デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 禁断を支配した女傑は、しかして蒼と繋げど竜王に至らず。


54話「討滅・星の賢者 Ⅵ」

 スキンブルの場には、《電脳鎧冑アカシック・オリジナル》と、《天啓 CX-20》に乗った《*/弐幻サンドロニア/*》。

 相手は立ち上がりが鈍く、《無頼 ブロンズ-1》のみ。

 

「とはいえこちらも少々失速しております。この隙間時間に盤面は処理していきましょうか。3マナで《モモスター ケントナーク》を召喚。マッハファイターで《ブロンズ-1》を破壊!」

 

 スキンブルのデッキに見えるジョーカーズ。しかし謡とは違い、他種族、他文明のカードもふんだんに使用した混ざり物。

 メルクリウスのような吸収力も成長性もないが、それでもスキンブルシャンクスは今までずっと“見てきた”のだ。

 憧憬も、敬服も、信頼も、すべて間近で見てきた。

 ただ“見てきた”という積み重ねだけで、彼の力は組み上げられている。

 故に腕に自信はないが、心強い仲間、強大な難敵、そんな者達の力を選りすぐったものが、弱いはずがない。

 そんな信頼で、彼は公爵夫人のようなものと、相対する。

 相手のデッキは、見えるカードすべてがディスタス、あるいはディスペクター。《賢樹 エルフィ-1》から、《妖精 アジサイ-2》に繋げリソースを増やし、さらにマナに落ちた赤マナで《月砂 フロッガ-1》まで展開する。

 

 

 

ターン3

 

スキンブルシャンクス

場:《アカシック》《天啓[サンドロニア]》《ケントナーク》

盾:5

マナ:4

手札:3

墓地:0

山札:25

 

 

公爵夫人[電融]

場:《エルフィ-1》《アジサイ-2》《フロッガ-1》

盾:5

マナ:6

手札:2

墓地:1

山札:23

 

 

 

「……嫌なカードが続々と。前のターンに出されなくて良かったと考えましょうか」

 

 高パワーのガードマンにコスト軽減、スピードアタッカーやマッハファイター封じ。先手後手で《ケントナーク》を出すタイミングがずれていたかもしれない。

 

「さてさて、これにてようやく5マナ。ここから参りましょう」

 

 静かにマナを置き、5枚のマナを数える。

 マナ加速が1枚も引けず、かなり出遅れたが、ここからだ。

 

「俺はチェシャ猫、姿なき透明な猫。故に我が身は千変万化、姿なきが故、如何様にもその姿が在る百貌の獣」

 

 敵も味方もないまぜに。過去も今も、ありとあらゆる者達を見て真似たものが、ここにある。

 姿を消す故に、姿がなく、あらゆる姿がある。己の定義を曲解し、一度は失墜したものを、再び取り戻した力。

 相棒とも、道化の狂人とも、違う道。けれども確実に、彼らの影響を受けて生まれたもの。

 

 

 

「これが俺の切札(ジョーカーズ)です――《王来英雄(オーライヒーロー) モモキングRX》を召喚!」

 

 

 

 二振りの刀を携えた、和装の龍人、《モモキング》。

 謡の元へ移り、不思議の国にはない経験を経て、新たな色に染まったチェシャ猫の、ワイルドカード。

 色なきジョーカーズではない、有色のドラゴンではあるが、しかしこの姿は仮初めに過ぎない。

 

「まずは手札を捨て、2枚ドロー。そしてこのクリーチャーから進化可能な、コスト7以下の進化クリーチャーへと変じましょう」

 

 千変万化。あらゆる姿になるが故に、姿のない存在。

 《モモキングRX》は、数多のクリーチャーへと変じる。チェシャ猫レディのように、とはいかないものの。

 あの時の、ヒーローであった自分たちを思い返し、その力を呼び戻す。

 そしてそこに、ほんの少しの、憧れを混ぜ込んだ。

 

「……小鈴様。まずはあなた様のお力をお借りいたします」

 

 ――わたしのも、もらったものだけどね。

 

