仮面ライダー剣―Missing:IS   作:断空我

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今回から学園祭に入ります。

いやぁ、難産でした。

今回はかなり長いです。

理由としては読めばわかってもらえるかなぁ?

理由はあとがきにて。


第三十話

 

『ただいまより、第●●回IS学園の学園祭を開催いたします』

 

 

 

 

楯無の宣言から少しの時が流れて、二日間、学園祭が行われることとなる。

 

一日目は学生だけで、二日目は一般公開という日程。

 

一組の教室では執事服に着替えた始とシャルロットが向かい合っていた。

 

「ねぇ、始、似合うかなぁ?」

 

「・・・・」

 

「始?」

 

「ガハッ」

 

「え、は、始!?どうしたの!?始ぇ!」

 

シャルロットは目の前で鼻血を噴き出した倒れて富樫始をみて、慌てだす。

 

「富樫君って」

 

「意外と初心ね」

 

「これはすごい情報になるかもしれぬ!」

 

周りのクラスメイトはきゃっきゃっ騒いでいる。

 

現在、一組はメイド喫茶を開いていた。

 

メイド喫茶は大きな問題もなく許可がおりた。劇をやりたかったなぁと残念がる者もいたけれど、今は一丸となって喫茶店に打ち込んでいた。

 

富樫始と織斑一夏の二人は執事服を纏い、女性陣はメイド服。

 

シャルロットのメイド服をみて鼻血を噴き出した始。

 

彼女は慌てて始に駆け寄る。

 

「おいおい、始はどうしたんだ?」

 

「織斑君、どうしょう・・・・」

 

執事服を着た一夏がやってくる。

 

「鼻血ふきだしただけみたいだし、ティッシュで抑えておけば大丈夫だろう。ほら、始、店番だぞ」

 

「わーってる・・・・」

 

ゆらり、と立ち上がった始にシャルロットが近づく。

 

「始、大丈夫?」

 

「あぁ・・・・問題ない」

 

後頭部を少し撫でながら始は答える。

 

「・・・・シャルロット」

 

「なに?」

 

「似合ってるぞ、その格好」

 

「っ!あ・・・・ありがとう」

 

二人とも顔を赤くして持ち場に向かう。

 

「うむ、簪に報告せねば」

 

様子を見ていたラウラは写真をしまって、メールを送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始は持ち場に向かったのだが、シフトのミスによって自由時間となってしまい、後頭部をぽんぽんと叩きながら当てもなく廊下を歩いていた。

 

「シャルロットとは、昼から回る約束だからなぁ・・・・なにしてよっかなぁ?」

 

時間を確認しながら歩いていた始は目の前にやってきた人に気づいて、右へ避けようとする。

 

すると女性は左、つまり、始を阻むように動く。

 

「動かないで」

 

左の方へずれようとした始のわき腹に固いものがぶつかる。

 

それがなんなのか始は確認せずに小さく呟いた。

 

「いいのかねぇ?そんなもの使ったら学園が黙っていないと思うけれど?」

 

「大人しくついてきてもらえるかしら?そうしたら使わずに済むわ」

 

「お願いにしては一方的だよなぁ?どうせだから裏庭にいきませんかねえ、そこだと人が来ない」

 

「いい提案ね。さ、いきましょ」

 

女性は背中に回りこむとそのまま始を先頭に裏庭へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

その様子を見ていたものは慌てて走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏庭、薄暗く、この時期に利用する生徒は少ない。

 

それは学園祭でも同じだった。

 

「止まりなさい」

 

少し下がって女性が制止を呼びかける。

 

始は大人しく動きを止めた。

 

「そのままゆっくりと手を頭にのせて・・・・振り返りなさい」

 

女性に言われたとおりに始は頭に手をのせて振り返る。

 

そこにいたのは流れる金髪をなびかせた女性。

 

普通に笑えば美人として通るだろう。但し、彼女の瞳は怒りに染まっていた。

 

記憶を探るが始は目の前の女性に出会った覚えはない。

 

「(誰だ、こいつ?)」

 

「・・・・富樫始、私は貴方を赦さない」

 

「そうかい、それで?その銃でアンタは俺を殺すのか?」

 

