こんにちは、伊勢小鈴です。
えーっと……わたしも混乱しているのですが、今わたしは、デュエマを始めようとしています。
剣埼先輩は、妙に気乗りした調子で、カードの束を渡してくれる。
「はい。伊勢さんには、初心者用のデッキをあげるよ。とりあえずそれを使って」
「は、はぁ……」
急にデッキを渡されて、曖昧に答える。
どうすればいいの、これ。
「実戦が一番とは言ったけど、その前に、簡単にルールを教えないとね」
戸惑うわたしを置いて、剣埼先輩は語り始める。
いやまあ、デュエマを教えてほしい、っていうのが当初の目標だったから、これはこれでいいはずなんだけど。。
わたしの心境としては、非常に複雑だ。
「デュエマは、クリーチャーや呪文といったカードを駆使するカードゲーム。互いのプレイヤーは、最初に五枚のシールドが展開されて、先にこのシールドをすべて割って、ダイレクトアタック――とどめの一撃を加えた方が勝ちだよ」
「……六回攻撃すれば勝てる、ってことですか?」
「大雑把に言えばそうだね。六回じゃ済まない時もあるし、六回以上攻撃することもあるけど」
次にカードについて言おうか、と先輩は説明を続ける。
「デュエマのカードには、大きく分けて四種類。クリーチャー、呪文、クロスギア、城があるんだけど……とりあえず、主に使うクリーチャーと呪文だけ説明するよ。クリーチャーはプレイヤーの代わりとなって戦ってくれる仲間。このクリーチャーが攻撃することで、相手のシールドを割ったり、とどめを刺すんだ。デュエマの基本はクリーチャーだね」
自分は指示だけ出して、仲間を一方的に戦場に送り出すと考えたら、すごく残酷に思えるけど、そういう考え方をするゲームじゃないことは分かる。
わたしは黙って次の説明を聞く。
「次は呪文だね。呪文は一回使ったらそこで終わり、使い捨てのカードだよ。色んな形でプレイヤーをサポートしてくれる」
具体的には、相手のクリーチャーを破壊したり、手札やマナを増やしたりするらしい。
マナ? と首を傾げていると、後で説明するよ、と先輩は言った。
「カードの説明と……ゾーンの説明もいるかな」
「ゾーン?」
「カードを置く場所のことだよ。最初に、40枚のカードで組んだ束、デッキを自分の右前に置く。そして、ゲーム開始時に、自分の正面に五枚のシールドを置く。シールドを置くゾーンが、シールドゾーンだ」
実際にカードを並べて、先輩は説明してくれる。
自分の目の前に五枚のカード。まるで、自分を守る盾のようだった。
「次にマナゾーン。マナゾーンは、シールドゾーンを隔てた手前側のゾーンで、マナチャージしたカードを逆さに置くんだ」
「マナチャージ?」
「クリーチャーを召喚したり、呪文を唱えるために必要な、マナを溜めることだよ。詳しくは後で言うね。次に、デッキの横のゾーンが墓地。破壊されたクリーチャーや、使い終わった呪文はここに置くんだ」
墓地って、なんだかずいぶんとリアリティのある名前で、生々しくて怖い。
「次はバトルゾーン。シールドを隔てた奥側の場所だよ。召喚したクリーチャーはここに置くんだ。攻撃したりできるのも、基本的にこのゾーンにあるクリーチャーだけだ」
「ここが戦場、ってわけですね」
「そうだね。最後に手札。手札は、ゾーンというか、相手に見せないように手に持っておいてくれたらいいよ」
「手札は最初はどうするんですか?」
「ゲーム開始時に、シールド展開の後に五枚のカードを引いて、手札にするんだ」
それから、ターンの流れも教えてもらった。
アンタップステップ、ドローステップ、チャージステップ――言葉の意味を理解するのは難儀だったけど、どういう流れかは大体分かった。カードを引いて、マナチャージして、クリーチャーを召喚して、攻撃。そしてターン終了、が基本的な流れみたいだ。
「それじゃあ恋、相手してあげて」
「……私?」
「せっかくできた友達なんだ。最初のデュエマの相手をしてあげたらどうだ。それに、俺は伊勢さんに教えながらの方がいいだろうし」
「……つきにぃが言うなら、しょうがない……」
「あ、デッキはこれ使ってね」
そう言って、先輩に指名された日向さんは、押しつけられるにもう一つのデッキを手渡された。
日向さんはそのデッキを軽く眺めると、無表情な顔のまま、ピクリと眉根を少しだけ動かした。
「……なにこれ……」
「恋が今回使うデッキだよ。いつものデッキでデュエマ初めての人を相手にするのは、流石にないだろう」
「……私、ビートダウン、苦手……」
「カラーはいつもと同じだし、それなら使えるだろ。ほら、いいから」
「むぅ……」
よくわからないけど、わたしの相手は日向さんで、しかもハンデを受けてるようだ。初心者のわたしを相手にするから、手加減してくれるみたい。
そんなこんなで、わたしと日向さんのデュエマが始まった。
長机を二つくっつけて、お互いに机を挟んで座る。
デッキを自分の右前に置いて、その上から五枚のシールドを並べて、次に手札を五枚引く。手札のカードを見てみるけど、よく分からない。
「まずはじゃんけんで先攻と後攻を決めるよ。勝った方が先攻だからね」
「じゃーんけーん」
ほい、という掛け声で、わたしは手を出します。
わたしが出した手は、グー。日向さんが出した手は、パー。
「恋が勝ったから、恋が先攻だね」