 聞こえるはずのない声を受け、《モモキングRX》は変じる。

 まずは憧れの力を、熱に変え、銀河のように、広く、大きく、強く。

 彼女のように、それで自分として、星になる。

 

 

 

「スター進化――《熱血英雄 モモギンガ》!」

 

 

 

 右腕に星の輝きを湛えた灼熱の盾、左腕に銀河を断ち切る熱血の大剣。

 それは小鈴の切札《熱血星龍 ガイギンガ》の力を纏った《モモキング》――《モモギンガ》だ。

 無理な解釈が祟って失われたチェシャ猫レディの力を、少しずつ取り戻して得た、スキンブルシャンクスの新たな力。

 それは誰かの力を借りつつも、彼ひとりが戦うための力だった。

 

「《フロッガ-1》は進化クリーチャーでなければ効果は及びません。このまま攻め入りますよ、《モモギンガ》で攻撃、その時、パワー7000以下の《アジサイ-2》を破壊! Wブレイク!」

 

 《ガイギンガ》の熱血の意志を宿した大剣で、シールドを2枚、断ち切った。

 しかし砕かれた2枚のシールドは、片や光り輝き収束し、片や電磁の閃光を迸らせる。

 

「S・トリガーに……G・ストライクですか」

 

 《無頼 ミランダ-2》、そして《電磁 アクアン-2》。

 《ケントナーク》はマナに送られ、《サンドロニア》も行動不能にされてしまった。

 《アカシック・オリジナル》は攻撃可能だが……

 

「ここはターンエンドです。受け方が厄介そうなデッキだ、無理に攻めるのはやめましょう。トリガーでクリーチャーを猛展開されて謡の二の舞になるのは御免ですからね」

「さりげなく私への当てつけはやめてくれないかな?」

「これも学習ですよ。反面教師です」

「いちいち癇に障るなぁ君! それに相手の受けはG・ストライクも多そうだし、ここで削っておくのはありじゃない? シールド2枚なら、次のターンにはWブレイカーと1打点でジャスキルだし」

「《フロッガ-1》が少々厄介ですがね。それに殴り返しも……」

「そんなこと言うなら《モモギンガ》で《フロッガ-1》処理すれば良かったじゃん」

「減少値の大きなササゲール持ちを処理する方が良いと思いまして……やはりメタクリーチャーの対処が先決だったしょうか?」

「それは君の手札とデッキ次第なんだけど……まあ《フロッガ-1》で殴り返されても、リスク承知でこっちも殴り返せるし、なんなら次のターンも《モモギンガ》の火力は撃てるし、それでも処理はできるんじゃないかな」

「なるほど、そういう手もあるのですね。流石に知識も経験も、あなたが上手のようだ、謡」

「まあ君よりはね」

「では学ばせて頂きましょう。ここはトリガーケアでターンエンドです」

「それを蒸し返さないでよ!」

「――くだらん。茶番だ。耳障りに、過ぎる」

 

 スキンブルと謡の言い合いに、彼女は、継ぎ接ぎだらけの公爵夫人もどきは、歪に、不格好に、重く口を開いた。

 

「おや、喋れたのですね、あなた」

「……会話をする、必要、が、ない。だけだ」

「ぎこちないですねぇ。ひょっとして人とのお喋りは初めての方でございましょうか?」

「…………」

 

 黙殺。しかしスキンブルの言う通り、彼女の紡ぐ言葉は、滑らかとは言えなかった。その身体のように、上手く噛み合っていない。

 その話しぶりはどことなく、代用ウミガメを思わせたが、スキンブルはその感想を飲み込んだ。

 

「それと俺の知る元ご主人……公爵夫人は、存外、饒舌な方でしたよ」

「え? そうなの?」

「そうですとも。彼女は不思議の国で最も怪物を厭い、疎み、恨み、怒り、憎んだ御仁。嫌悪のあまりに自身の美醜すら反転させる怪物でしたので」

 

 神を冒涜し、その眷属も、魔性も、化生も、憎悪の対象だ。

 人であることを強く望んだわけではなかったが、怪物に成り下がることだけは、誰よりも嫌っていた公爵夫人。

 だからこそ、本来の彼女は化物から遠ざかり、逆説的に人に近づいた存在であった。

 

