仮面ライダー剣―Missing:IS   作:断空我

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本当は昨日投稿するつもりでした。長引いた。

前回のウソ予告信じた人はどのくらい、いるのだろうか?

まぁいいや、

今回より最終章、三部作スタートします。

では最終章 Ⅰ部 静止する日スタートです。


第四十一話

それはいきなり起きた。

 

織斑一夏は目の前の光景に不覚にも声を出すことが出来ない。

 

授業が終わり、放課後、一夏達はISを纏って自主練に励んでいた。

 

一夏、簪、ラウラのトリオと箒、セシリア、鈴音のトリオでの三対三での戦い。

 

開始の合図をラウラがあげようとした瞬間、セシリアと鈴音の少し後ろにいた箒が雨月と空裂で二人を攻撃した。

 

咄嗟の事に二人は反応する事ができず、対峙していた一夏も呆然としてしまう。

 

「な、何をしているんだ!箒!?」

 

箒が二人を傷つけた、ということに一夏は驚き、震えながら叫ぶ。

 

「危ない!」

 

だが、箒は展開装甲を発動させて、一夏達に襲い掛かってくる。

 

「なんで、箒!?」

 

二本の刃を繰り出して襲い掛かってくる箒から離れながら叫ぶ。

 

だが、返事はない。

 

ラウラは咄嗟にAICを発動させて箒の動きを封じ込めようとする。

 

「なに!?AICが発動しない、だと」

 

愕然とした表情で動揺しているラウラに箒は瞬時加速を使い、彼女の間合いに入り込み、空裂を振るう。

 

プラズマ手刀で刃を受け止めようとするが発動せず、攻撃を受けたラウラは地面に落下した。

 

「ラウラ!」

 

簪は纏っている打鉄弐式の夢現を振るって箒を止めに入る。

 

薙刀から大きく離れた箒は両肩の展開装甲をクロスボウ状に変形させて出力可変型ブラスターライフルに変えて、アリーナのシールドを破壊。箒はそこから外へと逃げていく。

 

「箒!待て!」

 

追いかけようとした一夏の視界が急に暗転した。

 

 

 

 

――危険。

 

――追いかけたらダメ。

 

――おそろしいことが起こる。

 

――世界が、終わる!

 

 

 

 

 

「どういう・・・・」

 

――ことだ、と呟いて一夏は地面に落下した。

 

 

 

「なんだよ・・・・これ!」

 

五反田弾は目の前の光景に驚きを隠せなかった。

 

授業が終わり、帰り道を歩いていた弾は悲鳴が気になって走る。

 

嫌な予感があったからだろう。

 

角を曲がって、大通りにでた弾は息を呑む。

 

そこでは惨劇が起こっていた。

 

街を走っていた車がいくつも横転して黒い煙を噴き出し、怪我人の姿が見える。

 

怪我人に白い異形が襲い掛かっていた。

 

「変身!」

 

『ターン・アップ』

 

襲われている人を見た弾はギャレンに変身して、白い異形と対峙した。

 

異形に不意打ちを食らわして襲われている人を逃がしながらギャレンラウザーで異形を撃ち抜く。

 

光弾を受けた異形は地面に倒れるが、少しして起き上がる。

 

「ちっ、数が多すぎる」

 

苛立ちながらも的確に異形を撃つ。

 

撃たれた異形は火花を散らしながらも進軍を続ける。

 

「まるでアリだな・・・・仕方ない」

 

ギャレンはラウザーのオープントレイを展開してプライムベスタを読み取った。

 

『バレット』

 

『ファイア』

 

炎を纏った弾丸を異形に放つ。

 

強化された攻撃を受けた異形はドロドロに溶けて消滅する。

 

「よし、これ・・・・っ!」

 

全身を貫くような殺意を浴びたギャレンは咄嗟にラウザーを構えた。

 

爆煙の中、光弾がギャレンに直撃する。

 

「な・・・・なにが!?」

 

煙の中、ゆっくりと二人のライダーが姿を見せた。

 

全体的に同じフォルムをして、一人は槍を肩に乗せ、もう一人はボウガンを構えてゆっくりと姿を見せる。

 

「ライダー・・・・でも、どうやって!?」

 

BOARDのライダーシステムはアンデッドの力を借りている。

 

故にライダーの力を使うにはプライムベスタを要するのだ。

 

だが、変身するためのプライムベスタは四枚しか存在しない。

 

