異世界?での改変生活 作:松竹
あとこの場で読んでくれている方にお願いというか報告?しておきます。前に投稿したのが去年の10月頃なのでかなり前に頂いた感想についてですが。ちょくちょく「原作と違わね?」と言った感想を頂きます。
あらすじ含め再三書いてますがこの話はあくまでネギま!を模した世界なので原作そのものでは無いです。なので「原作と違う!」と言われても「そういう仕様です」としか返せません。そもそも2次創作において原作に忠実じゃない作品など多々あるのでそれについてはあまり気にしないで下さい。今後「原作とここが違う」みたいな感想は全てスルーしますのでご了承下さい。
勿論設定やらの矛盾点など多々出てくると思いますがこれについては出来るだけ少なくできるように善処しますとだけ言っておきます。私の力量で矛盾の無い世界を構築するのは不可能なのである程度許容して下さい。
「ふっ!」
呼気と共に振るわれる鋭い剣閃
「っと!」
横薙ぎに振るわれるそれを屈む事でやり過ごす。頭上に感じる剣風に軽く冷や汗を掻きながらも体を回し剣をかわすと同時に返しの水面蹴りを放つ
「ちっ」
地を這う様な蹴りを飛び上がる事で避け、落下の勢いを上乗せした剣を相手の目掛けて振り下ろす
「ほっ」
空中から襲い掛かる剣閃を冷静に見極め、剣の腹に手を軽く添える事で受け流す。それと同時にがら空きの顎目掛けて掌底を打ち込む。
「くっ!」
瞬時に反応し腕で防がれたが受けた衝撃で態勢が崩れる。そのまま流れるように踏み込み追撃をかける。
「ちぃ!」
密着されるのを嫌ったのか間合いを保つため後ろに跳び退きながら剣が振るわれる。牽制目的で放たれた横薙ぎの一撃を読んでいたのか深追いはせず軽く後ろにさがる。3mほど距離を空けて向かい合う両者。互いに相手の隙を探り合いながらジリジリと間合いを詰めていく。
「流石に守りが堅いなサイ」
「それだけが取り柄なんでね。木刀とは言え詠春の剣を受けるなんて冗談じゃない」
軽口を叩きながらも2人はけして油断していない。お互いに
「悪いが今日こそ勝ち星で並ばせて貰うぞ」
「痛いのは御免だからな。今日も負ける気はないよ」
戦績で負けるとはいえそれは詠春がサイに劣る訳では無い。負け越している理由は気の使用を禁止しているからだ。つまり詠春は神鳴流の技の大半が使えないのだ。勿論只の剣士としても詠春の技量は達人の域にある。では何故サイに負け越しているのか?それは技の使用不能という縛りに加えて最初の数戦でサイに動きを覚えられた事が原因だった。
「はぁ!」
一足跳びに間合いを詰めた詠春が袈裟斬りに剣を振るう。
「とっ」
振り下ろされる剣から身を反らし紙一重で避ける。あらかじめ避けられる事を予期していたのか一瞬の停滞も無く流れるように剣が跳ね上がってくる。その追撃も慌てる事なく受け流す。もう何度も詠春の剣は見せて貰った。いまさら全ての技を振るえない彼の剣を容易く受けるつもりは無い。
「くっ!本当に厄介だなっ!」
「お褒めにあずかり光栄だっと!」
もともとサイの戦術は回避、つまり守りに重きを置いている。自身の気や魔力の量がいわゆる【最強クラス】の実力者達に大きく劣る事を自覚しているが故にサイは相手の攻撃を受けないように立ち回る。
相手の動きを観察し己の感知能力を駆使する事で相手や周囲の気や魔力の流れを感じ取る。生物であるならば必ず気や魔力を持っているし世界にはそれら目に見えない力が満ち溢れている。つまり詠春が動けばそれらも同時に動く訳だ。サイはその動きを全身で感じ取る事で驚異的な見切り可能にしていた。
