終わらぬ旅を今、君と共に   作:しの字

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時間を見つけてはストーリーを考えるようにしていますが、これがまた楽しいものですね。
ただ、シーンが思い浮かんでも言葉にして表現とはなんとも難しいものですね。。


第2話 有能の証明

〜 黒衣森 南部森林 朽葉の吹溜まり 〜

 

家に帰ると母はシチューを作って待ってくれていた。

 

アンテロープのスネ肉とポポト、ワイルドオニオンがふんだんに使われた

 

自然な甘さと優しさのこもったメニューだ。

 

鍛え抜かれたアンテロープの肉は本来、その硬さからシチューには向かないが、

 

蜂蜜に肉を半日漬け込み、さらにもう1日少量のワインに浸すことで

 

肉を柔らかくし、味の深みを両立している。

 

ここ最近で病魔に冒され、体調が急激に変化した母の変わらぬ手料理だ。

 

やはり美味い。兄弟は好みの差はあれど、一番の好物はこれだった。

 

これがいつ食べることが出来なくなるのか、縁起でもないが、その考えは日に日に

 

現実味を増し、恐れとなった。

 

街医者にも、幻術士にも母を見せたが、容態は悪くなるばかり、

 

原因は究明されていない。

 

それどころか、この病魔は今やこの黒衣森全域に広がりつつある。

 

主にその感染先は齢を50を超えた者達に留まっていることが、不幸中の幸いだろうか。

 

若い兵士が居なくなれば、グリダニアはイクサル族の鳥頭たちに攻め込まれるだろう。

 

だが今じゃレンジャー達は猛る獣の処理に追われている。

 

ロディが言うに、"病魔の出現と獣達の暴走の始まりは時期的に一致"しているとのことだった。

 

"それが分かっても、俺達だけじゃどうしようもないんだ"

 

諦めるわけにはいかないが、出来うる手段は全て試した。

 

母もきっと先を察していたろう。

 

だが・・出来ることがなかったのだ。

 

無力を感じていたのは、きっと兄弟二人ともだったろう。

 

その無力さを噛み締め、その夜は床に就いた。

 

翌日、特に用事もない俺達は改めて感染源の調査へ乗り出した。

 

「病魔の感染は大体一ヶ月前、じわじわり都市部どころか、森全域を侵食しはじめた。

 

俺は調査のために森を越えてザナラーンへと向かったが、そちらでは感染の影響は見られなかった。」

 

そして獣達の猛りとの共通点だが、もう一つ、"気になる奴等"を見つけた。」

 

「気になる奴等?街にはそんな変わったことなんて__」

 

"本当にそうか?"

 

そういや、しばらく前からグリダニアに赤いローブを着た連中が出入りしている。

 

彼らは"招かれざる客"であった。

 

勝手に出入りし、自分達の思想を街中で声高らかに演説していたのだ。

 

"宗教ってそうなのか?"

 

そう考えながら、その時は大したこともないと忘れることにした。

 

今ではあの時ほどの出入りは見られないが、やはりそれでもあの目立つローブは目に入る。

 

「探してみよう。最近じゃあ旧市街の祭壇の傍で演説してるんだとさ。

 

幻術士の連中も迷惑してたぜ。さっさと追い出しゃ良いのに。あの連中は・・・。」

 

「わかったよ。じゃあその回りを見て回ってみようか。」

 

グリダニアを訪れ、街を見渡すとやはり以前ほどの賑わいは見られない。

 

店の多くは閉じられ、外を出歩く者も神勇隊や鬼哭隊のレンジャーがほとんどであった。

 

「瞑想窟に急ごう・・あまり長くは家をあけたくはないからな。」

 

ロディと共に足早に祭壇へと赴く。

 

〜 グリダニア 旧市街 豊穣神祭壇前 〜

 

__やはり居た。

 

来たばかりの頃より、格段に信者の数を増やしているのがタチが悪い。

 

お偉いさん方も当初はその規模の小ささから相手にはすまいと考えていたようだが、

 

今ではそうはいかないようだ。

 

警備が演説者を追い出そうとすれば、聞き入る信者から石を投げられる。

 

世も末だな・・。

 

兄を見上げると、物想いにふけった顔で、座卓への入り口を睨みつけている。

 

その先では、小柄な女性が座卓の番ともめているようであった。

 

青空のような水色で、風に流れるような髪に目を奪われる。

 

そしてキリっと整った、美しい純白の角・・角!?

