デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

112 / 136
 ネズミーマウスvsキングゴリラ
 ちなみにゴリラって、昔はUMA扱いされていたようです。ウマ娘でも赤兎馬でもなくUMAです。


51話「復元しよう Ⅸ」

「僕のターンだ! 《爆衆聖者トップアイト》の能力で1マナ軽いぜ、《一番隊 チュチュリス》! さらに続け! 2マナで《U・S・A(ウサ)BRELLA(ブレラ)》!」

 

 眠りネズミとシリーズ・コレーの対戦。

 眠りネズミはいつもの調子で、コスト軽減から次々と軽量クリーチャーを展開、速攻を仕掛ける準備を整える。

 3ターン目にしてクリーチャーが3体。コスト軽減クリーチャーに加え、踏み倒しを牽制し場持ちも良い《U・S・A・BRELLA》。

 一気に畳みかける準備はできている、が。

 

「……私のターン」

 

 シリーズの場には《増刀(ブースト)の鎖 シノブ》が1体。

 

「3マナで《圧破(アッパー)の鎖 ナグルキツネ》を召喚。《チュチュリス》をタップ」

「ち……っ! 相打ち狙いか?」

「いいえ、狩人は、狩るために狩場に立つ。鼠一匹と言えど、狩猟は狩猟よ。《シノブ》で《チュチュリス》を攻撃――」

 

 《シノブ》が疾風のように駆ける。

 姿が見えず、木葉を舞わせ、風だけが過ぎ去る中。

 

 

 

「――アバレチェーン」

 

 

 鎖の音だけが、響き渡る。

 じゃらじゃらと鎖が激しい音を立てて轟き、蠢き、うねり、連なる。

 それはさながら、闇の種族の、生きる触手。

 

「《シノブ》の能力で1マナ追加。《ナグルキツネ》の能力で、《シノブ》のパワーを3000増加」

 

 各ターン最初の攻撃に限り発生する能力、アバレチェーン。それにより《シノブ》と《ナグルキツネ》の能力が、同時に発動する。

 《シノブ》の鎖と、《ナグルキツネ》の鎖は絡み合い、触手のように束ねられると、シリーズの領土を耕し、《チュチュリス》を飲み込んでいく。

 

「ガッデム! 一方的に殴り倒されたか……!」

 

 

 

ターン3

 

 

眠りネズミ

場:《トップアイト》《U・S・A・BRELLA》

盾:5

マナ:3

手札:1

墓地:1

山札:28

 

シリーズ

場:《シノブ》《ナグルキツネ》

盾:5

マナ:4

手札:3

墓地:0

山札:26

 

 

 

「ちっ、手札がねぇ……4マナで呪文! 《閃勇!ボンバーMAX》! 」

 

 序盤の大量展開のツケが回ってきた。《チュチュリス》がやられて、さらなる展開の出鼻も挫かれた。

 しかしこれは、チャンスでもある。

 

「まずはてめーのクリーチャーをタップだ! さらに! 僕には火と光のクリーチャーがいるから、もいっこの効果も使うぜ。手札を捨てて3枚ドロー……手札はねぇからそのまま3枚ドローだ!」

 

 テンポはよくないが大量の手札補充。

 加えて、シリーズのクリーチャーも隙だらけだ。

 

「ぶっ飛べ! 《トップアイト》で《シノブ》を攻撃! 《U・S・A・BRELLA》で《ナグルキツネ》を攻撃だ!」

 

 早く勝負を決めたい。とっととあの女をぶん殴りたい。

 そんな逸る気持ちはあるが、それ以上にこれは、友のための戦いでもある。

 時間を稼ぐなどとガラではないし得意でもないが、あいつならこうするだろうと考え“最善”を尽くす。

 

(冷静に、とか、合理的に、とか、マジ苦手なんだけどな……眠くなる)

 

 とはいえ、相手クリーチャーを殲滅できたのは大きい。アバレチェーン――その性質上、クリーチャーが展開できなければ効果が薄い。

 欠伸を噛み殺しながら、眠りネズミはターンを終える。

 

「……2マナで《フェアリー・Re:ライフ》。3マナで《拿繰(ナックル)の鎖 パンチフォックス》を召喚よ」

 

 返すターンのシリーズは、明らかに鈍った動きでターンを終える。やはりクリーチャーを殲滅されたことが効いているようだ。

 

 

 

ターン4

 

 

眠りネズミ

場:《トップアイト》《BRELLA》

盾:5

マナ:4

手札:3

墓地:2

山札:24

 

シリーズ

場:《パンチフォックス》

盾:5

マナ:6

手札:1

墓地:3

山札:24

 

 

 

(手ぇ止まったな……仕掛けるならここだ!)

