デュエ魔法少女マジカル☆ベル   作:モノクロらいおん

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 色々とゴタゴタしていて、少し久々の更新になりました。再掲とはいえ、元の文章を再チェックして改稿するから、少し手間かかるせいでポンポン投げられるわけじゃないんですよね……投稿形式とか、ツールもちょっと違いますし。
 そんなことはさておき、前々から作中で予告していた大会編です。何話かに分けてお送りするので、少し長くなりますが、最後までお付き合いください。


20話「大会だよ ~第1回戦~」

 こんにちは、伊勢小鈴です。

 クリーチャーの出現も、不思議の国の人たちの登場も、ちょっとは落ち着いてきたかな、と思いたい夏のある日。

 いつものように、わたしたちは『Wonder Land』に集まっています。ただし今日は、いつもと集まってる理由が、ちょっと違います。

 わたしたちが今日、『Wonder Land』に集まった理由。それは――

 

 

 

 ――デュエマの大会、です!

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

 詠さんと店長さんに頼まれて出場することになった、『Wonder Land』ファンデッキ大会。

 いつもとは違うデッキで対戦するこの大会なんだけど、これは、大会なんです。

 みんなでわいわいやってる、いつものデュエマとは、違うデュエマ。

 それは、会場入りした時点の空気の変化で、理解しました。

 

「いつもより人が多い……うぅ、緊張してきた……」

 

 小学校の学校行事以外で、おおよそ大会と呼べるようなものに出たことのないわたしは、お店の熱気に早速、気圧されてしまいました。

 

「大丈夫、小鈴ちゃん? ちょっと休む?」

「そんなに気負うことないよ。交流戦みたいなもんなんだし、楽しめばいいんだ」

「ですです。ユーちゃん、もう今から楽しみです! 大会、頑張りましょうね!」

「……受付、始まった、みたいだけど……」

 

 恋ちゃんが指差す。その先には、お店のカウンターに集うたくさんの人の姿。

 あの人たち全員が大会参加者なんだ……多い……

 

「あうぅ……」

「小鈴ちゃん、本当に大丈夫? 無理はしなくていいんだよ?」

「大舞台に弱いタイプか……この前の大暴走はなんだったんだってくらい弱ってるね……」

「だって、こんなに人……」

 

 自分が内向的な暗い女ってことくらいはわかってます。だから、こういう大会とかって、すごく緊張する。

 みんなと一緒なら大丈夫かと思ってたけど、対戦するのは一人だし、みんなとずっと一緒なわけじゃないし……そう思うと、体が……

 で、でも、詠さんにも出場するって言っちゃったし、この時のためにみんな一生懸命デッキを組んできたわけだし、ここでわたしがリタイアするわけにはいかない、よね……

 

「……ごめん、ちょっと、お手洗いに……先に受付、済ませておいてくれるかな……」

「う、うん。わかった。君の分も先にエントリーしておくよ」

「小鈴さん! お気をつけて!」

「うん、ごめんね……行って来る……」

 

 そう断ってから、お手洗いに走る。

 走るといっても、自分でもびっくりするくらい弱々しい足取りだけど。

 緊張だけでボロボロになった体。いまいちはっきりしない意識の中、不意に、後ろから声が聞こえた気がする。

 

「ところで……小鈴のハンネ……どうするの……?」

『……あ』

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「やっと、落ち着いた……」

 

 胸に手を当てる。まだ心臓がバクバク言ってるけど、さっきまでの恐怖心に近いものはなくなってる。

 そうだよね。わたしは今日このの時を“楽しみに”してデッキを組んできたんだもん。霜ちゃんの言う通り、楽しまなくっちゃ。

 霜ちゃんが提案してくれた、わたしたち五人のスタイルをまねっこするデッキ構築。みのりちゃんは、わたしの戦い方を真似たデッキを組む。霜ちゃんは、みのりちゃんの戦い方を真似て、ユーちゃんは恋ちゃんのを、恋ちゃんは霜ちゃんのを真似る。そして、わたしはユーちゃんの戦い方を真似て、デッキを組んだ。

 ……まあ、ユーちゃんっぽいかと言われたら、ちょっと違う気もするけど。闇文明入れただけだし……でも、なかなかの自信作だよ!

