デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 ディースパテルから同盟の申し出。彼の目的とは――


53話「出逢えました Ⅲ」

「マジカル・ベル。俺と手を組まねぇか?」

 

 ディースパテルと名乗る男の人は、そう言った。

 手を組む……わたしと協力する、ってこと?

 

「えと、そ、その……ど、どういうこと? そもそも、あなたたちは、いったい何者……?」

「あぁ、そうか、お前はなんにも知らないんだな」

「う……それは、その……」

「いいさ。時間がないとは言えこの機会は見過ごせねぇ、この一時のために色々仕込んでたわけだし、必要なことは全部話してやる」

 

 この人の立場はよくわからないけど……確かに【死星団】と名乗った。

 その名前は、前にローザさんがわたしに教え、忠告してくれたものだ。

 わたしはなにも知らなすぎる。そんなことはわかってる。

 ミネルヴァって人も同じように名乗ってたし、今、わたしたちの周りで……代海ちゃんになにが起こっているのかは、知りたかった。

 

「まず、俺たちは【死星団】。ついこの間“発生した”ばかりの、女王の眷属の集まりだ」

「は、発生……? 組織した、とかじゃなくて?」

「あぁ。そもそも俺たちは、女王そのものから生まれたわけじゃねぇ。『代用ウミガメ』の「代わりを創造する」力によって生まれた、言っちまえば代用ウミガメの尖兵だ。ただ厳密には「女王を宿した代用ウミガメ」によって生まれたから、そこに女王の目論見が介入するってわけでな、完全に代用ウミガメの意志そのまんまってわけでもない。まあそのへんは曖昧というか、個人差があるが」

「はぁ……?」

 

 いきなりよくわからない話だった。

 代海ちゃんの手で、生まれた? 代海ちゃんがなにかを創造することができる、特異な力を持っていることは知ってるけど、それは時間制限つきだったはずだし、生き物まで生み出すことはできなかったはずだけど……

 今は時間の制限もなければ、生命の創造もできる。

 それはまるで、本当に神様みたいで。

 それに……

 

「……代海ちゃんは、なんで、そんなことを」

「そりゃあ女王に飲まれたからな。今の姫さんは、邪神の依代、降誕の巫女、母神の母体だ。否が応でも女王の意向に従わざるを得ない」

「仲間を増やすことが、女王様の目的なんですか?」

「いいや、【死星団】が生み出されたのは、あくまでも目的を果たす手足にするためだ。女王の目的は……俺はシリーズと違って女王の声なんざ聞けないから、ハッキリしたことはわからないが、まあ、ずっとイカレ帽子屋に封じられてたようだし、覚醒、復活、この世への顕現。そういうのが目的なんだろうさ」

「帽子屋さんが……」

「だがそれだけじゃねぇ。あくまで【死星団】は代用ウミガメから生まれた、女王は代用ウミガメに宿って自分の意志を介入させてるだけにすぎない。つまり」

「……代海ちゃんの目的もある?」

 

 あぁ、とディースパテルさんは首肯した。

 

「俺たち【死星団】は、女王の呪縛を一身に受けた代用ウミガメの諦観、欲求、願望、未練、情念……そういった様々な思想や葛藤といった要素を抽出し、それを基盤に組成され、生まれた存在だ」

「代海ちゃんの色んな気持ちから……あなたたちが、生まれたの?」

「そうだ。女王に従う意志はシリーズに、正しく生きたかった道徳はミネルヴァに……俺たちは、代用ウミガメの様々な願いの代行者ってわけだ。それが、俺たちに与えられた役割、ってやつだな」

「…………」

「しけた顔するなよ。代用ウミガメの心は折れているし、ほとんど女王に飲まれ支配されているが、抵抗しなかったわけじゃねぇ。ほんの微かだが、女王への反抗の意志があった」

 

 反抗の意志?

 諦めじゃなくて、代海ちゃんにはまだ、抗う気持ちがあった?

 それって……

 

「それが俺だ。俺の役割、いわば俺の目的は、()()()()()()()

「殺す……」

 

 公爵夫人って人も、確か、同じことを言っていたらしい。

 【不思議の国の住人】も、わたしたちも、代海ちゃんも……みんなが苦しんでいる、事態の元凶。

 『ハートの女王』。その存在は神様だ、って話だったけど。

 それを、殺すって?