 

 一瞬の我慢が悠久のように感じられたが。

 僅かな一時でも、耐えた甲斐はあった。

 

「1マナで《チュチュリス》を召喚! そんで3マナで、《チュチュリス》を――」

 

 速く、速く、ひたすらに速く。

 そして熱く、眩く、星のように燦めき、爆ぜるような一瞬の輝きを魅せる。

 その焔は――閃光である。

 

 

 

「――スター進化!」

 

 

 

 星々の燦めきは、魂の光輝。

 その力を一身に纏い、昇華される。

 

「《チュチュリス》を、《CAPTEEEN(キャプティーン)<ヘビポ.Star(スター)>》にスター進化だぜ!」

「……朽ちた者の魂を纏う。祖霊信仰も降霊も望むところだけれど、それは少し、見苦しいわね」

「言ってろクソアマ。まだこんなもんじゃねーぜ、僕の手札はこれしかない! つまりだ!」

 

 ピンッ、と眠りネズミはたった1枚の手札を跳ね上げる。

 

行け(Go)往け(Go)逝け(Go)――征け(Gone)!」

 

 それは中空で、爆ぜた。

 

 

 

「そぅら――《“轟轟轟(ゴゴゴ)”ブランド》! 発進だぁ!」

 

 

 

 空気を貫き、音を裂き、速さという速さをブチ切って、それは現れた。

 巨大なジェットエンジン、各種ブースター、スラスター。

 死の足音よりも速く、時空さえも飛び越えて。

 轟音を撒き散らす爆速の化身が、発進する。

 

「行くぞッ! 《ヘビポ.Star》で攻撃する時、マジボンバーだッ!」

 

 攻め手は整った。相手の動きは鈍く、ここが仕掛け時。

 まずは《ヘビポ.Star》が拳を振り抜く。同時に、その衝撃が眠りネズミの山札を捲り上げる。

 

「トップは置いとくぜ、ここは手札から《“極限駆雷(クライマックス)”ブランド》をバトルゾーンに! 能力でGR召喚だ!」

「あぁ……作られた命。油の臭い、彼よりはマシだけど、少し不愉快ね」

「うっせーよ! 意味不明なくれー爆速爆熱で終わらせてやっから、覚悟しやがれ!」

 

 2体目のブランド――《“極限駆雷”ブランド》が現れたことで、さらに眠りネズミは展開する。

 しかも、ここで捲るのは、

 

「ハッ! 悪魔的にマジで神引きだぜぇ!」

 

 空を駆け、制した後は。

 大地を砕くほどの豪力を、叩き付ける。

 

 

 

「そぅら――《“魔神轟怒(マジゴッド)”ブランド》の進撃だぁ!」

 

 

 

 巨大な重機を背負い、纏い、あらゆる障害の一切合切を粉砕する機構。

 道がなければ作ればいい。なにが壁になろうと壊せばいい。力と力、そして力だけで押し通る、火事場の豪傑。

 天を衝き、地を砕く。ブランドは、幾重にもその姿を分け、進軍する。

 

「出し惜しみはなしだ、もったいねぇなんて言わねぇ! ガンガン行くぞ! このターン火のクリーチャーを3体以上出してれば《“魔神轟怒”ブランド》はスピードアタッカーだ! 攻撃する時に、能力発動だッ!」

 

 もっと溜めれば、最後に動けば。そんな甘い囁きがある。

 しかしメインディッシュを待っていられるほど、忍耐強くない。攻撃の順番を思考できるほど理知的でも計画的でもない。

 そんな理性は、スピードとパワーが置き去りにした。あるのは衝動だけ。

 この滾る熱は、地を越え、天を超える――爆発する。

 

 

 

「爆ぜろ! 超天フィーバー!」

 

 

 

 道を均す、道を作る、道を拓く。

 《“魔神轟怒”ブランド》の後ろに立てば、足を止めた者も、再び立ち上がる。

 鼠はひとたび火が点けば、もう、止まらないのだ。

 

「このターン5体以上火のクリーチャーを出してれば、こいつの初めての攻撃時、僕のクリーチャーはすべてアンタップする!」

 

 アンタップするのは《ヘビポ.Star》だけではあるが。

 しかし、既に眠りネズミには多くの攻撃可能なクリーチャーが存在し、シリーズを圧倒するほどの超打点が揃っている。それに《ヘビポ.Star》も、攻撃時にマジボンバーで援軍を呼ぶことが可能であるため、さらなる展開すらできる。

 過剰なほど怒濤の勢い。鼠の軍勢は火を点けられ、燃え尽きるまで、爆進する。

 

「……S・トリガーね」

 

 しかし。

 いくら怒濤の勢いでも、燃え盛っていても。

 それは所詮、鼠なのだ。

 

「呪文《イメンズ・サイン》」

 