 

「っと、それより、早くみんなのとこに戻らなきゃ」

 

 思ったより時間がかかっちゃった。もうエントリー終ってるかな?

 一回戦の試合開始が1時からだったはず。今の時間は……12時55分。ギリギリだ。

 わたしは急ぎ足で戻る。時間通りに来ないで不戦敗なんて、格好つかないし、申し訳ないからね。

 それにしても、大会って色んな人がいるんだなぁ。

 カードショップとしては女の子が多いお店っていうのは知ってたけど、今日はいつにも増して女の子が多い気がするし、男の人もいつもより多かった。

 それも、わたしたちと同年代の人だけじゃなくて、高校生か、大学生か……ひょっとしたら社会人かもしれない大人の人もいっぱいいたし、小学生くらいの子もいた。ユーちゃんとは違う銀髪の人もいた。外国の人もいるんだ。

 ちょっとだけいつもと違う『Wonder Land』。正に、不思議の国、だね。

 

「……不思議の国、か」

 

 その言葉にはちょっと思うことがないでもないけど……今は、そんなことを考える時じゃないよね。

 気持ち程度の駆け足で、みんなのところに戻る。店員さん――詠さんだ――が参加者の名前を呼んで、点呼を取ってるところ?

 

「お、お待たせ。ごめん、遅くなっちゃった」

「小鈴か。受付はもう済ませたよ……実子が」

「? ありがとう」

 

 なんか、霜ちゃんがわたしと目を合わせてくれないし、どこか遠い目をしてる。なんでだろう?

 

「なんかねー、人が多くて一度に全員対戦は無理だから、二回戦までは前半と後半で二回ずつに分けるんだって」

「そうなんだ」

「まあ交流戦だし、他人が対戦してるところも見てたいからね。一応、観客者席みたいなスペースも設けられてるみたいだ」

「……だから、対戦スペースが狭くなってる……」

「回転効率より楽しみってことだろう」

 

 効率より楽しみ、かぁ。

 やっぱりこの大会は、楽しむことを重視してるんだね。

 

「ユーさーん! いますかー?」

「あ、ユーちゃんですね! 行ってきます!」

「うん。行ってらっしゃい、ユーちゃん」

 

 店員さんに呼ばれて、パタパタと向かっていくユーちゃん。

 あれ? でも、ユーちゃんのユーって、愛称だよね? 本名はユーリアのはずだけど……

 

「言い忘れてたけど、こういう大会だと、本名を使わず、ハンドルネームで呼ぶことが多いんだよ」

「へぇ、そうなんだ。でも、ユーちゃんはユーちゃんだったよね?」

「……別に、本名を使ってはいけない、わけじゃないし……要するに、どう呼ばれるか、ってこと……」

「ユーの場合は、もう既にユーっていうのがあだ名だし、あれがほとんど本名だってわかるのは、うちの学校の生徒くらいだろうね」

「本名を使ったって、他人からはそれが本名かわからないわけだしね」

「あ、なるほど。それもそうだね」

 

 わたしは初めて出るから知らなかったけど、こういう催しって本名使わないんだね。ハンドルネーム……ペンネームみたいなものだよね。

 みんなはどんな名前をつけてるんだろう。

 ……あれ? そういえば、わたしのエントリーはみんなに任せたけど、わたしの名前は……?

 

「マジカル☆ベルさーん? いますかー?」

「……ほら、呼ばれてるよ……小鈴」

「あれってわたしなの!?」

 

 マジカルってなに!? ベルは……ともかくとして、マジカルって……わたしのあの格好からの連想!?

 流石にその名前は恥ずかしいよ霜ちゃん……!