 

「代用ウミガメが残した最後の抵抗が俺だ。代用ウミガメが抱いた、女王への反感の志、そのすべてが俺に託されている。俺の意志は代用ウミガメの意志でもあり、それは女王を打ち破ること。姫さん助けたいお前とは協力できると思わないか?」

 

 ようやく話が見えてきた。

 女王っていう存在が、代海ちゃんを束縛している。女王がいるから、苦しむ人が、悲しむ人がいる。

 そしてその果ては、世界が滅びる。

 流石にそこまでいくと、実感がわかないけど。

 倒すべき敵がいる、ということはわかった。

 そしてこの人とは、それが共通している。だから、こうして手を差し伸べているんだ。

 だけど、わたしの目的は倒すことじゃない。

 助ける――あるべき日常に、帰ることなんだ。

 

「ここまでつらつらと喋ってきたが、俺が信用できないってのは重々承知だ。だが、お前を仕留めるだけならこんな回りくどいことしなくても、俺たちが束になればいいし、なんなら女王復活を待つだけで終わる。そこんところは理解してくれな」

「……あなたと、力を合わせれば。代海ちゃんを、助けられるんですか?」

「さあな。女王は絶対的だ、生半可な力じゃ太刀打ちできないが、それを理由にお前は諦めるか? 勝てない相手だと察して、挑むことをやめて、可能性すら放棄して、代用ウミガメの残した僅かな希望さえも払い除けるか?」

 

 それは……

 確かに心が折れそうになった。殺して欲しいと懇願されて、そうしないとすべてが終わってしまうと告げられて、どうしようもないと思って挫けそうになった。

 だけど代海ちゃんが、まだ生きたいって思っているなら。まだ希望を捨ててないなら。

 その輝きは、無駄にしたくない。

 

「……それは、いや、だよ。代海ちゃんが諦めてないなら、わたしだって、諦めたくない……!」

「なら話は決まりだな」

「は、はい……」

 

 まだわからないことは多いし、この人のことも本当に信じていいのかわからないけど。

 希望が生まれた。霧が晴れたように、目指す場所が見えて、迷いが薄らいだ。

 ……待ってて、代海ちゃん。

 

「それじゃあ、よろしくお願いします。えっと……ディースパテル、さん?」

「こちらこそだ。俺のことは、呼びにくければ好きに呼べ……あぁ、だがディジーと呼ぶのだけはやめておけ。色々面倒くさい」

「? はぁ……じゃあ、とりあずディースさんと……」

「まあ呼び名なんぞどうでもいい。とりあえず今は、お前とコンタクトが取れただけで十分……詳細を話してる暇はないが、ひとまず俺たちが目指すのは、【死星団】の解体だ」

「解体?」

「お前にとって、俺と組む最大のアドバンテージは、俺が【死星団】であることだ。そして、俺の目的はまだ【死星団】の誰にも知られていない。スパイってやつだな」

「スパイってことは、ディースさんが【死星団】の情報を探ってきてくれる……?」

「情報だけじゃねぇさ。俺が内側から細工をする。そこにお前の、お前らの力を加えれば、突き崩すことも不可能じゃねぇ」

 

 つまり内部工作。

 相手は神様を有するほどの組織だけど、それでも、内側から突けば……

 

「【死星団】をバラすことは、目的達成の準必須条件だ。連中は女王の、姫さんの親衛隊でもある。奴らを倒さないことには、まずそこに辿り着けない」

「解体っていうのは、そういうことなんですね」

「そうだ。防備はシリーズとミネルヴァでガチガチ。その上、不思議の国の連中もほとんど狩り尽くした。残党を仕留めれば、すぐお前たちに牙を剥く。そうなったら女王を討つ戦力が足りなくなってお手上げだ。機を窺うにせよ、女王が目覚めてもゲームセット。正直、お前との接触も、もっと早いタイミングにたかったんだが……タイミングが難しくてな」

「ご、ごめんなさい……?」

「今のは愚痴だ、気にするな。なんにせよ、俺たちは圧倒的に戦力不足。勝っているのは俺という情報だけ。このアドバンテージをどれだけ有効活用できるかに掛かってる。お前も他の連中に俺のことバラすなよ?」

「し、しませんよ!」

「ならいい。戦力不足はどうしようもねぇが、アテはある。そこらへんは俺がなんとかするから、お前は俺の指示があるまで待機だ。俺と接触したからって変な動きはするなよ、あいつにバレるからな」

「あいつ?」

「あぁ。最初に崩す牙城の基底、さしあたっての目的にして、俺にとっても、そしてお前にとっても最優先目だ」

 

 最優先……わたしにも?

 それって……?

 

「お前もさっきも見ただろう。いっとうやかましくて、邪悪で、高飛車でお調子者で気位が高いが、なによりも厄介で放置できない手合い――」

 

 その名前は。

 そして、わたしがそれを優先する理由は。

 

 

 

「――メルクリウス・エノシガイオス。まずはこの、水早霜と香取実子を蒐集したクソガキを叩き潰す」




 同盟締結。第一目標は、打倒メルクリウス。
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