 シリーズ・コレーの目は、静かで、冷たくて、昏い。

 しかしその奥底に湛えた眼光は、狩人であり。

 猛獣そのものでもあった。

 

「手札からコスト7以下のビーストフォークを場に――《龍覇 イメン=ブーゴ》をバトルゾーンへ出すわ。呪文の効果で《U・S・A・BRELLA》とバトルよ」

 

 その名が示す通り、獣人の印によって現れた《イメン=ブーゴ》。

 《イメン=ブーゴ》は鋭い爪を振るい、《U・S・A・BRELLA》を引き裂く。

 

「ファッキン……! が! たった1体、所詮は単体。それじゃあ止まらねーぞ!」

「どうかしら。《イメン=ブーゴ》の能力で、《邪帝斧(イビルトマホーク) ボアロアックス》をここに――装備」

 

 そう、《イメンズ・サイン》による儀式は、まだ完遂されていない。

 《イメン=ブーゴ》は地面を割り砕き、己の得物を――邪悪な意匠の戦斧、《ボアロアックス》を掴み取る。

 

「《ボアロアックス》の効果により、マナゾーンから《ナグルキツネ》をバトルゾーンへ。《ヘビポ.Star》をタップ」

「ウゼェな……だが、だが、だが! そんでもまだ、僕は止まらねぇ! 《トップアイト》で最後のシールドをブレイクだ!」

 

 1枚のS・トリガーから、クリーチャーの展開に加え、アタッカーを2体封じたシリーズ。

 厄介ではあったが、しかしそれでもまだ、眠りネズミの猛攻は止めきれない。 

 愚直に、まっすぐに、シリーズの喉笛を噛み切るように、眠りネズミはその牙を突き立てる。

 しかしやはり、鼠とは矮小な小動物。

 急所を噛み切り、肉を喰らうという点において、より大きな猛獣に敵う道理はない。

 大地の恩恵、頑強な肉体。強き信仰、神の恩寵。

 どれに置いても、シリーズは、眠りネズミに勝る。

 

「S・トリガー発動。《Dの牢閣 メメント守神宮》」

「んだと!?」

 

 世界に上塗りされる、死を悼む楼閣。

 これで、シリーズのクリーチャーはすべてブロッカーとなった。

 つまりもう、眠りネズミの攻撃は、届かない。

 

「クソがよ……! けどよ、それでも僕は止まれねーんだよ! 《“轟轟轟”ブランド》でダイレクトアタックだ!」

「《ナグルキツネ》でブロックよ」

「《“魔神轟怒”ブランド》も行け!」

「《パンチフォックス》でブロック」

「……ターンエンド!」

 

 押し切れなかった。その反動のように、眠気が襲いかかって来る。

 フィニッシャー級のクリーチャーを何体も展開したのだ。シールドを削りきり、まだクリーチャーが残っているが、《メメント守神宮》で1ターンは確実に無力化される。それに相手には《ボアロアックス》を握った《イメン=ブーゴ》もいる。

 思考力など地の底まで落ちているが、考えるまでもなく分かる。こうなってしまえば簡単には押し通せない。

 直感できる。眠くなるような、鬱陶しく煩雑な攻防戦をしなければならないと。

 

「私のターン。6マナで《荒舞(アライブ)の鎖 ナマケイラ》を召喚。《イメン=ブーゴ》で《ヘビポ.Star》を攻撃――アバレチェーン」

 

 寝そべった《ナマケイラ》の鎖が、伸張する。

 それは大地を鋤く鍬であり、同時に侵攻を阻む壁となった。

 

「《ナマケイラ》のアバレチェーン。山札から2枚を捲り、それぞれシールドとマナへ」

「シールドを増やしやがったこいつ……! クソッタレがよ!」

「《ボアロアックス》の効果により、マナゾーンからコスト5以下のクリーチャーをバトルゾーンへ」

 

 マナを伸ばし、防御を固める。

 《イメン=ブーゴ》が《ボアロアックス》を振り上げ、その戦斧は怪しく輝く。その輝きに共鳴するように、シリーズのクリーチャーがさらに増えていく。

 攻撃と同時に、シリーズの防備は再び固まっていく――だけではない。

 

「っ!? あんだぁ!?」

 

 咆哮が轟く。

 大地は揺さぶられ、(ソラ)が震える。

 

草原(サバンナ)に萌芽を、密林(ジャングル)に豊穣を。狂った都市、昏き地底、黒い森。三つの柱は神の標にして闇の楔。狂信を捧げなさい、生贄を供えなさい。それが、あるべき信仰の姿」

 

 黒い森へと侵蝕されていくこの世界。奥地から、地響きを鳴らし、雄叫びを上げる森の主――否、王が進行する。

 

「目覚めなさい。あなたこそ、大神(かみ)の定めし自然の不条理(ワイルドルール)

