黒い球と共に   作:八雲ネム

43 / 47
第41話 決別

 加藤side

 

 

「よし! 倒せる。倒せるぞ!」

「もうちょいだ!もうちょい!」

「そっちに行ったぞ!」

 

 竜崎達と別行動を取り、建物から出た瞬間に大阪チームを探しに行った時に遭遇した相手と鉢合わせになった。

 そいつは足が4対8本、顔が2つの巨大で異様な生物だったが幸いにも動きが遅い上に歴戦の猛者が多数、このチームに加わっていたのでモ○ハンで猛獣を狩っている感じになっていた。

 ゲーム自体は持っていなかったが、学校でやっているヤツのを見せてもらったからある程度の戦い方は知っていたが、大阪チームの奴らなんかは完全に楽しみながら戦っていた。

 

 ミサイルやガトリングガンでヤツの気を引き、Zガンでダメージを与え、力に自信があるヤツはアイツの頭を破壊しようと行動に出た結果、誰一人として死傷者を出さずに済んだ。

 と言っても、関根や眼鏡君は既に手足に傷を負って戦えない状態なので遠くから眺めているだけではあったが、それでもチーム内から死人が出てないのは大きい。

 これは矢沢さんも言っていたが、よくまぁこれだけの猛者が集まったと思ったよ。

 

「よし、いったぁ!!」

 

 そして、俺達の攻撃でついに異形のそいつが倒れ込んて動かなくなったので肩の力が抜けた。

 そのことを確認した裸の人達は、安堵の歓声を上げて山咲さんが抱き着いてきたが彼女の様子を見る限りではどうやら無事なようだ。

 とは言え、自由に転送できなくなった不安がにじみ出てきているし、風なんかはタケシとの写真を見ているから早く脱出したいところだな。

 

「お~い! 無事なようだな!!」

 

 俺が周囲を見ていると、よく知った声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 和泉side

 

 

「自由に動ける………となるとやるべきことは………」

 

 俺は巨大なロボを操縦するため、そいつの中枢であるハードスーツに転移してコントロールされているように行動していたが、ある時から自動行進が止まった。

 そこから考えられるのは、巨大ロボの軍団をコントロールしていた財団の奴らの本拠地が襲撃され、彼らごと木っ端微塵に粉砕されたと言うことだろう。

 

 となれば、やることはいくつかある。

 

 このまま、巨人族の住処を崩壊させるためにあの垂直に伸びた塔を破壊するか、もしくは撤退させるだけの猶予を与えるかだ。

 以前の俺だったら、吸血鬼共に襲撃される前だったら前者を選んでいたんだろうが襲撃後に篠崎とデートをしていくと、その考えもどうなのかと思うようになった。

 確かに、スリルを味わいたいのは確かだがだからといって俺がくたばることで、彼女を悲しませるのも気が引けてきたのだ。

 

 そして何より、巨人族も屈強な兵士だけではないのはこの宇宙船を見てきたからわかる。

 だからこそ、無駄死にを避けて平和的な解決法もあるのではないかと思うのだ。

 その思いから、俺はハードスーツを着たままで飛行ユニットを扱って空を飛ぶと、塔の近くにいる巨大ロボに向かって飛んでいった。

 

 

 

「もうちょいッだッ! ………!?」

「ふん!!」

 

 塔の近くにいた巨大ロボに乗り込み、コックピットで操作していたそいつを殴り飛ばすとコックピットから盛大に吹き飛んだ。

 そして、互いの姿を確認した後でそいつが来ているハードスーツの顔の部分が割れて、操縦者の顔がわかるようになった。

 

「なんッだ………くッそッ!」

「西か………」

「和泉!? てめぇ………和泉、てめぇ!」

 

 悪態をつきながら立ち上がった西は、俺と向き合う形で歩み寄ってきたので語りかける。

 

「西、もう充分だろう? ここは撤退しろ」

「ハッ、なんなんだよおまえ………」

「奴らもかなりのダメージを受けているはずだ。だから他の道もあると思うんだが?」

「変わったな、おまえ………」

 

 西は呆れた様子でそう言ったが、互いの意見は平行線を辿っただけだったので自分の意志を貫くなら相手と殴り合って言うことを聞かせるしかない。

 そのため、俺達は敵陣のど真ん中で殴り合うこととなった。

 

 

 

 ブン! ブン!

 

 ガキン! ガン!

 

 

 

 とは言え、竜崎ほどではないといっても身体を使った戦いにも慣れている俺と、ずる賢く立ち回っているだけだった西との戦闘経験の差は断崖絶壁ほどに開いていた。

 ハードスーツのスペックは高いが、彼はそれを便りに戦っているようなので同じスペックに戦闘技術を上乗せした俺のペースに圧倒されている。

 その結果、顔面を盛大に殴られた西は数メートルは吹き飛んででんぐり返しをした後で、壁にぶつかるように倒れ込んだ。

 

「なんなの、おまえ? 何がしたいの?」

「おまえこそ、何がしたいんだよ」

「おまえをぶっ殺してこの世の最高権力者になんだよ!!」

 

 西の問いに、俺が平然と聞き直すと彼はそう叫んだ。

 はぁ、こんなクソガキと手を結んでいたとはな。自分の浅はかさに呆れる。

 この塔を破壊したところで権力を得るのは元々、権力者だったヤツか上手く立ち回ったヤツぐらいだ。

 竜崎は上手く立ち回っているが、権力自体にはあまり興味がなさそうなのでアイツが権力者になった、て聞いたら噴き出すな。絶対に。

 