「・・・・」

 

女性は銃口を向けたまま始を睨む。

 

「今すぐに銀の福音を渡しなさい」

 

「・・・・アンタ、アメリカかイスラエルのスパイかなんかか?」

 

「貴方に発言の権利はないわ。さぁ、あの子を返しなさい」

 

鋭い瞳を向ける女性を見ながら始は考える。

 

銀の福音はかつてアメリカとイスラエルの間で開発されていた軍事用IS、それを始は盗んで自分の専用機に調整した。

 

「本当なら返すべきなんだろうなぁ・・・・悪いが、それは不可能だ」

 

銃口を向けられているというのに始は臆さずに拒否の言葉を投げる。

 

「その子はおもちゃじゃないのよ!」

 

「わかっているつもりだ」

 

「貴方のような子どもが持つべきものでもない」

 

「じゃあ、国に所属している人間が持てばいいのか?」

 

「・・・・」

 

「アンタがどういう理由で銀の福音を取り返そうとするのかはわからない・・・・悪いが、今の俺にコイツはどうしても必要な存在だ。それを奪うっていうんなら、アンタを殺してでも阻止する」

 

銃を向けて優位に立っているはずなのに、彼女は動けない。

 

富樫始の放つ殺気に近い闘気に圧されていた。

 

「貴方は・・・・」

 

女性は震える声で尋ねる。

 

「その子を使って、何をするつもりなの・・・・」

 

「・・・・始は何もかも滅茶苦茶にするつもりで使うつもりだった。目の前にみえる何もかもが許せなくて、全てを破壊して世界を滅ぼすまで止まらないつもりでいた・・・・でも」

 

始の脳裏に蘇るのは一夏や他のライダー、箒、そして―、

 

「今は、大切な人のためだけに力を使いたい・・・・俺が俺でいられるようにしてくれた大切なヤツを守る為の力として、コイツを使わせてもらう・・・・だから」

 

「・・・・」

 

女性は銃を下ろす。

 

「貴方の言葉を全部信じたわけじゃない・・・・」

 

銃を懐にしまって、始を睨む。

 

「学園祭の間のあなたの行動を見て判断させてもらう・・・・その上で危険だと判断したら殺してでもその子を返してもらうから」

 

「・・・・お好きにどうぞ。ただで殺されるつもりはねぇから」

 

しばらくにらみ合ってから始は裏庭からでていく。

 

女性は無言で彼の背中を睨むようにしてから裏庭をでていこうとする。

 

「学園内で銃刀法違反というのは勘弁してもらいたいな」

 

出ようとしたところで女性は動きを止めた。

 

「ヤツの肩を持つというのかしら?」

 

「私は中立にいるつもりだ・・・・どういう目的があるのかはわからないがアイツはここの生徒だ。あまりに過激な事をするというのなら私が動く事になるかも知れんぞ」

 

「・・・・それは警告ですか、ブリュンヒルデ?」

 

「どうだろうな・・・・だが、ナターシャ・ファイルス」

 

千冬は鋭い視線を女性、ナターシャへと向ける。

 

「アイツは変わった。銀の福音を盗んだ時は違うという事だけは頭に叩き込んでおいてもらえると嬉しいがな」

 

「・・・・ヤツがあの子を盗んだ事には変わりありません。罪は消えません・・・・なにがあろうとも」

 

「そうだな」

 

――だが、と千冬は呟く。

 

「一番、アイツが理解しているはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン」

 

「誰がダーリンだ。この野郎」

 

裏庭から出て教室に戻る途中で更識楯無が始の腕に抱きついた。

 

「・・・・盗み聞きはいい趣味とはいえないな」

 

「忘れたのかしら?守る為に私はいるのよ」

 

四割だけれど、と楯無は呟いた。

 

残りの六割は?と始が尋ねると彼女は腕に強くしがみつく。

 

「貴方との愛を育んで結婚する為よ」

 

「一生来ない未来に人生費やす前に他の男を探せ、くっつくな」

 

「アン、酷い~・・・・あの人、どうするつもり?」

 

「別にどうも、昔なら即・殺とか考えていたんだろうが、今はどうでもいい。無視する」

 