 

「ボクじゃない、あれをつけたのは……」

「私だよ!」

「みのりちゃん!? なんであんなのにしたの!?」

「面白いし、可愛いかなって」

「は、恥ずかしいよ……!」

「もう諦めるんだ、小鈴。他人にエントリーを任せた自分を恨んでくれ……」

「うぅ……」

「……ドンマイ」

 

 恋ちゃんが珍しく励ましてくれて、霜ちゃんも申し訳なさそうに諭してくる。確かに、その通りかもしれないけど……なんだか腑に落ちないよ……

 

「ほらほら小鈴ちゃん、店員さん呼んでるよ。早く行かなきゃ」

「あの名前で呼ばれてる時に行くのはすごい恥ずかしいんだけど……」

 

 でも行かないとお店にも迷惑なんだよね……

 そんなわけで、とっても恥ずかしい思いをしながらも、わたしは席に着くのでした。

 わたしの初めての大会は、緊張感が羞恥心に塗り潰された状態で、始まったのです。

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「勝っちゃった」

 

 一回戦、突破できました。

 

「おめでとう小鈴ちゃん!」

「おめ……」

「あ、ありがとう。みのりちゃん、恋ちゃん」

 

 大戦が終わったら、みのりちゃんと恋ちゃんがいた。

 一回戦の前半で対戦したのは、わたしと、ユーちゃんと、霜ちゃん。

 二人は後半組だね。

 

「ただいま」

「戻りましたよー!」

「あ、お帰り、霜ちゃん、ユーちゃん。どうだった?」

「デッキが上手く回ってくれたお陰で、なんとか勝てたよ。《オニカマス》も《オリオティス》も《デスマッチ》もなくて助かった」

「ユーちゃんもです! 勝ちました!」

 

 ってことは、前半組の三人はみんな二回戦に進めたんだね。よかったよ。

 

「席を立つ人が増えてきましたね」

「前半戦がもう終わるってことだろう。そろそろ後半戦に入るね」

 

 前半戦が終わって、後半戦に入る。

 次は恋ちゃんやみのりちゃんの番だね。

 

「ラヴァーさーん! いますかー?」

「ん……呼ばれた……行って来る……」

「あ、うん。行ってらっしゃい、恋ちゃん」

 

 早速、恋ちゃんが店員さんに呼ばれて、パタパタと行ってしまう。

 

「……恋ちゃんのハンドルネーム、ラヴァーっていうんだ」

「本名からの連想じゃないか? 恋だから、恋人でラヴァー、みたいな」

 

 Lover(恋人)

 あんまり恋ちゃんとイメージないけど、名前からの連想と言われると納得かな。

 本当にそれだけ? って疑問も、なくはないけど。

 

「稲荷さーん。ここでーす、お願いしまーす」

「お、私だね」

「みのりちゃん、なんで稲荷なの?」

「特に理由はないよ!」

「え」

「ハンドルネームのつけ方なんて、人それぞれさ。実子なら、稲荷寿司が食べたくなったからそんな名前にしたと言っても不思議はない」

「否定はしないかな!」

 

 ちなみに霜ちゃんは「SAW」と書いて「ソウ」だった。この名前は色んなところでも使ってるみたいで、霜ちゃんと連絡する時もそんな名前だったよ。映画のタイトルとかを自分の名前と重ねてるらしいです。

 それはそれとして、恋ちゃんとみのりちゃんが1回戦の後半に出ていく。これが終われば、次は二回戦かぁ。

 このまま、みんなで勝ち進めたらいいんだけど……大丈夫だよね。恋ちゃんもみのりちゃんも、とっても強いし。

 と、思っていたら、

 

「あれ? でも、恋さんの次に実子さんが呼ばれたってことは……」

「あ」

 

 そうだった。

 対戦テーブルを見ると、そこには、向かい合って座る恋ちゃんとみのりちゃんの姿があった。

 

 

 

                     ☆ ☆ ☆

 

 

 

「まさか一回戦から当たっちゃうなんてねー。よろしくね、日向さん」

「ん……よろしく」

「まあ、皆で出てるわけだし、こういうこともあるよね」

「はうぅ、どっちを応援したらいいんでしょう……?」

「どっちでもいいさ。どっちかは勝つし、どっちかは負ける。でもこれは単純に競い合うだけの大会じゃない。ボクらは過程を楽しめばいい」

 

 過程を楽しむ、か。

 確かにみのりちゃんは口元を緩めて笑っている。恋ちゃんは……相変わらずの無表情だけど、少なくとも不機嫌そうではない。

 二人とも、楽しもうとしている、のかな?