 

「兄貴!アウラだ!初めて見た!いや!兄貴が居るけどさ!!」

 

アウラ族のレンはシノにとって初めて見る存在だった。

 

雄々しい黒き角と鱗を持つゼラである兄とは対照的に、彼女は男性のアウラと比べはるかに小さく、

 

その角は触れるだけで儚く壊れてしまいそうで、色はクルザスの雪のように真っ白であった。

 

ロディが見つめていたのはどうやら彼女ではないようだった。

 

証拠に、シノが叫んでから彼女の存在に気づいたらしい。

 

「確かに珍しいな・・あと、お前はもうちっと静かにしような?」

 

忠告される頃には、宗教団体の連中と、アウラレンの美人、応対していた番人ら

 

皆の注目の的であった。

 

「あ・・すまん、兄貴・・・。」

 

「良いさ、珍しいからな。俺に良い考えがある。」

 

「大概そう言った時は良いことなかったじゃないか・・。」

 

「まぁまぁ、作戦は簡単だ。アイツ等の後ろを付ける。

 

拠点を見つける。あと証拠もちょこーっと見つける。そしたら帰ってきて優秀なレンジャー部隊に報告!

 

お偉いさん方もどうやら手を焼いてるらしい。あのままじゃ巫女様の

 

座まで危ういだろうからな。証拠を叩きつけてやれば手出しせざるを得ないさ。

 

だが、気に食わないのは・・・いや、いいか。」

 

途中でロディは言葉を濁す。

 

演説は再開され、多くの者が聞き入っている。

 

その内容は、"病魔を恐れることはない""我らと共に来たれ""救いの手は差し伸べられた"

 

なんとも胡散臭いが、こんな状況だし、仕方ないのだろう。

 

第7の霊災が起きたその時、多くの者はすぐには信じることはしなかった。

 

その時の後悔からなのだろうが、馬鹿らしい。

 

しばらくそんな事を考えていると、どうやら演説を終え、

 

ローブの男達は引き返すようだ。

 

新たな信者を引き連れて・・。

 

喜ばしい事ではないのだが、見失うこともないため、ありがたかった。

 

奴等は十分の後ろを警戒していたが、ほんの数ヶ月の連中と数年暮らす

 

シノ達とでは地形の知の差が違った。

 

また、拠点を見つける事も想像以上に楽だったし、そう時間もかからなかった。

 

ただ、その場所は厄介と言う他なかった。

 

"タムタラの墓所"

 

周囲には肉が腐り落ち、それでも尚、生の呪縛から逃れられない骸が闊歩している。

 

皆、この祠には近寄ろうとはしない。

 

親は子に"英霊の眠る地を荒らしてはいけない"だとか"その地の呪縛に取り憑かれる"

 

だとかと脅かす。

 

何が正しいのかは分からない。

 

宝物を目当てに盗掘する者も居たが入った者は誰も帰って来なかったのだ。

 

確かに、ここなら誰にも手出しされない。

 

祠の先にある扉に鍵は施されてはいない。誰も近寄らないから必要はない。

 

偵察するだけならその考えの緩さには今回は都合が良かったし、

 

周りの骸達は先を歩く奴等が処理してくれたし、侵入は容易だった。

 

〜 タムタラの墓所 上層 〜

 

内部は暗く、松明がかけられているとは言え、足元には明かりが及ばない。

 

言うまでもないが、日の光は完全に遮られている。

 

墓所と言うだけあってか、腐敗臭は強烈だ。

 

その上、遺骸達は大人しく寝ていてはくれない。

 

遺骸との連戦を終えながら、素手による格闘と細身の短剣ではこれ以上の

 

戦闘は厳しい。

 

