デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 今話から、VS【死星団】開始と相成ります。


54話「討滅・星の賢者 Ⅰ」

「――ってことがあったんです」

「えぇ……怪しすぎない?」

「率直な感想を申しまして、俺も怪しいと思います」

 

 ディースさんと協力を結んだ後日。わたしはそのことを、謡さんに話した。

 すると案の定というか、謡さんとスキンブルくんは、とても苦い顔をする。

 

「そのディースパテルという男、出生も立場も特殊なようですが、しかし“女王の性質を含む”という点は決して見逃してはいけません。邪悪な因子を宿している以上、どこで牙を剥くか油断ならないでしょう……もっとも、その女王の落とし仔の欠片から生まれた俺が言うのも、どうかと思いますが」

「まあでも用心するに越したことはないよ。できればこれ以上の接触も避けて欲しいくらいだけど……」

「ごめんなさい……それは、できません」

「……ま、だよね」

 

 そう、いくら怪しくても、危険でも、これ以上は立ち止まれない。

 だって、ディースさんは、確かに言ったんだ――

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

「海洋の賢者、メルクリウス・エノシガイオス。まずはコイツを潰す」

「メルクリウス……って、さっきの、女の子……」

 

 あの子は、ユーちゃんやローザさんを襲った子だ。

 それに、それだけじゃなかった。

 

「あいつはお前にとっても見逃せない存在だろう。なにせあいつは、水早霜と香取実子を取り込んだ」

「!? 霜ちゃんに、みのりちゃんが……!?」

「そうだ。姫さんの勅命がある以上、下手な手出しはしないはずだが……ミネルヴァやシリーズならまだ安心できたものの、よりにもよってメルクリウスに目を付けられるとは、ついてないな、あいつら」

「ど、どういうことですか?」

 

 ディースさんは、一拍おいて。メルクリウスという女の子について、語り始めた。

 

「メルクリウスは「この世界をもっと知りたかった」「認めて欲しかった」……そんな代用ウミガメの悔恨、自尊心、探究心、承認欲求によって生まれた【死星団】だ。とにかく好奇心旺盛なんだよ、あいつは。自分の知的好奇心を満たすため、そして、自分の実力を誇示するためなら、なんでもやる。姫さんの意志も、無視するとまでは言わないが、かなりギリギリなラインを攻めやがる。たとえば、既に“終わっている”と屁理屈こねて、ヤングオイスターズの長女を弄くり回して壊しちまってる。次は公爵夫人……そのうち、他の連中に手を出さないとも限らない。殺しこそしないが、早く救出しねぇと、とんだバケモノになって戻って来るかも知れねぇぞ」

「そん……な……」

 

 わたしの知らないところで、そんなことが……

 霜ちゃん……みのりちゃん……

 

「そういうわけで、メルクリウスは放置できない。俺としてもこいつが残ってると色々不都合でな。とにかく奴を、これ以上成長させるわけにはいかない」

「成長……? 確かにまだ子供だったけど……」

「あぁ、そうじゃねぇ。言ったろ、あいつは代用ウミガメの好奇心を抽出し、凝縮し、結晶化したようなもんだ。だからあいつは、ひたすらにこの世界のあらゆるものを“視て”“学ぶ”。森羅万象の情報を知識として吸収する怪物なんだよ。その手段として、あいつはこの星のすべてを監視する“眼”を有している。そうだな……常に全世界を一望できる監視カメラで監視されていると思えばいい」

「全世界!? そ、そんな広い範囲、ひとりで網羅できるわけが……」

「あぁ、勿論ひとりでそんな情報処理、できるわけがない。実際できてないしな。監視と言っても今のところは視覚情報が精々だし、かなり範囲を絞ってる。海外やら僻地までは、そこまで詳細に見られてねぇよ」

「え、えぇ……?」

「見ての通り、あいつは子供だ。幼体として生まれている。だが、俺やミネルヴァ、シリーズ……他の【死星団】はこの通り、成熟した姿で生まれている」

 

 そ、そういえば……

 なんであの子だけ、子供なんだろう。いや、生まれたばかりだというなら、むしろ大人の姿で生まれてくる方が変だと思うけど……

 それはそれとして、違いがある、差があるということは、そこに理由がある、ということだよね。

 

「メルクリウスはⅡ等星(ディステラ)、つまり2番目に生まれた【死星団】であり、№2だ。だが純粋な力量で言うと、あいつは今は一番弱い」

「?」

「なぜならあいつは“成長する”からだ。周囲の情報を吸収し、それを糧に自身の能力を上昇させていく性質がある。今はガキなもんで単独の処理能力は大したことないが、これが強化されていくとなると……」

「え、えっと、あの子って全世界を監視してるんですよね? それで、情報を吸収するごとに強くなって、能力が上がっていくってことは……」

 

 能力が向上すれば、より広い範囲をひとりで網羅できるようになって、より多くの情報を吸収できる。

 そうすればさらに能力が向上していって……

 

「どんどん累乗していくわけだ。少しはあいつが放置できない理由が理解できたか? このままあいつの能力が上がれば、こうした密会も一瞬で露見する。それ以前に、純粋に勝てなくなる」

