BOARDの事務室で橘朔也の前に一人の男が立っていた。
「元気そうだな。橘朔也」
「まさか、お前がここに現れるとは思っていなかったぞ。伊坂」
お互い殺気を放ちながら目の前にいる相手を見ている。
橘朔也と伊坂、この二人には因縁がある。
橘朔也は騙され最愛の恋人を失い。
伊坂は怒った橘によって封印され、計画を失敗させられた。
「何が目的だ?」
「決まっている。俺が作成した最強のライダーのベルトを返してもらいに来た」
「生憎だが、あれは俺の手元にはない」
「では、どこにある?」
「お前に教えると思うか?」
「だろうな・・・・とりあえずここにはないのだろう?」
「どうだろうな?」
「まぁいい、ライダーではないお前を倒した所で意味はない。“今”のギャレンを叩き潰すとしよう」
「宣戦布告か?」
「そうだ」
それだけいって伊坂は丁寧に壁を壊して外に出て行く。
橘は壊れた壁を見ながら呟く。
「タイミングが良かったな・・・・・・・全員を招集する」
一夏はぼーっと、天井を見ていた。
「負けた。完全に負けた」
ブレイドとなりアンデッドと戦い続けての初めての敗北。
上級アンデッドの力は自分の想像していたものよりも強い。
今のままでは勝てない。
「どうしたら・・・・」
「一夏!聞いてんの!?」
「え・・・・えっと・・・・なんだっけ?」
鈴音は顔を赤くして告げる。
「私もあんたの戦いに協力するわ」
「・・・・そう・・・・か」
「弾も戦っているのに私が何も出来ないなんていうのは嫌だしね!」
鈴音の申し出を一夏ならよく考えたうえなら同意するだろう。
だが、今の彼はそこまで余裕がなかった。
「あ、ちょっといい・・?」
その時、ドアが開いて一人の男がやってくる。
入ってきた男に織斑一夏は目を見開く。
男の人はどこにでもいるような感じで。けれど、誰よりも優しく、誰よりも人を守る事に力を使い。自分が傷ついても他者が守れるならそれでいい、と考えている人。
「一真・・・・さん」
「あ、一夏。久しぶり!」
剣崎一真は微笑んで一夏の所へやってくる。
「ちょっとごめんね~」
一真は微笑みながら一夏のところにやってくる。
入口から虎太郎が箒達にこっちきてーと呼んでいたので三人は外に出て行く。
三人がいなくなり、保健室は静かになった。
ゆっくりと剣崎は口を開く。
「負けたんだって?」
「・・・・はい、手も足も出ませんでした」
「そっか・・・・相手が上級アンデッドだったらしいからね。それで」
剣崎は微笑みながら一夏に尋ねる。
「一夏はどうする?」
「強くなりたいです。もっと強くなって・・・・ヤツに勝ちたい」
「そっか・・・・なら、行こうか」
「え、どこに・・・・ですか?」
「修行だよ。負けたままじゃ嫌なんだろ?だったら修行して強くなろう」
「・・・・・・俺は・・・・強くなれますか?」
「それは俺に問われても困る」
剣崎はばっさりと一夏の不安を切り捨てる。
「強くなりたいとキミが本気で思っていない限り強くなるわけがないだろ?」
「っ・・!俺は強くなります!必ず」
「その意気だ」
剣崎の後を追いかけるようにして一夏も外に出る。
「「「「体の傷が治ってからにしろ!」」」」
「「・・・・はい」」
外に出た直後、四人の少女と女性に怒られて二人は渋々中に戻った。
一夏の傷が治り、剣崎と共に山に篭っていた。
学校に関しては休学届けを出しているので、出席に関しては問題ない(授業についてはノーコメントとなるが)
「それで・・・・特訓って何をするんですか?」
「まぁ、特訓といっても・・・・ひたすら一夏君“は”戦ってもらうんだけどな」
「誰とですか?」
「私とだ」
「えっ!?」
声が聞こえて振り返るとそこには胴着を着て木刀を持った織斑千冬がいた。
何故!?と一夏が戸惑っていると、剣崎が微笑む。
「約束しただろ?ちゃんと向き合うって、だから戦いながら向き合ってくれ」
“約束”忘れたわけじゃない。
一夏が仮面ライダーになりたいと剣崎に言ったあの日。
剣崎が一夏へと述べたあの言葉。
いつかは千冬と仲直りする事。
それを、ここでやれと剣崎はいっているのだ。
「そういうわけだ。行くぞ」
千冬と一夏は同時に木刀でぶつかり合う。
ブレイド=織斑一夏の訓練が始まる。
イギリスのある基地でカリスは隔壁を片手で破壊して左右に広げる。
K、エス、エムの三人はイギリスの第三世代IS“サイレント・ゼフィルス”を奪取するために襲撃した。
既にここの施設の迎撃機能は破壊しており、後はISを盗むだけである。