「……マナチャージ。ターン終了」
日向さんは、手札のカードを一枚、伏せた五枚のカードの手前側に、逆さ向きで置くと、そう言う。
「まず、ターンの初めにはクリーチャーやマナをアンタップするんだけど、まだゲームが始まったばかりで、クリーチャーもマナもないから、ここは飛ばすね。次にドローと言って、山札からカードを一枚引くんだけど、先攻の1ターン目はこれができないんだ」
「どうしてですか?」
「簡単に言えばハンデかな。デュエマは基本的に、先攻が有利なゲームと言われているんだ。だからその有利さを打ち消すためのハンデとして、先攻はカードを引けないんだ」
でも、伊勢さんは後攻だから、カードを引けるよ。そう言われてわたしは山札からカードを一枚引いた。少しだけお得な気分。
「その次はマナチャージ。デュエマのカードはマナがないと使えないから、ここは重要だよ。1ターンに一度、手札のカードを一枚、マナゾーンに置くことができるんだけど、その前にマナコストについて教えようか。カードの左上に数字があるでしょ」
「赤い丸に囲まれた数字ですか?」
「そうそれ。それがマナコストと言って、そのカードを使うために必要なマナの数を表しているんだ。1マナ必要なら1、2マナ必要なら2、って具合にね。そのカードを使いたければ、カードに書かれた数字の数だけ、マナコストを支払わなくてはならないんだ。マナの支払いは、マナゾーンに置いたカードをタップ――横向きにすることで、支払ったことになるよ。なんにせよ、マナがないとデュエマは始まらないし、なにもできない。とりあえず、なにかマナゾーンに置いてみようか」
「えっと……1ターンに一回しかマナチャージできないってことは、この数字が大きいほど、使いにくいってことですよね?」
「そうそう。察しがいいね」
先輩に褒められた、嬉しい。
「コストが大きいカードはすぐには使えない。ゲームの最初はそういう今すぐには使えないカードをマナゾーンに置くのがセオリーかな。でも、コストが大きいほど、効果が強力だったりするけどね」
そう言われると、手札に残しておきたくなっちゃうけど、ここは先輩の言うとおり、セオリー通りにやってみよう。左上の数字が6と書かれたカードを、逆さにして置く。
「それじゃあ、この《爆獣ダキテー・ドラグーン》をマナに置きます。これで1マナだから……」
「カードの右上に1と書かれているカードが使えるよ。あるかな?」
「えーっと……あ、ありました。《凶戦士ブレイズ・クロー》です。これを使います」
「《ブレイズ・クロー》はクリーチャーだから、マナを払って召喚して、バトルゾーンに残るよ」
《凶戦士ブレイズ・クロー》をバトルゾーンに置く。なんかトカゲみたいで、少し気味悪い。
でも、このクリーチャーがわたしの最初に召喚したクリーチャーだし、わたしの代わりに戦ってくれる(設定だ)から、丁寧に扱わないと。
「クリーチャーを出したら、次は攻撃……《ブレイズ・クロー》って、攻撃できますか?」
「できることにはできるけど、このターンは無理だよ」
「えっ、どうしてですか?」
「クリーチャーは召喚酔いと言って、召喚したターンには攻撃できないんだ。攻撃できるのは次のターンになってから」
「はぁ、そうなんですか……」
せっかく先にクリーチャーを出せたのに、少し残念。
先輩は「ただしスピードアタッカーや進化クリーチャーは、召喚したターンにすぐに攻撃できるけどね」と付け足した。
「それじゃあ、伊勢さんのクリーチャーはこのターンには攻撃はできないし、マナも全部使ったから、このターンにできることはもうないね。ターン終了を宣言して」
「は、はい。えと、ターン終了、です……」
ターン1
恋
場:なし
盾:5
マナ:1
手札:4
墓地:0
山札:30
小鈴
場:《ブレイズ・クロー》
盾:5
マナ:1
手札:4
墓地:0
山札:29
「……やっと終わった」
日向さんが、うんざりしたようにため息を吐く。そんなに露骨にならなくてもいいでしょうに。
「私のターン……マナチャージ……2マナをタップ、《奇跡の玉 クルスタ》を召喚……ターン終了」
「は、はやい……」
「恋はずっとデュエマやってて、慣れてるからね。大丈夫、伊勢さんもすぐに慣れるよ」
「このデッキ……慣れない、んだけど……」
「デュエマ自体は慣れてるだろう」
説明を受けながら、何分もかけている自分と、十秒足らずでわたしがやった行動を全部こなしてしまう日向さんの差に、ちょっとへこんだ。
「わ、わたしのターン。マナゾーンをアンタップして、カードを引いて……マナチャージ」
今度は《めった切り・スクラッパー》というカードをマナゾーンに置いた。これで2マナ溜まったことになる。
「それじゃあ、2マナのカードは……これかな。《
マナゾーンのカードを二枚タップして、今度は別のクリーチャーを出す。
「あの、先輩。《ブレイズ・クロー》の召喚酔いって、もうないですよね?」
「うん。1ターン経過したから、召喚酔いは解けてる。このターンから攻撃できるようになるよ。攻撃する時は、攻撃したことが分かるように、タップするんだ」
「わかりました……それじゃあ、《ブレイズ・クロー》で攻撃します」
《ブレイズ・クロー》のカードを横向きにして、攻撃宣言。これで、いいんだよね?