「…………」

「まあこれは戦略的な話だ、お前はダチのことを優先して考えればいい。俺としても、そいつら弄くり回されて兵器転用されると、戦力的に困るんでな。メルクリウスを優先して撃破する利害は一致している」

「……はい」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「――霜ちゃんとみのりちゃんが、待ってるんだ。だから、わたし……!」

「うん。危険だからって止めるのは簡単だけど、立ち止まってもなにも解決しないもんね。せっかく手に入れた、ようやくの手掛かりを無駄にもしたくないし」

「それにつきましては俺から謝罪をば。最近、調子が悪いのかなんなのか、どうにも上手いこと姿を消せなくて、情報収集が捗らないのです。猫の姿にもなれやしません」

「あ、だからずっとその姿なんだね……」

 

 最近、珍しく男の子の姿のままでいることが多いと思ってたけど、そういう理由だったんだ。

 もしかしてそれも、女王様のことが、関係しているのかな……?

 

「小鈴ちゃんはちょっと危なっかしいけど、後輩たちのためだもんね。お目付役も兼ねて、私も手を貸すよ」

「ありがとうございます……謡さん」

「無論、俺も微力ながらお手伝い致しましょう。しかし情報収集というアイデンティティが消失したとなれば、なにか他の手を考えなければなりませんね……」

「ディースさんには、とにかく仲間を集めろって言われたんだけど……そういえば、恋ちゃんは今日は来てないんですね」

「あー……れんちゃんねぇ」

 

 今日集まってるのは、わたしと、謡さん。そしてスキンブルくんだけ。

 そのことを言うと、謡さんは渋い顔をする。

 

「なんか忙しいっぽいよ、最近。この頃、学援部いっつもバタバタしてるし、小鈴ちゃん会う前にも部室覗いてきたけど、ほむくんも、みこちゃんも、なーんか慌ただしい感じだったしなぁ。しばらくはこっちに顔出せないかも」

「そうですか……」

 

 残念だけど、しょうがないよね。

 いつきくんにも迷惑かけられないし……

 

「で、私たちはなにをすればいいわけ?」

「えっと、ディースさんも自由に動けるわけじゃないらしいんだけど、準備ができたらまた来るって……」

「……なーんか隠されてる気がするなぁ。やっぱこの子の人の良さに付け込んでるんじゃない?」

「で、でも、代海ちゃんを助ける目的は同じなので……」

「だといいけどねぇ」

「小鈴様は既に、不思議の国に騙られた前科がおありですからね」

「そ、それは……」

 

 確かにそれがそもそものきっかけだったわけだけど……

 でもディースさんの言葉がすべて嘘だなんて、わたしには思えない。なにより、ずっとなんの手掛かりもなく迷っていたわたしたちに、明確な目的を、道を示してくれたんだ。

 たとえ騙されていたとしても、それは事実。あのままなにも知らない、わからないままでいるよりは、よっぽどいい。

 とにかく今は、霜ちゃんとみのりちゃんを……わたしの友達を、取り返すんだ。

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「――話は理解できた。つまり我々も、マジカル・ベルに合流しろ、ということだな」

「そうだ。とにかく人手がいるんでな。場所はこっちで指定するから、合わせてくれればいい」

「…………」

「どうした?」

「どうもこうもない。こちらの現状は理解しているのか?」

「当然。その上で、この話を持って来たんだ」

「であればなかなか性格が悪い。局所的に見れば貴様の手引きは確かに功を奏した。しかし今、我々の作戦は失敗し、仲間を失った」

「それは俺の責任じゃねぇな。てめぇらの失態を俺に擦るのはお門違いだぜ。それに、だからこそ、お前たちには必要だろ? 新しい仲間が」

「……違いない。このままでは手をこまねくばかり。眠りネズミの火も消えてしまう」

「お前らが危機的なのはわかってるさ、別に足下見てるわけじゃねぇよ。こっちだってギリギリなんだ、お互い危ない橋渡ってるもんどうし、協力しようぜってだけでな」

「わかっている、今、頼れるのは貴様だけであると。しかし貴様はどうにも信用できない。貴様の殺意は公爵夫人のそれと違い、澱を纏っている」

「慎重なのは結構なことだ、疑念を向けられても有能な奴なら文句はねぇ。どうか英断を頼むぜ? ヤングオイスターズ」

「……俺はもう行く。眠りネズミの面倒を、虫共に任せっきりにはしておけない」

「おう……さて」

 

 指折り人数を数えてみる。

 

「この感じだと、日向恋は不参加、か。メルクリウスでも感知できない奴は、いい鬼札になると思ったんだがな。しかしそうなるとマジカル・ベル側からは2人……チェシャ猫を含めても3人か。あいつらから徴兵できても、よくて3人、まあたぶん2人ってところだろう。現地で2人調達したとしても、6人……全然足りないな。あと2人、欲を言えば3人欲しいところだが、どうしたもんか」

 

 思案し、そしてひとつ、可能性を発見する。

 急ごしらえの戦力としては、些か不安だが。

 

 

 

「……兎狩り、してみるか」




 死星団戦とは言う物の、まだ準備期間。
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