「ぐはっ!」
体に重たい一撃を受けてギャレンは後ろの岩に倒れこんだ。
痛みを無視してギャレンラウザーから光弾を撃つ。
ギラファアンデッドは体に光弾を受けて数歩仰け反った。
ふらふらと起き上がり腕のラウズアブゾーバーに伸ばす。
「させるか!」
だが、目的に気づいたギラファアンデッドが投げた剣がギャレンの右肩のアーマーを貫いた。
「がぁぁっ!?」
肉体に貫通した刃にギャレンは苦悶の声をあげて膝をつく。
「このまま死ぬといい・・・・・」
『タックル』
「っ!」
ギラファアンデッドが音声の方へ視線を向けると、銀色の光を纏ったブルースペイダーが体当たりした。
ブルースペイダーを避けられずギラファアンデッドは大きく飛んで地面に叩きつけられる。
「弾!?大丈夫か」
「な、なんとかなぁ・・・・」
肩を抑えているギャレンにブレイドは手を差し伸べる。
その手を掴んで立ち上がると二人はギラファアンデッドを睨む。
「二人になったとしても変わらない。お前たちはここで消えてもらう」
「悪いけれど、最初から全力だ!」
ブレイラウザーを地面に突き刺す。
『アブゾーブ・クィーン』
『エボリューション・キング』
ラウズアブゾーバーに二枚のプライムベスタを読み取らせて、ブレイドはキングフォームへと姿を変えた。
ブレイドはキングラウザーとブレイラウザーの二つを構える。
「ふん、同じ土台に立つとでもいうわけか?」
ギラファアンデッドはあざ笑う。
対してブレイドは無言で地面を蹴る。
両者がぶつかりあう。
お互いの速度は達人の領域だった。
ライダーになるための特訓で目を鍛えていたギャレンでさえ、追いかけるのがやっとな速度で二人はぶつかりあう。
あまりの速さにギャレンはサポートする事ができない。
「(これが・・・・十三体のアンデッドと、融合するってことなのか!?)」
女は顔を歪めて画面を睨む。
目の前に置いてあるパソコンはとある動画サイトを表示していた。
そこでは、仮面ライダーがISを一方的に壊すという動画が流された最初の場所、だが、目の前にある動画サイトには謝罪!と書かれた題名の動画が再生されている。
無名の映画会社が力を注いだ一世一代プロジェクトの動画が流出してしまったという謝罪で、これはフィクションであり、実在の事とはなんら関係のないという謝罪が流れている。
――ありえない!
女性はぎしぎしと歯軋りする。
あれはフィクションではない、と女性は目の前の画面に向かって叫ぶ。
本当にあったことだ!と叫び、書き込もうとする。
だが、既に掲示板は燃え上がっていた。
<<<んだよ、映画の宣伝だったのかよ!
<<<てかさ、こんだけ力ある映画なら見る価値あるね
<<<混沌だな
<<<結末どうなるかで賛否両論だよなぁ・・・・てか、タイトルしりてぇ!
<<<流出するって、セキュリティ甘すぎだろ!?今まで騒いでいた俺ら、なんだったわけ?
<<<お祭りは唐突に始まって、盛大に終わる。
<<<終いってことかい?
<<<じゃね?ニュースでもこれ、話題になってんよ
<<<所詮、都市伝説は都市伝説か、仮面ライダーは実在しないってことざんすね。
<<<だね・・・・どうでもいいけれど、三下かよ!?