でも、日向さんは動かない。どうしちゃったんだろう。
「……どれ」
「え?」
「シールド……どれ」
「え? え?」
早く言え、というような態度の日向さん。でもわたしからしたら、なにがなんだから分からない。どれってなに? 言えってなにを?
「恋、それじゃあ伊勢さんには伝わらないよ」
そんな日向さんを、先輩が窘める。
「ごめんね。恋はあんまり人と話すのが得意じゃないから」
「は、はぁ、そうなんですか……」
なんとなく分かってた。見るからに他人を寄せ付けないというか、コミュニケーションを放棄しているというか、そんな雰囲気がある。というか実際に教室ではそうだ。
「攻撃する時には、攻撃目標も宣言しないとダメなんだよ」
「攻撃目標?」
「そう。クリーチャーに攻撃するなら、どのクリーチャーに攻撃するか。シールドをブレイクするなら、どのシールドをブレイクするか、選ぶんだ」
「えっと、でも、シールドは全部、最初にシャッフルしたデッキから置いてるから、どれを選んでも同じなんじゃ……」
「普通はね。中にはシールドを増やしたり、中身を操作するカードもあるんだけど……今回は関係ないね。それでも一応、決まりだから」
「はぁ……じゃあ、一番右のシールドを」
「……トリガーなし」
日向さんは、わたしが選んだ一番右のシールドをめくって、ぼそっと呟くとそれを手札に加えた。ブレイクしたシールドは手札に加わるよ、と先輩が説明してくれる。
これでわたしのターンは終わり。ターン終了を宣言して、日向さんのターンだ。
ターン2
恋
場:《クルスタ》
盾:4
マナ:2
手札:4
墓地:0
山札:29
小鈴
場:《ブレイズ・クロー》《トップギア》
盾:5
マナ:2
手札:3
墓地:0
山札:29
「《一撃奪取 アクロアイト》召喚……《クルスタ》で、《ブレイズ・クロー》を、攻撃……」
日向さんは、《クルスタ》を横向きにしたけれど、攻撃先はシールドではなく、《ブレイズ・クロー》を攻撃と言った。
「クリーチャーへの攻撃は、タップされているクリーチャーにのみ行えるよ。そして、クリーチャーがクリーチャーに攻撃すると、攻撃したクリーチャーと、攻撃されたクリーチャーどうしで、バトルが発生する」
「バトル?」
「そう。カードの左下に、数字が書いてあるでしょ? それがクリーチャーのパワー、戦闘力だよ。バトルが発生すると、バトルするクリーチャーどうしのパワーを比べて、高い方が勝つ。そしてバトルに負けたクリーチャーは破壊されて、墓地に送られるんだ」
言われてわたしは、カードの左下の数字を見る。《ブレイズ・クロー》は1000、《クルスタ》は2000と書かれている。
つまり、《ブレイズ・クロー》はパワー1000で、パワー2000の《クルスタ》とのバトルに負けてしまう、ということだ。
「やられちゃった……」
「ターン終了……その時、《クルスタ》の能力で、《クルスタ》をアンタップ」
日向さんは横向きにした《クルスタ》を、縦向きに戻した。これが《クルスタ》の“能力”らしい。
「クリーチャーにはそれぞれ能力があるんだよ。さっき破壊された《ブレイズ・クロー》は、毎ターン攻撃しなくてはいけないし、その《クルスタ》はターンの終わりにアンタップする。この能力を上手く使って、対戦を有利に進めるのも、デュエマの重要なポイントだね」
「アンタップしたということは、《クルスタ》を攻撃できない、ということですか?」
「そうなるね」
じゃあ、あのクリーチャーは、いくらこっちのパワーが大きくても倒せないんだ。
なら、どうやって倒せばいいんだろう……そのままにしていたら、わたしのシールドがなくなっちゃいそうだし……
「わたしのターン」
能力をうまく使うことも、デュエマでは大切……先輩の言葉を思い返して、わたしは場にあるカードの効果を注視する。
「《トップギア》の能力は……自分の火のクリーチャー1体目の召喚コストを1少なくしてもよい……?」
つまり、今はマナチャージしても3マナしかないけど、4マナのクリーチャーを出せる、ということかな?