なので、他のプライムベスタでライダーに変身することなど出来ないのだ。

 

「どうなってんだ!?」

 

ギャレンは戸惑いながらも襲い掛かってくるライダーの攻撃を避ける。

 

緑色のライダーの槍をよけた所でボウガンの光弾が飛ぶ。

 

光弾を背中に受けたギャレンはくぐもった声をあげながらもギャレンラウザーで反撃するが、二対一という状況は不利だった。

 

反撃できず次々と攻撃を受けてギャレンは地面に膝をつける。

 

『マイティ』

 

『マイティ』

 

音声が響いてギャレンが顔を上げたところでエネルギーを纏った槍の一撃とボウガンの一発がギャレンのアーマーを貫いた。

 

「がぁっはぁぁぁ!」

 

小爆発を起こしてギャレンは地面に倒れる。

 

二人のライダーはゆっくりと近づくと腕に装着されているラウズアブゾーバーを開いてカテゴリーKのプライムベスタを取り出してゆっくりと煙の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

富樫始は学園の屋上でシャルロットと対峙している。

 

「呼び出して、何のようだ?」

 

放課後に話がある、と彼女に言われて、人気が少ない学園の屋上へ足を運んでいた。

 

夕焼けを見てこちらをみようとしないシャルロットに始は尋ねた。

 

「始はさ・・・・今の時間、幸せだと思う?」

 

「なんだ、いきなり」

 

「ちょっと、気になってさ。ほら、色々あったから・・・・どう思っているのかなって、私の、こととか」

 

「・・・・」

 

シャルロットは始と出会ってからいろいろなことがありすぎた。

 

めまぐるしい出来事ばっかりで充実しているとは程遠いけれど、シャルロットは生きていられるという実感が得られた。

 

「母さんがなくなってから、ずっと苦しい空間に閉じ込められて嫌な思いばっかりしていて、あー、なんでこんなことをしているんだろうなぁとか思ったりして、大げさだけれど世界を呪ったりもしたんだ」

 

「・・・・そいつは初耳だな」

 

苦しい思いをしている事を知ってはいた。だが、世界を呪うほどのものだと始は知らない。

 

「でも、そんな閉鎖的な世界を始が壊してくれた・・・・最悪な場所から引っ張り出してくれた始は私にとって白馬の・・・・ううん、黒い王子様かな」

 

「それって、悪人じゃないか」

 

「白馬のイメージとはいえないよ。始は」

 

「あー、そうかもしれんな」

 

自分が絵本にでてくるような白馬の王子というイメージからは程遠い。

 

むしろ、悪魔といわれたほうが性に合っている。

 

「でも、王子様であることは変わりないんだ・・・・それで、始は今の生活は幸せ?」

 

「そうだな・・・・ここの生活に関しては幸せといえるだろうな」

 

「・・・・そう、幸せなんだね・・・・だったら」

 

シャルロットは始に手を伸ばす。

 

「始の持っているカテゴリーKのプライムベスタを私に・・・・寄越して。そうすれば、幸せの生活を続けられるんだ」

 

「断る」

 

「・・・・ど、どうして?」

 

「簡単なことだ。こいつと交換してまで幸せを生きるつもりはねぇってことだ」

 

「なんで・・・・」

 

「俺は、コイツを誰にも見つけられないところに捨てる。もう何の陰謀にも巻き込まれないようなところにな」

 

嘗て、ライダーシステムを考案したBOARD所長の烏丸もラウズカード全てを人の手に渡らないような闇に捨てようとした。だが、それは失敗し代償として烏丸は命を落とした。

 

橘は闇に葬る為の手段を見つけられず厳重に保管するという手段をとった。

 

それでも失敗したのだ。

 

「俺の命は残り少ない。なくなればこのプライムベスタがどうなるかなんてわからない・・・・そうなる前に俺はここからいなくなり・・・・誰の手にもわたらないところにプライムベスタを葬り去る。だから、シャル」

 

始は告げた。

 

――お前の提案は受け入れられない。

 

「・・・・そっか・・・・」

 

シャルロットは手を下ろして始に背を向けた。

 

「始は・・・・そうだよね。一度決めたら何があってもやろうとするよね・・・・それは幸せでも変わらないよね・・・・仕方ないよね・・・・やりたくないんだけれど」

 

くるり、と振り返る。

 

彼女の手にはバックルとカードが握られていた。

 

「始を傷つけてでもカードを手に入れる」

 