「……!」

 

 狂気に汚染された、漆黒の樹林より。

 王か神か。条理を逸脱した存在が、星の枠外にある真理が、邪悪と共に這い上がる。

 ――闇の眷属、神の巫女、化身の疑似。【死星団】Ⅴ等星、シリーズ・コレーは、小さく宙へと向けて、冒涜的な呪文を言祝ぐ。

 

 

 

 ふんぐるい むるうなふ

 

 ■■■・■■■■ ごーつうっど

 

 んがあ・ぐあ なふるたぐん

 

 

 

「いあ、いあ――《剛力羅(ごりら)王 ゴリオ・ブゴリ》」

 

 

 

 剛力の肉体に、綺羅の如き鎖を纏う、野性の王。

 人ではなく、獣でもなく。どちらでもあり、どちらでもない。

 かつては未知なる脅威として、恐怖と畏怖を撒き散らした大猩猩。

 知られざる神秘を剥がされ、ただの獣に貶められた野獣は怒りに吼え、存在し得ないはずの力を以て大地に立つ。

 

「ご、ゴリラ……腕っ節がゴリラなら、切札までゴリラかよ!」

「深山幽谷に息づく剛力の獣を、理解の枠内に陥れようとするのは人類の悪癖ね。猩猩と称することさえぬるい。この星に貶められた力でしかないとはいえ、彼の狂気は真に迫るわ」

 

 地面を叩き割る勢いで拳を振り下ろし、宙を貫きそうなほど咆哮する《ゴリオ・ブゴリ》。

 この鬼気迫る気迫を前にしては、さしもの眠りネズミも、圧倒されてしまう。

 

「っ……つっても、たかがコスト4だろ! Wブレイカーにもならねぇ奴が調子こいてんじゃねぇ!」

「そう。なら、あなたに身の程を教えてあげましょう。所詮あなたは火鼠、自然の理において、偉大なる獣の種には敵わないということを」

 

 今は《イメン=ブーゴ》の攻撃中。《イメン=ブーゴ》は、振り上げた《ボアロアックス》を振り下ろす。

 

「《イメン=ブーゴ》で《ヘビポ.Star》を破壊よ」

「させっかよ! スター進化は進化元は生きる! 《チュチュリス》が場に残るぜ!」

 

 スター進化は通常の進化クリーチャーと異なり、バトルゾーンを離れる際、一番上のカードのみが場を離れる。《ヘビポ.Star》は破壊されるが、進化元となった《チュチュリス》は生き残り、次に繋がる。

 数が減らず、《チュチュリス》が残ったことにより眠りネズミの展開力が維持されたまま。

 しかしシリーズは、それでも落ち着いており、静かに両断する。

 

「そう。それも、意味の無いことだけれども。《ゴリオ・ブゴリ》で《“轟轟轟”ブランド》を攻撃――」

 

 マッハファイターにより、《ゴリオ・ブゴリ》は即座にクリーチャーへの攻撃が可能。

 しかしパワー5000の《ゴリオ・ブゴリ》では、パワー9000の《“轟轟轟”ブランド》には敵わないが、

 

 

 

「――アバレチェーン」

 

 

 

 黒ずんだ鎖がうねり、渦巻き、絡み合い、触腕の如く連なり勢いを増していく。

 しかし、それ以上に、

 

「二度目、だと……!?」

 

 アバレチェーンは本来、一度目の攻撃にしか発動しない。しかしこのアバレチェーンは、二度目。

 《ゴリオ・ブゴリ》の力は、本来あるべき(ルール)さえもねじ曲げる。常識は通じず、人の認知は歪められる。

 二重螺旋の縛鎖が、眠りネズミへと襲いかかる。

 

「《ナマケイラ》のアバレチェーンにより、シールドとマナを追加。そして《ゴリオ・ブゴリ》は自身の強化を得てパワーが2倍となり、パワー10000……叩き潰しなさい」

 

 大地を駆け《“轟轟轟”ブランド》を付け狙う《ゴリオ・ブゴリ》。《“轟轟轟”ブランド》は空へと逃げようとするも、その豪腕を振り切ることができず、地面に引きずり降ろされ、叩き伏せられてしまう。

 

「クソッ、やりやがったなてめぇ……!」

 

 ジリジリと巻き返されていく。追い込んだはずなのに、知らず知らずのうちに、逆に追い込まれていく。

 果てのない狂気が、波濤のように押し寄せてくる。

 

 

 

ターン5

 

 

眠りネズミ

場:《トップアイト》《チュチュリス》《極限駆雷》《魔神轟怒》

盾:5

マナ:5

手札:0

墓地:5

山札:22

 

シリーズ

場:《イメン=ブーゴ+ボアロアックス》《ナマケイラ》《ゴリオ・ブゴリ》《メメント守神宮》

盾:2

マナ:7

手札:2

墓地:6

山札:19

 