剣埼先輩に確認をとってみると、先輩は、そうだよ、と頷いてくれた。
「なら……これ、使えますか?」
「うん、出せるよ。でもそれは進化クリーチャーだから、クリーチャーの上に重ねないとダメだけどね」
進化クリーチャー、さっき聞いた言葉だ。
カードを見ると、火のクリーチャー1体の上に置く、と書いてる。火のクリーチャー?
「そういえば、文明のことも言ってなかったっけ。でもこのデッキだと、特に考える必要もないし……とりあえず、《トップギア》は火のクリーチャーだから、そのクリーチャーは出せるよ」
「そ、そうですか。じゃあ、《トップギア》の能力でコストを1下げて、3マナで《
《トップギア》の上に重ねて、《マッハギア》を召喚する。えっと、《マッハギア》の能力は……相手のコスト4以下のクリーチャーを1体破壊する?
日向さんのカードを見る。《クルスタ》のマナコストは、2と書いてある。
そうか。攻撃では倒せないけど、クリーチャーの能力なら倒せる。《クルスタ》はこうやって倒すんだね。
「じゃあ、コスト2の《クルスタ》を破壊するよ」
「ん……」
日向さんは淡々と《クルスタ》を墓地に置く。まったく表情が変わらない。ちょっと怖いよ。
「えっと……進化クリーチャーには、召喚酔いはない、って言ってましたよね?」
「そうだよ。このターンすぐに攻撃できる」
「じゃあ、《マッハギア》で攻撃します」
「《マッハギア》はWブレイカー。一度に二枚ブレイクできる能力があるから、ブレイクしたいシールドを二枚選んで」
「一度に二枚も……すごい。じゃあ、これと、これで」
「ん……」
言われるままに二枚のシールドをめくる日向さん。これで日向さんのシールドは二枚。《マッハギア》でもう一回攻撃したら、シールドなくなっちゃうよ。
まだわたしのシールド、五枚もあるのに。もしかして日向さん、わたしが初心者だからって、手を抜いてる……の、かな?
気を遣ってくれてるのは嬉しいけど、初心者相手だからってわざと負けるなんて、あんまりしてほしくはないけれど……
ブレイクされたシールドをめくる日向さんを見ながらそう思っていると、日向さんはそのカードを表向きにした。
「……S・トリガー……」
「シールドトリガー?」
「S・トリガーって言うのは、デュエマの大きな逆転要素だよ。シールドがブレイクされた時、それがS・トリガーを持つカードだった場合、コストを支払わずに使えるんだ」
え、なにそれ、すごい。
こっちはマナをちまちま溜めてカードを使わなきゃいけないのに、攻撃されたらカードが使えるだなんて、ちょっとずるいかも。
なんて思ってると、日向さんはわたしがブレイクしたカードを持て向きにして、場に出した。
「S・トリガー……《予言者リク》を召喚……私のシールドが二枚以下だから、シールドを一枚追加……」
あ、日向さんのシールドが増えちゃった。これで三枚、とどめまで少し遠くなった。
「ターン終了です」
ターン3
恋
場:《クルスタ》《リク》
盾:3
マナ:3
手札:4
墓地:1
山札:27
小鈴
場:《マッハギア》
盾:5
マナ:3
手札:2
墓地:1
山札:27
「私のターン……《アクロアイト》で、コストを1、軽減……《リク》を、進化……《聖霊龍王 ディオフェンス》」
日向さんもクリーチャーを進化させてきた。しかも、なんだか《マッハギア》より強そう。
「《ディオフェンス》で、《マッハギア》を……攻撃」
《マッハギア》のパワーは6000、《ディオフェンス》のパワーは8500。こちらの負けで、《マッハギア》は墓地に置かれちゃった。
「ターン終了……《ディオフェンス》を、アンタップ……」
「《ディオフェンス》も、《クルスタ》みたいにアンタップするんだ……」
パワーは高いし、コストも5だから《マッハギア》の効果でも破壊できないよ……どうすればいいの?
「わ、わたしのターン。ドロー」
今の手札にあるカードじゃ、なにもできない。とりあえず、使えなさそうなカードをマナに置いて、マナを三枚タップする。
「《爆炎シューター マッカラン》を召喚。能力は……マナ武装? マナゾーンに火のカードが三枚以上あるから、相手クリーチャー一体とバトルする……?」
タップされているとか関係なく、相手クリーチャーを一体選んで、強制的にバトルを起こせる能力みたい。《マッカラン》のパワーは3000、バトル中にはパワーが1000上がる能力もある。つまり、バトルする時はパワーが4000になるってことだよね。
「じゃあ、《アクロアイト》とバトルするよ」
「……殴っとけば、よかった、かな……?」
日向さんはそう言って、《アクロアイト》を墓地に置く。わたしのターンはこれで終了。
ターン4
恋
場:《ディオフェンス》
盾:3
マナ:4
手札:3
墓地:2
山札:26
小鈴
場:《マッカラン》
盾:5
マナ:4
手札:1
墓地:3
山札:26
「私のターン……《ガガ・ピカリャン》を、召喚。能力で、一枚、ドロー……ビートだし、殴るか……《ディオフェンス》で、攻撃……Wブレイク」
「わ、わ……!」
一度に二枚のシールドが割られた。ちょっとピンチっぽい。
一枚目のシールドは、《トップギア》。二枚目のシールドは……
「……あ。し、S・トリガーっ!」
「お、なにが出たのかな?」
「えっと、《爆獣ダキテー・ドラグーン》を出します。能力で、相手のパワー3000以下のクリーチャーを破壊できるから、《ガガ・ピカリャン》を破壊しますっ」
「……ターン終了。《ディオフェンス》を、アンタップ」
再び《ディオフェンス》がアンタップする。
S・トリガーでクリーチャーは増えたけど、《ディオフェンス》が強すぎる。
あのクリーチャーををなんとか倒せないと、勝てないかも……
「私のターン。ドロー……ん?」
わたしはカードを引くと、そのカードに注目した。
「このカードは……いけるかも」
念のために先輩に確認をとってみると、OKサインが出た。
このカードで、《ディオフェンス》を倒す。そして、一気に突破口をこじ開けるよ!