バックルにカードを入れて、カード状のベルトが伸張し装着される。

 

「・・・・変身!」

 

『オープン・アップ』

 

オリハルコンエレメントを潜り抜けてシャルロットはグレイブへと変身する。

 

グレイブはホルダーからグレイブラウザーを抜いて切っ先を始へ向けた。

 

「・・・・やれやれ、お前も頑固な性格しているときたもんだ」

 

肩をすくめてため息を吐いた始は懐からハートスートのカテゴリーAのプライムベスタを取り出す。

 

「変身」

 

『チェンジ』

 

黒い水を弾き飛ばしてカリスに変身してカリスアローを構えた。

 

二人は同時にぶつかり合う。

 

グレイブの振るう刃をソードボウで受け流し、カリスアローの斬撃をグレイブラウザーの刃で受け流す。

 

「ねぇ・・・・考えを変えるつもりは本当にないの?」

 

「ないね」

 

「・・・・」

 

グレイブの問いをカリスは一蹴して突き飛ばす。

 

「・・・・仕方ない、よね・・・・これは」

 

「?」

 

カリスがグレイブに視線を向けていると、バックルの右部分に装着されているラウズ・バンクから一枚のプライムベスタを取り出すと、左腕の機械にラウズする。

 

 

『エボリューション』

 

 

「が・・・・は・・・・」

 

瞬間、カリスから始の姿に戻り、辺りに鮮血を撒き散らす。

 

血と同時に制服が破けて、そこから数枚のプライムベスタが舞い落ちた。

 

グレイブはその中からカテゴリーKのラウズカードを拾い上げる。

 

「どういう・・・・ことだ。それは」

 

「そうだよ。クラブスートのカテゴリーKの力を使った。さすがの始でもワイルド使わなかったら対応できないよね」

 

グレイブからシャルロットの姿に戻ると彼女はプライムベスタをポケットにしまう。

 

「ごめんね・・・・こんなことしたくはないけれど・・・・全部、全部終わったら、きっと正しいと理解してくれるはずだから・・・・ごめん」

 

何かが飛来してきてシャルロットはそれに向かう。

 

激痛で体を動かせない始は手を彼女に伸ばす。

 

でも、彼女に届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

その日、全国に配備されているISが一斉に機能停止を起こした。

 

 

 

 

 

橘朔也はBOARDの用意されている部屋で死んだように眠っている五反田弾と富樫始の様子を見ていた。

 

街中で倒れていた弾は妹の蘭が、屋上で血まみれで倒れている始を布仏本音がみつけて、急遽、運び込まれたのである。

 

二人は麻酔を打たれて死んだように眠っていた。

 

幸いといえばいいのか、傷が浅くて、大きな後遺症などにはならず、家族は安心した。

 

「・・・・問題は富樫の方か」

 

サングラスの奥で橘は始のカルテをみる。

 

細胞の崩壊が急速に進んでいて、ワイルドへの使用を控えた方がいいかもしれないという医師からの報告だ。

 

「(だが、今回は明らかにおかしなことが多い。富樫と弾が誰にやられたのか、それがはっきりしない限りは無闇に動かない方がいいのかもしれない・・・・だが、それは後手に回る・・・・得体の知れない敵相手に後手に回るのはよろしくないな)」

 

通信端末を取り出して橘は連絡を取る。

 

「山田先生ですか、織斑先生と一緒にこちらへ窺えますか?緊急の要件があります」

 

 

 

一夏と簪はIS学園の医務室で眠っている友人たちの顔を眺める。

 

ラウラはドイツの部隊に連絡を取るといって、ここにいない。

 

「篠ノ之さん、どうしちゃったんだろう」

 

「わからない・・・・でも、何か理由があるから、あんなことをしたのかもしれない」

 

「でも」

 

箒が仲間を傷つけるなんてありえないと一夏は思っている。

 

けれど、簪は目の前の事実が頭から離れず、彼よりも信じることができないでいた。

 

「もし、世界中の人間が箒を否定したとしても、俺は信じるつもりだ。もう、あの時のように見ない振りをしたくない。絶対に」

 

箒がセシリアと鈴音を攻撃した事に加え、弾が意識不明、始が学園の屋上で血まみれで見つかり、シャルロットが行方不明。

 

よくわからないことが起こる中でも、一時でも一緒に行動して友達だと信じた人達を疑うなんていう事をしたくない。

 