「獣と怪物、人と化物とを隔てる決定的なターニングポイントは言語。あるいは会話、意思疎通、コミュニケーションです。物言わぬ怪物は、ただの獣と同じ。相互理解の権利すら持たない暴威の塊につける薬はありません」

「ちなみに、喋る系のモンスターは?」

「それは紛うことなき脅威ならざる恐怖でございますね。人の領域に踏み込んだ人外ほど恐ろしいものはそういないでしょう」

「それって君じゃん」

「おっとこれは一本取られました」

「……道化の猿芝居は終い、か? 戯言に付き合うつもりは、ない」

 

 ふたりの言葉を切り捨て、彼女は動き出す。

 身体を繋ぐ電磁の稲妻が、バチバチと音を立てて、強く、弾ける。

 

「《電磁 アクアン-2》、召喚。山札の上、4枚を表向き、に――自然の《ダイチ-3》、火の《テラスネスク》、水の《N・EXT(エヌ・エクストリーム)》を手札に」

「む……」

「ササゲール起動。《ミランダ-2》、《アクアン-2》、破壊。4マナ軽減。3マナをタップ」

 

 ディスタスが、その命を捧げる。我が身を贄とする。

 供物は力となり、強きものを降誕させる標となる。

 

「魔性生体電流結合完了。竜機及び電脳世界の融合完了。素体の存在融解開始、冒涜性再構築終了。供物の命を雷に変え疾駆せよ、次なる世界は過去にあり」

 

 時空が歪む。

 歴史に弾圧され、過去の栄華となり果てた概念が、ひとつの形を得て、激流と共に暴走する。

 

 

 

「Ia,Ia,Next ν world――《竜界電融 N・EXT》!」

 

 

 

 《ボルバルザーク・エクス》《サイバー・N・ワールド》

 世界を震撼させるほどの力を持つ両者を融合させた、ディスペクター。しかしその姿は、あまりにも変容しすぎていた。

 《サイバー・N・ワールド》の機体は完全に原型を失い、巨大な車体に。

 そこに《ボルバルザーク・エクス》が、埋め込まれている。青白い稲妻を轟かせながら、反発するように、新世界に引きずり込まれている。

 竜の頭は咆哮する。それが慟哭なのか、憤怒なのか、痛苦なのか、悲哀なのか、それは誰にもわからない。

 

「……なんか、惨いね。いざこうして見るとさ」

「えぇ……そうですね」

 

 《N・EXT》の雄叫びに、ふたりは竦むでも奮うでもなく、ただ静かに、目を伏せる。

 

「EXライフ……さらに《N・EXT》がバトルゾーンに、出たことで。マナゾーンのディスタス、ディスペクターすべて、アンタップ!」

 

 世界を塗り替える力は、あらゆる資源を再生させる豊穣の力。

 荒れ果てた大地が、再び、芽吹く。

 

「4マナで、《猛菌 キューティ-2》、を召喚! 《モモギンガ》拘束! さらに《エルフィ-1》《キューティ-2》、ササゲールで破壊し、3マナ軽減。3マナで《仙祖電融 テラスネスク》召喚! EXライフが起動、手札から《無頼 ダイチ-3》、召喚だ!」

「おっとこれは……」

「《N・EXT》で攻撃、能力を、起動! 自身の墓地、手札、すべて山札に戻しシャッフル! 5枚ドロー!」

 

 再構築されるのは大地だけではない。知識もまた、リセットされる。

 失ったリソースの大量回復。さらにスキンブルは盤面も押され始めた。

 

 

 

ターン4

 

スキンブルシャンクス

場:《アカシック》《天啓[サンドロニア]》《モモギンガ》

盾:3

マナ:6

手札:4

墓地:1

山札:23

 

 

公爵夫人[電融]

場:《フロッガ-1》《N・EXT》《テラスネスク》《ダイチ-3》

盾:5

マナ:7

手札:5

墓地:0

山札:19

 

 

 

 