「《ダキテー・ドラグーン》を進化! 《ゴウ・グラップラードラゴン》を召喚!」
「……面倒なの、出た……」
「《ゴウ・グラップラードラゴン》は、アンタップしてるクリーチャーを攻撃できるから、《ディオフェンス》に攻撃!」
《ディオフェンス》はターンの終わりにアンタップしちゃうから攻撃が難しかったけど、《ゴウ・グラップラードラゴン》の効果があれば、それを無視できる。
でも《ゴウ・グラップラードラゴン》のパワーは6000。パワー8500の《ディオフェンス》には届かない。けれど、
「パワーアタッカー+6000! 攻撃中、《ゴウ・グラップラードラゴン》のパワーは6000上がって、12000になるよ。だから、《ディオフェンス》とのバトルにも勝てる!」
「……《ディオフェンス》は、破壊……墓地へ」
「やった……!」
やっと《ディオフェンス》を倒せた。
これでクリーチャーが攻撃されて破壊される心配もなくなる。これがチャンス、一気に攻めよう。
「じゃあ、忘れずに《マッカラン》で右端のシールドを攻撃します。ターン終了」
ターン5
恋
場:なし
盾:2
マナ:5
手札:4
墓地:5
山札:24
小鈴
場:《マッカラン》《ゴウ・グラップラー》
盾:3
マナ:5
手札:1
墓地:3
山札:25
日向さんのシールドは残り二枚。これでわたしがまた少し有利になったはず。
「《アクロアイト》を召喚……そのまま進化……《
だけど、日向さんはまた進化クリーチャーを呼び出す。
さっきの《ディオフェンス》よりは強くなさそうだけど、このクリーチャーは……?
「《シルドアイト》がバトルゾーンに出た時、山札から一枚、シールドを追加……」
「またシールドが増えた……」
「そして、《ゴウ・グラップラードラゴン》を、攻撃……相打ち」
《ゴウ・グラップラードラゴン》も《シルドアイト》もパワーは6000。日向さんは相打ちって言ってるけど、こういう時って、どうすればいいのかな?
「バトルするクリーチャーのパワーがどちらも同じだと、相打ちとなって、どちらもバトルに負けて破壊されるよ」
先輩にそう言われて、わたしは《ゴウ・グラップラードラゴン》を墓地に置く。日向さんはさっさと《シルドアイト》を墓地に置いてた。相変わらずわたしは置いていかれちゃうなぁ。
《ゴウ・グラップラードラゴン》はやられちゃったけど、日向さんのクリーチャーはゼロ。わたしのバトルゾーンにはまだ《マッカラン》がいるし、どんどん攻めるよ。
「《爆裂
ターン6
恋
場:なし
盾:2
マナ:6
手札:3
墓地:7
山札:22
小鈴
場:《マッカラン》《B―BOY》
盾:3
マナ:6
手札:0
墓地:5
山札:24
「私のターン……ん」
「どうしたの?」
「なんでもない……マナは、もう、いい……《奇跡の玉 クルスタ》《聖歌の翼 アンドロム》を召喚……《アンドロム》のマナ武装3、発動……《マッカラン》を、フリーズ」
「フリーズ?」
また聞き慣れない言葉が出て来た。たまにお母さんが騒いでる時に出て来る言葉だけど、あれってパソコン用語じゃないの?
なんて思ってると、頼りになる先輩が説明してくれる。
「フリーズっていうのは、いわゆる俗称で、正式な名前じゃないんだけど、光クリーチャーがよく持っている能力だよ。クリーチャーがフリーズされると、そのクリーチャーはタップされる。しかも、次の自分のターンの最初に、アンタップもできないんだ」
「と、いうことは、《マッカラン》は次のターンには攻撃できないんですか……」
「そうなるね」
うー、やだなぁ。せっかく残りシールド一枚まで追い込んできたのに、攻撃を止められちゃうなんて。
とりあえずわたしはカードを引く。そして、マナチャージをしようと思ったところで、自分の手札が今引いた一枚だけなことに気付いた。
引いたカードは《一撃奪取 トップギア》。日向さんのシールドはあと一枚だし、クリーチャーを出して攻めたいけど、マナチャージしたらクリーチャーが出せなくなる。
……そういえばさっきのターン、日向さん、マナチャージしてないよね?