 

 

「僕のターン――」

「《メメント守神宮》のDスイッチ起動。あなたのクリーチャーはすべてタップされるわ」

「……ちっくしょう」

 

 《“轟轟轟”ブランド》でラッシュを掛けた代償か。

 眠りネズミには、手札がない。

 

「ターン……エンドだ」

 

 なにもできない。

 クリーチャーを止められ、手札もない。悪足掻きすら、ただただ叩き伏せられるだけ。

 圧倒的な力が眠りネズミを抑圧する。

 火の点いた鼠は止まらないが。

 ひとたび止まれば、燃え尽きるのみ。

 

「獅子は兎を狩りさえも命懸け。あなたが鼠でも、私が大猩々でも、それは変わらない。それが理であり運命。そうあるべしと定められたもの」

 

 シリーズは静かに眠りネズミを見据える。

 超然とした、光の灯されない瞳は、どこか憐憫さえも感じられる。

 

「けれど、呪われた子、眠りネズミ。あなたは不完全で、淘汰されるべき忌み子。生まれるべきではない姿で生まれた鬼子。歪んだ生は、あるべきではない形。ここであなたの命運、ねじ伏せましょう」

「てめぇ、なにを……!」

「《明日(アース)の鎖 ハヤブサツイン》を召喚」

 

 眠りネズミの言葉など聞く耳も持たず。

 シリーズはただひたすらに、暴威を叩き付ける。

 

「《イメン=ブーゴ》で《“極限駆雷”ブランド》を攻撃する時、《ボアロアックス》の効果。そして、アバレチェーン」

 

 まずは、一回目。触腕のように、鎖がうねり蠢き、のたうち回る。

 

「《ボアロアックス》の効果でコスト5以下のクリーチャー、《未謎(マナゾーン)の鎖 ブリタネッコ》を。《ハヤブサツイン》のアバレチェーンで攻撃クリーチャーよりコストの低いクリーチャー、《兵繰凄(ヘラクレス)の鎖 サイノ・ブサイ》を。それぞれバトルゾーンへ」

「ぐっ……!」

「《ナマケイラ》によりシールドとマナを追加し、《ゴリオ・ブゴリ》でパワーを2倍に」

 

 アバレチェーンだけでも、文字通り、暴れるほどに効果が積み重なっていく。

 しかし、連鎖するのは、黒き触手と同化した鎖だけではない。

 

「《ブリタネッコ》の能力で互いのクリーチャーをマナゾーンへ。私は《ブリタネッコ》を」

「……クソが。殴られる《“極限駆雷”ブランド》をそのままマナに送る!」

「《サイノ・ブサイ》の能力で《イメン=ブーゴ》をアンタップ、《サイノ・ブサイ》をタップするわ。攻撃は止まるけれど、そのまま《イメン=ブーゴ》で《“魔神轟怒”ブランド》を攻撃――アバレチェーン」

 

 《ゴリオ・ブゴリ》がルールを歪ませる。この星の条理をねじ曲げる。

 二度目のアバレチェーン。さらに《イメン=ブーゴ》が攻撃したということは、

 

「《ボアロアックス》と《ハヤブサツイン》の能力で、それぞれ《ブリタネッコ》と《サイノ・ブサイ》をバトルゾーンへ。《ブリタネッコ》をマナへ」

「《“魔神轟怒”ブランド》を、GRゾーンに戻す……!」

「《サイノ・ブサイ》の能力で《イメン=ブーゴ》をアンタップ。《ナマケイラ》によりシールドとマナを追加。さらに《サイノ・ブサイ》により、《イメン=ブーゴ》は破壊されない」

 

 なんだ、これは。

 次々と産み落とされていく、猛獣たち。

 攻撃と同時にクリーチャーが増える。《ブリタネッコ》が出て来ると、マナに戻り、再び登場する機会となる。《サイノ・ブサイ》が現れると、クリーチャーがアンタップし、攻撃の機会が増え、さらにクリーチャーも増える。

 殴れば殴るほど、クリーチャーが増えていく。

 シールドは増え続け、マナも潤い、彼女らは繁栄する。

 それはさながら、豊穣の母神の寵愛を受けるかの如し。

 

「《ハヤブサツイン》で《チュチュリス》を攻撃、マッハファイターよ」

「クソッ!」

 

 攻撃が止まらない。展開も抑えられない。

 シリーズ・コレーの暴威は、もう、収まらない。

 

「《イメン=ブーゴ》で攻撃。その時、《ボアロアックス》の能力で《ブリタネッコ》をバトルゾーンへ。そして、そのままマナへ戻るわ」

「《トップアイト》を、マナゾーンに送る……!」

 

