デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

103 / 136
 かなり抑えていますが、今回はわりと真面目に残酷描写注意です。前半最初の方。


50話「再活です Ⅴ」

「――姉……さん……?」

 

 目の前で、姉が膝から崩れ落ちる。

 麗しの蝶は失墜し、その翅をもがれたのだ。

 

「あはは……ごめんね。トンボ、ハエ」

 

 彼女は力なく、笑っていた。 

 

「私、負けちゃった」

 

 それはきっと、彼女の精一杯の、姉としての強がりだった。

 しかしいくら強がっても、結末は同じ。

 

「然り」

 

 冷たい声が響き渡る。

 

「勝敗は決し、判決は下された。敗者は我が王国の法規に従い、囚縛する。女王を奉るべく建国された我が国にて投獄される誉れを享受せよ、羽虫」

 

 突如として、ミネルヴァの足下から、咎人を囚えるための黒い鎖が伸びる。

 否、それは鎖ではない。黒い落し子の成す、触手だ。悍ましく泡立ち、肉塊の収縮するそれは、バタつきパンチョウに絡みつく。

 それとほぼ同時に、彼は駆け出した。

 

「っ! させ、る、かぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 それはさながら、黒い弾丸の如く。

 一匹の小さな羽虫――木馬バエは、姉に害なす者へと、牙を剥く。

 

「! 待って、ハエ! トンボ! ハエを止めて――!」

 

 姉の言葉は届かず、兄の制止も間に合わず。

 木馬バエは、憤怒と憎悪を滾らせ、害意に害意を以て、ミネルヴァ・ウェヌスへと殺意の腕を伸ばす。

 

「姉さんを、連れて行かせるか――!」

 

 その言葉と、ほぼ同時だった。

 

「――違法なり」

 

 

 

しゃりん

 

 

 

 金物の擦れ合う音が、小さく響いた。

 ミネルヴァが白刃を抜く。木馬バエの腕を躱し、その間際に、抜いた勢いのまま剣を振り上げる。

 鮮血が、吹き散らされる。

 羽虫なれど、人を模した人外なれど、そこには確かに赤い血が通っていた。

 蛇口を捻るように溢れ出す赤い液体。

 

 そして、神殿の床に転がる――一本の、腕。

 

 蠅の片翅は、毟り取られたのだった。

 

「っ、あ、ぐ……!」

 

 躱された勢いと、片腕の喪失により体幹がぶれ、木馬バエは倒れ込んでしまう。

 

「契りを破ることは、許されざる大罪。汝、その罪贖うべし」

 

 ミネルヴァは白刃にこびり付く血を振るい落とし、鞘に収める。

 瞬く間に起こった所業に、バタつきパンチョウは震える声で叫ぶ。

 

「な、なんで!? 弟には手を出さないでって……!」

「先に義を違えたのはそちらである」

「私はそんな契約はしてないのよ!」

「否だ。契約ではない、義だ。契約内容は「自分の身の担保の放棄、その代償として弟の身の保証」である」

 

 バタつきパンチョウの宣誓は「私はどうなってもいい。けれど弟には手を出させない」そして「我が身に変えてでも弟たちを守る」であった。

 即ち、弟へと及ぶはずの被害はすべて、姉たるバタつきパンチョウが代わりに引き受ける、という契約が成されたわけだが、

 

「そ、そうなのよ! だから弟には……」

「しかして契約には必ず裏があり、正義とは法規に優先される。額面通りのままであれば、貴様の身を犠牲に、弟君は保証を盾に暴威を振るうことも可能だろう」

「は、はぁ!? 私たちは、契約の穴を突いたって言いたいの!? そんなの言いがかりなのよ! あの子はただ、私やトンボと同じで、家族思いだからで……」

「貴様らの意志を汲み取らない。重要なことは意識ではなく結果である。法と契約を盾とした不義は許されない。貴様の弟は、目論見がどうあれ結果として、契約による保証を盾に私へと牙を向けた。そのように判断される事を為した。ならば私はその不義に対し、剣を抜く権利を得るのも必然である」