少し気になって、先輩に聞いてみた。
「あ、あの、マナチャージって、絶対にやらなきゃいけないんですか?」
「いいや、そんなことはないよ。マナチャージしなくてもいいと判断したり、マナチャージしたくないと思ったら、しなくてもいいよ」
「じゃあ、マナチャージしないで、《トップギア》を召喚。《B―BOY》で攻撃は、どうしようかな……」
日向さんの残りシールドは二枚だから、ここで一枚ブレイクすれば、次のターンには《マッカラン》と《トップギア》で攻撃する。《B―BOY》は攻撃されて破壊されちゃうけど、S・トリガーがなかったら勝てる。
そんな風に考えていたら、剣埼先輩が声をかけてくれた。
「攻撃はしない方がいいよ。恋の場にはブロッカーがいるからね」
「ブロッカー?」
「そう。《アンドロム》の能力を見てごらん」
言われてみてみると、《アンドロム》の能力に、日向さんがさっき使ったマナ武装の他に、ブロッカー、と書かれた、黒い四角に青い丸のマークと、「このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない」という文章が書いてあった。
「ブロッカーを持つクリーチャーは、相手クリーチャーが攻撃する時に自分をタップして、その攻撃を止められるんだ。これをブロックといって、ブロックされたら、ブロックしたクリーチャーとブロックされたクリーチャーどうしでバトルするんだ」
「《アンドロム》のパワーは3500……《B―BOY》は1000だから、攻撃してもブロックされて負けちゃって、意味がない、ってことですか?」
「そう。だからここは攻撃しない方が得策かな」
「そ、そうなんですか……じゃあ、ターン終了します」
ターン7
恋
場:《クルスタ》《アンドロム》
盾:2
マナ:6
手札:2
墓地:7
山札:21
小鈴
場:《マッカラン》《B―BOY》《トップギア》
盾:3
マナ:6
手札:0
墓地:5
山札:23
危なかった……先輩が教えてくれなかったら、無駄にクリーチャーを破壊しちゃってたよ。
でも、わたしのバトルゾーンにはクリーチャーが三体いる。次のターンには《マッカラン》も攻撃できるようになるし、三体のクリーチャーで、ブロッカー一体とシールド一枚を突破して、押し切っちゃおう。
わたしはそんな風に戦略を組み立てていた。でも、それは素人の考え方だったのかもしれない。
わたしは、全然考えてなかったんだ。
日向さんが次のターン、なにをしてくるかを。
「……関係ない」
日向さんのターン。日向さんはややうつむき気味になって、小さく呟く。
カードを引いて、マナを溜める。
「……《クルスタ》を、進化」
そして――
「――《聖霊龍王 ミラクルスター》」
光り輝くクリーチャーが現れた。
比喩じゃない。本当に光ってる。カードが。
「な、なに、なんか強そう……」
「あのデッキの切り札、《ミラクルスター》だ。ここからは、厳しい対戦になるかもね」
剣埼先輩も険しい顔をしてる。それほど、日向さんが出したクリーチャーは強いってことなんだろう。
《聖霊龍王 ミラクルスター》。日向さんはそのクリーチャーを《クルスタ》から進化させると、動き出した。
「《ミラクルスター》の、能力……登場時、相手クリーチャーを二体、フリーズする……《B―BOY》と《トップギア》をフリーズ……」
「あ……」
「まだ……《ミラクルスター》で《マッカラン》を、攻撃……《アンドロム》で《トップギア》を、攻撃……どっちも破壊」
わたしのクリーチャーが二体も破壊された。しかも、残った《B―BOY》もアンタップできないから、最後のシールドをブレイクすることもできない。
《ミラクルスター》はパワー12000もあって、Wブレイカーよりも強力なTブレイカーの能力を持っている。その攻撃を受けてしまえば、残ってるわたしのシールド三枚がすべて失われてしまうということ。
ど、どうしよう。これって、絶体絶命のピンチなんじゃ……
手札がないわたしは、このドローに賭けるしかなかった。
そして、引いたカードは、
「鳥さん……? え、えっと、《エヴォル・メラッチ》を召喚!」
わたしが引いたのは、小さな鳥みたいなクリーチャー。
3マナですぐに出せるから、とりあえずバトルゾーンに出すけど、これで勝てるのかな?
不安に思いながら、《メラッチ》の能力を見てみる。えーっと……
「山札から四枚を見て……」
書かれているままに、わたしは山札の上から四枚を見る。
《ピアラ・ハート》《エヴォル・メラッチ》《鳳皇 マッハギア》……鳥さんがいっぱい。
《エヴォル・メラッチ》はバトルゾーンに出ると、山札の上から四枚を見て、その中から進化クリーチャーを手札に加えられるみたい。この中だと、《マッハギア》を手札に加えられるけど……
まだめくったカードは三枚だから、わたしは四枚目のカードをめくる。
あ、このカード……?