 その分、アイツは自分の得手不得手を弁えている様子だったのでこの戦いが終わったら、自分の気が向くままに生きていきそうだ。

 だが西は、子供が夢から覚めるのを嫌がるように権力というものに幻想を抱いている。

 自分が偉くなれば。自分が人の上に立てば。

 そんなことを捲し立てるコイツは、ここで見逃してもいつかきっと同じことを繰り替えると思うから、ここで殺しても問題はないだろう。

 

 そのため、俺は右手を西に構えるとエネルギーをチャージしてから撃ち放った。

 

 すると、西のハードスーツは胴体が破壊されて腕は肩の部分が崩壊したので只の置物になり、足の部分は単なる脛当て同然となった。

 もっと出力を上げれば、コイツを殺すことも出来たがコイツのための罪の意識を持つ必要も無いので、生殺与奪の権利は巨人族に渡してやろう。

 そう思いつつ、俺は飛行ユニットに目を向けるとビームの衝撃で意識を失いかけていた西が、俺のやろうとしていることに気が付いたようで声を掛けてきた。

 

「なにを………する気だ………」

「………」

「俺が死んだら、誰が転送すんだよ」

「………」

「聞いてんのか!? オイ和泉!」

 

 転送ねぇ。そんなもんがなくてもなんとかなるし、そのための飛行ユニットだろ。

 そのため、両手にエネルギーを溜めて発射すると俺が乗ってきた飛行ユニットが吹き飛んで、残ったのは西が扱っていた飛行ユニットだけになった。

 そして、自然の流れでそれに跨がると俺は地上に向けて飛び立った。

 その後ろで、西が何かを叫んでいるが知ったこっちゃないな。運がよければ地上で再会するだろ。

 

 

 

 そんな訳で、俺と西との戦いはここで終わりとなってめでたしめでたし、となればよかったんだが物事はそう上手く行っていないようで、地上に降り立つ際にちょっとした苦労があった。

 何故なら、宇宙船が宇宙へ向けて飛び立ったようで俺が出口に到着した時には、宇宙から見た蒼い地球が見えたのだ。

 ガガーリンだったかが言っていたが、地球は青いんやなと心のどこかで思いながら息苦しさで顔をしかめつつ、地表に向かって急降下しているとようやく地球に辿り着いた、という実感が持てる高度まで達した。

 

 そして、俺が地表に降り立つと周囲にいた人間達が俺のことをテロリスト扱いしてきたので、撃ち返そうかと思ったがそれまで止まっていた公共テレビが映りだした。

 その後、ナレーターと思われる男性が今までの巨人族の映像はプロパガンダであり、俺達ガンツチームこそが最後の頼みの綱だと主張した。

 

 

 

 

 

 竜崎side

 

 

「ケータイだ!」

「携帯!? ………そうか、死んだ奴が持ってるかもな」

「ケータイ探しか………通じんのかオイ」

「やらないよかマシだと思うぞ。探そう!」

 

 和泉がそんなことをしているとは露にも思わず、俺達は途方に暮れていると加藤が思ったことを言ったので俺もそれに賛同して携帯探しとしゃれ込んだ。

 彼は飛行ユニットで脱出できたが、その一方で俺達には足となる乗り物がないので徒歩での移動となって、延々と歩き続けないといけないのかと思っていたのだ。

 そのため、あっちこっちに散らばって探していくといくつかの生きている携帯があって、見てみると電波もかろうじて通っているようだ。

 

 それを見た俺達は、頼みの綱として片っ端から掛けていったが誰も電話を取らないまま、全ての携帯が圏外となってしまった。

 そのことに落胆しつつ、歩いていればどこかの出口に辿り着けるだろうという考えで移動を開始した。

 そうしていると、足をやられて矢沢さんに背負ってもらっている眼鏡君が持っていた携帯に、電話がつながったようで少しのやり取りをしてから俺に渡してきた。

 

「戦争が終わるのか? どーなってる!?」

「こっちは九州のチームで斉藤って言います」

 

 俺は期待を込めて会話をすると、どうやら世界中のガンツチームが敵の母艦に集まっているようで、アメリカのチームが追い込みを掛けているそうだ。

 どうやら、セバスがやってくれたようだと思いながら必要な情報を聞くとチーム内で共有した。

 

「どーやら、アメリカのチームが向こうの母艦で勝ち掛けているようだ。俺は現場に行くつもりだが強制はしない。地上に降りたいヤツは申し出てくれ」

「あぁ、いくぜ」

「俺も行くが、迷っている奴はいるんじゃないか?」

 

 前島や岡を中心とした大阪メンバーは、行くつもりらしいが加藤や風は迷っている様子だった。

 まぁ、頼りにしてくれる人を持っている奴らからすればその人達が心配なのは、十二分にわかっているのでしばらく待っていると加藤達は母船に行くことを決意した。

 そのため、スーツ組は母船に向かって裸の人達は地上の安全な場所に転送してもらうことにした。

 その方が効率的だし、言い方は悪いが彼らはお荷物になっていたのでなるべく身軽で行きたいのが本音だった。

 

 

 

 そして俺らは、始めて敵の母船へと乗り込んだのだ。




と言うことで、西は退場して和泉は地上に帰還。
竜崎達は敵の母船へと乗り込みました。
一応、西も生存させようかとも思ったんですが逆恨みで和泉を殺しそうなので退場させました。

西ファンの方、これを読んでいるかは分かりませんが申し訳ありません。
ところがどっこい………夢じゃありません………! 現実です………! これが現実………!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。