一部だけ読む限り、これはよくない。
女性はあらぶる怒りをおさえながら新たな動画と書き込みをはじめようとする。
「なっ!?」
しかし、唐突にパソコンの画面にErrorが表示される。
「このアカウントは使えませんって、なんでよ!?」
401に女性はパソコンに画面をたたきつけそうになった。
「それは、貴方のアカウントを止めたからよ」
「誰!?」
振り返ると、ドアが開いて、女性が立っていた。
「アンタ、どうやって!?ここは」
「・・・・そこそこ優秀のクラッカーらしいけれど、残念、上には上がいるのよ。貴方のアカウントを強制的に使用不可にしたわ」
女性、広瀬栞は不敵に笑う。
不敵に笑う顔に女性は不快な気分になる。
「なんで」
「?」
「なんで、私の邪魔をするのよ!?私がやっている事は女性のために」
全てはこの世界に存在する女性のため。
仮面ライダーというわけのわからない存在に脅かされるなどあってはならない。
だから、彼女は行動に移した。
仮面ライダーを抹消するべく、様々な事を書き込んだ。
ネットというのは素晴らしい。
電子の海をとめるような強い法律は日本にはない。
そのために悲劇も起こったりするが、今回の場合は役に立った。
「女性のため?自分のためでしょう」
だが、広瀬栞はそんな女性の考えを一蹴する。
「貴方、女尊男卑になってからいい思いをしているそうね、それを奪われるのが嫌なだけ、今の自分の生活が奪われる、自分勝手な思いで動いているに過ぎないわ」
「違うわ!」
「いいえ、違わない」
「ダマレェ!」
激昂した女性が広瀬に襲いかかろうとしたが様子を見ていた千冬が割り込んで押さえ込む。
「あ、貴方は、ブリュンヒルデ!?」
「その名前で私を呼ばないで貰おう」
女性は驚き、千冬を見る。
「私は、あ、貴方の、ために!」
「ふざけないでもらいたい。私はこんなことを望んでなどいない」
「そんな!!仮面ライダーのために、地位が脅かされるかも」
「――その程度で脅かされる地位などに興味も、未練もない・・・・それに、私はただの教師だ。それ以上でも以下でもない!!」
「・・・・・・そんな!」
千冬の言葉に女性はその場に座り込む。
だが、血走った目が転がっていたカッターナイフに気づく。
「お前がぁぁぁぁぁ!」
ナイフを手にとって広瀬に襲い掛かろうとする。
千冬が反応に遅れて、間に合わない。
「ふざけんなぁ!」
だが、それよりも早く広瀬が女性の顔に拳を叩き込む。
拳を叩き込まれて女性はくぐもった声をあげて機材に倒れた。
その拍子に機材がいくつか壊れる。
「・・・・甘えてんじゃないの!」
「(凄い拳だ・・・・指導してもらいたい)」
手を叩いて呆れる広瀬に千冬は尊敬の念をおくった。
キングフォームとなったブレイドはひたすらに二本の剣を振るう。
同じようにギラファアンデッドも二本の剣を操っている。
拮抗していた二人だが、段々とギラファアンデッドが押されていることに気づく。
「(バカな!?俺が押されているだと!?)」
拮抗しているはずなのに、ギラファアンデッドは歯軋りする。
「そこだ!」
キングラウザーの一撃がギラファアンデッドの刃を弾き飛ばす。
飛んだ刃に意識を向けてしまった隙を突いてブレイドは
『スペード2』
『スペード3』
『スペード4』
『スペード5』
『スペード6』
『ストレートフラッシュ』
「ウェェェイ!」
キングラウザーとブレイラウザーの二刀が振り下ろされる。
咄嗟に持っている刃を振り下ろして攻撃を止める。衝撃が襲いかかり持っていた剣が手から離れるが、拳をブレイドに放つ。
「がっ!?」
攻撃を避けられず火花を散らしてブレイドは後ろに倒れる。
地面に落ちた剣を拾って切りかかろうとしたギラファアンデッドに上空からワイルドカリスがワイルドスラッシャーを振り下ろす。
体に大きなダメージを受け、ギラファアンデッドは膝を地面につけた。
「・・・・カリスゥ!」
ワイルドカリスは一瞥して離れる。
「どういうつもりだ!」
「・・・・簡単なことだ、お前を封印するのは俺じゃない・・・・」
ギラファアンデッドはワイルドカリスの視線の方を見る。
そこには更識簪がいた。
「(怖い・・・・)」
更識簪はギラファアンデッドをみて、体が少し震えることに気づいた。
満身創痍の姿を見せているが、それでも彼女にとって恐怖の対象であることにかわりはない。
「(でも)」
恐怖の対象であることに変わりはないが、それでもと簪は――。
「(逃げたくない)」