 

「まずは次元の確認からだね。私の次元はこれだよ」

 

 

 

[実子:超次元ゾーン]

《銀河大剣 ガイハート》×1

《将龍剣 ガイアール》×1

《爆熱剣 バトライ刃》×1

《銀河剣 プロトハート》×1

《無敵剣 プロト・ギガハート》×1

《熱血爪 メリケン・バルク》×1

《革命槍 ジャンヌ・ミゼル》×1

《神光の龍槍 ウルオヴェリア》×1

 

 

 

 あ、《ガイハート》がある。みのりちゃんも、《ガイハート》使うんだ。

 

「《グレンモルト》は入ってるだろうが、よくわからないな。火文明がメインっぽいけど……《バトライ閣》まであるってことは、ドラゴン軸なのか?」

 

 霜ちゃんは隣で首を傾げていた。

 超次元ゾーンも、相手の戦術を知るための大事な要素って教えてもらったっけ。

 だから、霜ちゃんは超次元から、みのりちゃんのデッキを推理しようとしてるんだろうけど、なにかおかしなところがあるみたい。

 わたしには、《ガイハート》があるから《グレンモルト》が入ったデッキなのかな、くらいしかわからないけど……

 

「赤い……私のは、これ……」

 

 

 

[恋:超次元ゾーン]

《勝利のガイアール・カイザー》×1

《勝利のプリンプリン》×1

《タイタンの大地ジオ・ザ・マン》×1

《魂の大番長「四つ牙」》×1

《ブーストグレンオー》×1

《アルプスの使徒メリーアン》×1

《時空の英雄アンタッチャブル》×1

《時空の喧嘩屋キル》×1

 

 

 

「こっちは普通の次元だね、《勝利のリュウセイ》がないから、十中八九《フェアリー・ホール》一択だ」

 

 恋ちゃんの超次元は、総じて自然文明が多いように見えるけど、ほとんどよく見るカードだ。わたしが使ってるカードも少なくない。

 

「オーケー。じゃ、次はじゃんけんね」

 

 じゃんけんで先攻後攻を決める。勝ったのは恋ちゃんだから、恋ちゃんが先攻だ。

 

「私の先攻……《アブソリュートキュア》をチャージして、終了……」

「私のターン! 《DXブリキング》をマナチャージ! ターンエンド!」

 

 

 

ターン1

 

ラヴァー(恋)

場:

盾:5

マナ:1

手札:4

墓地:0

山札:30

 

 

稲荷(実子)

場:なし

盾:5

マナ:1

手札:5

墓地:0

山札:29

 

 

 

「《シュトルム》をチャージ……2マナで、《フェアリー・ライフ》……」

 

 恋ちゃんの動きは、今までわたしたちに見せてたデッキと変わらないように見える。《グランドクロス・アブソリュートキュア》を切り札にした、S・トリガーがたくさん入ったデッキだ。

 だけど、ここでマナゾーンに落ちたカードに、みのりちゃんが反応した。

 

「ん? 《モアイランド》……?」

 

 マナに行ったのは、コスト10のすごく重いクリーチャー。能力はよくわからないけど、なんだか変わったクリーチャーだなぁ。

 自然文明が入ってるわけだし、10マナのクリーチャーでも出せないこともなさそうだけど、なにかおかしいのかな……?

 

「ターン、終了……」

「変なカード入ってるなぁ……まあいっか。速攻で決めちゃおう! 《トップギア》をチャージして2マナ! 《虹彩奪取(レインボーダッシュ) トップラサス》召喚! ターンエンド!」

 

 

 

ターン2

 

ラヴァー(恋)

場:なし

盾:5

マナ:3

手札:3

墓地:1

山札:28

 

 

稲荷(実子)

場:《トップラサス》

盾:5

マナ:2

手札:4

墓地:0

山札:28

 

 

 

「私のターン、《ホーリー》をチャージ……3マナで《ハイエイタス・デパーチャ》……1マナ加速……」

 