残酷な理由があったとしても一夏は仲間を信じる。始の時のような結末なんてさせない。

 

「(まずは信じる。全てはそれからだ!)」

 

拳を握り締めた一夏のポケットの中で端末が起動する。

 

「・・・・誰だ?」

 

『はぁい!みんなのアイドル、篠ノ之束ちゃんだよ~!』

 

一夏は端末を起動させると耳元で大きな声が響いた。

 

うっかり端末をきろうとしてしまうのを堪えて一夏は叫ぶ。

 

「束さん!?どうして、この」

 

『ふっふ~、束さんに不可能なんてないんだよ』

 

「それよりも束さん!箒が」

 

『箒ちゃんが?』

 

「友達を傷つけてどっかにいっちゃったんです。何か知りませんか!?」

 

『あー、そのことか』

 

「そのことかって、箒のこと心配じゃないんですか!?」

 

『うん、だって』

 

一夏は次にいう束の言葉を信じられなかった。

 

『箒ちゃんは私のところにいるから』

 

「・・・・え?」

 

『そっか、仲間を殺したわけじゃないんだ。うーん、子守唄システムはちゃんと機能したと思っていたんだけどなぁ・・・・どっか不備でもあったかな?』

 

「何を、いっているんですか」

 

『うん?あ、いっくんは知らないんだっけ?実は紅椿にはね。子守唄っていう、まぁ、簡単に言うと暗示かな。それをかけるシステムが登載されているんだ。本当は箒ちゃんが知り合った人たち、全員殺せって、暗示してあったんだけど。どこで間違えたんだろう』

 

一夏は電話をしている相手が普通に話している内容が信じられなかった。

 

束を幼い頃から知っている自分からして、彼女がぶっ飛んだ行動をとるのを何度か目撃した事があるから変なことをしても、まー仕方ないよなと漠然と思っていた。だが、これはおかしすぎた。

 

電話の相手は束の皮をかぶった怪物なのではないかと疑うほどに今の束は恐ろしい。

 

『そういえば、いっくん。キミはまだライダーなんてやっているのかな?』

 

「え、あ、はい」

 

『うーん、まぁ、仕方ないよね。いっくん、そこに知り合いがいくからいっくんの持っているカードを渡してくれないかな?』

 

一夏が束に尋ねようとした時、地面が揺れる。

 

外を見ると、人の形をしたロボットが現れていた。

 

「な!?」

 

『あー、丁度きたみたいだね?ささ、いっ君。ゴーレムⅢにカードを渡して』

 

「なんで・・・・ですか?」

 

『いっ君の知らなくていいことだよ。ささ』

 

「・・・・出来ません」

 

『どうして?』

 

束のテンションが少し落ちた事に気づかないまま一夏は喋る。

 

「俺が持っているコレは人が好き勝手にしていいものじゃありません。これは・・・・全てが終わった時に誰の手も届かないところに葬るべきです。ですから、束さんが興味を示したとしても、これを渡すつもりはありません!」

 

『そっかぁ・・・・まぁ、染まっているキミはそういうよね?まぁいいや、少し痛い目見ろよ』

 

瞬間、ゴーレムⅢが起動して一夏に襲い掛かろうと動き出す。

 

近づいてくるのをみて、白式を起動させようとする。

 

しかし、白式は起動しない。

 

「なんで!?」

 

『あー、そうそう、ISはしばらく機能停止しているはずだから何も出来ないよ』

 

束の言葉を聞いて、一夏は顔を歪めながらブレイバックルを装着する。

 

――やるしかない!

 

ブレイドに変身すると同時にプライムベスタの力を発動させ、ゴーレムⅢにライトニングブラストを放つ。

 

雷撃を纏ったキックを受けてゴーレムは攻撃を中断して地面に倒れる。

 

着地したブレイドはホルダーからブレイラウザーを抜いて、構えた。

 

「(あれがISならシールドエネルギーを纏っているはずだ。そんなヤツ相手に、ライダーシステムだけで、どこまで戦える?)」

 

ゴーレムⅢは起き上がると大きな腕を振り下ろす。

 

横に跳んで回避しつつブレイラウザーを振るうが、見えない壁に阻まれて刃が通らない。

 

ブレイドの攻撃を気にせずゴーレムⅢはIS学園の校舎へと足を進めている。

 

「まさか、コイツ、学園を壊すつもりなのか!」

 

ISが起動すれば、ゴーレムなどたやすく倒せるだろう。

 