「でも、そんなの、だって……!」

「言葉の意味がわからぬようだな。ならば簡潔に言ってやろう。これは“正当防衛”だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

 彼がそう宣言するのならば、それはそういうことになる。

 この国における法は、女王そのもの。そして女王が管理を任せているミネルヴァ・ウェヌスこそ、司法そのものに他ならない。

 

「あまり囀るなよ、羽虫。女王陛下の威光輝く我が国において、貴様らに義はない。発言を許可するだけでも温情と知れ」

 

 ミネルヴァは昏き正義を振り翳し、酷く冷徹に、そして傲慢に、蟲たちを侮蔑の眼で見下ろす。

 

「しかし情状酌量の余地はある。落とすのは腕ひとつ、翅の一枚を毟るだけだ。私刑であれば妥当なところであると判断する。私の法も義も、姫の願いより優先されることはない。姫は、貴様らの死滅を望んでいない。どれほどの大罪を重ねようと、命の保証だけはしよう」

「姫……? それってまさか、ウミガメちゃん……?」

 

 ならばこれは彼女が望んだことなのか。

 どこかで歪みが生じているような気はするが、だとすると――

 

「御託は終いだ。己が罪人であることを忘れるなよ、羽虫。投獄の時間だ」

「あっ、う、く……!」

 

 黒い触手が、鎖の代わりに四肢を拘束する。

 そのまま、ずるずると、神殿の地下へと、引きずり込まれていく。

 

「姉上!」

「来ちゃダメ、トンボ! あなたはハエを連れて逃げて!」

「しかし……!」

「このままじゃあの子も死んじゃう! 私は大丈夫だから、お願い……!」

「ぬぅ……ぐぅ……むぅぅぅ……っ!」

 

 迷いはあった。逡巡もする。

 ここで姉を置いて去るのは、蟲の三姉弟としての矜持が許さない。燃えぶどうトンボ自身としても、姉も弟も、どちらも見捨てられるはずがない。

 しかし彼は、ほんの僅かだが、意図せず視てしまった。

 複眼。二人称の眼。貴女自身の視点に重なる眼で、姉の気持ちを、思いを、この眼で覗いてしまった。

 姉の不安も、悲哀も、慟哭も、痛苦も、渇望も。

 弟への――愛情も、すべて。

 我が身のものとして、視たのだった。

 

「……わかった」

 

 視てしまったからには、無碍にはできなかった。

 燃えぶどうトンボは、倒れた木馬バエを抱えて走る。

 

「ありがと……私たちの弟をお願いね、トンボ」

 

 ――そうして。

 バタつきパンチョウは、黒い触手に飲み込まれた。

 堕ち行く先は、祭祀場の最下層。地下監獄。

 何人も脱獄の叶わない獄中に、彼女もまた、囚人として迎えられたのだった。

 

「……不義への誅伐は為すが、契約は違えない。この場では、私は貴様だけを収監する。バタつきパンチョウ」

 

 しかし、である。

 

「審議が必要である。弟君の国外流出を許可することは義を為すが、ここで奴らを取り逃がすことは姫の願いに背く行いなのではないか。姫の意向は、私では推し測ることはできない。よって審議が必要である」

 

 この神殿に足を踏み入れたが最後。ミネルヴァの許可なくして、国外への逃亡は許されない。

 そのミネルヴァが、姫と称する者の意志を理由に、蟲たちの解放を渋る。

 審議の間に片方が死しても、それは身から出た錆であり、こちらが関知する問題ではないと言わんばかりの傲慢で冷徹な態度。

 で、あるのだが、

 

「……む?」

 

 燃えぶどうトンボと、木馬バエの姿が消えている。

 あり得ない。この月光の王国の門扉は固く閉ざされたまま、国主の許可なくして出ることは叶わず、そして許可を出した覚えもない。

 

「なんだ? なにが起こって……っ?」

 