 これで、眠りネズミのクリーチャーは全滅。

 きっちり綺麗にひとつ残らず余すことなく。

 すべての命を、狩り取られた。

 

「《イメン=ブーゴ》はアバレチェーンにより、《ゴリオ・ブゴリ》の能力を二回受けた。パワーは4倍、28000のパワード・ブレイカーよ」

 

 乱雑に見えて緻密に。妄信的に見えて計画的に。

 過不足なく、反撃の余地もなく、詰め切られる。

 

「すべて薙ぎ払いなさい。パワード・ブレイク」

 

 5枚のシールドを纏めて引き裂く、大地を割るほどの一撃。

 もはやS・トリガーも関係ない。ここを耐え抜こうと、火中の鼠に逃げ場などないのだから。

 

「クソ、が……! 《ビリボー・チュリス》、《トツゲキ戦車 バクゲットー》、《閃勇!ボンバーMAX》!」

「無駄よ、あなたの命運は決しているのだから。ターン終了時に、《ボアロアックス》の龍解条件を満たした――《ボアロパゴス》へと龍解よ」

 

 ウエポンからフォートレスへと成る《ボアロパゴス》。

 シリーズにはシールドが4枚、大量のクリーチャーに、それらすべてをブロッカーと化す《メメント守神宮》。

 さらに一度に限り、攻撃を引きつける《サイノ・ブサイ》までおり、およそまともに攻撃が通るような盤面ではない。

 

 

 

ターン6

 

 

眠りネズミ

場:なし

盾:0

マナ:7

手札:5

墓地:9

山札:19

 

 

シリーズ

場:《サイノ・ブサイ》×2《イメン=ブーゴ》《ナマケイラ》《ゴリオ・ブゴリ》《ハヤブサツイン》《メメント守神宮》《ボアロパゴス》

盾:4

マナ:8

手札:1

墓地:6

山札:14

 

 

 

「諦めねぇ……まだ僕は諦めねぇぞ!」

「夢想に縋るというのね。眠りネズミ、あなたが信ずるも夢の中、かしら」

「なにが夢だ! てめぇのクリーチャーは全部寝てる! 僕のマナは増えて、手札もある! まだぶっ込める!」

 

 3枚のS・トリガーにより、眠りネズミにはクリーチャーが増え、逆にシリーズのクリーチャーはすべてタップ状態。《ブリタネッコ》の能力で除去を連打されたが、代わりにマナは増えている。

 まだ、まだ、まだ。

 諦めるほど、絶望的ではない。

 

「《チュチュリス》召喚! 《ダチッコ・チュリス》召喚! コストを4減らし、《バクゲットー》を《ゴルドーザ<ドラギリア.Star>》にスター進化だッ!」

 

 再び、眠りネズミに火が点く。

 終わりかけの蝋燭が、猛り燃えるように。

 爆発的に、クリーチャーを展開させる。

 

「さらに《ダチッコ》をスター進化! 《CAPTEEEN<ヘビポ.Star>》! これで3体は殴れる!」

 

 コスト軽減からの、連続でスター進化。これで眠りネズミのアタッカーは、《ビリボー・チュリス》《ドラギリア.Star》《ヘビポ.Star》。

 

「まずは《ヘビポ.Star》で攻撃だ!」

「初撃ね。その攻撃は《サイノ・ブサイ》へ」

「知ったことかよ! 《ヘビポ.Star》のマジボンバー発動だッ! 山札を捲り、コスト4以下のクリーチャーならそのまま場に出せる!」

 

 眠りネズミの手札はもうないので、完全にトップ勝負。

 

「……《ヘビポ.Star》だ! 《チュチュリス》からスター進化!」

 

 《ヘビポ.Star》から、さらに《ヘビポ.Star》を捲る眠りネズミ。

 そしてここで、

 

「《ヘビポ.Star》で《ゴリオ・ブゴリ》を攻撃!」

 

 クリーチャーへと、殴りかかった。

 一刻も早くとどめを刺したいこの状況では、悠長な一手に見えるが、しかし。

 眠りネズミはここで、最後の手札を切る。

 

「どうせトリガーで止めてくるんだろ。ならドカンと捲って焼き切ってやんよ!」

 

 ここで《ヘビポ.Star》が捲れたからこそ賭けた、博打の一手。

 それは、

 

「マジボンバー! 《“極限駆雷”ブランド》だ!」

 

 《ヘビポ.Star》のマジンボンバーで、手札から出て来たのは《“極限駆雷”ブランド》。

 ここからさらに、GR召喚。

 こうなれば運任せだが。

 運命を決定づけられるだなんて、御免被る。そんな窮屈で面白みのない世界は願い下げだ。

 だからこそ、眠りネズミは己の手でたぐり寄せる。

 自分が納得できる未来を。

 