「えっと、めくった中から、この進化クリーチャーを手札に加えます」
「……っ」
あれ、日向さんが、ちょっと反応した?
わたしはこれ以上できることがないからターン終了。
日向さんのターンが、来てしまった。
ターン7
恋
場:《ミラクルスター》《アンドロム》
盾:2
マナ:6
手札:2
墓地:7
山札:20
小鈴
場:《B―BOY》《エヴォル・メラッチ》
盾:3
マナ:6
手札:1
墓地:7
山札:21
「……速攻で決める」
日向さんは、少しだけ目の色が変わった、ような気がする。
声は淡々としてるし、表情もないけど、纏ってる空気というか、雰囲気が分かりやすい。少なくとも今の彼女は、すごく攻撃的になっている。気がする。
「マナチャージなし……《白騎士の霊騎ラジューヌ》を召喚……そのまま、《シルドアイト》に進化……シールド追加……《アンドロム》で《B―BOY》を攻撃、破壊」
きっちりと《アンドロム》がわたしの《B―BOY》を攻撃して破壊する。抜かりはないみたい。
それよりも、これって、わたしが本当にピンチだよね……
進化クリーチャーは召喚酔いしないってことは、このターンに召喚された《シルドアイト》は攻撃できる。わたしのシールドは三枚で、日向さんの攻撃できるクリーチャーは、《シルドアイト》と《ミラクルスター》。WブレイカーとTブレイカーだ。
そして遂に、本命、《ミラクルスター》の攻撃が放たれる。
「《ミラクルスター》で……Tブレイク」
一度で三枚のシールドをブレイクするTブレイカー。わたしの残ってるシールドが、一気に全部ブレイクされた。
一枚ずつ、ブレイクされたシールドを見ていく。一枚目は《エヴォル・メラッチ》。S・トリガーじゃない。
二枚目は、《エヴォル・メラッチ》。また? この鳥さん、二枚もシールドにいるよ。
そして最後、三枚目。ここでS・トリガーが出ないと、わたしの負け。
なんだろう、すごくドキドキする。
負けそうなのに、今この状況が、楽しい……?
この一枚で運命が決まる。そう思うと、重い。
とっても重い……はずなんだけど。
その重さが、楽しさに変わっていく。
わたしは最後のシールドを見る。そして――
「S・トリガー!」
「…………」
その最後のカードを、開いた。
「《爆流剣術 紅蓮の太刀》!」
最後にめくれたカードは、呪文だった。
そして、その効果を発動する。
「パワー3000以下のクリーチャーを破壊する能力は……使えないね」
《アンドロム》のパワーは3500だから、ちょっとだけ足りない。でも、
「こっちは使えるよ、マナ武装5! パワー6000以下のクリーチャーを破壊できる! 《シルドアイト》を破壊!」
「……ターン終了」
最後の最後、ギリギリのところで、《シルドアイト》を破壊できた。これで、とどめは刺されない。
だけど、わたしのシールドはゼロ枚で、日向さんのシールドは二枚。バトルゾーンも、わたしには《メラッチ》しかいないけど、日向さんには《ミラクルスター》と《アンドロム》がいる。
ピンチな状況は変わってない。
だけど、逆転の一手はある。
わたしのターン。
「《エヴォル・メラッチ》を進化!」
前のターン、《エヴォル・メラッチ》が探してきてくれたカード。
その意味が、ここで分かった。
わたしに残された唯一のクリーチャー、《エヴォル・メラッチ》。
それを、ここで進化させる――
「――《エヴォル・ドギラゴン》!」
《エヴォル・メラッチ》の上に重ねて、《エヴォル・ドギラゴン》を進化。
《エヴォル・ドギラゴン》も、《ミラクルスター》のように光り輝いている。相手の《ミラクルスター》は手強そうで、少し怖かったけど、味方にするとこの輝きは凄く頼もしい。
これがこのデッキの、わたしの切り札。このクリーチャーで、今のピンチを突破してみせる。
「《エヴォル・ドギラゴン》で、《聖霊龍王 ミラクルスター》を攻撃!」
《ドギラゴン》のパワーは14000、《ミラクルスター》も12000で高いけど、パワーはこっちの方が上だから、バトルに勝って破壊できる。
そして、それだけじゃない。
このターン、クリーチャーが《ドギラゴン》しかいないわたしはとどめが刺せない。
だからまずは、クリーチャーを倒す。
「バトルに勝ったから、《エヴォル・ドギラゴン》の能力でアンタップ! 次は《アンドロム》を攻撃!」
「全滅した……」
バトルに勝ったらアンタップできる《エヴォル・ドギラゴン》。バトルでは無敵のドラゴン。
これで日向さんのバトルゾーンにクリーチャーはいない。次のターンで決めるために、攻めるよ。
「《エヴォル・ドギラゴン》で、シールドをTブレイク!」
「やばい……トリガー、ない……」
「ターン終了です!」
ターン8
恋
場:なし
盾:0
マナ:6
手札:4
墓地:12
山札:18
小鈴