「そう」

 

楯無は扇子で口元を隠そうとするが、始が止める。

 

「あら」

 

「俺の前で本音を隠す素振りをするな」

 

「・・・・いつから気づいていたの」

 

「さぁな」

 

ぽかんとした表情を浮かべると、彼女は瞳を潤ませる。

 

今まで楯無―刀奈は更識の当主となるため、暗部の一員として感情を押し殺し、本音を押し殺していた。

 

誰もが見抜けない。

 

誰もが自分の本当の気持ちに気づけない。

 

暗部として絶対的に優秀な刀奈。

 

そんな彼女のウソを目の前にいる男は見抜いた。

 

富樫始がウソを見抜いてくれた。

 

乙女として、彼女の心が揺れる。

 

ますます――。

 

「だぁいちゅき!」

 

「うぜぇ!」

 

飛びかかろうとした楯無を避けて始は教室に逃げる。

 

「普通に入って来られないのか?貴様は」

 

振り下ろされる出席簿を始はぎりぎりのところで避けた。

 

「いきなりなんですか、織斑先生」

 

「織斑が女性に囲まれて困っている。すぐにシフトに入って負担を減らせ」

 

「はい・・・・てか、それって、ブラコンって」

 

ヒュン!

 

顔のすぐ横に出席簿が突き刺さる。

 

「次はないぞ」

 

「イエス・マム」

 

敬礼して始はすぐに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後尾はあちらとなっています!道を塞がないように一列に並んでくださーい」

 

始と交代して一夏は入口で列の整理をしていた。

 

「次の方・・・・って」

 

「あら、結構繁盛してんのね」

 

次の客は凰鈴音だった。

 

ただし、IS学園の制服ではなく背中が大きく開いたチャイナドレスを纏っていて、一夏はどきり、とする。

 

「どうしたのよ?」

 

「い、いや・・・・そのチャイナドレス、似合ってるなって」

 

「なっ!?」

 

一夏の突然の告白に鈴音は驚きの声を漏らす。

 

「な、な、ななななな、何を言い出すのよ!」

 

「いや、悪い・・・・でも、似合ってるのは本当だぞ」

 

「・・・・そ、そう!とにかく・・・・席に案内してよ」

 

「かしこまりました。お嬢様」

 

「お、お嬢様!?」

 

「店内では執事として接しさせてもらいます。お嬢様、ではこちらへ」

 

開いている席へ鈴音を促す。

 

彼女が座ると、クラスメイトの一人が水の入ったグラスを置いて立ち去る。

 

一夏は座ったのを確認してメニューを差し出す。

 

少し間をおいてから尋ねる。

 

「お嬢様、注文は決まりましたでしょうか?」

 

「・・・・ねぇ」

 

鈴音はメニューを見てから尋ねる。

 

「この執事のごほうび、ってなにかしら?」

 

「お嬢様・・・・それよりも当店自慢のチーズケーキがありますけれど」

 

「・・・・アンタ、今、これからめをそらそうとしたわね?」

 

「そんなことありませんよ、お嬢様」

 

半眼で睨んでくる鈴音に一夏は努めて冷静に接する。

 

背中はどばどばと冷や汗が流れていた。

 

「ふぅん、じゃ、執事のごほうび一つ」

 

「・・・・お願いだからやめね?」

 

「却下!」

 

鈴音の叫びに一夏は涙を零して。

 

「執事のごほうび一つ!」

 

やけくそに叫んだ。

 

「どうぞ、楽しんでください」

 

にやりと微笑んで富樫始がグラスにチョコレートが塗られたスティックの菓子を机に置いた。

 

「・・・・ねぇ、これって一体?」

 

首をかしげて鈴音が隣を見ると、直立していたはずの一夏は座っていた。

 

「なんで、座っているの?」

 

「執事のごほうび・・・・っていうのは、お嬢様にお菓子を食べさせる・・・・」

 

「えぇぇ!?」

 

鈴音は驚きのあまり叫んだ。

 

お嬢様にお菓子を執事が食べさせる。

 

お嬢様(自分)にお菓子を執事(一夏)が食べさせる。

 

(自分)に(一夏)が!