 恋ちゃんはマナ加速を続ける。やっぱり、マナを溜めることが大事なデッキなのかな。

 

「ん、単色おちた……じゃあ《ジャスミン》も召喚……もう1マナ、加速……」

 

 立て続けにマナ加速する恋ちゃん。

 すると今度は、色のないカード――無色のカードがマナゾーンに落ちた。

 

「今度は《VAN》かぁ、なんとなーく読めたかな?」

「……ターン終了」

「じゃ、私のターンね。《未来設計図》をチャージ。《トップラサス》でコスト軽減、3マナで《龍装車 ボルシェ》を召喚! 《トップラサス》からNEO進化するよ!」

 

 みのりちゃんはコスト軽減のために出していた《トップラサス》を、戦車みたいなクリーチャーにNEO進化させる。

 あれ? なんかあのクリーチャー、前にも見たことあるような……?

 

「水早君のまねっこでも、基盤はトリビっぽし、トリガー怖いけど……このクリーチャーなら除去トリガーは怖くないし、私は臆しないよ。速攻で決める! 《ボルシェ》で攻撃! する時に、革命チェンジ!」

 

 出た! みのりちゃんの革命チェンジだ!

 だけど、《リュウセイ・ジ・アース》とかの大きなドラゴンじゃないから、《ドギラゴン剣》とかじゃない、よね……? 

 なにが出るんだろう。

 

「《ボルシェ》の種族はドラゴンギルド! つまり火のドラゴンだから、このクリーチャーとチェンジするよ!」

 

 あ、あのクリーチャードラゴンなんだ。

 デュエマやってるとたまに思うけど、明らかにドラゴンっぽくないのに、種族にドラゴンがついてるクリーチャーがいるから、もう驚かない。

 それよりも、ここで出て来るクリーチャーって、一体――

 

 

 

「小鈴ちゃんパワー! 私アレンジ! 《シン・ガイギンガ》!」

 

 

 

 え、《ガイギンガ》!?

 って、一瞬ビックリしたけど、よく見たらこれ、いつかみのりちゃんが使ってたクリーチャーだ。

 

「これが最速3ターン《シン・ガイギンガ》だ! 《シン・ガイギンガ》でWブレイク!」

「……トリガー、《フェアリー・ライフ》……」

「よしよし、変なトリガーはないね。まあトリガー出ても選んだらエクストラターンもらっちゃうけど。ターンエンドだよ」

 

 

 

ターン3

 

ラヴァー(恋)

場:なし

盾:3

マナ:7

手札:2

墓地:4

山札:24

 

 

稲荷(実子)

場:《シン・ガイギンガ》

盾:5

マナ:3

手札:4

墓地:0

山札:27

 

 

 

「《シン・ガイギンガ》か……そういえば、前にもなんか組んでたな」

「わたしが《ガイギンガ》のデッキを組んでる時だったよね。ちょっと前のことだけど、懐かしいな」

「実子さんは《ガイギンガ》で小鈴さんのまねっこなんですね!」

「みたいだね。革命チェンジで出るから、元の《ガイギンガ》より素早く出せるのが《シン・ガイギンガ》の強みだけど、恋はこれを返せるのかな?」

 

 恋ちゃんはいつものように無表情で、苦戦しているのかは表情からは読み取れないけど……

 

「ゲロキツ……吐きそう……」

 

 ちょっと口が汚くなっちゃうくらいには辛いみたい。

 

「とりあえず、マナチャージ……」

「今度は《ドラゴ大王》か。やっぱりそういうデッキなんだね」

「……7マナ、タップ」

 

 恋ちゃんはマナゾーンのカードを倒すと、その中から三枚を手に取って、それを場に出した。

 これは、恋ちゃんも切り札が来る……!

 

「マナの《VAN》《モアイ》……《ホーリー》の三体を、進化元に、マナ進化GV(ギャラクシー・ボルテックス)……《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》を、召喚……」

 

 《アブソリュートキュア》。攻撃して進化元を墓地に置けば、その数だけシールドが復活するクリーチャー。

 これで三枚シールドが回復すれば、防御力が一気に上がって、長く耐えられるし、トリガーで反撃のチャンスも生まれる。

 はず、なのに、

 

「攻撃は、しない……ターン、終了……」

 

 え? 攻撃しないの?