場:《エヴォル・ドギラゴン》
盾:0
マナ:7
手札:2
墓地:9
山札:20
日向さんのシールドもゼロ。お互いシールドゼロでギリギリの状況になったけど、日向さんはどうするのかな。
「私のターン……進化クリーチャー、来ないし……《クルスタ》《リク》を召喚……《リク》の能力で、シールドを追加……エンドで……」
シールドを増やされちゃった。これでまたとどめが刺せなくなった。
しかも、攻撃できるクリーチャーが二体も出て来た。どうしよう。《ドギラゴン》でバトルできれば勝てるけど、タップしてないから攻撃できない。
そう思って手札を見る。いや、まだ手はある。
「《爆炎シューター マッカラン》を召喚! 能力で《リク》とバトル! さらに《マッカラン》を《マッハギア》に進化!」
「進化速攻……」
さっき日向さんがやってたことを真似してみた。進化クリーチャーは召喚酔いしないってことは、クリーチャーを召喚したそのターンに進化させれば、すぐに攻撃できる。
これでわたしのバトルゾーンに、このターン攻撃できるクリーチャーは、《マッハギア》と《ドギラゴン》の二体。このターンで勝負を決めるよ。
「《マッハギア》の能力で、《クルスタ》を破壊! そして《マッハギア》でシールドブレイク!」
このシールドブレイクで、日向さんのシールドはまたゼロになる。そうなれば、最後に《ドギラゴン》でとどめを刺せる。
だけど、ここでS・トリガーが来たら、わたしの負け。
お願い、出て来ないで、S・トリガー……!
「……S・トリガー……」
日向さんは、最後のシールドを見る。
そして――
「……ない」
「っ! それじゃあ!」
わたしは、わたしの切り札に手をかけて、横に倒した。
最後の攻撃を、放つために。
「《エヴォル・ドギラゴン》で、ダイレクトアタック――!」
☆ ☆ ☆
「……勝った?」
わたし、勝ったの? 日向さんに。
なんか、勢いでここまでやっちゃったから、あんまり記憶に自信はないけど、わたし、勝ったんだよね?
「うん。伊勢さんの勝ちだよ。おめでとう」
「剣埼先輩……」
先輩が称えてくれる。お世辞かもしれないけど、純粋に嬉しい。
先輩の称賛だけじゃない。
初めてのデュエマで、勝ったこともだ。
胸の奥がドキドキしてる。なんだろう、身体が疼くみたいに、むず痒いような感覚。でも、嫌じゃない。
むしろ心地よい。自然と湧き上がってくるこの気持ちが、すごく気持ちいい。
これが、デュエマの楽しさなのかな……?
「…………」
「慣れないデッキでよく頑張ったな、恋」
「べつに……ビート同士の殴り合いなんて、こんなもん……最後はトリガー……」
「でも、《ミラクルスター》を出した時、いつもの癖で場の制圧から始めただろう? フリーズしたクリーチャーは動けないんだから、そのままシールドをブレイクした方がよかったんじゃないか?」
「……だからビートは苦手」
「恋……」
「……でも、少し……覚えたくなった……かも」
「いいんじゃないか? 少しくらい、違う自分を出しても」
「……がんばる」
先輩と日向さんが、なにか言葉を交わしている。よく聞こえないけど、なんだろう。
「お疲れさま、伊勢さん。デュエマのルールは大体わかったかな?」
「は、はいっ。ありがとうございました!」
「そうか、それはよかったよ」
「あ、そうだ。このデッキ返さないと……」
「いや、いいよ。それは君にあげる。最初にも言ったけど」
「え、でも……」
「その代わりと言ったらなんだけど、これからも恋と仲良くしてやってくれないかな?」
「え?」
「言い難いんだけど、あいつ、同学年の友達がいないみたいだから……一応、この部には一年生の男子と女子が一人ずついるけど、どっちもクラスが違うし、反りが合わなかったり、ちょっと特殊な事情があったりで、あんまり仲良くしてるところがないんだ」
深刻そうな顔で言う先輩。
でも、日向さんの性格なら、確かに同じ部活でも人付き合いが苦手そう。
かくゆうわたしも、デュエマを教えてほしい、なんてきっかけがなかったら、絶対に関わらなかったと思うけど。
……でも
「俺が介入するのはお節介かもしれないし、押し付けがましいのは承知してるけど――」
「いいですよ」
「っ、本当かい?」
「はいっ」
日向さんと仲良くできるかどうかは、ちょっと自信ないけど、でも、今までよりは仲良くなりたいって、ちょっと思った。
だって、今日初めてやった日向さんとのデュエマ――
「――わたしも、楽しかったので!」
第2話、これにて終了です。ここもまだチュートリアルのようなもので、本格的にお話が動くのは、次回からとなります。また、ピクシブには載せていた、デッキ紹介を兼ねたおまけコーナーを、本サイトにおいては廃止しています。興味がある人は、是非ピクシブの方も覗いてみてください。