レンゲルクロスを装着して、簪は強い意思を瞳に浮かべていた。
「(このままでいたくない、だから)」
目の前の光を潜り抜ける。
「(私は、もっと、今よりも強くなる!!)」
レンゲルに変身して、片腕にラウズアブゾーバーを装着して、二枚のプライムベスタを取り出す。
「私は、強くなる!」
『アブゾーブ・クィーン』
『フュージョン・ジャック』
クラブスートのJを模したハイグレイトシンボルが胸部のアーマーに現れ、像を模した黄金の腕を纏い。レンゲルラウザーにディアマンテエッジが付与される。
レンゲルはジャックフォームとなり、ギラファアンデッドを見据えた。
「ふざけるな・・・・コイツが封印する?ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
激昂したギラファアンデッドは刃を構えて、レンゲルへと襲い掛かる。
振り下ろされた刃をレンゲルは肩のアーマーで受け止めた。
火花が散るがディアマンテゴールドで強化されているアーマーにダメージはない。
「負けない!」
レンゲルは叫ぶと同時にギラファアンデッドに拳を繰り出す。
エレファントアンデッドのパワーが付与されている力を受けてギラファアンデッドは後ろに仰け反る。
「なっ!?」
「負けたくない!」
さらに強力な一撃を受けて、ギラファアンデッドの剣が手から離れた。
ディアマンテエッジでさらに攻撃を加える。
ギャレン、ブレイド、カリスとの連戦が体に堪えていた。
ふらふらになっているギラファアンデッドをみて、レンゲルはプライムベスタを三枚取り出す。
その隙をみて、ギラファアンデッドがレンゲルに飛びかかろうとした。
だが、光弾がそれを遮る。
レンゲルが視線を向けると、片手でギャレンラウザーを構えたギャレンがいた。
『行け!』
ギャレンが――
『行け!』
ブレイドが――
『行け!』
カリスが――。
弾が、一夏が、始が、簪の背中を押すように叫んでいるような気がした。
「(・・・・私は!)」
『ラッシュ』
『ブリザード』
『ポイズン』
『ブリザードベノム』
冷気と毒の力を纏った技が放たれた。
ギラファアンデッドはそれをよける事ができず、爆発を起こす。
攻撃を受けたギラファアンデッドは人間の姿になった。
彼の口元や体から緑色の血が流れている。
そして、腰部のバックルが音を立てて開いた。
「・・・・負けた・・・・ははっ」
「何がおかしい?」
男はワイルドカリスを見て、笑う。
「誰が教えるか・・・・一ついえるのは」
狂ったように、憎悪の視線をこめながら男は叫ぶ。
「お前達は滅びの道を確実に進んでいるってことさ」
ギャレンが無言でプロバーブランクを投げる。
「覚悟するんだな!いずれ・・・・お前達は後悔する!自分達のしてきた事をなぁ!」
吸い込まれる刹那、ギラファアンデッドはのろいのような言葉を撒き散らしてプライムベスタに消えた。
ギャレンは戻ってきたプライムベスタをしまって、変身をとく。
「・・・・疲れた、帰ろうぜ」
「そうだな」
「ねむりてぇわ」
「あの!」
変身を解除して、簪は三人を呼び止める。
「その・・・・ありがとう」
色々といいたいことがあったが、混乱する頭の中で簪は感謝の言葉を述べる事にした。
「あーぁ、クワガタも捕まったのかぁ」
篠ノ之束は戦いが終わったのを眺めて感慨もなくつぶやいた。
その目はつまらないという感情があった。
今回の騒動、実を言うと束は少し暗躍していたのだ。
ネットの掲示板をあおるような発言をいくつか行い、匿名の情報を警察に送ってBOARDの連中を捕まえようと考えた。
「あいつら、そろそろ邪魔になってきたんだよなぁ」
束はBOARDの連中、特に剣崎一真が嫌いだった。
見たときから、剣崎一真に対して、憎悪に近い嫌悪を抱き続けている。
あの顔が気に入らない。
笑顔がむかつく。
言葉を聞いているだけで何かを壊したくなる。
剣崎一真の存在そのものが束は嫌いだった。
「まっ、順調に進んでいるからそこまで気にしなくていいかなぁ・・・・くーちゃん、あれの調子はどう?」
「問題ありません。実験フェイズもそろそろ最終段階です」
「そう、楽しみだなぁ」
束は笑って、目の前の画面を見てほくそ笑む。
「こっちも順調だからねぇ」
『こもり唄稼動まで、80パーセント』
今回で第二章も終わり。
次回から最終章へむけて話が進んでいくぜ!
感想で質問をしてくる人がおられますけれど、後に影響する、ネタバレするものは堪えられませんのでご容赦ください。