 攻撃する時の能力があるのに、なんで攻撃しないんだろう……?

 

「恋……随分と強気だな」

「霜ちゃんは、恋ちゃんがなにするかわかるの?」

「むしろなんで君が忘れてるのかボクには不思議だけどね。まあ見てたらわかるさ。アレが綺麗に決まったら、驚くだろうから」

 

 そう言って霜ちゃんは、それ以上は教えてくれなかった。

 なんだかちょっともやっとするけど、霜ちゃんの言う通り、わたしは成り行きを見守ることにした。

 

「んー、手札は残り一枚かぁ。怪しいけど、手札補充を挟んでるわけでもないし……これは誘ってるのかな?」

「さぁ……」

「ふーん。まあでも、今ここで手札を与えるのはまずいし、私は大人しく待つことにするよ。《ボルシェ》はもういらないからチャージ。2マナで《トップラサス》、そして《トップギア》を召喚! ターンエンドだよ」

 

 

 

ターン4

 

ラヴァー(恋)

場:《アブソリュートキュア》

盾:3

マナ:5

手札:1

墓地:4

山札:23

 

 

稲荷(実子)

場:《シン・ガイギンガ》《トップラサス》《トップギア》

盾:5

マナ:4

手札:2

墓地:0

山札:26

 

 

 

 みのりちゃんは攻撃せずにターンを終わらせた。

 みのりちゃんも恋ちゃんの狙いに気付いてるっぽいけど、それを見越してのプレイング、なのかな? 手札を与えない、とか言ってたし。

 さっきのターンにとどめは刺せなかったけど、これでみのりちゃんは、恋ちゃんにとどめを刺すだけのクリーチャーが揃った。

 

「……《フェアリー・ホール》、マナを加速……《ブーストグレンオー》を出して、《トップラサス》を破壊……嫌な予感するけど、なにもできないし……ターン、終了……」

「私のターン! もう待たないよ。このターンで決める!」

 

 そう宣言するみのりちゃんは、なんだか、とても生き生きしてる。

 前のターンはあえて攻撃しなかったみたいだけど、ここまでのカードを見る限り、みのりちゃんのデッキはすごく攻撃的なデッキ。

 そう何ターンも待つわけがないし、決められるとわかれば、容赦なく攻めてくる。

 

「《シン・ガイギンガ》をチャージして5マナ! 《トップギア》でコストを1軽減!」

 

 みのりちゃんはありったけの5マナをタップする。

 そうして、出て来るのは、

 

「さぁ、このデッキのセカンド切り札だよ! 《龍覇 グレンモルト》!」

 

 わたしもよく使ってる《龍覇 グレンモルト》。

 このタイミング、あのクリーチャーで出すドラグハートと言えば、あれしかない。

 

「《グレンモルト》の能力で、コスト4以下の火のドラグハートを出すよ。出すのは勿論《銀河大剣 ガイハート》!」

 

 やっぱり《ガイハート》だ。

 なんというか、みのりちゃんはすごくわかりやすく、わたしの戦術……っていうか、使うカードを真似てきてるみたい。

 

「決めに行くよ! まずは《グレンモルト》でシールドブレイク!」

「……トリガー、ない……」

「よしよし。で、次はどうしようか……どうせ《ホーリー》とか出ると全部止まっちゃうし、《シン・ガイギンガ》残す方がいいかな。Wブレイクして《シュトルム》とか《デパーチャ》踏んだら目も当てられないしね。というわけで《トップギア》でシールドブレイク!」

「こっちも……ノートリ……」

 

 S・トリガーを警戒したみのりちゃんの連続攻撃。そしてその甲斐あってか、恋ちゃんはトリガーを引けなかった。

 そして場には《グレンモルト》が生きている。そしてみのりちゃんはこのターン、二回攻撃をした。

 つまり、

 

「《銀河大剣 ガイハート》の龍解条件……成立!」

 

 《ガイハート》が、龍解する。

 