なのだが、どうも、施設の構造が事前に入手しているものと違う。
「・・・・・・ここか?」
「情報と少し違うな・・・・」
「オータムさんが仕入れてきた情報だけど?」
「ミスがあってもおかしくないな」
「同感だ」
エスの言葉にカリスとエムは同時にあの女性のことを思い出して苛々する。
ちゃんと、情報くらい仕入れておいてくれよ、と。
直後、二人を守るようにしてカリスは前に出る。
「どうした?」
「何かがく」
来ると言おうとした時、横の壁を砕いてISの手がカリスを襲撃した。
だが、動きを予測していたカリスはエムとエスの二人を抱きかかえて壁の端に飛ぶ。
「なんだ・・こいつ?」
「全身装甲《フルスキン》のIS・・・・データにない」
「えっと・・・・これも強奪するの?」
エスの言葉に、そうだな。とカリスは答えて。
「とりあえず無力化させる。中の人間は・・・・・・運が良ければ生きているだろう」
ここで比較するのもおかしいが、織斑一夏達とカリスは決定的に異なる部分がある。
それは、相手が敵なら容赦しないということだろう。
例え、相手の命を奪ったとしても。
「行くか」
全身装甲のISは掌からレーザーを放つが、カリスは壁を蹴りながら右へ左へと避けていく。
二人を抱きかかえたまま。
そして、敵ISの肩を思いっきり踏みつけて進んでいた方向の通路の曲がり角で二人を下ろす。
「先に言っていてくれ。あれを壊して奪取する」
「わかった」
「無理しないでね」
二人を見送ってからカリスはカリスアローを構える。
敵ISは再び掌からレーザーを放つが、カリスアローのソードボウでレーザーを弾き飛ばす。
弾き飛ばされたレーザーは壁に命中して爆発した。
「まずは片手をもらおうかぁ!」
ソードボウを腕に突き刺してそのまま手を切り落とす。
バチバチとケーブルが千切れるような音と同時に手が落ちた。
「そして、片方!」
振り下ろしたカリスアローを持ち上げるようにしてカリスを叩き潰そうとしている手にソードボウを突き刺す。
ISにはシールドバリアと呼ばれる様々な攻撃から身を守る装置が搭載されている。このISにもそれが搭載されているようだが、あえて言おう。
カリスやアンデッド、仮面ライダーの前ではそんなシステムは紙くず同然に等しい。
実際、カリスはプライムベスタを一枚も使っていなかった。
「失せろ」
フォースアローで敵ISの顔を撃ちぬく。
撃ち抜かれた敵は動かなくなる。
「・・・・意外と弱いな・・・・まぁ、無人機だから仕方ねぇか」
コンと残骸を蹴り飛ばしてカリスは機体の中に手を入れてコアを取り出そうとするが突如、何かの起動音が響く。
「あ」
直後、眩い閃光が辺りを包み込んだ。
「何・・・・今の音?」
「爆発だな・・・暴れすぎだ」
「Kかな?違うような気もするんだけど」
「とにかくサイレント・ゼフィルスは奪取した。あいつと合流するぞ」
そういって、ISを纏った二人が外に出ると、そこにあったはずの通路はなく、瓦礫の山があった。
「えっと・・・・・・」
「何をどうしたらこうなるんだ」
ガラッと二人の近くの瓦礫の山が動いたと思うと、そこから富樫始が出てくる。
着ている服はボロボロにはなっていないが土埃がついていた。
「ぷっはぁ・・・・・・酷い目にあった・・・・あのクソIS、自爆するとか、なんちゅうもん搭載してんだか・・・・あ・・・・」
「お前は何をしている?」
「ISのコアを奪取しようとしたら自爆して、その威力が凄まじくてこんなことになっちまった」
「・・・・最悪だな。すぐに撤収するぞ。このままだと軍とやりあわないといけない」
「GUN!?」
「まぁ、そーなるな。ここ一応軍の施設みたいだし」
そういいながら三人はISを装着してそのまま逃走する。
千冬は一夏の動きに驚き、少し、ほんの少しだけ焦っていた。
篠ノ之の家の道場でしか弟の実力は見ていなかったから、あれからの年月を考えればそれなりに成長はしているだろうと思った。
だが、それは大きな間違いだった。
「くっ!」
下から振り上げられた木刀をぎりぎりのところで押し返す。
あと少し反応が遅れていたらわき腹に命中していた。
油断できないくらいに弟は強くなっていた。
自分の知らない所でという部分で寂しいと思ってしまう。
だが、これからはずっと一緒にいることができるのだから。
これからは・・・・。
「強くなったな・・・・ずっと鍛えていたのか?」
「うん、仮面ライダーの訓練って結構大変だったし」
一夏の特訓に協力してくれと剣崎に言われた時、戸惑った。