 異常が、あった。

 穴だ。王国の外壁を成す空間に、穴が空いている。

 なぜ今まで気付かなかったのだと思うような、大穴が穿たれていた。

 

「王国の壁に、穴。侵入者か? いや、奴らが国の外に出るために、何者かが手を貸したと考えるべきか。しかし誰が……」

 

 ミネルヴァが施策を巡らせようとする。その時だった。

 少女の呼ぶ声が聞こえてくる。

 

『ミーナさん! ミーナさーん! 招待コード送るので大至急来てくださーい!』

「メルか……あちらでも異常があったようだな。この手の推測と対応は彼女が適任だろう。急行する」

 

 この状況で王国を留守にするのはやや不安だが、致し方ない

 送られてきた(パス)を以て、ミネルヴァは招かれた王国『空想錬金工房 愚者の海(ストゥルトゥス・マレ)』へと、足を踏み入れた。

 

 

 

                    ☆ ☆ ☆

 

 

 

「おにい……ちゃん……」

 

 目の前で、兄が飲まれていく。

 姉だったものの、黒い触腕に抱かれて、ぐじゅぐじゅと、その身が埋もれていく。

 兄は黒い塊と共に、どことも知らない昏い海の底へと、沈んでいった。

 

「いやはや、悪くない結果なのでした」

 

 パチパチと、幕が下り、観客が揃って失せた暗い劇場で、青い少女はひとり愉快そうに手を叩く。

 

「もうちょっと自意識は壊れてると思ったのですが、意外とちょっと残ってたことだけが想定外。でもそれ以外は概ね予想通りの性能なのですね。これはいい感じに使えそうなのです……で」

 

 虚空に浮かべた電影に指を滑らせ、データを記録し、集積する。

 その傍らで、視線を、狭霧に向けた。

 

「そちらの雑魚の方は、どうするのです?」

「……っ!」

「え? まさか「生きろ」とか「諦めるな」とか感動的な言葉を投げかけられたからって逃げられると思ったのですか? ここ、あたしの王国なのですよ? アウェーなのですよ、あなた。そもそもあたしはあなた方を狩りに来たのですから、逃がす気はないですし。気合とか根性とか感動とか、そんなくっさいものでどうにかなるわけないでしょう」

 

 そう。ここは敵地、兄が討たれた戦場だ。

 次は自分の番。感傷に耽ってる場合でも、悲嘆に暮れている場合でも、慟哭に咽び泣く場合でもない。

 今度は自分が、武器を取らねばならぬのだ。

 

「まあ? このあたしと戦いたくないと、どうしてもと仰るなら、そこのお姉さんモドキをぶっ壊してからどうぞなのです。爆発四散すれば、流石に耐久性の問題点から駒としての継続使用は困難になるので、どうぞそのように。実のお姉さんを、バラバラに、めちゃくちゃに、ぶっ壊しちゃってくださいな! そうすれば修理か回収か、あるいはゴミ捨てのため、瞬きの間くらいは隙を見せてあげるのですよ?」

「こ、こいつ……!」

「ま、あなたには無理でしょうけど! 三女さんでしたか、そこまで下っ端だと、あたしらでは歯牙にも掛けないのですよ。次男のお兄さんですらこのザマなのですしぃ」

 

 いちいち、人の神経を逆撫でしてくる。

 安い挑発だとわかっていても、姉や兄を引き合いに出されてしまえば、激情を抑えきれない。

 しかし、しかしだ。

 心が熱く駆られても、身体は先の恐怖と狂気を覚えている。

 姉が壊され、兄が飲まれ、その他大勢のヤングオイスターズ(兄弟姉妹)が喰われた。

 怒りはある。しかし自分では太刀打ちできないことも、わかっている。

 

「ほら、あたしが憎いでしょう? 許せないのですよね? なら立ち向かっていいのですよ? あなたも一緒に飲まれるのでしょうけれど」

 