 

 

「これが小鈴ちゃんパワー! オリジナル! 《熱血星龍 ガイギンガ》!」

 

 

 

 序盤に革命チェンジで現れた《シン・ガイギンガ》。その後を追うように、追撃するかのようにして、オリジナルの《ガイギンガ》が、バトルゾーンに現れる。

 すごいや、みのりちゃん……二体の《ガイギンガ》を同時に展開するなんて。

 

「さぁ、小鈴ちゃんのパワーをその身に受けるがいいよ! 龍解時能力で、パワー7000以下の《ブーストグレンオー》を破壊!」

「む……」

 

 《ガイギンガ》の能力で、恋ちゃんのクリーチャーが焼き払われる。残っているのは、なぜか攻撃しない《アブソリュートキュア》だけだ。

 みのりちゃんの場には《ガイギンガ》が二体。こうなると、恋ちゃんはもう厳しい。

 ……ところでみのりちゃん、ちょいちょいわたしの名前を出すのはやめてよ……

 本名を知ってる人はみんなしかいないとはいえ、周りに人がいるし、ちょっと恥ずかしい……

 

「さて、どっちの《ガイギンガ》から殴るか、若干迷うけど……まあこっちでいいか。《シン・ガイギンガ》で最後のシールドをブレイク!」

 

 これで恋ちゃんのシールドはゼロ。みのりちゃんには《ガイギンガ》が残っている。

 仮にS・トリガーで耐えたとしても、《ガイギンガ》を選んでしまったら追加ターンを取られて、そのまま負けてしまう。

 流石の恋ちゃんでも、ここから耐え凌いで、あまつさえ逆転だなんて、難しいかな……?

 恋ちゃんは顔色一つ変えずにシールドをめくる。そして、

 

「……来た……S・トリガー」

「うわっちゃぁ、最後に踏んじゃったか。やっぱ《ホーリー》?」

「……いや、違う……これ」

 

 言って恋ちゃんは、ピッとシールドのカードを場に出す。

 

 

 

「――《ロイヤル・ドリアン》」

 

 

 

「……え?」

 

 唖然としているみのりちゃん。霜ちゃんは「やっぱりか」なんて顔をしてる。

 初めて見るカードだけど……なんだろう、あれ。緑色の、まりもみたいに見えるけど、イラストだけじゃよくわからない。ドリアン?

 

「《ロイヤル・ドリアン》の、能力発動……進化クリーチャーの、一番上のカードを、すべて、マナゾーンへ……」

 

 一瞬、恋ちゃんの言っていることの意味がわからなかった。進化クリーチャーの、一番上のカードをマナ送り?

 変な書き方だ。進化クリーチャーを除去するんじゃなくて、その一番上だけだなんて。

 とりあえず、相手のクリーチャーを除去するタイプのS・トリガーみたいだけど、その対象はすごく限定的。

 それにそもそも、選ばない除去であっても、《ガイギンガ》は進化クリーチャーじゃないから倒せない。

 なんだけど、問題はそうではなかった。

 

「私の《アブソリュートキュア》の“一番上のカード”だけを、マナゾーンに……残りのカードは、場に残る……」

「げ……!」

 

 恋ちゃんは“《アブソリュートキュア》のカードだけ”をマナに置いて、下にあった残りの三枚はそのまま場に残した。

 あっ、これってあれだ。前に霜ちゃんがちょっと教えてくれて、わたしもデッキに組み込んでた戦術……退化。

 進化クリーチャーの一番上のカードだけを移動させて、進化元を残す方法。《落城の計》でやるのがほとんどって霜ちゃんが言ってたから、水文明のカードが必要だと思ってたんだけど、自然のカードでもできたんだ。

 《ロイヤル・ドリアン》はカード単位でマナに送るクリーチャーなんだね。しかも、対象は相手のみならず、自分も含まれる。だから、退化ができる。

 ……でも、相手ターン中にそれをするなんて、すごいなぁ。

 

「うへぇ、ここで《ドリアン》踏むのはついてなさすぎる。しかも、《VAN》《大王》《モアイ》なら良かったけど、《ホーリー》がいるのかぁ……!」

 