だが、肝心のISは篠ノ之束の手によって使用不可能。

 

このままではゴーレムの攻撃がIS学園に直撃して怪我人がでる。

 

「ダメだ!」

 

ブレイドは叫んでゴーレムⅢに向かって進む。

 

「俺はみんなを守る。仲間を傷つけさせはしない・・・・だから!」

 

ブレイラウザーにプライムベスタをラウズして雷撃を纏い振り下ろす。

 

全力の一撃を受けたゴーレムⅢの足が地面に陥没する。

 

肩を踏んで、ブレイドは前に飛び出る。

 

「これ以上先には行かせない!お前なんかに俺の仲間をやらせない・・・・ここで、倒す!」

 

決意に応えるようにブレイドの体を白銀の光が包み込む。

 

光が消えると同時に白式を纏ったブレイドが雪片弐型をレーザー刀に変形させて振り下ろす。

 

刃をゴーレムⅢは避けられず腕が斬りおとされる。

 

自由な腕にエネルギーを溜めてゴーレムⅢは放とうとした、だが。

 

「遅い!」

 

ブレイドの左腕がゴーレムⅢの頭部を掴む。

 

「沈めぇえええ!」

 

叫ぶと同時に左手からエネルギーが放出しゴーレムⅢの体を吹き飛ばす。

 

体から火花を散らして体の三割、心臓部付近を吹き飛ばされたゴーレムⅢは地面に崩れ落ちた。

 

地面に降り立ったブレイドの前に映像パネルが表示される。

 

そこには白式がセカンド・シフトに移行した事、武装・雪羅が使えるようになったことだ。

 

「・・・・サンキュ、白式」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁやぁ、BOARDのメンバー、元気かな?』

 

その頃、BOARDでは篠ノ之束がシステムをハッキングして連絡をしてきた。

 

今までハッキングされることはあってもシステムを掌握される事はなかったため、橘は驚きを隠せない。

 

そして、話し合いの為に訪れていた千冬も例外ではなかった。

 

「束!?」

 

『ん、ちーちゃんか、こんなところにきているとは予想外だったよ。ま、話は後でね。今回はそこにいる奴らに話があるから』

 

「私達に、話とは?」

 

『素直に聞いてくれてありがたいよ。余計な事には時間を費やさないからさっさというね・・・・キミらがもっているライダーシステムをすべて破壊しろ、でないとISを暴走させて世界を滅ぼしちゃうぞ』

 

「なっ!」

 

「・・・・何故、ライダーシステムを目の仇にする?」

 

動揺している千冬を横に橘は尋ねる。

 

『色々と私の計画に邪魔なんだよねぇ・・・・ホント、色々と迷惑すぎるからさ、これを機に破壊しておこうと思ったのさ、ヴイ!』

 

「・・・・断るといったらISを暴走させるといったが、ISは装着者が居ない限り機能しないはずだが?」

 

『ん、そんな初歩的な事を束さんが考えていないと思ったのかい?世の中には神がかり的なことをすれば、それに縋る愚かな人たちっているよね?キミ達が拒否すればそいつらにISを奪えと指示するし私が全面的にバックアップするから計画は成功するよ?だから、さっさと壊すのがいい考えだよ?』

 

「束!」

 

我慢できず、千冬は叫ぶ。

 

目の前の親友が何を考えているのかわからない。

 

だが、これはやりすぎだ、止めないといけない。と千冬は思っていた。

 

 

「――おいおい、おふざけはそこまでにしたらどうだよ?」

 

 

「富樫、お前」

 

会話を遮って入ってきたのは富樫始だった。

 

目覚めたばかりなのか顔色が悪く、今にも倒れそうだ。

 

山田真耶が慌ててかけよるが、始はそれを押しのけて目の前のスクリーンに表示されている束を睨む。

 

「ったく、目を覚ましたタイミングぴったりすぎて悪意を感じるぜ」

 

「富樫、おふざけとはどういう意味だ?」

 

「あん・・・・そのまんまの意味だよ。おい、いつまでもくだらない真似してんじゃねぇ」

 

「・・・・真似?」

 

始は鋭い視線で目の前にいる束を睨む。

 

「何時までも篠ノ之束の皮かぶってりゃ物事進むと思ってんじゃねぇぞ?“統制者”」

 

「なっ!」

 

橘は驚きの表情で始と束の顔を交互に見る。

 

“統制者”

 