 ジリジリと狂気が迫る。

 早く決意を固めて立ち向かわなければ。なにもせず、なにもできずに、絶える前に。

 わかっていても身体が動かない。狭霧は、迫り来る脅威から、逃げたいと思い、微かに後ずさりし、逃れていると錯覚し自分を誤魔化すことしかできない。

 ここは相手の王国の内。どこにも逃げ場などないし、誰も、ここには来られないのだから――

 

「ま、あなたには無理なのですよ。あたしの傑作を越えるなら、せめて長男さんくらいは連れてこないと、釣り合いは取れないのです」

 

 彼女は、冗談めかしてそう宣った。

 その時だった。

 

 

 

「ならば、お望み通り、出向いてやるとしよう」

 

 

 

 ――兄の声が、聞こえた。

 

「アギリ……お兄ちゃん……?」

 

 混沌なる劇場。青い少女が占有し、支配する国に、彼はいた。

 若垣天霧(アギリ)。人としてそのように名乗る彼は、確かに、そこにいたのだ。

 夢でも幻でもない。確かな実を結んだ、兄だ。

 

「良かった……無事、だったんだ……」

「すまない、待たせてしまったな。手遅れになる前に、と思っていたが……遅すぎたか」

 

 ぐじゅぐじゅと、不本意な先祖返りを果たしたおぞましき姉を見て、アギリは目を伏せる。

 そしてそんな光景を、少女は訝しげに、そして苛ついた様子で見ていた。

 

「そーんな感動の再会とかどうでもいいのです。なに? なんですか? あなた、どうやって入ったのです?」

「穴を空けて無理やり押し入らせてもらったぞ。無作法だとは思うが、そちらの不躾な態度でチャラとさせてくれ」

「はぁ? 穴を空けて……? ……うわっなんですかこれ!? あたしの王国の城壁が時空断裂起こしてる!? いつの間に!? え、ええっ?」

 

 少女は仰天し、目を丸くしている。

 アギリの後方の空間。そこは確かに、不自然に、歪に、穴が空いていた。そしてそれは、少女にとって“あり得ない”こと。想定外の事態だ。

 

「どーやったんですかこれ、こんなのリオくんがめちゃくちゃに暴れでもしない限りできないような……えぇ? やばやばのやばなのですけどー!? 早く修繕しないと……!」

「狭霧、今のうちに脱出するぞ」

「う、うん……」

 

 少女がパニックを起こしている今が、明確な隙だった。

 アギリは狭霧の手を引き、急いで断裂した空間へと飛び込む。

 

「あ、ちょっと……いや先にこっちを……それとも報告が先? ならこの姉モドキに追わせて……ってダメなのです! コイツ色々弄った弊害にめっちゃ鈍いのですよね! 改造すると強みだけじゃなくて弱みもセットでついてくるとかノーセンキューなのですよ! どうにかして踏み倒せない者なのですかねぇ。ってそんなこと考えてる場合でもなく! あんな雑魚共いくらでも掃討できるので、ここは異常事態への対処が先決のはずなのです!」

 

 パニックになりつつ、少女は急いで仲間へと連絡を取る。

 

「ミーナさん! ミーナさーん! 招待コード送るので大至急来てくださーい!」

 

 相手の話を聞かない一方的な伝達だったが、彼――ミネルヴァは嫌な顔ひとつせず、むしろそれが当然のことであるかのように、即座に現れた。

 

「メル、どうした」

「さっきヤングオイスターズの長男があたしの王国に侵入したのです! 国壁に穴を空けられたのです!」

「……私も今し方確認した。“こちらも”だ」

「えぇ? ミーナさんの『光の神殿・愛護の契(ルークス・アモール)』も?」

「あぁ。あの男、なにをした? 不敬不遜である以上に、不可解だ」

 

 それは、まったく未知の力だった。

 ヤングオイスターズは存在そのものが特異で奇異。集団が個人であり、個が群であるという、独特な形態で存在している。

 しかし、それだけだ。存在が特殊、生き様が特殊、個性が特殊。それ以上でも、それ以下でもなく、それ以外など存在しない。

 つまり、彼には国の壁を破壊する、などという力は存在しないはずなのだ。

 