 みのりちゃんは恋ちゃんのS・トリガーを警戒して攻撃する順番を調整していたみたいだけど、それは結果的には間違いだった。

 恋ちゃんの場には、退化によって現れたブロッカーの《ホーリー》がいる。ブロッカーなら、《ガイギンガ》の攻撃でも凌ぐことができる。

 

「結果論とはいえ《ガイギンガ》から殴るのが正解だったんだね、って言いたいけど、こんなん考慮しとらんよー」

「退化って気づいたなら、《ドリアン》は、考慮するべき……私のデッキカラー、的にも……」

「そりゃそうだけどさぁ」

「それで……どうする……?」

「ほぼ負け確なんだよなぁ。まあでも、一応殴るよ。《ガイギンガ》でダイレクトアタック」

「《ホーリー》で……ブロック」

「ターンエンド。あー、まずった、これはもうダメだなぁ」

 

 

 

ターン5

 

ラヴァー(恋)

場:《ロイヤル・ドリアン》《VAN》《モアイランド》

盾:0

マナ:8

手札:2

墓地:6

山札:21

 

 

稲荷(実子)

場:《シン・ガイギンガ》《トップギア》《グレンモルト》《ガイギンガ》

盾:5

マナ:5

手札:1

墓地:1

山札:25

 

 

 

 

「私のターン……一応《アブソリュートキュア》を召喚……」

 

 恋ちゃんはダメ押しのように《アブソリュートキュア》を召喚する。

 既に恋ちゃんの場には、大型クリーチャーが二体も並んでるし、みのりちゃん、一気にきつくなっちゃったね。

 

「《モアイランド》で、《ガイギンガ》を攻撃……バトルに勝ったから、シールドを三枚、マナゾーンへ……」

「そういえばそんな能力もあったね」

「《アブソリュートキュア》でも攻撃して、メテオバーン……弾を全部使って、シールドを三枚、追加……Wブレイク」

 

 シールドをマナに送ってトリガーを封じつつ、ダメ押しのようにシールドを追加して守りを固めながら、残るシールドを《アブソリュートキュア》でブレイクする恋ちゃん。

 みのりちゃんもここまで来たら、少ないシールドからトリガーチャンスを狙うくらいしかないけど、

 

「実子もここまでか」

「なんでですか? まだトリガーが……」

「《VAN》でドラゴンとコマンドは出せないし、《モアイランド》で呪文とD2フィールドも使えない。《バトライ閣》を積んでいるということは、あのデッキはできる限りドラゴンを積んでいるだろうから、トリガーもドラゴンである可能性が高い。《VAN》で逆転手はシャットアウトされてるよ」

「つ、つまり……?」

「ほぼ実子は負けが確定している。なにか驚きのカードでも採用していない限りはね」

 

 霜ちゃんが解説してくれる。

 呪文、フィールド、ドラゴン、コマンドが封じられてしまったみのりちゃん。

 みのりちゃんがこの状況から逆転するには、ドラゴンとコマンド以外の、クリーチャーのS・トリガーで、《VAN・ベートーベン》と《ロイヤル・ドリアン》をどうにかしなければならない。

 けど、そんなことができるカードが、都合よくあるとも限らない。

 

(好き勝手言ってくれるけど、まったくその通りなんだよねー……このデッキの防御トリガーなんて《ボルシャック・ドギラゴン》しかないから、《VAN》が出て打点揃えられた時点で詰みだし)

 

 ブレイクされたカードを手札に加える。そして、ふぅ、と息を吐いて手札を伏せるみのりちゃん。

 ってことは――

 

「《ロイヤル・ドリアン》で、ダイレクトアタック……」

「……なにもないよ。私の負け」

 

 

 

 ――この対戦(デュエマ)は恋ちゃんの勝ちです。




 大会編といっても、大会という枠に嵌めてただデュエマしてるだけというのが悲しいところ。でも、こうでもしないと存外、身内戦でストーリーって作りにくいですからね……
 ご意見ご感想、誤字脱字の報告等々、なんでも遠慮なく送ってください。
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