「……拘束されては強みも生かせません。やはり俺では、小鈴様のようには使いこなせませんか」

 

 動きを封じられた《モモギンガ》を見下ろし、スキンブルシャンクスは嘆息する。

 

「であればもっと馴染んだ、別の手を打つまで。3マナで《モモダチ モンキッド》を召喚、マナを1枚追加。さらに5マナで、マナゾーンから唱えましょう。《生命と大地と轟破の決断(パーフェクト・ネイチャー)》!」

 

 3つの選択肢から2つを決断する呪文《生命と大地と轟破の決断》。

 スキンブルは自身のマナゾーンを見下ろす。可能なら強力な踏み倒し効果を連打したいところだったが

 

「実は出したいカードがマナにないのですよね」

「なのに唱えたのそれ!?」

「手札もあまりよくないのです。まあハッキリ言ってピンチなので、賭けですね。マナ加速と踏み倒しを選択。まずは山札の一番上をマナへ」

「博打に頼ったプレイングしてるようじゃ先が思いやられるよ……」

「今更ですね。しかし俺は幸運です、続けてマナからコスト5以下のクリーチャーをバトルゾーンへ。今し方捲れてくれた彼を再び、《モモキングRX》!」

 

 博打ではあったが、都合のいいことに目当てのクリーチャーはマナに落ちてくれた。

 もうひとつの効果で踏み倒し、再び《モモキングRX》が現れ、その能力で姿を変える。

 

「それではどうぞ、スター進化です。《ボルシャック・モモキングNEX》!」

 

 今度は両腕の装甲に翼と、《ボルシャック・NEX》の力を身に纏った姿へと変貌した。

 単騎で敵陣を蹴散らしながら切り込む《ガイギンガ》と違い、《ボルシャック・NEX》は仲間を並べて攻め込むクリーチャー。

 

「能力で山札を捲り、レクスターズか火のクリーチャーならばバトルゾーンへ、しかし問題は、このデッキだとハズレが多いことですが……」

 

 その言葉通り、捲られたのは《幻緑の双月》。レクスターズでも火のクリーチャーでもないため、墓地に送られる。

 

「やはり外しましたね」

「君デッキの組み方下手じゃない?」

「歯に衣着せぬ物言いどうも。まあここはいいでしょう、《ボルシャック・モモキングNEX》で《N・EXT》を攻撃する時にも、能力が発動です」

 

 《モモキングNEX》が咆哮する。その呼び声に応じるものの声が、聞こえてくる。

 

「《モモキング -旅丸-》、今度はアタリですよ。そのままバトルゾーンへ」

 

 援軍の《モモキング》が現れたが、スキンブルの目的はそこではない。

 

「ここからが本番ですよ、元ご主人の偽物(パチモン)さん。俺のコスト4以上の火のレクスターズが攻撃したことで――」

 

 スキンブルシャンクス。かつての名を『チェシャ猫』。

 秀美なる『公爵夫人』の分御霊。彼女の力の一部を切り落とし、自我を得た異端なる命。

 公爵夫人は美しく、それでいて熾烈。禁断の力を用い、禁忌を振り払い、圧倒的な破壊と速度で戦場を爆走する、苛烈なる女傑である。

 断片であっても、末端であれども、その力を部分的に有するチェシャ猫が、同様の力を使えないはずがなかった。

 これまでは、あえて彼女の力を放棄してきたが。

 今この時の彼は、自分のものとして、かつての主の苛烈さを、身に纏う。

 

 

 

「――侵略発動!」

 

 

 

 エンジン音が轟く。

 音すら貫くスピードで、闇夜を切り裂く獣が、奔る。

 

 

 

「禁忌を穿ち、駆け抜けろ――《キャンベロ<レッゾ.Star>》!」

 

 

 

 それは一匹の小さな獣。臆病で、矮小で、およそ戦場に立つこともできないような小動物であった。

 しかしそれは、かつての話。今は、赤い機神の力を纏い、その苛烈さをほんの少しだけ受け継ぎ、疾駆する。

 