「そろそろ時間切れだ」
「何!?もうそんな時間か!」
どうやら今日もまた時間切れの引き分けの様だ。これで13戦5勝4敗4引き分け。縛りがある状態とはいえ青山詠春相手にこの戦績ならまずまずだろう。まぁ制限無しなら全く勝てる気はしないが。
「ふぅ。今日も攻め切れなかったか」
詠春がタオルで汗を拭いつつ話しかけてくる。やはりまた勝ちを逃したのが少々悔しいのかその眉間には皺が寄っていた。
「まぁ俺より詠春の方が縛りが大きいしね。今の条件でそうそう負ける訳にもいかんだろ。……と言っても今日も何度か危なかったけど」
サイは体を解す様に肩を回しつつそう答える。サイとしても全力でやり合えば自分の方が分が悪いという自覚がある。ならば少なくとも今の条件で簡単に負ける訳にもいかない。純粋な技量ですら彼らに遅れを取る様では話にならないのだ。
「まだまだ修行が足らんか。まぁいい明日こそ一太刀いれてみせる」
「未熟はお互い様だな。今の条件でほぼ互角じゃダメダメだ。まっ未熟だろうがこれからも負ける気は無いけどね?」
互いに一瞬だけ戦意を高め視線を交差させた後、その場から歩きだすのだった。
まだ日が昇り始めて間もない時間帯。オスティアの街が目覚めを迎える前にサイと詠春の模擬戦は始まる。王宮内の中庭で朝食前まで続けられるこの訓練を始めてそろそろ2週間近く経つ。それはつまりナギ達がこの
「それにしても……奴らは本当に上手くやってるんだろうか?……心配だ」
中庭から自室に向かう道すがら眉間に皺を寄せた詠春がそう呟く。
「まぁ大丈夫だろ?アルナとアルビレオは心配するだけ無駄だし、ゼクトならそうそう無茶はしないだろ?唯一気がかりなのはやっぱりナギか……」
心配性な詠春に苦笑を漏らしつつサイも少々不安を感じていた。
サイがナギに色々ぶっちゃけた後の事になるが。あの後王宮に戻った2人はアリカとアルナ、そして【紅き翼】の面々を集めてこれからの方針を話し合う事にした(因みに全員集めると護衛にあたる人間がいなくなるので一応アスナもこの場に呼んでいるが彼女は話し合いには参加してないのでここでは割愛する)。
全員をアリカの執務室に集めた後、行なわれた話し合いについて大まかに説明するとまずサイがナギに話したのと同じ内容の話を全員にする事から始められた。この時軽くアルナに弄られた程度で全員が割とあっさりサイの話を信じた。その事でサイが「こいつら人が良すぎじゃね?それとも俺がおかしいのか?」と軽く自己嫌悪に凹んだのだがまぁそれは余談だ。
長くなるので色々端折って結論を言うと話し合いの結果、もともと復興がある程度すんだ段階でオスティアを去り、再び各地の戦場を巡る予定だった【紅き翼】の面々も本格的にアリカ達に協力する事になりメンバーもそれぞれ別々に行動する事になった。
まずアルビレオ=イマ。
彼は現在アルナと共にオスティアを後にし連合の中心であるメガロメセンブリアに向かっている。これは対【完全なる世界】の協力者を募りつつ今回の戦争を収束させる為の根回しも兼ねての事だ。話の当初はアルナの護衛も兼ねての事なのでナギが同行すると言う話もでたがナギがアルナについて行っても戦闘力以外役に立たないと言う事でこの役目は【紅き翼】の参謀役たるアルビレオに白羽の矢がたった。彼は「フフ。まぁお任せ下さい」と言葉を残しアルナと共にこの国を発った。
次にゼクト。