自分は一夏に嫌われているし、恨まれているかも、と思っていた。
そんな自分に剣崎は笑顔でいったのだ、
『一夏はあなたの大切な弟ですからしっかりと向き合ってください。二人しかいない家族ですから』
それで、今から間に合うだろうか?と尋ねたら、大丈夫!と笑顔で言われてしまい千冬は複雑な表情をした。
剣崎のおかげで一夏も姉と向き合おうとしてくれている。
だから、自分もちゃんと弟と向き合おう、教師とか、そういう固いものは抜きにして、と千冬は考えた。
「仮面ライダーの訓練というのはやはり厳しいのか?」
「大変だよ。弾も・・・・あいつも仮面ライダーの訓練していたんだけど、あいつの訓練なんか、大リーガーが投げる速度のボールを真正面からみて、書かれている数字を目で判断するというものもあったしね」
「・・・・それは・・興味深いな」
会話しながらも二人は木刀をぶつけ合う。
気づいているだろうか?何度もぶつかり合っている間、二人はおそろしいくらいに剣戟の速度があがってきていることに。
織斑一夏と織斑千冬の二人は本気の戦いを繰り広げている。
真剣での戦い。
千冬は日本刀を振るい、一夏はブレイラウザーを使っていた。
互いに一歩も引くことなくぶつかりあっている。
しかし、日本刀は数回の剣戟で折れてしまう。
「っ!」
千冬は地面に突き刺さっている刀を引き抜いてブレイラウザーとぶつかり合う。
二人がぶつかりあって早一週間は経過している。
その間もただひたすらにぶつかりあっている、弾と異なるのはぶつかりあった次の日はお互いに死んだように眠っていた。
そして、目が覚めるとお互いに剣戟を始める。
「これは・・・・本当に二人が人間なのか疑っちゃうね」
「それほどまでに二人が強いということさ」
二人の剣戟を双眼鏡で剣崎と虎太郎が見ていた。
余りの強さに虎太郎は冷や汗を流し、次から千冬には逆らわないようにしようと胸に誓う。
「そういえば、橘さんにあの話をしたの?」
「あぁ・・・・反対されたけど」
「そりゃそうだよ、第一世代のライダーシステムのリミッターを解除なんて、設定した人からしたら悩むことだと思うよ?」
「だが、あのままじゃ上級アンデッドには勝てない・・・・それに、カテゴリーAにも」
「カリスとはいわないんだね」
「・・・・そいつがカリスと名乗っているなら俺もそういうけど、名乗っていないならカテゴリーAだよ」
「始とかぶらせたくない?」
「・・・・そうかも」
二人が会話をしている間も大きな音が響いている。
「話を戻すけど、今のままじゃ勝てないんだよね?カテゴリーAとの融合を極端に抑えている状態じゃ」
「あぁ・・・・上級はリミッターを施されている状態じゃ勝率は0だ」
一夏と弾が使っているライダーシステムは数年前の戦いの終了後、橘朔也によりリミッターが設けられた。
アンデッドとの融合係数が高い人間がより高く融合しすぎないように、嘗て融合係数が著しく高かった剣崎も数年前の戦いが原因で融合係数が減退したためにその心配はない。
しかし、一夏達はリミッターのために上級アンデッドと戦っても勝つことはない。
たとえ、全てのプライムベスタの力を使ったとしても・・・。
「一夏君達が同じ道を頼らない事を僕は願うしかないんだよね」
「何言ってんだよ。虎太郎達のサポートのおかげで俺達は安心して戦えるんだから、そんなこというなよ」
「・・・・そうかもね・・・・」
「お、決着がついたみたいだな」
「これで・・・・最後の一振りが折れたか・・・・お前の修行もこれで終了か」
「修行じゃなくて特訓・・・・まぁ、そうだけど」
「しかし驚いた。ここまで強くなっているとは・・」
「本気だから・・・・」
一夏はブレイラウザーを地面に突き刺して答える。
「本気で仮面ライダーになって人を守りたいと思っているから」
「・・・・・・なら」
ギュッと一夏の体を千冬が後ろから抱きしめる。
突然の事に一夏は戸惑う。
「人を守るお前は私が守ってやろう。何年も姉らしいことをまともにやっていないから・・これぐらいは・・・・というわけじゃないが、これからお前を守る」
姉といった時、なぜかズキリと胸が痛んだような気がしたが千冬は気にせず一夏を抱きしめる。
「今まですまなかった・・・・・・一夏」
「俺も・・・・ごめん、千冬姉」
剣崎と虎太郎はしばらく二人っきりの世界にさせてあげようと思い、少し待った。
余談だが一夏のことを思っている少女たちは強大な敵が現れたことを学園で予感する。
その予感は現実のものになると知らず。