――視界が回転する。
次に衝撃がやってきて、座っていた体を車の天井に打ちつけた。
大きな音が連続して響く。
――何が起こったのわからない、
自分は体を打ちつけた衝撃の為に思考が上手く回らない。
痛む体を抑えながら運転手に外に出るように促された。
車のガラスに亀裂が入っていたみたいで、腕に破片が突き刺さっている。
痛む腕をおさえながらゆっくりと車から引っ張り出された。
外に出た瞬間、そこが地獄なのではないかと錯覚してしまう。
何台もの車が横転して火に包まれている車もあった。
黒い煙の向こう、太陽の光に反射して輝く何かがいる。
その存在を確認した途端、自分の傍にいた運転手の体が弾け飛ぶ。
――声が出なかった。
目の前で運転手の体はザクロが落ちたみたいに千切れて、地面に崩れ落ちる。
血まみれになった手を払って、ソレの目と自分の目が合った。
荒い息をたてて、簪の意識は覚醒する。
心臓が爆発寸前みたいに音を立てていた。
呼吸も荒い。
扇風機もエアコンも停止していて、室内が蒸し暑くなっていて、来ている服に汗がべっとりついている。
「どうして・・・・」
簪は小さく呟いた。
「まだ・・・・乗り越えていないってことなの?」
彼女の脳裏に離れない悪夢。
かなりの月日が流れたというのに消えていなかったのかと簪は自問する。
ふと、こんなに熱いのに起きたのは自分だけなのだろうかときづいた。
隣を見ると、ルームメイトの姿がない。
「・・・・熱い」
体を拭こう。
汗だくになったパジャマを脱いで、別のものに着替える。
ルームメイトに関しては大丈夫だろう、と簪は考えて。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
織斑一夏の朝は叫ぶ事によって始まる。
――最近は。
「ラウラぁ!」
一夏は白い毛布にくるまっている銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒの姿を見つけて、声を荒げた。
嫁宣言、エレファントアンデッドとの戦いの告白以降からラウラは毎日のように一夏の部屋に侵入して眠っていることが多い。
何度もやめるように一夏は説得しようとするが彼女は聞いてくれない。
本当なら強く拒否すればいいのだが、一夏は強くいえない立場にある。
彼女達の好意に気づいているが、自分がどうすればいいのか答えが見つからない。
答えを保留にしている一夏が強く言える立場ではない。
ラウラは不安だということをわかっているから拒絶できなかった。
ヘタレ一夏が全ての元凶である。
「安心しろ。今日は裸ではないぞ!」
「うわっ!?」
彼女が毛布を脱いだのを見て、慌てて目を閉じようとしたが、見えたのはスクール水着、しかも、らうらと胸元にかかれていた。
旧式のスクール水着。
「なんと」
――コアな。
「クラリッサから聞いたのだ。この格好は人気があると!」
「お前に変な知識を与えている人に文句いいたい」
けれど、強くいえないのが一夏である。
「それより、お前何度も部屋に侵入しているが・・・・大丈夫なのか?」
「今は夏休みだ。問題ない」
「(そんなものなのだろうか?)」
「・・・・ところで嫁よ」
「なんだ?」
「今日は暇だろうか?」
ラウラに聞かれて今日の予定を確認する。
今日は楯無との訓練はない。
他の専用機持ちとの予定もなかった。
箒は手に入れたISの尋問、但し、最終日。
セシリアは本国に帰国中。
鈴音は・・・・知らない。
「暇、だな」
「そうか、暇か・・・・では、私と出かけないか?」
「買い物とかか」
「――デートだ」
デートといわれて、一夏は詰まる。
「ダメ・・・・か?」
「いや、ダメじゃない!」
上目+涙目のために一夏は壁を展開する暇もなく崩れた。
ヘタレ一夏確定の瞬間である。
昼。
富樫始はシャルロットと街の外にでている。
消耗する日用品を買い揃える為・・・・だった。
「・・・・なんで、お前がいるんだ?」
「いちゃダメかしら?」
始の前には「貴方の背後にはいよる混沌」と書かれた扇子を閉じて、にこりと微笑む更識楯無の姿がある。
出て行くときに彼女の姿がなかったことからどこかにでかけたのだろうと思っていた。