彼が受けた役目は現在ヘラス帝国に押されている戦線の維持。様はこのまま連合が負けてしまわない様に時間稼ぎをするのがゼクトの仕事だ。今のまま戦況が推移するとそう遠くない内に連合と帝国の戦力バランスが崩れる。そうなれば如何にアリカ達が手を尽くそうとヘラス帝国は止まらないだろう(子供の喧嘩じゃ無いのだ。勝ち戦を横から止めろと言われて「じゃあ止めます」とはいかない)そうなれば今度こそこの国も帝国に踏み潰される事になる。いくら【紅き翼】(一応サイもいるが)が強くともヘラス帝国の全戦力を押し返すのは流石に無理だ。
この役目も当初はナギが請け負うべきと話が出た。まぁ当然だろう。【紅き翼】最強の戦力であり戦闘バカのナギにこそ相応しい役目だ。にもかかわらずゼクトが選ばれたのは
次に青山詠春。
彼だけは他の面々と違いこのオスティアに留まっている。彼の役目はこの街の防衛。ようは何時動くか解らない【完全なる世界】に備えるためにサイ一人では力不足なアスナの護衛を強化する役目を仰せつかった訳だ。ついでに空いた時間にこの国の騎士たちに稽古をつけたりもしている。なんとなく他にできる事が無いから残った仕事に回された感があるが詠春は特に不満を感じてはいない様だ。曰く「私は剣を振るしか能の無い男だからな。与えられた役目をまっとうするだけだ」らしい。
で最後にナギ=スプリングフィールド。
おそらく彼が今も詠春が眉間に皺を寄せている原因であり、サイも自分で推薦しておきながらやっぱり心配になってしまっている不安の種だったりする。
ナギが請け負った役目は戦力の確保。原作【紅き翼】の最強メンバーの一人であるジャック=ラカンの勧誘だ。これについては当初全員が反対の声をあげた。ジャック=ラカンの名はアルビレオも知っていたのでその力を疑う事こそ無かったが彼が現在住んでいるのはヘラス帝国。つまり彼を勧誘しに行くと言う事は単独で帝国内に潜入する事を意味する。【紅き翼】で最もその存在が知れ渡っていてどう考えても隠密行動に向いていない
これについてはサイが自分の意見を強行に主張する事で押し切った。簡単に説得の内容を説明すると「ジャック=ラカンは
これはこの世界の【紅き翼】のメンバーもなんだかんだでナギの下に集っている事が理由だ。ナギは物事を深く考えずその場のノリで行動する直情的なバカだがそのどこまでも真っ直ぐな在り方は人を惹きつける(要するにカリスマと言うやつだ)。もしラカンの人柄やら性格やらが原作と違っていてもなんだかんだで何とかすると根拠無く思わせるのがナギと言う存在なのだ。サイが心配なのはラカンの事ではなく「それ以外になんか厄介ごとを起こすんじゃ?」という事だ。
いわゆる主人公体質なナギは今までにもあちこちで問題に首を突っ込んだり巻き込まれたりしていたと最近よく話す様になった詠春から聞いている。その男が一人敵地に赴いて何の問題も起こさないだろうか?と内心不安を感じていた。
「……まぁここで俺達が心配しててもしょうがないし前向きに考えよう」
「……そうだな。多分大丈夫だ……多分」
サイと詠春はそんな感じで乾いた笑いを漏らしながらそれぞれ自室に帰って行くのだった。
「父上たちのわからずやが!」
ヘラス帝国の帝都にある王城の一室で少女が怒りの声を上げていた。
「何故わからんのじゃ!このまま戦など続けても国と民が疲弊していくだけじゃと言うのに!」
彼女の名前はテオドラ。世界の半分を治める大国ヘラスの第3皇女だ。未だ幼く政務に関わる事は許されていないが彼女は普段のお転婆さと裏腹にかなり聡明な知性を持っていた。そのテオドラからしてみれば今回の戦争などナンセンス極まりない。
もともと連合との関係はお世辞にも良好とは言えなかったがそれでも実際に戦端を開くほど悪くもなかった。小さな小競り合い程度は多々あるもののそれも交渉で片付く程度。本当なら時間をかけて外交を積み重ね、少しずつでも両者の関係を改善していく事が重要だった筈なのだ。