 

顔を真っ赤にしてあうあうと鈴音は震えた。

 

「嫌って言うなら別に・・・・」

 

「そんなわけないでしょ!むしろ、上等よ!」

 

「喧嘩とかじゃないぞ?」

 

「わかってるわよ。さ、た、た、食べさせて」

 

頬を真っ赤に染めてこちらをみる彼女に一夏はどきどきしながらスティック菓子を手にとって、鈴音に差し出す。

 

「あ、あーん」

 

鈴音は小さな口を開けてスティック菓子を含む。

 

彼女が終わるのを待っていると、あろうことか食べていない方の先端を一夏に向ける。

 

「へ?」

 

「ふぁんふぁもたふぇるの!」

 

「は!?いや、そういうサービスはやってないし!?」

 

「ん!」

 

鈴音はメニューの執事のごほうびの下の注意書きを指差す。

 

『執事のごほうびはお嬢様が希望するシチュエーションができます!度胸があるならこいやぁ!』と書かれていた。

 

「なぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「おふょうひゃまのめいふぇい!あんふぁもたふぇる!」

 

「・・・・わかりました」

 

終わらせればいい、そう考えた一夏は端を小さくかじる。

 

すると、鈴音はぽりぽりと凄い勢いでスティック菓子を食べていく。

 

「(あれ、これ・・・・やばくね!?)」

 

一夏が気づいた時には鈴音と頬が触れ合いそうになるほどの距離だ。

 

 

このままいけば口と口が触れう会うかもしれない。

 

――折ってしまおう!

 

そう考えた一夏はスティックを折ろうと顔を動かそうとするがそれよりも早く、鈴音の手が彼を捕まえる。

 

「にふぁさないわふょ!」

 

「!?」

 

ヤバイ!?一夏は周りを見るが、セシリアは別の接客でいない。

 

ラウラは外で後列の整理をしている為に不在。

 

箒は気づいて助けに行こうとしているが始に羽交い絞めにされていた。

 

「(は、始ぇぇぇ!!)」

 

不敵に笑っている親友を睨むが状況は変わらない。

 

「い、いふゅ!」

 

鈴音は少し悩みながらも最後の部分を咥えようとする。

 

あぁ、終わった。と思った瞬間、バキン!と音を立ててスティック菓子が折れた。

 

「あ~~~~~!」

 

「(た、助かった・・・・)」

 

鈴音はショックを受けるが一夏は助かったと折れたことに感謝する。

 

「ま、いいわ。今度は実力でやってやる」

 

「え?」

 

「なんでもない!さ、私はクラスに戻るわ」

 

鈴音はお金を机において教室を出て行く。

 

一夏は鈴音の背中を見送ってから。

 

「始ぇぇ!!」

 

「ふん、甘いわ!」

 

親友に同じ目にあわせてやるべく彼を捕まえに走る。

 

だが、次の客出現により一夏は負のスパイラルに巻き込まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、ようやく休憩時間」

 

「・・・・男子目当てに来る女の力をなめていた」

 

昼を過ぎて少しくらいの時間になった頃、シフトによって織斑一夏と富樫始の二人は休憩時間となる。

 

体力に自信のある二人だが、何人もの女性、しかもテンションが高いのと接したためにいつも以上に疲労感があった。

 

「くそっ、織斑が余計なちょっかいをかけてきたからしんどいぜ」

 

「俺のせいにしてんじゃ・・・・ねぇよ・・・・そもそも、お前がぁ!」

 

「織斑君、富樫君」

 

二人が今にも喧嘩をはじめそうなときにクラスメイトの相川(メイド服)がやってくる。

 

「相川さん?」

 

「二人には三十分の休憩っていっていたけれど・・・・二時間の休憩でいいよ」

 

「どうして、そんな長く?」

 

「・・・・食材とかが尽きそうになっていて、予備も少なくなってきたから・・・・」

 

「目当ての男子を抜いて冷却しようという事か」

 

「うん、だから自由にしてて」

 

「わかった」

 

「ま、のんびりしますか」

 

「ん、一夏と始も休憩なのか」

 