「公爵夫人様であれば蹴散らすところでしょうが、俺はそんな暴力的ではないのです。卑しかろうと小賢しかろうと、俺はあくまでも俺らしく、です。展開に対しては、一掃ではなく封殺しましょう。《キャンベロ<レッゾ.Star>》がバトルゾーンに出たことで、次のあなたのターン、あなたは1体しかクリーチャーを出せませんよ」

 

 軍勢への対抗策。趣向は同じでも、性質はまるで違う。

 今の盤面にこそ干渉できないが、《N・EXT》で溜め込んだ手札から大量展開する算段を突き崩す一手だ。

 公爵夫人ほどの爆発的で暴力的なことはできないが、これが今の自分らしさ。

 『チェシャ猫』ではなく、スキンブルシャンクスとしての、在り方だ。

 

「そのまま《キャンベロ<レッゾ.Star>》で《N・EXT》を破壊!」

「EXライフ、で《N・EXT》は生き、残る!」

「いいえ、死んで貰いましょう」

 

 ディスペクターには命がふたつある。ひとつを摘み取っても、生き返る。

 しかしスキンブルは、それを許さなかった。

 

「《モモキングRX》のシンカパワーです。このターン、バトルに勝つたびにアンタップしますよ。もう一度攻撃、今度こそ破壊します!」

 

 《キャンベロ》が《N・EXT》のエンジンをひとつ粉砕する。続けて回り込み、もうひとつ。

 ふたつの動力を停止させられた《N・EXT》は、沈黙し、崩壊していく。

 

「まだまだ! ここは攻めますよ、《キャンベロ》でシールドをWブレイク!」

「S・トリガー《ミランダ-2》! 《サンドロニア》、をマナゾーンへ!」

「またですか、トリガーの引きが強いですね。ターンエンドです」

 

 相手の切札は潰えた。しかし、まだ安心はできない。

 《N・EXT》はあくまでも、世界を塗り替えるだけの存在。大量のリソースを確保するが、デュエル・マスターズとはリソースを蓄えたから勝てるわけではない。

 大事なのは、増えたリソースでどうするか。まだ相手には、大量の手札と、マナがある。

 もっと決定的なフィニッシャーが、現れないとも限らない。

 

「8マナタップ、《呪帝電融 カーペラー・キリテム》、召喚! マッハファイター、だ! 《カーペラー・キリテム》、《モモキング -旅丸-》を撃破! 《カーペラー・キリテム》がバトルに、勝った時。コスト7以下の、クリーチャーをマナゾーンから呼べる。が……」

「《キャンベロ<レッゾ.Star>》の効果は残留しております。出させませんよ……しかし」

「ならば。そのまま、叩く、《フロッガ-1》でシールドをブレイク!」

 

 スキンブルにとっても、相手の反撃は厳しい。

 S・トリガーでアタッカーも増えたため、打点が足りる。どうにか凌がなくてはならない。

 

「《テラスネスク》でWブレイク!」

「……おや、おやおやおや。遂に引けました、S・トリガー。双極・詠唱。《灰になるほどヒート》!」

「それは……」

「手札から《王来英雄 モモキングRX》をバトルゾーンへ、まずは《ダイチ-3》と強制バトルです」

 

 ひとまず1体。さらに、

 

「《モモキングRX》の能力で手札を捨て、2枚ドロー。そして進化です、《ボルシャック・ドギラゴン》! 次は《ミランダ-2》とバトルです」

 

 進化し、さらにもう1体を殴り倒す。

 今度は過去の英傑の力を身に纏うスター進化ではなく、その英傑そのもの。名高き《ボルシャック》と《ドギラゴン》、ふたつの名を有する革命の化身、《ボルシャック・ドギラゴン》。

 

「このデッキだと攻めに使う方が強いのですが、守りにおいても頼りになりますね。攻撃は凌ぎました、俺のターン! 《モンキッド》と《旅丸》を召喚。さらに3マナで《母なる星域》! 《モンキッド》をマナゾーンに送り、マナゾーンから《アルカディアス・モモキング》を、《旅丸》に重ねて進化!」

 