シャルロットを誘って、外出届をだし、街の外にでてきたわけだが、彼女と一時的に別れて、買い物を終えて、待ち合わせ場所に向かう途中で楯無が現れる。
「なんで、ここにいることがわかった?」
「偶然よ・・・・それと」
楯無はにこりと微笑むと始の腕に抱きつく。
「貴方達は一応、更識の監視下にあるから、誰かが気づかれないように監視している・・・・といっても、今回、私自らでているから他の人はいないわ」
ぼそぼそと喋る楯無に始は腕を振りほどこうとする。
「それと――」
解こうとした始の腕に思いっきり楯無は爪を立てた。
服の上から痛みはないが、威圧感がおそいかかる。
「寮においてはなにもしないけれど、外では私も乙女なので自由にさせてもらうわ?さ、いきましょ、あ・な・た」
「何をやっているのかな?始」
腕を引かれて歩き出そうとした途端、更識の後頭部に拳銃の銃口をつきつけてシャルロットが現れる。
「あらあら、おかしいわね。私の予想ではもう少し掛ると思っていたのに」
銃を突きつけられているというのに楯無はころころと笑う。
だが、よくみると、彼女の手の中に扇子があって、それがシャルロットの心臓に向けられていた。
扇子の先端から仕込み針がでていることを始は気づく。
二人はにこりと笑っているが、お互い、目は氷のように冷たく感情が見えない。
「もう、ダメだよ。始?私とのデート中に女の子に捕まったら、さ、いこう」
「ごめんなさいねぇ。シャルロットちゃん。お姉さんと始君はこの後デートすることが急遽、決まっちゃったから一人で帰ってもらえるかしら?大丈夫、おいしくいただくから」
「悪いけれど、始とはこの後も予定が一杯なんだ。先輩が帰ってください。安心してください。しっかり味わいますから」
何を味わうのか、食べるのかというのを始は聞かない。
身の危険を感じるが、彼は。
「二人とも、俺の傍から離れるな」
今にも●し合いをしそうな状況の中で始は二人を抱きしめる。
「ちょ・・・・」
「は、はじ」
始は二人を抱きしめるとそのまま床に伏せた。
直後、近くの壁が大きな音を立てて壊れて、そこからアンデッドが姿を見せる。
現れた怪物に周りの人達は悲鳴を上げて逃げ出す。
「・・・・やれやれ、アンデッドか・・・・楯無とシャルロットは無関係の奴らの避難を頼む・・・・」
面倒そうな表情を浮かべて始は懐からハートのプライムベスタを取り出す。
同時に、腹部にカリスラウザーが現れる。
「変身」
『チェンジ』
カリスの姿になり、人を襲おうとしているアンデッドに飛び掛る。
ジェリーフィッシュアンデッドは左手の鞭を振るう。
振るわれた鞭を避けて、カリスアローのソードボウでジェリーフィッシュアンデッドの体を斬る。
体を斬られて仰け反る隙をついて、カリスはフォースアローを放つ。
エネルギーアローを受けたジェリーフィッシュアンデッドは爆発を起こして後ろに倒れこむ。
「・・・・俺のカテゴリーではないが、封印しておくか」
カリスが手を伸ばした時、場を包み込むような強力な殺気がとんでくる。
「っ!?」
動きを止めたカリスの隙を突いて、ジェリーフィッシュアンデッドは自らの姿をゲル状の液体に変えると逃げてしまう。
「・・・・」
カリスはハートスート2のプライムベスタを取り出すとラウザーに読み取らせる。
『スピリット』
カリスから富樫始の姿に戻ると、彼はそのまま屋上へ向かう。
「あ、始!」
「待ってよ!」
シャルロットと楯無の二人は慌てて追いかける。
富樫始がビルの屋上に到着すると、先客が居た。
「アンタか、戦いに水を差したのは」
ゆっくりと振り返る男はメガネの奥から冷たい瞳を始に向けている。
「理解できないな」
「あ?」
「キミは愚かな人から進化したというのにその姿をさらけ出すどころか人ごみの中に隠れ、無能な人間を助けようとする・・・・理解できない」
「別に、理解されようとも思わない。俺はやりたいことをやるだけだ」
始の言葉に男は小さく笑う。
「失礼、進化しているのに知能が伴っていないと思ってね」
「なんとでもいえばいいさ」
――その程度の悪意慣れてる。
今まで、人生がゆがめられるまで始は様々な悪意をぶつけられた。
ただ、一夏と友人だっただけで。
箒と遊んだだけ、千冬と話をしているだけで、彼は悪意をぶつけられる。
目の前の男の言葉など痛くもかゆくもなかった。