モノリスともいわれるそれはアンデッドを生み出した張本人ともいえる存在、戦いに直接的な関与はしない、いわばジャッジの役割を下す存在だとされていた。

 

「篠ノ之束が統制者だというのか・・・・」

 

「他のアンデッドもてめぇを潰そうと画策していたみたいだが、掌で踊らされて失敗続き・・・・封印されず何も出来ない・・・・封印されているアンデッド達が教えてくれたぜ?とっとと、その皮脱いだらどうだよ?」

 

始の言葉にはじめて、束の顔から表情が消えた。

 

『驚いたな。まさか、不完全な存在に見抜かれているとは』

 

「なんとでもいえ、観戦するだけが趣味のヤツにいわれたくない」

 

『ふん』

 

「てめぇに聞きたい事が山ほどある。まず、シャルロットはどこだ?」

 

『あの人形か・・・・そうだ』

 

束、否、統制者は顔をゆがめる。

 

『ゲームをしようじゃないか、“なりそこない”』

 

「・・・・ゲームだぁ?」

 

『そう、挑戦権はライダーシステムを持つ者のみ。貴様らが勝てば機能停止したISも仲間も返してやろう。場所の座標は追って知らせる・・・・といっても、キミ達に拒否権はない。これは時間制限式のゲームだ。開始は明日の朝、タイムリミットは一日のみ。キミ達が指定の座標に辿り着き、“これ”を取り戻す事ができれば勝利。負ければ世界は滅ぼす。どうだ?シンプルだろ』

 

「嶋・・・・さん!封印されていたのか・・・・」

 

束はそういって、三枚のカテゴリーKのプライムベスタをみせる。

 

その中のクラブスートのカテゴリーKをみて橘は息を呑む。

 

「何故、世界を滅ぼそうとする」

 

『バトルファイトの勝者は数年前に決まっている。勝者の望む者を私達は行なうだけ、故に世界を滅ぼす。それだけだ・・・・では、明日』

 

「おい、俺の質問に答えてねぇぞ」

 

『そういえば、そうだったな。あの小娘ならこちらにいるとも、会いたければ来る事だな』

 

ブチン、と目の前のスクリーンが消えた。

 

 

 

「待て」

 

どこかへ向かおうとした富樫を千冬が止める。

 

「ンだよ?」

 

「束が統制者とはどういうことなんだ!?そもそも統制者というのは!」

 

「そこにいるヤツに聞け、こっちは休みてぇんだ」

 

千冬の手を振り払って始は部屋から出て行く。

 

「あの、橘さん、統制者というのは?」

 

「存在した聞いたことがないが・・・・バトルファイトを開始した存在、一説では神ではないかと考えられている存在だ。54体のアンデッドを生み出し、勝者である始祖の世界を繁栄させたのが統制者だと聞いている」

 

「そんな存在がどうして篠ノ之博士の姿を?」

 

「わからない・・・・だが、これを止められるのは織斑たちだけだということだ」

 

「・・・・一夏」

 

 

 

 

 

 

橘からの連絡でライダーである一夏達はBOARDに集められた。

 

始を除く三人と剣崎たち先代ライダーも集っている。

 

「さきほど、BOARDに送られてきた座標だ」

 

「ここって!」

 

表示されている場所をみて剣崎は息を呑む。

 

「え」

 

「なんですか?」

 

事情を知らない一夏達は首を傾げるばかりだ。

 

「僕達が、最後に超古代の力と戦った場所だ」

 

「え!?」

 

睦月の言葉に全員が驚く。

 

ジョーカーを封印して終わった戦いとは別に、もう一つ、戦いがあった。

 

それは相川始・ジョーカーとは別のアルビノジョーカーとの激闘、全てのアンデッドが解放され、新世代ライダーの投入など、今までにないほどの激戦が行われる。そして目の前に表示されている座標は剣崎、橘、睦月が最後の敵と戦った場所なのだ。

 

「この場所とは因縁めいたものを感じるな・・・・敵はゲームといっている。それがどういった内容なのかはわからない。だが、それを受けない限り奪われたカテゴリーKも篠ノ之箒も取り戻せないだろう・・・・大人としてキミ達に残酷な事をこれからいうが、行ってくれるか?」

 

三人は迷わずに頷いた。

 

「そうか・・・・では、三人はしばらく休め」

 

「え、でも」

 

「今から体を動かして明日、何も出来ないじゃ意味がないからな。三人とも休んで明日に備えてくれ」

 