純粋に一国の国力と言う意味では世界最大最強を誇るヘラス帝国だがその広大な国土の全てが発展している訳ではない。むしろその広大すぎる国土ゆえに帝都を中心とした中央と辺境の格差は激しい。人であれ亜人であれその内面にさほど違いはない。同じ様に税を納め同じように国に尽くしているのに自分は苦しい生活を強いられ他人が優雅に暮らしていれば不満がでるのは当然だ。辺境から寄せられる不満の声はけして小さくはない。
「だというのに」
にも関わらず現在の帝国はそれら辺境に回すはずの税も戦争に費やしている。このまま戦線が拡大していけばさらに国の財政を圧迫していく。そうなれば辺境のみならず帝都に暮らす民にも影響がではじめるだろう。今は帝都近郊の暮らしにはさしたる影響も出ていないし優位に戦争を進めているおかげで誤魔化しているがこのままいけば民の不満は水面下で徐々に蓄積されていく。そうなれば戦争どころでは無くなる。最悪、辺境で暴動や反乱が起きてもおかしくは無い。
「いや。そもそもの原因は重臣どもじゃ!あやつらめ一体なにを考えておるんじゃ!」
元々今回の戦争は皇帝たる父に重臣連中がそろって圧力をかけたのが原因だ。いかにヘラス帝国を統べる皇帝といえど古くから国に仕える重臣たちを蔑ろにはできない(ヘラスは独裁国家ではないのだ)。連中のあげた建前は「我ら古き民の文明発祥の聖地 オスティアの奪還」だ。
つまりは聖戦という訳だ。宗教や信仰というものはとても厄介だ。古くは旧世界でかの十字軍が聖地エルサレムを目指したようにこれほど簡単に自身を正当化させ民を煽る文句もない。この国の民達の多くも世界最古の国ウェスペルタティアとその王都オスティアには一定の敬意を払っている。しかし現在その地は長く敵対を続けているメセンブリーナ連合に属している。彼らから自分達の聖地を取り戻すと言うのが重臣連中の言い分な訳だが……
「初めは戦争を利用してただ自分達の私腹を肥やしたいだけじゃと思っておったが……」
ハッキリ言ってテオドラはこの建前を微塵も信じていなかった(おそらく父も信じてはいないだろう)。たしかにオスティアに対する畏敬の念はテオドラ自身も持ち合わせているがそれだけで国政を左右する事はありえない。何か他に理由があるはずなのだ。
「むぅ~~わからん!やめじゃやめじゃ!」
悶える様に頭を抱えた後、それらを全て振り払う。自分の立場では情報が少なすぎる。考えても解らない物は解らない。もともと物事を深刻に考えるなど自分のスタイルではない。
「これは気分転換が必要じゃ!」
自分自身に言い聞かせていたのかウンウンと頷いた後、豪快にドレスを脱ぎ捨てる。傷一つ無い褐色の肌が惜しげもなく晒されあっという間に下着姿になってしまった。いくら自室での事とはいえ一国の姫君として少々(かなり?)はしたない限りだが残念ながらそれを指摘する人間はいなかった。
「うむ!完璧じゃな!」
着替えを済ませ鏡に映る自分をみながら満足げに自画自賛する。まぁ実際は普段身に着けているドレスに比べれば目立たないだけでそれなりに物の価値がわかる人間が見ればどう見ても上流階級の娘だと解かる格好なのだが聡明とは言えまだまだ世間知らずで子供な彼女は全く気付いていなかった。
「では出陣じゃ!」
最後に外套を羽織り顔を隠すためにフードを深く被る。そうして全ての準備を済ませたテオドラはそそくさと自室を後にするのだった。
「うめぇ~!これマジいけるぜオッサン!おっちゃんもう一本くれ!」