 恐らく相手のデッキはフルクリーチャーだが、封殺も追撃も、手が多いに越したことはない。

 千変万化に姿を変え、数多と立ち並んだ《モモキング》らを従え、スキンブルは一気呵成に出る。

 

「《アルカディアス・モモキング》で《カーペラー・キリテム》を攻撃!」

「《カーペラー・キリテム》は、EXライフで場に、残る……!」

「構いません、シールドを削ることが目的なので。《ボルシャック・ドギラゴン》で攻撃です。《テラスネスク》と強制バトルし、残りのシールドをブレイクです!」

「……G・ストライク《ダイチ-3》、《モモギンガ》、拘束。S・トリガー、《ミランダ-2》、《アカシック・オリジナル》を、マナゾーン、へ!」

「なんてシールドですか。しかし耐えさせませんよ」

 

 割ったシールドすべてに受け札がある酷いシールドだったが、それも乗り越えた。

 進撃と反撃。爆炎に煙硝、亡骸や残骸に溢れる戦場にて、赤い影が疾駆する。

 数々の防御陣を潜り抜け、唯一辿り着いた紅の獣。

 最後の一噛みを為すべく、主人らしきものに、その牙を突き立てる。

 

 

 

「《キャンベロ<レッゾ.Star>》で、ダイレクトアタック――!」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 公爵夫人と、量産型メルクリウスが融合したおぞましい存在は、打ち砕かれ、粉砕し、木っ端微塵になって消滅した。

 残骸も残らない虚空を、スキンブルはジッと見つめている。

 

「…………」

「お疲れ、スキンブル」

「あぁ、はい。どうも」

「なにそれ、反応薄くない?」

「いえ。少々気がかりがありまして」

「気がかり?」

「えぇ」

 

 スキンブルは高層ビルから、水底を見下ろす。

 

「神威が……感じられないなと」

「しんい?」

「脅威、狂気、恐怖……まあ、恐ろしくなかった、と言いますか。凄みに欠けていたなと」

「そうなの?」

「あなたもいちいち俺に茶々入れたり軽口叩いていたでしょう? もしこれが真なる神の眷属であるとしたら、そんな余裕はありません。公爵夫人の本性と相対した時、あなたは狂気に飲まれかけたでしょう?」

「それは……そうだったね。でも、それがどうかしたの?」

「此度の相手は女王の眷属。それも、恐らく【不思議の国の住人】よりも純度の高い神性を持つ者達です。劣化コピーであれ、混ぜ物であれ、その創造物がこの程度とは、拍子抜けしたものです」

「まあ確かに、思ったより戦えてるけどさ。それが罠だって?」

「うーん、どうでしょう。強弱以前に俺としては“神らしさ”の欠如に違和感があるのですが……考えすぎですかね」

「どうだろう。でも今はあんまり考え込んでる暇はないよ。ほら」

 

 謡が部屋の外を指し示す。

 するとそこには、ちぐはぐに身体を繋ぎ止めた、公爵夫人なのか量産型メルクリウスなのか、わからない存在が大量に溢れていた。

 

「なんかたくさん湧いてきたし。気味悪いね、これ」

「そのようで。それでは謡、選手交代です。次はお願いしますね」

「私もあの気味悪いの相手するのかー……嫌だけど、やるしかないか」

 

 つぎはぎされた人型なんて、見るだけでも気持ち悪い。その相手をするなんて御免だが、この場を切り抜けるためにもそうは言っていられない。

 謡とバトンタッチし、スキンブルは小休止。その時、ふと物思いに耽る。

 

(しかしメルクリウス・エノシガイオス。2番目の星の称号を示すほどの御仁なのか、少々疑問ですね。彼女は一体……?)




 スキンブルシャンクス単体としては初めてのデュエマ。色々混ぜ物が多いですが、デッキはモモキングRXになりました。まあ混ぜ物多すぎて《モモキングNEX》はいらない気がするというか、どっちかっていうとダーウィンみたいなデッキ。好きなんですよね、ダーウィン。色んな進化重ねられて。《メガ・イノポンド》とかもあるし、また組んでみようかな。
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