「もう一度――来やがれ! 何度だって燃え上がれ!」

 

 稲妻が迸る。熱気が滾り、噴火の如く膨大なエネルギーが溢れ出す。

 シリーズが神の巫女だろうと、邪神の眷属だろうと、関係ない。

 相手の奉ずる神に従属するなど認めない。こちらにはこちらの神がいるのだ。

 たとえそれが、魔神だとしても。

 

 

 

「再燃しろ! 《“魔神轟怒”ブランド》――!」

 

 

 

 再び君臨する《“魔神轟怒”ブランド》。

 まだ、まだ燃え尽きない。

 命が、魂が残っている限り、それを燃料に、まだ走り続けられる。

 

「押し込むぞ! 《“魔神轟怒”ブランド》で攻撃!」

 

 またしても、今度こそ。

 まだ燃やせ、もっと燃やせ。

 命尽きるまで魂燃やせ。

 自分自身を焼き尽くしたとしても。

 無意味に眠るより、よほどマシだ。

 

「呪いだなんだって関係ねぇ! あるべきでないだとか、歪だとか、それがなんだってんだ! いつだって眠すぎる、()()()()()()()()()()()()()()、これは僕の人生なんだ!」

 

 常に睡魔に襲われる身体。一瞬でも気を抜けば眠りに堕ち、戻って来れない呪われた生。

 冗談みたいな話だが、しかし冗句でも笑い話でもない。

 これは真に死活問題。眠りネズミにとって、死ぬか生きるかの話。

 なぜならば、もし睡魔に完全に屈し、目覚めるための意気を失ってしまえば、彼はもう、現の世界に戻ってこられないから。

 眠りから、醒めないから。

 それが『眠りネズミ』の本質。

 睡魔に誘われ、真の眠りに堕ちればおしまい。二度と目覚めることが叶わない、字義通りに永眠する個性()

 それは即ち、死と同義。

 彼は、気を抜けば即死する呪いに冒された命。睡魔という冷たい炎に全身を焼かれ続ける火鼠なのだ。

 

「それは、強大すぎる才の代償。母たる彼女でさえ認めなかった、眷属の枠を超越しかねない素質。故に忌み子であり鬼子。存在すべきではない例外中の例外。だから、私はあなたを粉砕しなければならない。これは母の命よ」

「うっせぇな! 僕がどうしようが僕の勝手だ! 顔も見せねー母ちゃんに指図される筋合いはねーっての! なにもかも燃え尽きて眠っちまう前に、僕にゃやりてーことが色々あんだよ!」

 

 襲いかかる死の気配(睡魔)を吹き飛ばし、滾る血潮で大地を叩く。

 平原だろうと密林だろうと、その地を抉り壊し悪路とする。ささやかな抵抗かもしれないが、これも母への小さな冒涜。

 悪戯でも罵詈雑言でも、なんでも喰らえと吐き捨てる。

 ――このターン、眠りネズミは5体以上、火のクリーチャーを呼び出している。

 つまり、

 

 

 

「さぁ、もう一度、宇宙の彼方まで燃え上がれ――超天フィーバー!」

 

 

 

 超天フィーバーが再び発動する。

 眠りネズミのクリーチャーが、アンタップ。起き上がるのは《ヘビポ.Star》と《“魔神轟怒”ブランド》だけだが、マジボンバーを持つクリーチャーが再攻撃可能となるのは、この状況では強力だ。

 

「喰らいやがれ! Wブレイクだ!」

「…………」

「さらに《ドラギリア.Star》で攻撃! この時、《ドラギリア.Star》の能力でパワーをプラス7000! パワー13000になったから、パワード・ブレイカー・レベルⅢ! 残り全部纏めて叩き割ってやらぁ!」

 

 《ドラギリア.Star》は攻撃時、任意で自身を強化できる。跳ね上がったパワーと、それに付随するパワード・ブレイカーにより、シリーズのシールドは一瞬でゼロとなった。

 この時点で、まだ眠りネズミには、《ビリボー・チュリス》に《ヘビポ.Star》、《“魔神轟怒”ブランド》。さらに備えの追撃もある。

 生半可なS・トリガーでは、凌がせない。

 ここで、完全に焼き尽くす。

 

「S・トリガーよ。《殴厳!暴拳MAX》……呪文の効果で、まずはパワー2000以下のクリーチャーをすべてマナゾーンへ」

「ハッ! そんなんじゃなんも変わらねーぞ!」

「私の場に光と自然のクリーチャーが存在するため、もうひとつの効果も発動。進化でないクリーチャー……《ビリボー・チュリス》をシールドへ」

 

 1体消された。しかし、1体削られる程度であれば、まだ問題ない。

 