相川さんと入れ替わるようにして箒(メイド服)がやってくる。

 

「箒もか?」

 

「あぁ・・・・そうだ、三人でどこかに回らないか」

 

箒の提案に二人は少し間を置いてから。

 

「いいぜ」

 

「そーだな。久しぶりに三人で遊ぶか」

 

あっさりと提案が通った事に箒は驚きながらも三人で回れることに喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルロットは三人がでかけて三十分ばかりして、休憩時間となった。

 

「はぁ・・・・タイミング悪いなぁ・・・・」

 

始は今頃、一夏や箒と回っているんだろう。

 

「(昔からの幼馴染なんだよね・・・・)」

 

彼女にはそういう間柄の友達はいない。

 

田舎の小さな街で母さんと二人っきり。

 

少し苦労もあったけれど、幸せの時間といえる。

 

「(ここにきてから友達はできた・・・・)」

 

ラウラや簪の事を思い出しながらシャルロットは廊下を歩く。

 

母さんが死んでから彼女にとって地獄といえる日々、父親に引き取られたけれど、愛人の子だという理由から本妻に泥棒猫と罵られ、苛められる毎日。

 

助けてくれる人は誰もいない。

 

実の父親も見て見ぬフリ。

 

ISの適正があるからと非公式に父親の会社のテストパイロットになるための訓練をやらされた。

 

「どうして・・・・こんなこと」

 

もう過去の事になったはずなのに、とシャルロットは苦悩する。

 

決別したことを考えていると誰かにぶつかった。

 

「あ、ごめんなさい」

 

謝罪してシャルロットが横切ろうとした時――。

 

「シャルロット・デュノアだな?」

 

ぶつかった相手が呟いた言葉に彼女が顔を上げようとして体に衝撃が走った。

 

急激に力が抜ける。

 

「あ・・・・」

 

目の前の相手が何者なのか確認しようとするが視界が暗転する。

 

シャルロットの意識は闇の中に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、あれは予想外だった」

 

「そうだな、まさか定規をあんな風に使うとは」

 

「考えるヤツは考えるんだろうな・・・・おそれいったわ」

 

三人は上級生が行っていた劇の鑑賞を終えて教室から出て行く。

 

感想を言いながら廊下を歩いていた。

 

「こうやって・・・・三人でまた歩けるとは思えなかったな」

 

「「・・・・」」

 

箒の言葉に二人は沈黙で返す。

 

「私の姉さんがISを生み出したことで」

 

「そこまでだ」

 

ストップを始がかける。

 

「もう過ぎ去った事を考えるのはやめにしよーぜ。俺らは今ここにいる・・・・現実を満喫すべきだと思うぜ」

 

「始の言うとおりだ。色々あったけれど、今は一緒にいられるんだ。箒、楽しもうぜ!」

 

「・・・・そうだな」

 

小さく笑う。

 

笑ってから箒は一夏と始の二人を見る。

 

「すまない、辛気臭い話をしてしまって・・・・今までの空白時間を埋めるつもりで楽しもう」

 

二人とも笑みを浮かべて廊下を歩く。

 

「ん・・・・俺の端末か?」

 

一夏はそういって端末を取り出す。

 

表示されたアドレスはシャルロットのだった。

 

何で、シャルロット?と一夏は首をかしげながら内容を見て、目を見開く。

 

『シャルロット・デュノアは預かった。返してほしければISのデータをもって、今から指定する場所まで来い。誰かに知らせればこの女の命はない』

 

命はない。

 

一夏は固まる。

 

次に映し出されたのは縄で縛られたシャルロットの姿。

 

どこかの工場なのか柱に拘束されている姿を見ている限り、捏造などは考えられない。

 

「一夏?どうした」

 

「・・・・悪い!呼び出しかかっちまった!戻ることになった」

 

「そうか・・・・仕方ないな。遅れないようにな」

 

「すまん!」

 

一夏は両手を叩いて謝罪して急いで離れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑一夏が指定された場所に向かうと一斉に殺気が飛んでくる。

 

アンデッドが放つ獣のような殺気とは違う。

 

人間が放つ純粋な殺意。

 

「・・・・来たぞ、姿くらいみせたらどうだ?」

 