「ふぅ、死んでるとは言え、心が痛むな。あと疲労がないだけにぶっ壊さないと

 

何回でも起き上がるのは厄介だ。」

 

「そう思ってさ、兄貴。向こうからちょっと拝借してきたぜ!」

 

シノは自身の胸の高さほどの両手斧を引き摺りながらロディに渡した。

 

彼自身の腰と背には長い間、手入れされておらず、土や埃にまみれているものの、

 

少しばかりの強き眩さを誇る剣と盾が差されていた。

 

「あぁ、ありがとうな。にしても、かっこいいもん拾ってんな。似合うぜ。」

 

ウインクしながら親指を立てる。シノは兄のこの仕草に弱い。

 

「さぁ、行こうか。だいぶ降りてきたはずだし・・そろそろ教団の連中と鉢合わせても・・。」

 

歩みを進めながら、他愛もない話をしていると途端に、開けた場所に出た。

 

先には赤いローブの男達が呪文を詠唱している。

 

その様子は他の祭壇からも見られる。

 

「"オーブを通して中央の繭にエーテルを注ぎ込んでいる・・?"」

 

「そうみたいだね・・。見てるだけで嫌な気分がする。

 

あれ、止めねぇといけないよな・・。」

 

「えぇ、そうですね。きっとあれが黒衣森を侵す病魔に関係があるのを感じます。」

 

ん?振り向くと真っ白な女性の姿がある。

 

「ひっ!?ぎゃ・・もごごご・・。」

 

驚くシノの口をロディがその大きな掌で塞ぐ。

 

「ずっと着いてきてたのはアンタか。よくこんなとこまで・・。」

 

「兄貴は知ってたのかよ・・!なんで教えてくんないの・・!?」

 

「そりゃあこんなとこまで着いてくるとは思わねぇし、話しかけられるとも思ってねぇからだよ・・。」

 

あれ。彼女。さっき見かけたような・・。

 

そうだ。不語仙の座卓の番ともめていたアウラ族の女性だった。

 

「私は・・。私はエリヤ。エリヤ・デロールと申します。

 

訳あって・・。」

 

「"訳あり"を問い詰めたりはしねぇよ。敵じゃないらしいしな。

 

俺はローデヴェイク。長いからロディで頼む。

 

こっちは弟のシノだ。よろしく頼む。」

 

「アウラゼラとエレゼンの兄弟・・!?一体・・いえ、貴方方もきっと

 

"訳あり"なのでしょう。詮索はしません。」

 

「別に聞かれても問題ないけどな!よろしく!」

 

「俺達は奴等を止めたい。だが二人きりでは厳しくてな。

 

怪我も増えてきちまった。アンタは"治療"出来る人か、出来ねえ人か?」

 

彼女は右手を胸に当て、自信満々に 「出来ます。」と答えた。

 

「早速で悪いが、ちっと隠れて治しちゃもらえないかね。痛くてね・・。」

 

「えぇ、もちろん。喜んで。」

 

回復魔法を間近で見るのは初めてだった。

 

いつもは兄の薬草に助けられていたからだ。

 

あぁ、この温かさと優しさは母のそれと近しいものを感じる・・。

 

ほんの数秒、目を閉じている内に痛みは無くなった。

 

小さな傷も塞がり、もともとなかったかのように錯覚してしまった。

 

「助かった。いい腕してるんだな。アンタ。」

 

「お褒めに預かり光栄よ。さぁ、彼等を止めに行きましょう。

 

いつまでも"繭"が待ってくれているとは限らないわ。

 

私達で止めて、良い報告を持って帰ってやりましょう。」

 

そんなこんなあって、二人の冒険に美しき幻術士(?)エリヤが加わった。

 

〜 第2話 有能の証明 終 〜

 

 

 

 

 




朝から時間を見つけては書き足して行ったのですが、今回はだいぶ長くなってしまいました。
推敲を続ける中、だいぶ時間がかかってしまい、読んでくださる身内の方々には申し訳ない限りであります。
皆様にまた楽しんでいただけることを願って止みませぬ。
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