」

 

打鉄を脱ぎ捨てて、始は起き上がる。

 

「更識楯無、こっからは本気で――」

 

「悪いけれど、選手交代だよ。始」

銀の福音を纏うとした始の近くにシャルロットが降り立つ。

 

「あ、何言ってんだ。これは」

 

「IS脱いだ時点で、始の負けは確定してるよ。この人の勝ち、悪いけれど、私の試合が押してるから始はさっさと退場だよぉ」

 

ラファール・リヴァイブを纏ったシャルロットは始の腕を掴むとそのままアリーナの出口に投げる。

 

「シャ、うぉぉぉ!?」

「へぶっ!」

 

一夏と始の二人はごろごろと地面を転がる。

 

「さ、続きをはじめよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミとは一度、戦ってみたかったんだよね~」

 

「奇遇ですね。私もです」

 

ミステリアス・レイディを纏った更識楯無とラファール・リヴァイヴを纏っているシャルロットの二人が対峙する。

 

「先輩には悪いですけれど、始は渡しません」

 

「あら、いうわね」

 

突撃してくる楯無の攻撃を避けて、シャルロットはライフルの銃口を向けた。

 

「貴方のこと、羨ましいと思うわ」

 

「・・・・」

 

「ずっと、傍にいられて・・・・彼を助ける事ができる力が貴方にはあった・・・・それが本当に羨ましい!」

 

「私は、自分が嫌でしたよ」

 

蒼流旋によって弾丸が弾かれながらもライフルの攻撃を止めない。

 

「いつも傍に居ることはできました・・・・でも、何も出来なかった。始がジョーカーになったときも、足を引っ張って・・・・」

 

「けれど、貴方は彼を助けた!」

 

「運がよかっただけ!!」

 

ライフルが楯無の蒼流旋を弾き飛ばす。

 

槍を失った彼女だが、二人の間を阻むように小さな爆発が起こった。

 

距離をとろうとしたシャルロットに蛇腹剣を展開した楯無が切り込む。

 

ライフルが破壊されるが、慌てずにマシンガンと近接ブレードを取り出す。

 

「でも、貴方は彼を助けて、ずっと、いられることができる!私はそれが羨ましい、そして妬ましい!!」

 

「それは、私もだ!!」

 

近接ブレードで鍔迫り合いをしていたが叫び返し、マシンガンで蛇腹剣を弾き飛ばす。

 

「私は貴方みたいにどんどんアタックする勇気がない!嫌われるかもしれないと踏み込む勇気がない、そこが羨ましい!」

 

叫びながら攻撃の手を緩めない。

 

両者のISの装甲がボロボロになっていくが止める様子もなかった。

 

ずっと続くかと思われた戦いの中、突如、アリーナのシールドエネルギーを壊して侵入者が姿を見せる。

 

人形のような外見をした大型の未確認ISはシャルロットと楯無に向かって腕からレーザーを放つ。

 

二人は後ろに跳んで避けて同時に武器を展開する。

 

 

 

更識は奥の手といえるミストルティンの槍を――。

 

 

 

シャルロットはリヴァイヴのシールドに内包されている第二世代のISにおいて最高クラスの威力を有するシールド・ピアースを――。

 

 

 

 

 

「「邪魔すんなぁ!!」」

 

レーザーの雨を潜り抜けて二人は同時に攻撃をぶつける。

 

強力な攻撃を未確認のISは避けられず、爆発を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

「あのぉ、始さん」

 

「言うな、俺は何も見ていない。すぐに消え去りたいくらいだ」

 

「残念だが、これは現実だ。愚か者」

 

バシンと始と一夏の後頭部に千冬の出席簿が炸裂する。

 

「「っ!?」」

 

「全く、これはどういうことだ?ISの試験をやると聞いていたがアリーナが半壊するほどやる許可はだしていないぞ」

 

 

説明しろ、と千冬の目が語っている。

 

一夏はちらり、と始をみる。

 

本人はため息を吐いて、すいませんでした、と謝罪する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「試験を許可したがここまでやれとはいっておらんぞ、この愚か者共!」

 

千冬による制裁により、楯無とシャルロットの二人はアリーナで正座させられていた。

 

「全く、餓鬼共の面倒を見るこちらの苦労も考えてもらいたいものだ」

 

「「すいません・・・・」」

 

「とにかく、入学試験はこれにて終了だ。とっととシャワーでも浴びて部屋に向かえ、デュノア、着替えが終わり次第、寮の前までこい。部屋の鍵を渡す」

 

「は、はい!」

 

「更識、お前は仕事があると呼んでいたから急いで向かうように」

 

「わかりました」

 

楯無とシャルロットはそこで互いをみてから、シャワー室に向かう。

 

「さて、富樫と織斑、貴様らはアリーナの後片付けを頼む」

 

「・・・・わかりました」

 

「はい・・・・」

 

不可抗力だ、と二人は叫びたかった。

 

だが、千冬の背後に存在する修羅によって意見は封殺される。

 

二人はISを展開して片付け始める。

 

「時間も遅い。さっさと終わらせよう」

 

「・・・・だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ~~、つっかれた」

 

始は肩を回しながら山田先生に渡された鍵を手に、寮の部屋へ向かう。

 

一夏の部屋は1025号、シャルロットは1055号、始の部屋は。

 

「ここか・・・・」

 

1056号と書かれている部屋の番号と鍵を確認して、目の前の扉に鍵を差し込んで中に入る。

 

「おかえりなさい!私にします?私にしますよね?私に決まっていますよね?わたしに――」

 

 

――ガチャリ。

 

 

始は開けたドアを閉める。

 

見間違いかなぁと必死に現実をそらそうとしたけれど、目の前に表示されているプレートは1056号、自分に与えられた部屋に間違いない。

 

意を決し始は再びあける。

 

「私にしますよね?私に決まっていますよね?私しかありませんよね?私に」

 

「部屋間違えまし――」

 

ガチャリ、ドアを閉じようとした始の腕に手錠が絡みつく。

 

ISを部分展開して手錠を破壊しようとした始の視界に更識楯無の瞳が目に入る。

 

――逃げたら許さない。

 

彼女の目はそう語っていた。

 

どす黒い瞳が入って、始は恐怖する。

 

本能的に恐怖した。

 

逃げたいと考える。

 

けれど、楯無の瞳が怖すぎて動けない。

 

今まで、色々な人でなしみたいなことをしてきた始が怖くて動けなかった瞬間だった。

 

「っと、まぁ、ふざけるのはこれぐらいにしておいてあげるわ」

 

急に恐怖が消えて、手錠も解除された。

 

「シャルロットちゃんと協定を結んで寮の部屋では貴方の意思を尊重する事にしたの」

 

「そ・・・・そうか」

 

始はシャルロットが天使に見える。

 

実際、惚れた弱みというわけではないが、彼女は天使よりも可愛く美しい。

 

「・・・・それと」

 

楯無は小さく笑って、始の手に触れる。

 

「貴方の気持ちがシャルロットちゃんに向けられていても諦めるつもりはないから、絶対に振り向かせるから」

 

「・・・・楯無」

 

「――刀奈」

 

「あ?」

 

「楯無というのは更識の当主が継ぐ名前なの、刀奈。それが私の本当の名前よ」

 

「刀奈ね・・・・覚えておく」

 

「嬉しい」

 

楯無―刀奈は小さく微笑む。だが、始はこの時、油断していた。彼女は寮では手を出さないが、寮の外ではとんでもない行動ばっかり起こすことに。

 

「あぁ、それと」

 

――ようこそ、IS学園へ。

 

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