「オクニススメ」

 

聞こえてきたのは合成された声。

 

相手はボイスチェンジャーか何かを使っているのだろう。

 

警戒しながら一夏は奥へ進む。

 

工場は何年も使われていないはずなのに室内は暗闇で支配されている。

 

響き渡るのは一夏の靴音だけ。

 

「トマレ」

 

聞こえてきた声に一夏が動きを止める。

 

姿が見えないが殺意だけは絶えず一夏に向けられていた。

 

「(一体、なんなんだこいつら?)おい!シャルロットさんは無事なんだろうな!」

 

「ISノデータヲダセ」

 

「彼女のの安否ぐらい確認させてもいいんじゃないのか?それともウソなんじゃないのか」

 

「・・・・イイダロウ」

 

スポットライトが灯ると同時に一夏の目の前、正確言うと闇の奥が照らされ拘束されているシャルロットがいた。

 

「シャルロットさん!」

 

磔にされている彼女は意識を失っているのか一夏の呼び声に反応しない。

 

「ウゴクナ」

 

駆け寄ろうとした一夏に声の主は呼び止めた。

 

「サァ、ブジナスガタハミセテヤッタダロウ?スグニISノデータトワタセ」

 

「ふざけんな・・・・何が無事な姿だ!」

 

暗闇に向かって激昂する。

 

拘束されているシャルロットは蹴られたりしたのかメイド服は靴跡などでボロボロになっており、口元がうっすらと青あざになっていた。

 

「サモナケレバソコニイルオンナハサラニミジメナメニアウダロウナ」

 

「くっ・・・・」

 

一夏はポケットからUSBメモリを取り出して床に置く。

 

「ハナレロ」

 

声の主にいわれて一夏が離れようとした直後、足元が大爆発を起こす。

 

「ちっ!」

 

爆発が起こる瞬間、白式を展開して攻撃から身を守る。

 

「イマダ!」

 

声の主が叫んだ瞬間、一夏の体に纏っていた白式が解除された。

 

「なっ!?」

 

いきなり白式が解除された事に驚きながらも地面に着地する。

 

「どうした!白式!」

 

腕のブレスレットを触りながら一夏は叫ぶ。

 

「リムーパーヲツカワセテモラッタ」

 

「なにをいって・・・・」

 

一夏は暗闇の中で輝くものを見つける。

 

「キサマニハオトナシクキテモラオウカ・・・・」

 

暗闇から二機のISがライフルの銃口を一夏に向けながら姿を見せた。

 

白式を展開しようにも反応してくれない。

 

ブレイドに変身するか、と考えた所でシャルロットの体に突きつけられている無数の赤外線に気づく。

 

――変な動きを見せれば殺す。

 

遠まわしの脅しに気づいてしまった一夏は成す術がなくなる。

 

ゆっくりと近づいてくる二機のISのうちの一機がスタンガンを一夏の首筋に近づけた。

 

来る衝撃に身構えようとした一夏の頭上で大きな爆発が起こる。

 

天井が崩れ落ちて、ISと一緒に蒼い影が舞い降りた。

 

「ナンダ!?」

 

ボイスチェンジャーを使っていた声の主は驚きの声を漏らす中で一夏はその姿を見て息を呑む。

 

ISを大破させて現れたのは更識楯無だった。

 

 

 

 

 

 

 

「た、楯無さん!?」

 

「あら、一夏君。こんなところにいたの」

 

楯無はにこりと微笑む。

 

だが、目は。

 

「撃て!」

 

ISのパイロット二人は指示を飛ばしながらライフルを発砲する。

 

四方八方から飛んでくる弾丸を楯無さんは全て避けた。

 

蒼流旋を構えて、彼女は一撃で二機のISを無力化させる。

 

あまりの速度にパイロットの二人は何が起こったのかわからないまま意識を失う。

 

 

「もう、さらわれた女の子を助ける為に動くのは素晴らしいけれど、そのためにISを奪われたらダメよ~」

 

「奪われた?白式はここに」

 

「コアよ。コア」

 

戸惑う一夏に楯無は話す。

 