「もう1枚S・トリガー、《最終(ファイナル)龍覇 ロージア》を召喚」

「ブロッカーかよ、だがそんでもまだ止まんねぇ!」

「どうかしら。《最終龍覇 ロージア》は登場時、自分のマナゾーンにある文明と同じ文明を持つコスト4以下のウエポンを装備できるわ」

 

 眠りネズミの一撃によって、炎上する黒い森。

 しかし。

 その燃ゆる炎から、《ロージア》は、一振りの剣を掴み取る。

 

 

 

()()()() ()()()()()()()()()()

 

 

 

 装備されたのは、火の、ドラグハート・ウエポンだった。

 

「あぁ!? てめぇのマナにゃ光と自然しかねーだろうがよ!」

「忘れたのかしら。私の場には《イメン=ブーゴ》がいるのよ」

「……っ!」

 

 そう。《イメン=ブーゴ》は場にいるだけで、マナゾーンをすべての文明に染め上げる能力がある。

 染色されたシリーズのマナは、5文明がすべて揃っている状態。つまりマナの文明を参照する《ロージア》の能力も、その制限が大きく解放される。

 

「《ガイアール》の効果発動。《ロージア》と《“魔神轟怒”ブランド》でバトルよ」

「チ……ッ!」

 

 《“魔神轟怒”ブランド》は、攻撃中のパワーこそパワーアタッカーで跳ね上がるが、素の状態だとたったの3000しかない。

 パワー3500の《ロージア》に、一方的に破壊されてしまう。

 これで残るは《ヘビポ.Star》のみ。そしてシリーズには、ブロッカーの《ロージア》。

 

「……だが、まだだッ!」

 

 まだ眠りネズミには止まる気はなかった。

 《ヘビポ.Star》でスピードアタッカーを捲る可能性もある。それに、

 

「《ドラギリア.Star》は攻撃後に自爆する! だが、こいつがぶっ壊れた時、進化元のクリーチャーはアンタップして場に残る!」

 

 そうだ。

 眠りネズミが、攻撃できる《バクゲットー》を進化元にしたのは、相手の除去から守るため。攻撃が終わったタイミングで、攻撃できるクリーチャーを呼び出すことで、S・トリガーによる干渉を遮断するため。

 つまり眠りネズミには、まだアタッカーが2体残っている。《ヘビポ.Star》に頼らずとも、攻撃を押し通せる。

 ――かに、見えたが。

 

「知っているわ」

 

 それさえも、シリーズには見抜かれている。

 

「まだ終わりじゃないわ。私の場には《ボアロパゴス》がある」

「な……ッ!」

「私が手札からクリーチャーを召喚したことで、《邪帝遺跡 ボアロパゴス》の効果発動。マナゾーンからコスト5以下の自然のクリーチャーをバトルゾーンに」

「ぐ……だが、ブロッカーが増えても、《ヘビポ.Star》でスピードアタッカーを捲ってやる……!」

「希望を持って生きるのはいいでしょう。けれどあなたに生路はないわ。《圧破の鎖 ナグルキツネ》をバトルゾーンへ、能力で《ヘビポ.Star》をタップ」

 

 ――終わった。

 直後、《ドラギリア.Star》が爆散する。中から《バクゲットー》が現れ、追撃の手が生まれる。

 しかし、もう、届かない。

 《ロージア》と《ナグルキツネ》。ブロッカーが2体。

 眠りネズミに残されているのは、《バクゲットー》のみ。

 

「……ターン、エンドだ」

「私のターン。私のクリーチャーのコスト合計は30以上、龍解条件を満たしたことで、《邪帝遺跡 ボアロパゴス》を《我臥牙 ヴェロキボアロス》に龍解」

 

 シールドの中身は既に見えている。たった1枚のシールド、1枚のS・トリガーでは、どう足掻こうともシリーズの攻撃を耐えることは不可能。

 

「クソ……クソクソクソクソクソッ! クソッタレが!」

 

 もう、悪態をつくことしかできない。

 無力な小動物に襲いかかる、無慈悲で理不尽な暴威の嵐。

 自然の理の恐ろしさ。不条理な狂気の怖ろしさ。

 ただあるべしと、蟻でも踏み潰すように、ただ滅されるのみ。

 

 

 

「――ダイレクトアタック」




 王来編でこんなこと言うのもなんですが、実はキングマスターの情報が出る前から、シリーズに暴拳王国を使わせるのは決まってて、暴拳王国の名前や印象から「パワー系っぽいなぁ~」と思っていたので、眠りネズミには彼女を「ゴリラ」呼ばわりさせていたんですが、まさか本当に切り札がゴリラになるとは思いませんでしたよね。
 でもゴリラというわりには、ボアロやイメンを使ってわりとテクニカルに動いてたりするんですよね。テクニカルゴリラ。テクノゴリラの方が語感がいいけど、意味が変わる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告