「ガハハハ!当然だろ?俺が見つけた穴場だぜ?」
「……お客さん。そう堂々と流行ってないって言わないで欲しいんだが」
所変わりヘラス帝国に潜入したナギだが彼は現在、サイや詠春の心配をよそに帝都にて一人旅を満喫していた。初めて訪れたヘラス帝国の街並みを思う存分散策し、公園の隅でたまたま見つけた屋台で売られている焼鳥?を頬張る。まだ日も高いのに自分より先に屋台で焼鳥?を食べながら勝手に持ち込んだ酒を飲んでいたダメなオッサンと何故か意気投合(おそらく波長が合ったのだろう)。店主の苦情を華麗にスルーしつつ昼間から2人で酒盛りを始めていた。
「ほぉ~。じゃあわざわざ人を探すためにこの国に来たのか」
「そうなんだよ。っても何処に住んでんのかよくわかんねぇんだけどな」
酒を飲みつつ話しかけてくるオッサンに隠すことなく正直に自分の目的を話すナギ。元々ジャック=ラカンの正確な所在までは掴めていなかったので現地での情報収集で本人を探すのが今回の方針だ。それを考えればこうして帝国の人間と仲良くなり情報を集めるのは悪くない手である。まぁ本人は特に何も考えて無さそうだが。
「ハハハ!何だそりゃ!それじゃ何処探すんだよ坊主!」
「坊主じゃねーし。まぁ何とかなんだろ?有名なヤツらしいし」
互いに串に刺さった肉を食いつつ酒を飲む。一応本来の目的は忘れていない様だがどう見ても情報収集と言うよりただの世間話程度のつもりで話題にしているだけにしか見えない。
「へぇ~なんてヤツだよ?俺はそれなりに顔も広いからな。知ってるヤツかもしれん」
「マジか!」
やはり情報収集のつもりじゃ無かったのだろう。思わぬ所で有力な情報を掴めるかも知れないと驚き身を乗り出す。
「オウ!ただの噂から本人の情報まで一つ10万ドラクマから情報を売ってやるぜ」
「金取んのかよ!?」
どうやら有料だったらしい。まぁ世の中そうそううまい話は無いものだ。
「あたりめぇよ。ただの噂程度なら10万、有力な目撃情報なら100万ってトコだな」
「高ぇ!?オッサン足元見過ぎだろ!?」
あまりの高さに再びつっこむ。いくらなんでも暴利である。
「オイオイ。何言ってやがる。何のあても無いボウズの貴重な情報源になってやるんだぜ?この程度の代価は当然。むしろ感謝する所じゃねぇか」
「ヤレヤレ。これだから世間知らずのお子様は……」とでも言いたげに首を振りつつ呆れ顔のオッサン。そしてそれを見たナギの返答は彼のことを知る者ならある意味予想通りだった。
「んな訳ねぇだろーが!ぜってぇアンタにゃ聞かねぇ!」
多少なり頭が回る者ならとりあえず本当にオッサンが情報を持っているのか確認するのがまずやるべき事であり、あまりに高い代価についてはその後で交渉すればいい(勿論それで値切れるかどうかは別の話だが)。この場にいるのがナギ以外の人間ならその程度は考えただろうがまぁ彼にそれを期待してもしょうがない。
「まぁ俺はそれでも構わねぇが本当にいいのか?この国は広いぜ?」
「必要ねぇ!」
ニヤニヤと問いかけるオッサンの表情にますます聞く気が失せる。
何のあてもなくたった一人を探す。言うのは容易いが行うのはなかなか難しい。まして今回の人探しはいつまでも時間をかけていい物じゃない。多少の利害が計算できるならまず話を聞くべきだと誰でも解かる。だがそんな計算で動かないのがナギでありどれほど強くても彼がまだまだ子供という事でもあるんだろう。
「ったく。ホントがめついオッサンだぜ」
「ガハハハ。まぁ世の中そんなもんだ」
「意味わかんねぇし」