剣崎に言われて、戸惑いながらも三人は頷いた。

 

「あの、始は?」

 

「彼なら・・・・」

 

「来るさ」

 

詰まった橘は剣崎の顔を見る。

 

「剣崎・・・・」

 

「そうですよね。わかりました!休みます!」

 

一夏は立ち上がると部屋から出て行く。

 

 

 

 

 

「休めっていわれたけれど・・・・どうしょう」

 

一夏は学園寮に戻ってから右へ左へとそわそわしていた。

 

明日の事を考えると気になって眠れない。

 

元々、図太い神経をしていたが、戦いの中で少し神経質になってしまったんだろう。

 

「嫁!いるか!」

 

「ん、ラウラぁぁ!?」

 

振り返った一夏は絶句した。

 

「なんで、バニーガールきてんだよ!」

 

「む、コレを見れば嫁が癒されると聞いたぞ」

 

「眼福かもしんないけれど、いきなりなんで!?」

 

「・・・・明日、箒を助けに行くのだろう」

 

「え、あぁ」

 

「不安なのだ」

 

「・・・・」

 

「セシリアも鈴も重傷、箒とシャルロットは行方不明。そんな中で嫁は仲間と一緒に戦いに行くのだろう。できれば私も行きたい。だが、ISは機能しない・・・・嫁の手助けは何も出来ない。ならば、こうすることで少しでもお前がいけるように、と!」

 

ラウラも悩んだ末の行動なのだろう。

 

箒に斬られた二人はまだ目を覚まさない。

 

明日には仲間達が戦いに向かう。そんな中でラウラはISが使えず援護も出来ない、本人からすれば歯がゆい思いがある。

 

一夏はそんなラウラを慰めようと。

 

「それに、クラリッサによるとこうすればヘタレでも襲うだろうといわれたのだ」

 

「・・・・」

 

前言撤回、あっぶねぇ~!

 

危うくラウラを抱きしめる所だった一夏は一歩下がる。

 

陰謀どおり、彼女を抱きしめて何か言う所だった一夏は本気で冷や汗を流す。

 

「ん、どうした?」

 

「いや・・・・でもさ、何も出来ないなんてことはないぜ」

 

「む、私に何ができるという」

 

「俺達の帰る場所を守っていてくれよ」

 

「一夏達の帰る・・・・場所?」

 

「そう、俺達は戦いに行っても必ず帰ってくる。だから、ラウラにはここを守って欲しいんだ。箒達を連れ戻してみんなで“いつもの毎日”を過ごす為にさ」

 

「・・・・うむ、任せろ!」

 

ラウラの言葉に一夏は微笑む。

 

 

 

 

 

 

「ところで、この姿に嫁はむらむらしないのか?」

 

 

 

「・・・・ノーコメント」

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、おにぃもヘタレだね」

 

「なっ!?なんで俺が一夏と同じなんだよ!?」

 

五反田家が入院している病室に足を踏み入れた途端、妹である蘭は開口一番、兄を罵倒する。

 

罵倒された兄は“一夏と同じ”に反応した。

 

「だって、前に居た布仏さんだっけ?あの人に会いに行かずにこっちにくるなんて」

 

「過保護だと思ってくれればいいだろう!?」

 

「そこまで子どもじゃないし!」

 

口を尖らせる蘭の頭を撫でて弾は微笑む。

 

「絶対に帰ってきてね!でないと地獄の果てまで追いかけるから」

 

「俺、地獄行くの確定かよ!?」

 

「女の人待たせている人は死んでもおかしくありません!」

 

蘭にぴしゃり、といわれて弾は苦笑を浮かべ、出口へ向かう。

 

「じゃ、待たせている人のところに向かうわ。ちゃんと帰ってくるからな」

 

「うん!」

 

笑顔の妹に見送られて弾が外に出ると、布仏虚と遭遇する。

 

「あれ」

 

「あ」

 

二人はぽかん、とした表情を浮かべた。

 

「えっと、虚さん、はどうしてここに?」

 

「その、蘭ちゃんとメル友になっていまして」

 

「あぁ・・・・妹の見舞いに来てくれてありがとうございます」

 

「はい、そ、それと」

 

モジモジしながら虚は。

 

「だ、弾君に会えると教えてもらった、ので」

 

「っ!!」

 

弾の顔の温度が一気に上昇する。

 