「女王から授かった異聞神話空間。神話と称されたクリーチャーたちの領域の疑似たる我らの王国は、原典より神話級の防護壁を備えている。少なくとも、たかが落し子が、純粋な力で破壊できる代物ではない。それは我々も同じだ」

「なのですね。流石のあたしも、壁を破壊して他人の国に侵入するなんて真似、不可能ではないにしろ困難なのです」

「王国の壁を、単純な物理的破壊力で崩す可能性を持つ者といえば、爆熱のヘリオスか、豪腕のシリーズくらいなものだろう。【不思議の国の住人】で、それほどの剛力を持つものなどは存在しない」

「……分析結果、出たのです。これ、力ずくってより、切り抜かれた感じなのです。ややアナログですが、特殊な力、あるいは特殊な力が付与された道具を用いた可能性が高いと判断するのです」

「ふむ、ヤングオイスターズは特殊な生き方をしているが、奴自身が特別とは考えにくい。となると何者かの支援があるのか……? なんにせよ、なにかカラクリがあるな」

「被害は軽微なのですけど、国を直接破壊されるとか想定してなかったのです……修繕のために時間を……あぁでも、逃げたあの人たちも追わないとなのです。っていうか修繕なんて後回しにして、彼を捕まえて尋問しちゃえば済む話なのですね! メルちゃんうっかりなのです!」

「然り。国壁の破壊は大罪でもある。迅速に追跡を開始する。メル、奴らの探査を――」

 

 

 

「――ちょっと待ちな、おふたりさん」

 

 

 

 逃走したヤングオイスターズらの追跡を始めようとするふたりを、制する黒い影がひとつ。

 黒い、男だった。

 

「ディジーさん! どうしてここに?」

「まあ色々あってな」

「ディジー。貴様には姫の警護を任せていたはずだ。なぜここにいる」

「同じことを聞くなよミネルヴァ。俺は理由もなく任を投げ出したりしねーよ、ヘリオスと同じにするな。今から訳を話すから、とりあえず聞けって」

 

 ディジーと呼ばれた男は、ふたりを宥めつつ、神妙に切り出した。

 

「あんま余裕なさそうだから、単刀直入に言うぞ。姫さんの調子が悪い」

「なに? どういうことだ」

「そのまんまの意味だよ。姫さんが呻いて唸って叫んで、ちっとばかし俺の手に余る。たぶん、女王サマの覚醒が近づいてるんだ」

「あー、思ったより早いのですね。介護係のリズちゃんは新しいアジトの建設真っ最中だから……」

「俺はこの手の対応は専門外、ヘリオスも役に立たねぇ、つーかいねぇ」

「くっ、ヘリオスめ、まったくあいつは……!」

「だからせめてメルを寄越してくれ。できればアンタもいてくれる方が安心できるけどな、ミネルヴァ」

「……わかった。急行する。メル、ここは撤退するぞ。姫の御身が最優先だ」

「むぅ、仕方ないのですね。成果自体は悪くないのですし、ここはてっしゅーなのです」

「頼む。こういう時ヘリオスはてんで役に立たないからよ」

「リオくんにそーゆーの求めちゃいけないのです。リズちゃんは今手が離せないし、ここはあたしにお任せなのですよ!」

「助かるぜ」

 

 ミネルヴァらは、追跡を取りやめ、即座に旧拠点へと帰還する。

 最後に残された男は、彼らが逃走した方に目を遣り、小さく息を吐いた。

 

「……本当に、助かった」

 

 くるりと踵を返して、ただひとり、暗夜に言葉を零す。

 

 

 

「お前らはまだ役に立つ。もう少し踏ん張ってくれよ」

 

 

 

 ――そして、彼も闇の中に、消えていった。




 メルちゃんの邪悪さの陰に隠れてる感あるけど、ミネルヴァも高潔ぶってるだけで大概クソ野郎。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告