憤懣やるかたないといった様子で酒を飲むナギに世の無情を説くオッサン。まぁ彼の言う通り世の中そうそう上手い話ばかり転がっている訳じゃないがオッサンの性格と世間の厳しさは一切関係無い。目の前のオッサンが守銭奴なだけである。
「まぁタダで情報はやらねぇが酒は俺の奢りだ。面倒くせぇ事は後にして今は有り難く俺の酒とオヤジの肉を味わえや」
「言われなくてもそうするっての!おっちゃんもう一本!」
情報収集に失敗し機嫌を損ねていたナギだが彼はすぐに気分を切り替えた。元々根に持つ性格でもないので余程の事でもなければナギの怒りは持続しない。何だかんだで何となく気の合う者同士だ。飲み食いしている内に先程のやり取りを忘れたのか再び2人揃って騒ぎ出すのだった。
その後1時間ほどたった頃だろうかワイワイ騒ぐ2人の元へこの後起こる騒動の種が舞い込んできたのは。
「あん?」
「なんだぁ?」
公園の入口の辺りが騒がしい。2人揃って注意を向けるとそちらから小さな人影が走り込んできた。外套で容姿は分からないが体格からしておそらく子供だろう。2人の前で立ち止まった子供はキョロキョロと焦った様に辺りを見回した後、2人(ついでに屋台の店主)にむかって唐突にこう告げた。
「お前たちここには誰も来なかった!よいな!」
「「は?」」
2人(ついでに店主)にそう告げた子供はそのまま屋台の影に身を隠してしまった。
呆気に取られる2人(+店主)を余所にさらに自体は動いていく。子供が走り込んできた方向から複数の人影がガシャガシャと鎧を鳴らしながら走ってくる。
「今度は何だ?」
「ありゃこの国の兵士だな」
(何となく)偉そうな子供の突然の要求に呆気に取られていたナギだがついで現れた兵士を見てすぐに思考を切り替える。(おそらく)彼らから逃げてきた子供とそれを追いかけてきた国の兵士。明らかに厄介事の匂いがする。どうやらオッサンも同じ考えらしい。やたらと楽しそうだ。
2人の前までやってきた兵士の一人がこちらに話かけてきた
「おいお前たち!ここに子供が来なかったか!」
「随分仰々しいじゃねぇか。誰を探してんだ?」
ナギが一瞬どう答えるか迷っている内にオッサンが話しかけていた。どうやらオッサンは素直にさっきの子供の事を話す気は無いらしい。
「お前たちには関係無い!ここに子供が来たのか来てないのか早く答えんか!素直に話さんと為にならんぞ!」
そう言って先程とは別の兵士が手に持っていた槍を突きつけてきた。(一応)一般人にいきなり武器を突きつけるとは随分と余裕が無い。どうやらさっきの子供は余程の重要人物らしい。普段あまり物事を深く考えないナギにもその程度予想はついた。ここで普通の思考の持ち主ならば兵士の態度を不快に感じても素直に従っただろう。あるいは子供の事を隠すにしても穏便に対応したはずだ(国の正規兵と揉めても何のメリットもない)。
ナギはバカだとよく言われるがそれは「考えるより先に体が動く」と言う意味でけして頭の回転が悪いと言う意味ではない(むしろただの直感とその場のノリで何故か正解を引き当てる所などある意味天才と言える)。当然ここでヘラス帝国の兵士と揉めることのリスクくらいは計算できる。だが打算や計算動く人間なら絶対取らない様な選択をその場のノリと直感で取るのがナギのナギたる所以である。
つまり何が言いたいかというと……
「知らねぇし知ってても教えねぇ」
彼は兵士の問を突っぱねた。
多分今回からキャラがある程度バラバラに動きます。オリ主の出番が減ると思いますが一応1話の内にサイの視点の話が全く無いと言うことは無いと思います(影が薄くなるので)。