顔を赤らめてこちらをみている彼女から視線が離れない。

 

「その・・・・弾君、絶対に帰ってきてくださいね」

 

「はい!」

 

そこで会話が止まり、再び会話がスタートするまで、十分は費やしてしまったらしい。

 

 

 

 

 

「かんちゃーん、休まないの?」

 

「休んでいる・・・・」

 

「でもでも~」

 

キッチンでカップケーキを作っている簪に本音は休もうと呼びかけるが、作業を止めない。

 

「これで完成する、と」

 

オーブンにいれて作業が一段落ついた。

 

「どうして、急に?」

 

「理由はなんとなく・・・・かな」

 

「なんとなく?」

 

「うん、お姉ちゃんはお姉ちゃんでやることがあるし、みんなが思い思いの時間を過ごすならケーキでも久しぶりに作ろうかな・・・・って」

 

「それなら好きなテレビをみていてもよかったんじゃないの~」

 

「帰ってからみつるもりだよ」

 

「え?」

 

「明日の戦いが終わったら帰ってゆっくり満喫するつもり・・・・授業もさぼってしっかり見る」

 

「そうなんだ~」

 

「だから・・・・本音も付き合ってね」

 

「りょうかい~。あ、でも授業はさぼっちゃメ!だよ」

 

「そうだね・・・・うん。そうだ」

 

二人はそれから完成したカップケーキを親しい人に配りまわった。

 

 

 

 

 

 

 

屋上で始は景色を眺めていた。

 

既に空は夜空に染まっているし秋になりつつあるためか風が冷たい。

 

その中で始が考えているのはグレイブ、シャルロットのことだった。

 

「アイツ・・・・」

 

言葉を飲み込んで振り返る。

 

「人の背後、とって現れるのはいい趣味とはいえないな」

 

「あら、気づいているのに何も言わないのもどうかと思うけれど」

 

「なんか用か?」

 

「人と話をする時は相手の目を見て、っていわれなかったかしら」

 

「うるせぇヤツだな。これで――」

 

振り返った始の唇と楯無の唇が重なる。

 

突然の事に目を見開いていると始の口を押し開けて自身の舌をいれてきた。

 

卑猥な音が屋上に響き渡る。

 

しばらくして楯無は離れた。

 

「・・・・何の真似だ?」

 

「怒ったりしないんだ」

 

「・・・・今にも泣きそうな目をしていたら怒るにおこれねーよ」

 

「始はやっぱり、優しいわね」

 

「優しくねぇよ。人一倍臆病もんだ。伝えたい事をきちんと伝えられない不器用でもあるな」

 

「・・・・ちゃんと、帰ってくるわよね?」

 

「さぁな、まさか、帰ってこないと思ったから・・・・したのか?」

 

「違うわよ」

 

楯無は始の言葉を一蹴する。

 

「ダーリンのことだから、向こうでシャルロットちゃんとキスすることがありえるから先にさせてもらいました!上書きされたとしても私が先よ!」

 

「・・・・強いねぇ」

 

「あら、惚れた?」

 

「どうだろうな」

 

「私は二人が両思いになったとしても諦めないわよ?」

 

「・・・・怖いな」

 

「当然よ。女は怖くて、美しいものなんだから」

 

「違いない」

 

 

 

 

 

 

 

思い思いに過ごし、そして運命の日が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

BOARDのゲートの前に四台のバイクが止まっている。

 

整備の人達が徹夜してチューンナップされたブルースペイダー、レッドランバス、グリングローバー、そして始のバイク。

 

しばらくして、一夏達がやってくる。

 

「さて、覚悟はできたか?」

 

「当然だ!」

 

「生きて帰る!」

 

「うん!」

 

それぞれが決意を秘め、バイクにまたがる。

 

「・・・・行こう!戦いを終わらす為に!」

 

一夏は叫ぶと同時にブレイバックルを装着した。

 

「変身!」

 

「変身!」

 

「・・・・変身!」

 

「変身!」

 

『ターン・アップ』

 

『ターン・アップ』

 

『チェンジ』

 

『オープン・アップ』

 

ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルの四人はバイクのアクセルを回して目的地に向かう。

 




予告。
レンゲルが散る、カリスが散る、ギャレンが散る、そしてブレイドが散る。
戦いの中、それぞれの敵と対峙する彼らの叫びが空に木霊する。
そして、世界はゆっくりと滅びへと向かう。

滅亡へのカウントダウン
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