ISのコアを奪う、剥離剤という存在によって白式のコアを奪われてしまったのだ。

 

「どうすればいいんですか!」

 

「奪った主から白式のコアを取り戻せばいい・・・・まぁ、この中を生身で突き抜けるのは無理だろうから・・・・そこでみていなさい」

 

――ベテランの力を、ね。

 

言うが否や楯無は地面を蹴り、奥で浮遊しているISのコアを取りに向かう。

 

姿を見せない狙撃主たちは楯無さんに脅威を感じながらも奪取したコアを取り戻させないように銃を構えようとした。

 

「おっそーい」

 

だが、それは失敗に終わる。

 

楯無が指を鳴らすだけで、周囲に隠れていた狙撃主の近くで爆発が起こり、全員があっという間に無力化された。

 

楯無がコアを一夏の下へ届けようとした所で以前、アリーナを襲撃したISが現れ、彼女に襲い掛かる。

 

「楯無さん!!」

 

一夏は叫ぶが彼女の姿は見えない。

 

正体不明のISは白式のコアに向かって手を伸ばす。

 

「やめろ!それに触るな!」

 

叫ぶがISは全く反応せずコアに触れようとする。

 

「来い!白式ィ!」

 

自然と、一夏は白式の名を叫んだ。

 

ISがコアを掴む寸前、強い輝きをコアが放ったと同時に一夏の体は白式を纏っている。

 

「うぉおおおおおお!」

 

瞬時加速を発動させて、ISの間合いに入り込み、雪片弐型の能力を使ってISに振るう。

 

無人機のISは腕を雪片弐型で斬りおとされた。

 

「あらあら、少し目を離した間に倒すなんて、お姉さんびっくり!」

 

心臓部を楯無は蒼流旋で破壊する。

 

攻撃を受けたISは火花を散らして地面に崩れ落ちた。

 

「さて、一夏君は帰りなさい、後は生徒会で処理するから」

 

敵を無力化させた一夏に楯無は言う。

 

「シャルロット、さんは?」

 

「何かされていないのか検査をしたら学園に戻すわ。とにかく、ダーリンが怪しんでコッチにくるまえに戻りなさいな」

 

「あ、はい、失礼します」

 

少し納得のいかない表情をしながらも一夏は楯無に従う。

 

彼の姿が見えなくなってから楯無は扇子で口元を隠す。

 

「ほとんどが傭兵崩れ・・・・亡国機業がやってきたのだと思っていたのに、これはどういうことかしら?・・・・彼らに興味はないという事?でも、シャルロットちゃんを誘拐してISのデータを奪おうとした・・・・リムーバーまで用意しているわけだし」

 

さっさとこいつらを片付けよう。

 

更識楯無は冷たい笑みを浮かべていた。

 

折角、彼と一緒に色々と企んでいたのにそれが台無しになった。

 

邪魔をされたことに怒っている彼女はこれから行う尋問を考えて微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぉ!」

 

ソイツは拳を壁に叩きつける。

 

計画は完璧だった。

 

裏切り者を誘拐して織斑一夏をおびき寄せて、彼の冷静さを奪い、白式のコアを奪う所、

 

そこまでは何もかも計画通りだった。

 

あの方から頂いた計画書どおりに進んだ。

 

――だというのに。

 

 

「あってはならない・・・・」

 

ぶつぶつ、と呪詛を吐くように同じ言葉を繰り返す。

 

少しして、もう一枚の書類を見る。

 

「明日だ・・・・」

 

にやり、と口元をゆがめた。

 

 

どうやら、悪意ある企みは終わっていないようだった。

 

 




今回の話、学園祭ですが、いろいろと暗雲立ち込めていますが、その間に一夏ヒロインたちのお話を書きました。

なぜかというと、ラウラの出番が多すぎるなと個人的に思ったからです。

この話を投稿する前に保存していたデータを書き直して思ったことはラウラをヒロイン押ししすぎているということです。エレファントアンデッドのところで、あんなことやったから書きやすいというのもありますけれど、
なので、短いですが、学園祭ではラウラ以外のヒロインたちとのふれあいを書きます。

ラウラ?

ちゃんとやりますよ。ただし、変なところで。
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