「それで、アンタは文句言う為だけに現れたわけか?」
「・・・・富樫始、俺と組まないか」
「組む?何の為に」
男の提案に始は尋ね返す。
「全てのISを壊す為だ」
「何故?」
「気づいていないわけじゃないだろ?ISのコア、あれは人間が作れる代物ではない。キミが完全なアンデッドにならせなかった最大の理由は融合しているコアが原因だ」
「貴様・・・・」
「あぁ、安心しろ。この情報を外に公表するつもりはない。そんなことをすればこちらも危険になってしまうからな」
ハートスートのプライムベスタを取り出した始をみて、男は取り繕うように喋る。
「・・・・はっきりいおう。このままだとバトルファイトよりもさらに過酷な事が起こるだろう。手を組もう。ISを根こそぎ破壊しなければ明日はわが身だ」
差し出される手を始は取らない。
「全て破壊ということは、俺のISも破壊するという事だ。悪いが協力できない」
手を下ろして男は目を細める。
「ふん、気をつけることだな」
織斑一夏とラウラ・ボーデヴィッヒは街中を歩いていた。
「なぁ・・・・これって、どうなんだ?」
「む」
ラウラは少し考えてから一夏に尋ねる。
「嫌か」
「・・・・嫌というよりか、恥ずかしいんだけど」
街中で一夏とラウラの二人は買い物に来ている。
二人は注目を浴びていた。
銀髪で整った顔立ちのラウラは綺麗というよりかは可愛いという印象を周囲に与え、一夏は引き締まった肉体と整った顔立ちによって、女性からいい物件としてみられていた。
そんな二人がさらに注目を浴びている中でさらに注目を浴びている理由がある。
「何故、お姫様抱っこで歩くんだ・・・・」
さすがにおかしい、と一夏は思う。
けれど、ヘタレ一夏はそんな強く言える立場ではないため、大人しくしたがっている。
ライダーとして過酷な訓練をつんでいたのと、羽のように軽いラウラに重さをほとんど感じない。
むしろ、女性の柔らかさにドギマギしてしまう。
周囲の人たちは顔を赤らめているラウラと涼しい顔で彼女を抱きかかえている一夏にお姫様と王子という図をみて、きゃーと騒いでいる。
「クラリッサから、こうすれば好感度があがると教えてもらったのだが・・・・」
「明らかにその人、日本を勘違いしているとしか思えないんだが、しっかり話し合うべきなのかもしれない」
「むぅ・・・・一夏は嫌か?」
「だから、恥ずかしいんだって」
「わ、私も恥ずかしい・・・・だが」
――続けていたい。
消え入りそうな声でラウラは呟いた。
ヘタレ一夏は言葉という弾丸によって心臓を撃ち抜かれる。
「いや、続けよう!」
「う、うん」
微笑ましい光景がそこにあった。
「――ほぅ」
「うん!?」
一夏は慌てて周りを見る。
気のせいか、鋭い視線を感じたような気がして一夏は周りを見るけれど、何もない。
「どうした、一夏」
「いや、何か視線のようなものを感じた気がして」
「・・・・私は感じない」
「うーん、間違いか」
気のせいだとして、一夏とラウラのデートは続く。
――邪魔虫がたくさんいるなぁ・・・・だが、やりがいがある。
とあるチャットルーム。
<<<今日、デパートで仮面ライダーみちゃった。
<<<え、
<<<なに、それ?
<<<知らないのかよ!?
<<<バグってる。
<<<仮面ライダーっていうのは、都市伝説だーよ。
<<<人間とは違う異形と戦う仮面をかぶってバイクに乗った奴ららしーよん。
<<<一説では人類の平和を守る為らしい。
<<<バグッてる!
<<<偽善者にもほどがあるってーの!
<<<俺も平和の為に働かない。
<<<黙れ、ニートwww。
<<<てか、あれって、働いてるんかいな?
<<<所詮、金のためじゃね。
<<<何で顔隠すんだよ?
<<<さぁ?
<<<てかさぁ、その仮面なんとかって、ISより強いわけ?
<<<バグってる!
<<<それ、ずうっというつもりかよ!
<<<ISより、強いとか言う話だけどさ?
<<<ん?
<<<それ、ありえなくね?ISは世界最強、仮面ライダーって、所詮、金の為に動いている連中しょ?てか、いるかいないかもわからないんだから放置でいいとおーもう!
<<<えぇ~~、気になる気になるぅ。
<<<バグってりゅ!
<<<・・・・。
<<<かみまみた。
<<<わざとじゃない!?